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Neowizは、NHNの「Hangame」やNEXONの「NEXON.com」に並ぶ大手ゲームポータル「Pmang」を擁し、オンラインFPS「Special Force」やElectronic Artsと共同展開している「FIFA Online」といったヒット作を軸に、2006年の売り上げは1,282億ウォン(約166億円)、純利益は93億ウォン(約12億円)にも上る。これは純粋なオンラインゲームパブリッシャーとしては、日本のどのメーカーよりも大きな数字になる。 Neowiz Japanは、その日本法人でありながら、エヌシージャパンやネクソンジャパンのような大々的な日本展開をしてこなかった。Neowizのオンラインゲームビジネス成功の立役者であるパク氏が社長に就任することにより、どのような変化が生まれるのか。今回、社長就任挨拶に訪れたパク氏に、2007年度のNeowiz Japanの事業戦略をお伺いした。
■ Neowizの顔パク・ジンファン氏の日本法人社長就任の経緯と狙いについて パク・ジンファン氏: 3月26日に韓国の代表取締役社長の任期が満了し、4月からNeowiz Japanの代表に就任しました。 編: 日本を担当した理由は? パク氏: 現在、日本でビジネスをするための環境作りを行なっています。Neowizとしては日本で成功させるために新しいことを始めなければならないと考えています。それが私の役割になります。 編: 韓国での報道を見ますと、パクさんはNeowizの顔として親しまれてきた経緯がありますが、この人事異動は日本市場のてこ入れという理解でいいのでしょうか。 パク氏: そうです。 編: G★のNeowizブースを見ますと、大手メーカーとしての勢いが伝わってきましたが、日本ではまだそこまでの実績やプレゼンスは示せていません。そこで韓国の現状を教えていただきたいのですが、ゲームポータル「Pmang」のユーザー数やタイトル数、売り上げは現在どれぐらいなのでしょうか? パク氏: 「Pmang」の登録者数は1,000万人で、10タイトル前後のオンラインゲームを配信しています。2カ月に1タイトルずつ、新規タイトルを増やす計画です。売り上げは毎月50億ウォン(約6億5,000万円)ぐらいです。 編: Neowizというと「Special Force」の成功が印象的ですが、成功の理由は何だったと思いますか? パク氏: ユーザーはFPSで何を求め、何を得ようとしているのか、そのポイントを検討しました。「Special Force」は一定の人数が集まらないとゲームを始められません。FPSでは定員を待つタイプと、乱入できるタイプの2通りのやりかたがありますが、常に定員まで人を集めるためにはどうすればいいかを考えました。その考えが的中したのだと思います。 編: 「Special Force」が登場するまでは、FPSというと「Counter-Strike」や「Unreal Tournament」などパッケージ型のビジネスモデルが主流でした。そこにアイテム課金制を導入するのは英断でしたね。 パク氏: そこは勝負をかけました。ただし、成功する確信がありました。私が新しいビジネスを展開する上で一番重視するのはデータです。オンラインゲームビジネスを展開していくと、無数のデータが集まってきます。有益なデータ、判断を惑わすデータなどいろいろありますが、弊社のスタッフはデータマイニングが優秀で、それが成功の基礎になっています。 編: G★ 2006のNeowizブースで驚いたのは、「A.V.A」や「Cross Fire」といった「Special Force」と競合するオンラインFPSの新作が続々登場していたことです。これはどういった戦略なのでしょうか? パク氏: ゲームは進化していくものだと思っています。たとえば、定員に満たなければゲームが始められない段階から、乱入を可能にする、グラフィックスを強化する、他の機能を充実させるなど、次の世代に向けたサービスを考えなければならないと思います。 日本と韓国はちょっと状況が違いますが、ワールドワイドで見ると、一番人気の高いジャンルはFPSです。オンラインFPSを持つことは世界展開を進めていく上で大きな意味を持つことだと考えています。日本と韓国はRPGが大好きみたいですね(笑)。 編: とすると、この2タイトルは欧米市場を狙っているということですか? パク氏: 今後リリースしていくタイトルは、韓国だけではないということは言えると思います。世界を視野に入れた上でさらに勝てるタイトルでなければならないと思います。 編: 日本展開に関してはいかがでしょう。 パク氏: すべてではないですが、展開していきます。まだ日本ではゲームチューのサービス開始から1年程度しか経過していないので、もっとリサーチが必要だと考えています。現在3年分のデータが蓄積されていますが、今後は私の目で確認していきます。特に日本市場は本当にRPGしか受けないのかどうかをリサーチしていくつもりです。私の見込みでは他のジャンルでも成功させることはできるのではないかと考えています。 編: どのようなデータを蓄積しているのでしょう? パク氏: 日本のオンラインゲームユーザーを対象に、どのようなゲームを好むのか、その変遷、新タイトルがリリースされた時の動きかた、地域性はあるのかどうかなどです。 編: 韓国と日本で違いはありましたか? パク氏: 一番感じたのは、韓国のユーザーは何よりも新しいモノが好きで、新作が出たらとりあえずやってみるという習性があります。日本のユーザーはそうではなく、自分が好きなタイトルに対する忠誠度がとても高い。