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★オンラインゲームレビュー★

“サービス開放”でゲーム世界はどう変わったか?
今後の課題は“衛士”から“将軍”までのロードマップ

「真・三國無双BB」

  • ジャンル:オンラインアクション
  • 開発元:コーエー
  • 発売元:ELEVEN-UP
  • 利用料金:1回30円前後の従量課金
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • 発売日:正式サービス中



 株式会社コーエーの開発でイレブンアップ株式会社運営のWindows用MMOアクション「真・三國無双BB」(以下「無双BB」)は5月16日、「Yahoo! BB会員またはSoftBankブロードバンドサービス会員」(YBB会員)とネットカフェからのみに限定されていた接続制限を撤廃した。動作するパソコンさえあればすべてのISPから接続可能となり、ユーザー数が少なく適正なマッチングさえおぼつかなかった現状を打破すべく再スタートを切った。本稿では、ISP開放後の新たな「無双BB」世界の模様をお伝えしていく。


■ 待望の“サービス開放”までのロードマップ

曹操勢力のロビー。ISP開放前にくらべ随分にぎやかになった
MMORPGにおけるクエストに相当する「特務」。ソロでも複数でも楽しめる
 まずは「無双BB」のサービス開始から現在までの流れを簡単におさらいしよう。本作は2006年9月に正式サービスを開始した。ネットワークのレイテンシーの品質や、セキュアなコミュニティ環境構築のために、配信先のインターネットサービスプロバイダを制限し、オンラインゲームとしては異色となる対象ユーザーを限定したサービスで話題を呼んだ。

 ゲームの面では、コンシューマで根強い人気を誇る一騎当千の爽快感ある「無双」シリーズの世界観を踏襲。キャラクタの成長による強さの偏りを極力排除し、ロビーで鍛えた武器を戦闘中の「仙箪」を用いたアップグレードで成長させ、セッションの中で戦術的なゲーム作りを行なっていくことが特徴だ。4対4の対戦を軸に、ロビーでのリッチなグラフィックス環境など、キャラクタ表現の豊かさが魅力となっている。

 サービス開始から2カ月後の11月にYBB会員に加えてネットカフェでのプレイが可能となり、本誌でもレビューとして正式サービス直後のサーバーの様子を紹介したが、ISP限定がネックとなり、適正なマッチングが行なえないほどユーザーが少なく、提携ネットカフェの拡大やISP開放など、対象ユーザーの拡大が急務だとお伝えした。

 この間にも2度に渡る大規模アップデートが行なわれている。2006年12月の「Evolution 1」では、プレーヤーと共に戦ってくれる成長要素を伴った「副将」が実装され、今年4月のアップデート「Evolution 2」では、最大4人で協力してクエストを行なう「協力特務」などが実装された。内容面でも充実してきている。

 こうした流れを踏まえて、5月16日に“サービス開放”と称したISPの縛りが開放された。また、ISP開放と同時に、義200以上の身分「衛士」になるまでの新規プレーヤー向けに無料で2対2での戦闘を楽しめる「練兵」システムや、通常のセッション「激突」でも条件を満たせば無双武将が戦場に登場するといった、各種システムを一新するアップデートも行なわれた。ここまでが現在までの流れとなる。


■ ビギナー向け新コンテンツ「練兵」。ここで戦い方とアイテムを集めよう

義200までの初級ユーザーが参加できる「練兵」。無料で出撃できる上に、ゲームの結果に関わらず戦場で取得したアイテムを獲得することができる。卒業となる「衛士」に昇格する際にはレベル2の武器を授けてくれる
「練兵」では2対2までの戦闘を楽しむことができる。繰り返し出撃し、戦いの流れをしっかりと掴みたいところだ
「練兵官」から消費アイテムを支給してもらえる。使ってみないことには効果がわからないため、実戦に備えてどしどし使ってみよう
 さて、サービス開放に合わせたアップデートで、経済の仕組みが大きく変わった。義200までの初心者ユーザーが無料で参加できる「練兵官」からの出撃と、勢力間の戦いとなる「激突」の武器ランク2以下での参戦が可能な「新参」で、勝敗に関わらず装飾品や武器を手に入れることができるようになったのだ。

 以前までは、激突に敗北してしまうと、戦場でゲットした武器や衣装や消費アイテムがまったく入手できず、なかなか新しい衣装、新しい武器を入手できなかった。現在は、参加することで入手できる可能性が出てきたので、ビギナーは積極的に「練兵官」に話しかけて出撃し、木箱を壊したり、兵糧庫を襲いに行き、様々な武具や衣装を入手しよう。

