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会場:コーエー本社
「三國志 Online」のプロデューサーを務める上野彰三氏は、コーエーのモバイル部門から、当時立ち上がったばかりのオンラインゲーム部門に転じ、2002年に「三國志 Battlefield」、2004年には「大航海時代 Online」、そして2007年には「三國志 Online」と、一貫して“オンラインゲーム畑”を歩んできている異色の人材である。 今回は、世界に先駆けて日本で実施されるクローズドβテストの陣頭指揮を執るために日本に一時帰国している上野氏に、同作の今後の展開について話を伺ってみた。常夏のシンガポールに2年も赴任してることからさぞかし真っ黒になっているのではと思いきや、意外にも変わりなく、理由を聞くと「熱すぎて日中は外に出られないんです(笑)」とのことだった。
■ 上野氏のオンラインゲーム観「ネットワークゲームを作るのはそんなに簡単じゃない」
上野彰三氏: プレイ経験はトータルで5本くらいですね。現在でももちろんプレイしていますが、最近は帰るのが11時過ぎなので2時間も繋げられていないです。それでも必ず毎日入るようにはしています。 編: 上野さんはネットワークゲームの開発としては、「三國志 Battlefield」を皮切りに、「大航海時代 Online」、そして「三國志 Online」が3作目と言うことになりますが、過去の経験を踏まえた上で、今回どのようなポリシーをお持ちですか。 上野氏: 「ネットワークゲームを作るのはそんなに簡単じゃないんだよ」というところです(笑)。もうこれで安心、というのがないのがネットワークゲームかと思います。1月24日からクローズドβテストが始まりますが、やれることはすべてやったから安心して寝れるかというと全然そういうことはなくて、万事を尽くしていても何があるのかわからないのがネットワークゲームだと。何年サービスをしていてもいついかなる時にサーバーダウンがあるかわからない。常に日頃の備えや心構えをしておかなくてはいけないのが、ネットワークゲームだと思っています。 編: つまり、今回も3作目とはいえ「油断せず初心に戻って」、ということなんでしょうか。 上野氏: そうですね。常に新人のつもりでやらなくてはいけないのがネットワークゲームです。今回また色々新しい試みを行なっていますので、やはり何が起こるかわからない。これが心配を乗り越えてワクワクになれれば幸せになれると思うんですけど、なかなかそこまでの達観はできません(笑)。 編: 3作目と言うことでそれなりの経験も積まれてきたわけですが、プロデューサーとしての上野さんの強み、個性というのはどのあたりだと自覚していますか。 上野氏: 自分で意識していないので難しいですが……。ネットワークゲームに限らず私はプロデューサーのタイプとしては、アイデアをガンガン出してこれが面白い、とやっていくタイプではなくて、みんなの意見を聞いた上で、こういうようになっていこう、という流れを作る方向性でやっていきたいと思っています。 もちろん自分の意見もありますが。ただ私が最初に意見を出してしまうとみんなが意見を出しづらくなってしまいます。なので、なるべく抑えるようにしている自覚はあるかなと思っています。強いて言えば“調整タイプ”を目指していますが、一番難しいのかもしれません。 編: 日本を離れて2年あまりが経過した上野さんから見て、日本のオンラインゲーム市場をどのように感じていますか? 上野氏: 日本のオンラインゲームは国を意識してしまうのが少し悲しいですね。例えば欧米系のとてもいいMMORPGがあっても、日本の場合は言語という特別な参入障壁があったりするのは残念で、とても面白いゲームなのに日本ではプレイできない状況があったりします。シンガポールは英語圏なので欧米のゲームが入ってきますし、中国系でもあるので中国のゲームもプレイできます。シンガポールでは自由に選べるのですが、日本では、一般的には日本語にローカライズされたものしかプレイできない。それが非常にもったいないですね。 これはオンラインゲームに限らないのですが、私も英語版のRPGをプレイして苦労した記憶もあります。せっかくインターネットで繋がっているのだから、もっと垣根が取り払われてくれればと思います。 編: 上野さんはこの状況をどう変えていくおつもりでしょうか? 上野氏: 非常に難しい問題ですが、これが絶対良いという方法もないんですよね。たとえば、あらゆる国から接続できるワールドサーバーを作ったとしてもそれが良いのかは疑問です。ワールドサーバーとその国ならではのサーバーのふたつがあっても良いのじゃないかと思いますし。「三國志 Online」に関しては、まずは日本でヒットしなくては他国への展開も見えてこないわけですが。 編: まずは日本から、ということですね。上野さんとしては日本の次はどのエリアを狙っているのでしょうか。 上野氏: ゲームとしては全世界対応を指向していますが、エリアとしてはまずは東アジアですね。私個人としてはどこの国ででもやりたい。「三國志 Online」は最終的にはワールドワイドを目指しています。日本、東アジア、更に別のエリアという形でどんどん広げていきたいですね。
