東京ゲームショウ2006レポート

　今回がTGS初出展となるNeoWiz Japanは11月にクローズドβテストを開始する予定のMMORPG「モナトエスプリ」を中心に、正式サービス中のMMORPG「デカロン」、オンラインリズムアクションゲーム「R2BEAT」を出展した。

　さらに日本での展開は未定であるが、韓国NeoWizがElectronic Artsと共同開発した「FIFA Online」を参考出展という形で出展した。韓国のオンラインゲームのセールス記録を次々と塗り替えているというタイトルなだけに、日本での展開にも期待したい。今回は、「モナトエスプリ」の概要とブースの様子、そして「モナトエスプリ」日本語版のチームマネージャーを務めるパク ジェイフン氏のコメントを紹介したい。

■　プレーヤーごとに異なるストーリーが展開する「モナトエスプリ」

「モナトエスプリ」日本語版のチームマネージャーを務めるパク ジェイフン氏。コメントの端々から本作へ向ける強い思いが伝わってくる

ブースでは多くの試遊台を設置、来場者にアピールしていた

プレーヤーは最終的に神のような力を持つようになるという「モナトエスプリ」。どんなゲーム世界が展開するか興味をそそられる

　「モナトエスプリ」は現在、韓国でクローズドβテスト中のMMORPGである。ゲームは人々の夢が集まった「絶対の善の世界」で展開する。この世界は全ての良きものだけが存在し、夢を忘れた人々に夢を戻してくれるというクリスタルがこの世界を支えている。

　この世界に住む人々はクリスタルが月の力を借り、この世界へ導いてきた人々だ。彼らの背中には「夢の羽」が輝いているため、「バーティアン」と呼ばれている。平和だったこの夢の世界に、現在、危機が迫っている。どこからか「悪夢」が入り込み、この善の世界を侵そうとしているのだ。プレーヤーはバーディアンとして悪夢の原因を調査すべく、冒険を開始することになる。

　本作はオーソドックスな韓国MMORPGから脱却しようというベクトルをまず「ストーリー」に求めた。モナトエスプリという名の夢の世界は、西洋風なオブジェクト、東洋風なオブジェクトが入り交じり、幻想的な雰囲気を持っている。建物やモンスターはデザイナーがさまざまなアイデアを盛り込んでいて、バーディアンの羽や、世界との関わりなどにも細かい設定がされていて、ストーリーに深く関わってくる。厚みのある世界観が生み出すストーリーは、非常に濃密なものになっている。

　ゲームの展開もユニークだ。本作のキャラクタは「フォーチュンシステム」に影響を受ける。このシステムはキャラクタの作成時に入力した生年月日や設定する星座によって固有の運命が設定され、さらに、ログイン時に選択するタロットカードによって、狩りのダメージ率などが変わるといった変化がもたらされる。

　この「運勢」によりクエストの展開も変わってくる。プレーヤーの運勢や選んだタロットカードによって発生するクエストが変わる。プレーヤーによってクエストの発生が異なり、冒険の道筋が変化する。プレーヤーがそのクエスト履歴を参照したとき、他のプレーヤーとはまったく違うものとなっていることを発見するだろう。

　キャラクタの生年月日がゲームに影響するのは「飛天オンライン」の風水システムを、毎日のゲーム内容が変化するのは「マビノギ」の曜日システムを思わせる。しかし、「フォーチュンシステム」はクエストの展開にも影響をおよぼす。プレーヤー達の情報交換は楽しくなるし、何よりも自分のキャラクタに厚みを与えてくれるシステムといえるだろう。

　「モナトエスプリ」には更にユニークなシステムが実装される予定だ。まず1つ目が「ダンジョンメイキング」である。高レベルプレーヤーはダンジョンやクエストをクリアすることでダンジョンの「パーツ」を入手できる。プレーヤーはこれを組み合わせることで他プレーヤーが入ることができるダンジョンを作成できるのだ。ダンジョンはPvPのフィールドにしたり、トラップを仕掛けたり、多くのプレーヤーがゴールを目指す「コース」を作成したりと、さまざまな要素、目的を設定できる。