 筆者の場合は、数回の激突や特務への出撃を合わせた約30回の出撃で義200の衛士に昇格することができた。節目節目で「練兵官」から武器や消費アイテムが支給されるなど、これまで新米ユーザーにとって貴重なために使いどころが難しかったゲーム内アイテムが気軽に試せるようになったのが嬉しいところ。本作の肝となるアクション部分の深部へのアクセスが容易になり、喜ばしいアップデートと言えるだろう。

 ただ、「練兵官」や市場には多くの新規ユーザーが集まり始めた一方で、義200までの無料期間を終えたユーザーが、勢力を背負う人材として有料プレイに移行する割合は、それほど多くない印象も受けた。これはビジネスモデルうんぬん以前に、有料ユーザーの切り替えポイントとなる義200以上の「衛士」から、義2,000以上の「将軍」までのロードマップが敷かれていないためだ。

 「練兵官」を通じて楽しめる無料プレイ期間は、節目ごとに「練兵官」から各種アイテムを支給されながら使い方のアドバイスが貰えるなど「衛士」に到達するまでしっかりとしたサポートが受けられる。問題なのは、それ以降のプレイの指標や、4対4での戦いの魅力を伝えるコンテンツがすっぽりと抜け落ちてしまっているのだ。

 現在は、「衛士」になった後はもう「将軍」たちが渦巻く戦場で実績を挙げるしかないのだが、キャラクタ性能もプレイ経験も段違いであるため、まったく歯が立たない。これが個々人の戦いならまだいいのだが、国を背負う立場になるため、自分の責任で負けてしまうのは申し訳がない。そういうわけでいよいよ有料プレイに足が遠のいてしまう結果となる。

 サービス開放以前からゲームに参加し、すでに将軍クラスにまで登りつめているハイエンドユーザーと、プレイの展開を飲み込めていない初心者ユーザーとの間には、実力的、経験的に大きな乖離がある。これはコミュニティ側のサポートではどうしようもない部分でもあり、「衛士」から「将軍」までの深い溝をどう埋めていくかが今後の大きな課題といえる。

装飾品は、武器のアップグレードに比べ性能的な効果は薄い。激突でも格や勝敗に関わらずアイテムを供給し続けたほうが、よりアクションを意識したプレイが望めるのではないだろうか


■ 新武器「多節鞭」、成長する「副将」など、「無双BB」オリジナル要素も追加

「無双BB」オリジナル武器「多節鞭」。多少の時間差をつけて後方にも攻撃がヒットするため、多数の雑兵相手に非常にくみしやすい武器だ
副将は仕えるべき主人を探している。戦場で「副将の魂」を獲得すると、以後、名前をつけて直属の副将として成長させていくことができる。筆者の副将は老人のビジュアルに少年のボイスという薄気味悪い取り合わせ。副将は、戦闘時以外は自宅に控えているが街中にも連れ出してみたい
 5月16日には「サービス開放アップデート」として、「無双BB」オリジナル武器である「多節鞭」が実装された。これまで登場した武器はいずれも「無双」シリーズに登場する無双武将が所持している武器から実装されてきたが、本作のユーザーには嬉しいオリジナル武器となった。

 「多節鞭」の特徴は長い節だった鞭で、破壊力のアップグレードが遠いものの、無双と攻守の強化を初期に行なえるため、初心者に扱いやすい設計となっている。特に、大きく振った鞭がユーザーキャラクタの前方ばかりでなく、後方に迫る敵にもヒットするなど、クラウドコントロールに優れている。隙が大きいのでプレーヤーキャラクタとの対峙には向かないが、一騎当千の無双の世界を味わうのに適した1本となっている。

 また、成長要素を持ったコンテンツとして、「副将」システムが導入された。激突中にランダムで戦場に登場する中立武将を撃破すると「副将の魂」を落とす。これを獲得すると、以後その副将に名前をつけて戦場に連れ出すことができるのだ。

 副将は出撃の際に、副将自身の撃破数によりレベルを上げていく。副将には好きな名前をつけられ、8人まで召抱えることができる。1人につきスキルを1つ覚え、副将の無双ゲージが満タンの時に属性攻撃や味方の体力を回復させるなどの効果が発動する。キャラクタのレベル概念がない分、副将の成長は楽しみなものになるだろう。

各種アイテムの物流が増えたことで、気軽に多数の武具を試すことが可能となった

「多節鞭」は鋼鉄のムチをふりまわしてダメージを与えるという恐ろしい武器だ


■ 「衛士」以降の目標の設定と不人気勢力を盛り立てる仕組みが必要

勢力ごとのユーザー数によってまだまだマッチングに偏りがある。最も戦力の少ない董卓軍相手では頭数を揃えるのに苦労する。これは両勢力とも望まない風景だ
特務は、様々なシナリオを「無双」のシステムにはめ込んで展開されるため、情報を見ただけでは何をする特務なのかわかりにくい
「激突」は、まだまだ1人だけで黙々とプレイしているユーザーも多いようだ。これはユーザーが望んでいるというより、マッチング機能、コミュニティ機能の不備からすれ違いになっている印象が強い。プレイ中のユーザー名を表示させるなどもう一工夫ほしいところだ
 前回のレビューでお伝えした本作の抱える課題として、プレーヤーがいないためにマッチングが行なわれにくい状況を紹介した。これに関しては、今回のISP開放や各種アップデートを通じて問題が解決しつつある。しかし、人は増えたが常着しないという新たな問題が浮上しつつある。