この違いは、我々にとって大きなチャンスだと思っています。 編: 日本展開しているNeowizのタイトルとしては「ヨーグルティング」がもっとも歴史の長いタイトルですが、何か得るものはありましたか? パク氏: 一番大きいのは、韓国ではβテストの内容について比較的寛大です。50%ぐらいの完成度でも満足してくれます。そこから徐々に完成度を高めていくわけですが、日本ではβテストの段階から80%から90%の完成度がないと通用しません。これは大きな違いだと思います。 編: ちなみに、「ヨーグルティング」の開発が終了したのは、とても残念なニュースでした。これはどのような判断だったのでしょうか? パク氏: 改善していくよりは新しく開発を行なったほうがいいだろうという判断です。「ヨーグルティング」はかわいいグラフィックスが評価されたあまり、一番重要なシステムの部分がおろそかになっていました。これを改善していこうと努力を続けてきましたが、時間ばかりがかかり、思うような結果が出せませんでした。ユーザーも離れてしまいました。 編: 途中で開発会社がかわり、アップデートもうまくいっていませんでしたよね。 パク氏: 会社は変わりましたが、スタッフは変わっていません。アップデートはうまくいきませんでした。これはコンテンツをアップデートするためのシステムがとても貧弱だったためです。大規模なアップデートをしようとするといったんサービスを停止させる必要があったのです。
■ 新生Neowiz Japanのオンラインゲーム戦略
パク氏: 「Special Force」の日本展開を考えた際に、まだ自社でやれる状況にはなっていませんでした。韓国のゲームメーカーはどこもそうですが、日本展開はとても大きな不安を感じています。NHNは日本ですでに成功していた大手メーカーでしたが、弊社では「ゲームチュー」をオープンしたばかりでした。 編: それなら尚のこと、「Special Force」というキラータイトルの力を利用して、「ゲームチュー」を「Hangame」に並ぶポータルサイトに成長させようという考えはなかったのですか? パク氏: それは考えましたが、システム的な不安があったので断念しました。NHN Japanで配信するということに関しては、我々がお願いしたというより、NHN側の強い希望で実現したものです。 編: 結果として、「Hangame」と「ゲームチュー」の差が開く結果になりましたが、これは織り込み済みというわけですか? パク氏: 韓国ではともかく、日本ではすでに比較にならないほど差が開いていますので、それに関しては気にしていません。我々は、今年4月にスタートしたばかりの新参メーカーというスタンスでいます。 編: というと、2002年の設立からこれまでの活動はなんだったのでしょうか? パク氏: それは違うサービスでした。Neowiz Japanがゲーム事業を始めたのは2006年からですし、新たな気持ちで取り組んでいきます。 編: これまでのNeowiz Japanの活動をどのように評価していますか? パク氏: 今年4月に新しく設立された会社として見ていただきたい。もちろん、これまで何もしていなかったわけではないですし、いろいろな試行錯誤がありました。それを整理統合した上で、韓国の代表としてあれこれ言うのではなく、日本に来てしっかりやるということです。 編: なるほど。それでは、Neowiz Japanのこれまでのビジネスとこれからのビジネスの違いは何でしょうか? パク氏: これまではどちらかというとオンラインサービスの会社でしたが、これからはオンラインゲームサービスになります。 編: ゲームポータルサイトである「ゲームチュー」はどうなるのでしょう? パク氏: リニューアルを計画しています。 編: 根本的な疑問ですが、なぜ「Pmang」でなく「ゲームチュー」という新しいブランドを作ったのでしょうか? パク氏: 当時私は韓国にいましたが、その判断は日本の方で行なわれたもので、私は知りませんでした。今後については「Pmang」に戻す可能性もあります。ただし、ブランドを変えるのは難しいので慎重にならなければなりません。 編: サービスはどう変化するでしょうか? パク氏: 日本のユーザーには、韓国のNeowizがNeowiz Japanを運営していると思われていますが、この意識を変えていきたい。「ゲームチュー」を見ると、日本人の目から見て不自然な日本語が残っていたりする。これは改善していかなければいけない。その機能も、ユーザーが楽しめるように作られていない。これでは「Hangame」に並び、追い越すことはできないと思っています。そのためには、同じサービスを提供するだけでなく、新しい機能もどんどん追加していかなくてはならないと考えています。 編: お話をお窺いしていると、これまでのNeowiz Japanの5年間の運営に強い不満を感じているようですね。 パク氏: 不満ではないですが、日本の5年間を、韓国と同じほど深く見てこなかったことに対する反省です。 編: 現在、ゲームチューには「デカロン」、「R2BEAT」の2タイトルを展開していますが、これらはどうなるのでしょう? パク氏: 正直なところ、現在停滞しています。今後は感覚に頼るのではなく、データから導き出された決断を、スタッフに伝えている段階です。少しずつ改善されつつあります。 編: 運営方針が変わるということでしょうか? パク氏: 日本人の目から見て、日本で作られたゲームだと思って貰えるようにしていきます。具体的にはローカライズの完成度をもっともっと高めていきたいと思っています。 編: 韓国では、数多くの新作タイトルをかかえていますが、これらの日本展開についてはいかがでしょうか? パク氏: すべてではないですが、一部を持ってきます。日本のオンラインゲーム市場は、すべてのタイトルを昇華できるだけの規模ではないと思っていますので、日本市場に合ったタイトルを持ってこようと考えています。
