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本連載で過去3度に渡って紹介してきたビシージ。第23回ではビシージの激化の象徴として蛮族軍レベル8との戦いをお伝えした。ビシージがなぜ激化するのか。それはそもそもこの戦いが、謎多き“魔笛”を奪いにくる蛮族軍との争いであるためだ。魔笛を奪うまでビシージは断続的に発生し続ける。ビシージに敗れるということは、魔笛を蛮族軍に奪われることを意味する。そして奪われた瞬間、攻守が逆転し、今度は冒険者達が魔笛を取り戻す「奪還戦」の幕が開ける。
今回はこの「魔笛奪還戦」に参加した模様をお伝えする。ビシージそのものはアトルガンで活動する冒険者にとってすっかりお馴染みの存在になっているが、魔笛奪還戦の具体的な内容は本連載でもはじめて紹介する。魔笛を取り戻し、魔笛による恩恵をアトルガンで活動する全ての冒険者の手に戻すというヒロイックな戦いだ。
どうやらこの日の日本時間の早朝にマムージャ蕃国軍の侵攻を受け、防衛できず魔笛を奪われたとのことだった。事態を把握できずにいる海外の冒険者は、シャウトで「一体何が起こったのか」、「元に戻るにはどうすればいいのか」などといったような言葉を誰にともなく投げていた。 五蛇将は一体どうなったのか。同じように状況を確認しようと走る冒険者がいるなか、筆者も足を運ぶ。土蛇将ザザーグを除き、他の4将の姿はなかった。ザザーグは「盗られたんなら取り返しゃあいい。そんだけのことなんだからよ」と豪快に笑っていた。ビシージにおいて魔笛が奪われるということは五蛇将全員が戦闘不能になったということを意味するが、戦闘不能になっても確実に捕虜になるわけではない。そのためザザーグのみ残っていたのだろう。捕虜となった将の側近は悲嘆に暮れていた。 続いて「封魔堂」へと足を運ぶ。普段は五蛇将による五つの封印によって閉ざされており、その奥に魔笛を保管している場所だ。だが、封魔堂の扉はいとも簡単に開いた。奥へと進むと大きな魔笛の姿が目に入る。だが、いつも放っていた不思議な光は失なわれ、魔笛の本体であろう核のようなものはなくなっていた。調べると「魔笛をアルザビに取り戻さねば……。」とログに現れた。そう、取り戻さねばならない。
魔笛が奪われると失われる恩恵はかなり大きい。過去にも本連載にて紹介したものだが、サンクションの追加効果を得られなくなったり、効果時間が大幅に減少したりするほか、経験値ボーナスもなくなる。また、移動関連としては「移送の幻灯使用許可証」が発行してもらえなくなり、デジョンタルタル兄弟の弟のデジョン転送の精度も下がる。皇国内で販売されている品揃えも悪くなるようだ。それから、前述のように、アルザビのBGMが流れなくなる。
魔笛奪還の目的地は、最奥地にあるバトルフィールドだ。その最奥地にたどり着くまでにもいくつかの関門がある。最初に必要となったのが「だいじなもの」の“マムージャの赤いベル”だ。これはマムージャの仲間であることを証明する品なのだろう。厳重に警備されている奥地へと侵入するためには必要不可欠。同様に、赤いベルとセットでバトルフィールドに入るために必要になる“マムージャの青いベル”も手に入れる。 まずは赤いベルを手に入れるためにマムージャを倒しながら進んだのだが、厄介だったのはポロッゴだ。カエルの姿をした蛮族だが、範囲属性を含む強大な黒魔法を駆使し、水風船爆弾という範囲ダメージと静寂の追加効果を持つ特殊技を放つ。代名詞とも言えるカエルの歌は冒険者をカエルの姿に変え、魅了する。戦う相手としても厄介だが、最も厄介なのはインビジやスニークを見破る能力を持っていることだろう。メンバーは慣れていないためか、はやる気持ちのなか、インビジ・スニークを駆使して突き進んでいると突如襲われて壊滅の憂き目にあうこともしばしばだった。 そうした中、同じ目的を持ったパーティが到着しアライアンスを構成していった。容易に協力体制が作れたのは、参加した時間帯が日本のコアタイムを外れ、海外の冒険者が多かったことと、コンテンツを攻略するという空気よりもイベントのような感触で協力体制が生まれたためだ。後に感じたことだが、魔笛奪還戦というのは、1つのパーティだけで成し遂げるような難易度ではない。魔笛を取り戻すという同じ目的を持っていくつかのパーティが駆けつけるだろうし、協力しあったほうが賢明だろう。 人数が増えて再編成を行ないつつも先に進み、無事「マムージャの赤いベル」を手に入れることができた。そして、最初の目的地である奥地へと続くドアに到着。ドアには赤い顔料でベルの絵が描かれている。ここで仲間の証である赤いベルを鳴らすと錠前が解かれた。