 繰り返しになるが、この原因は、「練兵」による無料出撃ができなくなる「衛士」以上のユーザーに対して、プレイの指標が与えられていないことが挙げられる。プレーヤーと対峙する際の指南や、勝利しなければアイテムを獲得できなかったり、上級の武器を扱うことのできる「激突」の「熟練」や「精鋭」でどのような立ち回りをすべきかわかりにくい。プレーヤー4人で勝利してもなぜ勝利できたのか、逆になぜ負けてしまったのかの実感がつかみにくくなっている。

 勝利できなければ敵勢力の侵攻を許してしまうばかりでなく、戦闘中に取得したアイテムも破棄されてしまう。「練兵官」システムは導入口として優れたシステムなだけに、今後は激突を繰り返していく有料ユーザー向けにも、戦略の方針転換のタイミングや敵プレーヤーと対峙するタイミングなどをしっかりとサポートしてほしい。

 また、最大勢力の曹操軍と、勢力では3分の1しかいない董卓軍では街の賑やかさからマッチングに集まるユーザー数もまったく異なってくる。激突で、片側のユーザーが4人揃っているのに片側の頭数がなかなか揃わなかったり、ユーザーが少ないために市場に並ぶアイテムが少ないなど様々なデメリットがある。

 危惧されるのは人の数が勢力の強さに直結してしまうことだ。勢力の鞍替えには軍資金や財産を没収された上に武器を封印されるなど厳しいペナルティがあるため、一度勢力に仕えてしまうと身動きが取れないのが実情だ。サーバー内(6月10日現在)では早くも袁紹が滅び、董卓が劣勢になっている。アイテムや武器を不人気の勢力に属するユーザーが得やすくするなど明確なメリットを強調してほしいところだ。

 さらにPCゲームユーザーとしては、ぜひネットコードの改善をお願いしたい。ISP開放された結果、セッション中に他のキャラクタに接近すると極端なラグや瞬間移動をしているように見えるシーンが頻繁に見られるようになった。瞬間移動しながら迫ってくる相手に倒されることでゲームの流れが変わってしまおうものなら、なんともやるせない気持ちになる。ハイエンドユーザーと初心者ユーザーを繋ぐ試みと共に、快適なプレイ環境の構築もまた望まれるところだ。

本作最大の醍醐味である対人戦は、ラグの解消などアクションゲームとして根幹的な部分の改善が渇望される。ISP開放で一定かつ高品質なレイテンシーは確保できなくなったが、ネットコードの最適化はまだまだ不十分なように感じられる。多数のユーザーに高いクオリティのゲームプレイを提供することが最優先課題になるだろう

アクション面では、「仙箪」を取って戦いを進めるオーソドックスな展開以外にも、敵を極力倒さない協力特務など、遊び方も多様になってきた。今後は、そういった無双アクション以外での楽しみの提供にも期待したい

(C) 2006-2007 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.
Presented by ELEVEN-UP Inc.


【真・三國無双 BB】
  • CPU:Pentium 4 1.8GHz
  • HDD:9.5GB以上
  • メモリ:512MB以上
  • ビデオカード:DirectX 9.0c 以上に対応した VRAM 64 MB 以上を搭載のビデオカード


□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□EVELEN-UPのホームページ
http://11up.co.jp/
□「真・三國無双BB」のページ
http://www.musou-bb.jp/
□関連情報
【2006年11月24日】オンラインゲームレビュー「真・三國無双BB」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061124/musoubb.html
【5月15日】ELEVEN-UPとコーエー、WIN「真・三國無双 BB」
公認ネットカフェでもチケット販売。プレイ料金も値下げ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070515/musou.htm
【5月9日】ELEVEN-UPとコーエー、WIN「真・三國無双BB」
ISP制限開放に合わせてアップデートを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070509/musou.htm
【4月25日】「真・三國無双BB」開発/運営チームインタビュー
サービス開放の狙いと、今後のアップデート構想を聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070425/musoubbi.htm
【4月25日】ELEVEN-UPとコーエー、WIN「真・三國無双 BB」
5月16日よりISP限定を開放。事前登録受付を開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070425/musoubb.htm

(2007年6月12日)

[Reported by 三浦尋一]



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