■ 目標は会員数200万人、同接5万人。今後は国内メーカーとのコラボレーションも視野に
パク氏: 登録会員数は30万人、目標は200万人です。同時接続者数で言うと5万人ぐらいになればいいなと思っています。 編: 200万に伸ばすための戦略とは? パク氏: 今あるものはより良くし、その上で新しいコンテンツを投入していきます。いまはまだ大量のユーザーを集めるコンテンツがないので、その準備を進めている段階です。 編: 200万人というと国内最大規模になりますが、簡単にはいかないのではないかと思います。 パク氏: 私はそうは思いません。ビッグタイトルを持ってくるだけでいけると思います。 編: そのビッグタイトルとはなんでしょう? パク氏: それは教えられませんが(笑)、韓国で発表されているタイトルです。 編: 2007年度の新規タイトルは何本ぐらいを考えていますか? パク氏: 3本を予定しています。この中にRPGは入っていません(笑)。まだ契約を終えていないので、具体的なタイトル名はお話しできませんが、発表済みのものが2つ、未発表のものが1つです。 編: 韓国では、Electronic Artsと共同で「FIFA Online」を共同展開していますが、これが日本に来る可能性はあるのでしょうか? パク氏: 可能性は否定はしません。 編: ビジネスモデルについてはどのように考えていますか? パク氏: アイテム課金をベースに、新しいものを付け加えていく形を検討しています。たとえば、ゲーム内広告などですね。ほかにもいろいろ模索しています。 編: アイテム課金で重要な商材である有料アイテムについては、いかがですか。 パク氏: 有料アイテムの良さが「Special Force」の人気のひとつです。どのようなアイテムをユーザーが喜ぶか、価格はいくらが妥当かといったデータは、十分に持っているので自信があります。アイテム課金で大事なのは、有料アイテムによってバランスが壊れないように調整することです。 編: 客単価についてはいくらぐらいを想定していますか? パク氏: それについてはお答えできません。 編: 日本では、アイテム課金制のオンラインゲームに対して、実は遊び込むと月額課金より遙かに高額になる事実が広まってきて、一種の反発感のようなものがあります。国内メーカーでは、月額課金への回帰のような動きもあります。そうした中で、Neowiz Japanが今後どのようなポリシーでアイテム課金を行なうのかを伺いたいんですね。 パク氏: 私はアイテム課金に対して、あくまで選択肢のひとつという考え方を取っています。たくさんお金を払わないと遊べないという風にはしたくありません。韓国では、適正な価格は学生の小遣いの半額ぐらいだといつも言っていました。現在だいたい10万ウォン(約1万3,000円)ぐらいなので、5万ウォン(約6,500円)ぐらいが適正だと考えています。 編: では、日本でもそのぐらいだろうと? パク氏: いえ、そうではありません。アイテム課金で、プレーヤー全員が5万ウォンを払っているわけではないのです。実際に払っているのは10%ぐらいですから、そう考えると、平均客単価は5,000ウォン(650円)ぐらいではないでしょうか? 編: 日本では巨大なコンシューマゲーム市場が存在しますが、この市場とどのように向き合っていくつもりですか? パク氏: これまでに日本のメーカーが培ってきた豊富なIPがオンライン化されていくのではないかと思っています。その部分で、我々としてもお手伝いすることができればと考えています。 編: それは、たとえば「ドラゴンクエストオンライン」のような、そういう動きをNeowiz Japanとして共同で取り組んでいきたいという理解でいいですか? パク氏: そうですね。Neowizでは、EAと共同で「FIFA Online」を開発しましたし、日本でも同じようなコラボレーションができればと考えています。 編: その水面下の交渉がパク社長の主業務のひとつだと? パク氏: そうなります。これはあくまで構想で、いま具体的な話が進んでいるということではありません。 編: 日本産のコンシューマゲームでは、どのようなゲームが好きですか? パク氏: 最近だとWiiに夢中です。テニス(「Wii Sports」)がとても楽しいです。ほかにもゲームボーイは大好きですし、RPGだと「ファイナルファンタジー」シリーズが好きですね。 編: 今後の具体的な動きの内容とスケジュールを教えてください。 パク氏: 2007年の上半期に予定している、新規タイトルの契約発表が最初の動きになるのではないかと思います。 編: 日本のオンラインゲームファンに対してメッセージをお願いします。 パク氏: Neowiz Japanは、韓国のゲームを配信する会社ではなく、日本のゲームを配信する日本の会社だと見て貰えるように努力していきます。 編: 日本市場に旋風を巻き起こしてくれることを期待しています。ありがとうございました。 (C) 2002-2007 Neowiz Japan Corporation., All rights reserved.
□Neowiz Japanのホームページ (2007年4月16日) [Reported by 中村聖司 Photo by 石田賀津男]
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