マムージャたちは忍者タイプ、シーフタイプ、青魔道士タイプ、黒魔道士タイプなど様々だが、忍者とシーフのタイプはとにかく回避が高い。HPも多く、とにかくこちらの物理攻撃が当たりづらい。その敵の強さももちろんだが、戦闘時のBGMがバトルフィールド戦の曲になっており、特別なフィールドに侵入していることを実感させた。 このマップは細長い迷路のような作りになっていて、途中には扉がいくつもある。この扉を開けるには、マムージャを倒して手に入れた「蕃都の茶鱗のカギ」が必要になった。比較的入手は容易でいくつか手に入れていたものの、扉に使うと壊れて無くなってしまうし、一定時間開いたあとは内側からしか開けられなくなる。 マムージャが見破り能力を持っていること、道が細く敵を回避できないこと、そしてこの扉の仕掛け。これは、戦闘を避けることはできず、単独で侵入することがほぼ不可能に近いことを示す。奥地にたどり着いた後に人員を補強したい事態になっても、一度パーティ単位で戻るほかない。一丸となって魔笛奪還を成し遂げるという“決死の覚悟”が必要になる。 途中、マムージャが数匹細い通路に集まっていて、敵の引っ張り方に失敗すると一気に襲われてしまう状況が何度かあった。一度、3体のマムージャに同時に襲われてしまい、対処もうまくいかずにアライアンスが壊滅してしまう事態も起こった。事前にかけてあったリレイズによって何名かが蘇生し、なんとか立て直したのだが、立て直しもまた難しい。難しい理由は、戦闘不能者を安全な場所に運べるトラクタを使うと、一度エリアを外れてしまった扱いになってだいじなものの赤と青のベルを失ってしまうためだ。ベルはマムージャから再取得できるものの、ドロップ率にばらつきがあって長時間手に入らないこともある。そのためできればトラクタを使わずに蘇生したいとなったわけだ。
こうした幾度かの危機をなんとか乗り越え、ついに最深部へとたどり着いた。ここまでに行なった事といえば、マムージャとひたすらに戦い、2種のベルと鍵を手に入れて進んできただけではある。だが、それだけでも皇都を出てから3時間超は経過していた。戦力や事前知識によってはもっとスムーズにいけるかもしれないが、どのみち過酷な道のりになるのは違いない。赤いベルのドアの先からは慣れない場所ゆえ緊張感も高く、最深部にたどり着いた頃にはだいぶ疲弊していた。
すでにベルは揃っていたためパーティを再編成し、パーティ単位で順番に挑むこととなった。それでは、順番が後になったパーティはバトルフィールド戦をすることもなく奪還戦が終わってしまうこともあるのでは? と思うかもしれないが、待ちうけるボスと護衛のマムージャは強大な戦力でHPもかなり高い。加えて30分制限の戦闘なため、とても6人パーティが1度の戦闘で倒しきれるものではない。そのため、敵のHPの減少分が一定量まで引き継がれるという仕様になっているのだ。パーティ単位で順に挑み、次のパーティへと繋ぐ戦いを繰り返すことになる。 順番がきて自分の参加するパーティがバトルフィールドに入った。中は薄暗く奥に長い通路と広間で構成されるエリアになっていた。入り口付近の広間と奥の広間が通路で繋がっているような作りだ。奥の広場へと足を進めると、そこにそれはあった。魔笛だ。 魔笛の前に立つマムージャは3体。中央には「Sagelord Molaal Ja」。アサルト作戦の「賢哲王暗殺作戦」やビシージ侵攻にも登場する、マムージャの賢哲王だ。ジョブは黒魔道士。その両脇には「Forbidding Koheel Ja」と「Shadelurking Zolool Ja」、ジョブはシーフと忍者のようだ。 先のパーティが善戦した結果か、最初からHPが減少していた。ボスのSagelord Molaal Jaを集中して狙い、他の2体はスリプガによる睡眠と、ボスを倒すまで引きつけて逃げ続ける戦法をとることとなった。 黒魔道士のメンバーが精霊の印を合わせたスリプガを放ち、戦闘開始。青魔道士で参加していた筆者はSagelord Molaal Jaに斬りかかった。睡眠は無事レジストされずに通ったようで、ボスに集中できた。この流れなら勝てると思った矢先、Sagelord Molaal Jaは特殊技のグランドバーストを放った。