　また、制作者が冒険で手に入れたレアアイテムを「最終目的」としてダンジョンの最奥部に設定することもできる。ダンジョンは入場料が設定でき、制作者に還元される。多くのプレーヤーを招き入れるダンジョンを所有できるという要素は、「コルムオンライン」を思わせるが、カスタマイズ要素を盛り込むことで、楽しさは大きく膨らむだろう。

　「多くのMMORPGではキャラクタを育ててしまうとすることがなくなってしまう。レベルが高くなってしまっているため、初心者や中級者とふれあう機会もなくない。ダンジョンメイキングは、そういった高レベルプレーヤーが後輩に対して何か働きかけができないか、ということを考えて作ったシステムです」と、パク氏は語る。

　もう1つ、「ハウジングシステム」の実装も予定している。一定のレベルに達し、クエストをこなしたプレーヤーは特別な土地に一軒の家を持つことができる。家は冒険や商店で得た家具でカスタマイズ可能だ。家には庭も設定されていて、そこも飾りたてることができるという。家が建てられる土地は無限の広さがあり、土地を奪い合うというような心配はない。また、友達の家には一瞬でテレポートできるようにしたりと、距離に対する不満なども解消する予定だ。

　「モナトエスプリ」は正式サービス時にはアイテム課金を予定している。ダンジョンシステムやはう寝具に使うパーツの一部はアイテム課金で販売する予定だ。現在の所この二つのシステムはまだまだ構想段階だが、正式サービス時にはある程度形にしたいとのこと。2007年初頭を目指して開発を進めているという。

　パク氏は「PvPやパーティープレイといった既存の要素と共に、友達を家に呼んだり、自分で作ったダンジョンを人に楽しんでもらうといった“和やかなコミュニティ”作りを目指しています。これは『モナトエスプリ』が日本市場を強く意識しているからです。かわいらしい世界観や高いストーリー性などにも“日本向け”という方向性を意識しています。課金アイテムのラインナップも、オシャレが楽しめるような要素も取り入れていきたいと思っています」と語る。対戦要素としては「バトルコロシアム」という要素を取り入れる予定だという。

　最後にパク氏は「現在このゲームはまだまだ未実装な部分が多いですが、日本のユーザーに向けて機能を充実させていく予定です。是非楽しみにしてください」とメッセージをくれた。

　正直なところ、現時点で「モナトエスプリ」がどのような作品になっていくかは判断はしづらい。しかし、本作を説明するときパク氏が最初に言った言葉は「今までの韓国のMMORPGと違うところは……」という言葉から説明を始めたことが強く印象に残った。韓国のゲームの発表会ではあまり聞けない言葉であり、この一言からもパク氏をはじめとしたスタッフの「気合い」を感じた。新しい動きをもたらそう、新しい楽しさをユーザーに提供しようというスタッフの「想い」は、応援したい。

【モナトエスプリ】
上が韓国版スクリーンショット、下が試遊台の写真である。メッセージなどはすでに日本語化されている。11月のクローズドβテスト開始に向けてローカライズは順調に行なわれているようだ
コンセプトアート。明るくのどかな風景は、日本のユーザーを強く意識したという

【FIFA Online】
「FIFA Online」も注目したいタイトルだ。Electronic Artsと共同開発された本作は、コンシューマゲームのゲーム性をオンライン化したタイトルである。韓国以上に海外のチームに興味を持ち、サッカーを好むユーザーにとって非常に魅力的な作品である。今回出展された試遊台は韓国語バージョンであったにもかかわらず、多くのユーザーがプレイしていた。こちらの動向も注目したい。

「モナトエスプリ」とは違う、ハードな世界観を押し出す「デカロン」	オンラインリズムアクションゲーム「R2BEAT」は女性ユーザーにも人気が高かった	イベントではアイドルも登場した。写真は石坂ちなみさん

□CESAのホームページ
http://www.cesa.or.jp/
□「東京ゲームショウ2006」のページ
http://tgs.cesa.or.jp/
□NeoWiz Japanのホームページ
http://www.neowiz.co.jp/

(2006年9月24日)

[Reported by 勝田哲也]