|
会場:ベルサール神田
「真・三國無双BB」は、正式サービスを開始してまだ3カ月ほどであり、今回提示されたデータは、「オンラインゲームにおける従量課金の傾向と対策」を示すには不十分なデータだが、アンケートから伺えるユーザーニーズと、実際の利用状況に微妙なズレがあったり、ARPU(平均顧客単価)が意外に低い実態が浮き彫りになるなど、さまざまな意味で収穫の多いセッションとなった。
■ アンケートでは、「無双」ファンへのリーチが不十分な実情が浮き彫りに
従量課金制については、「無双軍檄」と呼ばれるゲーム内チケットを、あらかじめ一定数まとめ買いし、「激突」、「特務」というバトルフィールドでのゲームプレイに1枚ずつ消費するというスタイルを採用している。無双軍檄の価格は、35円から26.25円。値幅があるのは、まとめ買いする数が多いほどボーナスが付与されるためだ。 ELEVEN-UPでは、「無双軍檄」の購入、消費を管理するために「ポインちゃん」と名付けられたゲームポイント管理システムを独自で開発している。このシステムは、ネットカフェにも応用可能で、また、他タイトルにも転用可能な汎用性を備えている。ELEVEN-UPは、「真・三國無双BB」の展開を通じて、従量課金型オンラインゲームのノウハウを備えたオンラインゲームパブリッシャーになっている。 「真・三國無双BB」のビジネスモデルは、厳密には月額制+従量制のハイブリッド課金を採用しているが、昨年末に導入された大型アップデート「Evolution1」の公開を記念して3月31日まで月額課金が無料となっている。12月も「桃園の誓い」キャンペーンで無料で、実質的にはずっと無料を維持している。 さて、栗原氏は、「真・三國無双BB」のビジネス概要を紹介した後、さっそくユーザーアンケートの紹介に移った。対象としたアンケートは、2006年10月に実施されたプレオープンから2月7日まで5回に渡って行なわれたユーザーアンケート。 講演では、年齢、性別、オンラインゲーム体験、ゲームの評価、ISP開放の是非、希望月額料金のアンケート結果が公開された。年齢、性別については、PCゲーマー層とほぼ合致したものの、オンラインゲーム体験の有無については、実に1/3がオンラインゲーム初体験だったのには驚かされた。母数の少なさゆえという事情も加味されていそうな数字だが、予想以上に“新しい層の動き”を伺わせる。 ゲームの評価については、オンラインゲーム経験者と未経験者で、評価のポイントに差が出ていたのが興味深かった。未経験者はグラフィックスが評価に繋がりやすく、経験者は操作性や特務(クエスト)、サウンドを重視していた。 思わず苦笑してしまったのが、「Yahoo! BB 以外の方とも『真・三國無双BB』をプレイしたいですか?」という設問。「真・三國無双BB」未経験者、休止ユーザーの8割、現役ユーザーに至っては9割がイエスと答えていたのだ。栗原氏は「ここまで要望が多いので前向きに検討中です」ということだが、これはむしろソフトバンクBBから了解を取るための布石ではないかという気がする。
希望月額料金は500円から1,500円が中心。これについて栗原氏は「ユーザーさんはなかなかお金を払ってくれたがらない」と嘆息して見せた。このデータから見えてくるシナリオとしては、ISP限定では対象ユーザーが限られる以上、ビジネスとして成立させるためには、ARPUを高めるしかない。しかし、同作はコーエーとの共同事業であり、ARPUを高めるための特効薬となるアイテム課金への移行については、コーエーのポリシーとして衝突してしまうため簡単には実現できない。このジレンマをどう解決するか、といったところだろうか。アンケート結果を見ていく限りでは、アイテム課金制はうま味よりも、シビアさが伝わってくる結果となった。
■ ARPUは2,500円前後、1日2時間未満のカジュアルプレイが一般的
まず、ID登録状況の推移では、通常のMMORPGに比べて初動がゆっくりで、募集開始そのものにはあまり反応を示さず、運営開始に敏感に反応を示した状況が浮き彫りにされた。これは「無双」ファンを含む非オンラインゲームユーザーの多さを伺わせる動きだ。 続いて、気になる無双軍檄の消費量について。直近の2007年1月のデータを見ると、平均で1月あたりに109.7の無双軍檄を購入し、90.2を消費している。1日3回前後プレイしている計算になり、平均ARPUは2,256円となる。これは1,500円から2,000円前後の月額課金よりも高く、4,000円~5,000円で推移するアイテム課金よりも安い数字だ。従量課金システムに初期投資をしている分、実質的には月額課金よりも低いと見て良い。予想以上に厳しい数字だ。 平均プレイ日数は1月あたり17日程度。1月当たりの消費数を90とすると、1日あたりの平均消費量は5.3回。1回12分計算で、1時間弱、街での活動を含めて1日あたり2時間前後をプレイに費やしている計算になる。やりたいときにサッと遊ぶという、コンセプト通りのプレイスタイルが一般的なようだ。 最後に栗原氏は、「20%のユーザーが、売り上げの8割を生み出す」というパレードの法則が「真・三國無双BB」に適用できるかどうかを検証したデータを示した。示されたデータは一目瞭然で、上位20%に位置するプレーヤーが、実に8割の無双軍檄を消費していた。上位20%のユーザーの無双軍檄の消費量は200程度。ARPUで換算しても5,000円程度となり、ユーザーにとっては従量制でありながら極めてコストパフォーマンスの良いゲームであることがわかる。 栗原氏としては、今後のビジネス的な展開について、ISP開放やネットカフェ展開の強化によってユーザーを増やす道を模索する一方で、ARPUを高める努力も継続していきたいという。これは単純に値上げという意味ではなく、ユーザーが納得できる形での新たな機会創出を目指す考えだ。 その具体的なアプローチについては「現時点では発表できない」とのことだったが、ARPU向上に関して今後考えられるシナリオとしては、ネットカフェ展開が遅々として進まない原因として、ネットカフェ側がネットカフェシステムの導入に消極的なことが上げられる。この仕組みを変えてもっとネットカフェ側が負担が少ないシステムを構築する。 あるいは、現行最高水準の3Dグラフィックスを活かした、華美なアイテムを販売するアイテム課金制の導入。仮にアイテム課金を導入する場合、キャラクタの性能とは完全に切り離すため、韓国産のMMORPGで採用されているような“ファッションアイテム”のような別枠での取り扱いが望ましい。
「真・三國無双BB」は、今年の最大の目標として海外展開を挙げているが、まだまだ国内でやるべき施策が残っているように思える。「真・三國無双BB」のメジャー化を実現するためには「無双」ファンの加入は欠かせない。ぜひ彼らが喜ぶような大胆なチャレンジに期待したいところだ。
□ブロードバンド推進協議会のホームページ (2006年2月23日) [Reported by 中村聖司]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|