範囲属性の技で700を超えるダメージが降り注いだ。 一気に窮地に陥り、全滅の可能性がよぎる。全滅したときにパーティを立て直すことを考慮して、魔笛のある広間から入り口付近へと場所を戦いながら場所を移す。後に知ったことだが、このエリアではトラクタはできないようだ。場所を移してからもSagelord Molaal Jaに必死の攻撃を続けるが、とにかくHPが多い。残量は半分を切っているにも関わらず、とどめを刺せるのは遠く感じる。そうこうしているうちに、眠らせていた他の2体が目を覚まして襲いかかってきた。グランドバーストのダメージもあり体制の乱れている一行は一気に崩れてしまった。 リレイズによって蘇生したメンバーを中心にパーティを立て直す。このバトルフィールド戦では経験値の消失がなく、立て直して再度挑むことに躊躇はない。制限時間の30分の中で何度も挑み、少しずつマムージャたちのHPを削る。そうして初回の戦闘は時間切れとなった。
自分たちのパーティが取り戻したいという欲は当初あったものの、この長く苦しい戦いが終わり、魔笛が皇都に帰るのであれば誰の手であってもかまわないという気持ちのほうがこのときには強かった。最も怖いのはメンバーの都合などで戦力不足となり最終的に取り戻せなかったという結果が残ることだ。それに比べれば誰の手でもかまわないのだ。
そしてついにその瞬間は訪れた。筆者も都合によって一度戦列を離れていたときのことだったのだが、「魔笛」の奪還に成功しました。とログによって伝えられたのだ。奪還を成し遂げたパーティに賞賛の声を送る。奪還したパーティは長時間に渡って挑み続けた冒険者で、本稿に書いてきた以上の長く辛い戦いを繰り広げていた。彼らはいくばくかの皇国軍戦績と特別な称号を手にしたそうだが、そうした利益では計れない価値のある勝利をワールドにもたらした。
魔笛奪還は、アトルガンで活動する全ての冒険者に届く恩恵を取り戻すという、なんとも英雄的な要素に溢れたコンテンツだ。ビシージにはほかにも、捕虜の救出や古鏡の破壊、募金による皇都防衛力の回復など関わる要素があり、それらに向かう冒険者の手で支えられている。今回は最たるものとして魔笛奪還戦を取り上げているが、そうした行動をとっている全ての冒険者に賞賛を送りたい。 ビシージは激化し、今後ますます魔笛が奪われる機会が増えるだろう。蛮族軍レベル8導入以前はワールドによって差はあるものの原則として勝利ばかりが続き、あまり魔笛奪還というシステムは有効活用されていなかったように思う。それをふまえれば、魔笛奪還の機会が生まれたことは、アクティブな冒険者にとっては大きな楽しみとなるだろう。 魔笛奪還戦は、1PTがバトルフィールドに入り、代わる代わるボス戦に挑むという非常に特殊な設計になっている。魔笛奪還に挑む全体の戦力が増せば増すほど奪還が容易になる。バトルフィールド戦においてもパーティが順に挑み波状攻撃をかけることで勝利に近づけるだろう。 ただ、ひとつ残念だと感じたのは、成功報酬が撃破に成功したパーティーしか得られないところだ。ビシージの理屈で言えば、少なくともボスのHPを削ったパーティーや、一緒に奥地に侵入し、道中のモンスターと戦ったメンバーにもそれなりの報酬が得られる権利があっても良いと思う。さらに欲を言えば、奪還戦でだけ手に入るような要素を導入するところまで充実すれば、敵に魔笛が奪取された瞬間に、無数の冒険者達が一斉に敵の拠点に駆け出すような“逆ビシージ”ともいえる冒険者の大侵攻が実現するかもしれない。
現状では、陥落という要素とそれに伴って始まる魔笛奪還戦は、多くのユーザーにとってネガティブにしか受け止められない要素になっている。基本的に陥落はネガティブなものでかまわない、そうでないとビシージが成立しないからだ。ただ、できればビシージが進化したように、魔笛奪還戦にもビシージとは別の魅力が溢れるような進化がさらに加わわって欲しいと思う。そうして、陥落は残念でありながらも、別の楽しさが生まれるようなバランスのコンテンツに成長してくれることを願いたい。 (C)2002-2007 SQUARE ENIX CO.,LTD All Rights Reserved.
□スクウェア・エニックスのホームページ (2007年7月6日) [Reported by 山村智美 / Pomm]
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