■ 常時三国鼎立が続く「三國志 Online」の世界
上野氏: 「乱世に己の義を示せ」ですね。プレーヤーの皆さんがやりたいことをやっていく上で、他の人とコミュニケーションを取っていく上で、自分がこうしたいというだけではなく、他人がしたいと思っていることを、しっかり感じて欲しいです。これはオフラインゲームでは絶対体験できないことで、他人がどうしたいかを感じた上で三国志の乱世の中で、自分自身の表現と、他人の表現を感じ取って欲しいと思います。 義というと日本人はどうしても“仁義”となってしまいがちですが、三国志の武将にはもっと様々な義があったんじゃないかと思っています。関羽と張飛の兄弟愛とか、曹操を支えた夏一族とか、乱世を生き抜いたカクとか、孫家に仕えた人達とか、皆それぞれ自分の信じる義の下に生きてきたんだろうと思います。それらを全体的な表現として「乱世に己の義を示せ」という言葉に集約しました。 編: その世界観は三国志と古代中国のいいとこ取りとのことですが、もう少し細かく教えていただきますか。 上野氏: 基本的には三国志の世界観をベースに、その当時の人が信じていたであろう幻想的なものを入れてあります。今なら日本人は日本神話の話は「神話」だと思いますが、昔は幻想的なものが実在すると信じていた人達はいっぱいいるわけです。三国志の時代の前にあった地方の伝承なども取り込んでいきたいですね。 編: 神話的な要素について、もう少し具体的に教えてください。 上野氏: その部分に関してはまだお話しできない部分も多いのですが、ダンジョンの奥に牛魔王がいたり、ダンジョンは神話ベースの怪物が数多く出てきます。西遊記や封神演義といった特定の物語ではなく、全部ひっくるめて取り込むという感じです。中国神話にはゲームのアイディアになる部分がいっぱいあるので興味深いです。 編: 「大航海時代 Online」や「信長の野望 Online」にも神話の要素は取り入れられていますのである程度想像は付きますが、使い方といった点で「三國志 Online」ならではの要素には何があるのでしょうか。 上野氏: 聖獣が合戦に絡んで来るというのは大きいです。「信長の野望 Online」は合戦と冒険ははっきり分かれていますが、今回は冒険によって入手できる聖獣が絡んでくるほか、生産も関係してきます。つまり合戦に日頃の活動が影響を及ぼしてくるようになっています。 編: 漢王朝などはどのような扱いになりますか? 上野氏: ゲーム中に漢王朝は存在します。「三國志 Online」は年代自体は動かないという設定です。世界全体で「三国志の時代」という少し長い時間をテーマにしていて、180年から240年くらいを見ながらピックアップしているような形です。 編: 君主はどうなるのでしょうか。 上野氏: その時代から妥当な者を選んでいきます。劉備、曹操、そして孫権です。親の孫堅ではありません。ここは非常に悩みました。親の孫堅では本拠地が「呉」の位置ではなくなってしまいます。そして「三国鼎立」だと君主は息子(孫権)の方だなと。しかし弟孫権にすると、人気のある兄孫策と父孫堅が出せない。そういったジレンマもあって三国志の「時代」を丸ごと舞台にしよう、ということになったのです。ですから親の孫堅と兄の孫策も武将として登場します。都合が良いようですが、プレーヤーの皆さんに一番楽しんでいただける設定を狙っています。 編: ゲーム開始時でいきなり三国鼎立しているのでしょうか。 上野氏: そうです。 編: そうなると袁紹や、袁術、董卓といった三国志における重要な脇役たちの存在はどうなるのでしょう? 上野氏: 勢力としては存在しません。現状、ゲーム中にも出てきませんが、随時色々考えていかなくてはいけないところですね。董卓や呂布は出し方が想像していただきやすいと思います。小勢力の君主も出したいと思いますが、合戦の時の勢力としては出すのは難しいので工夫していきたいですね。 編: 「真・三國無双BB」では時代がかっちり設定されていることもあって、比較的小さな勢力も出てきますが、「三國志 Online」は最初から3勢力と言うことですね。これが2勢力、そして1勢力になることはあるのでしょうか? 上野氏: 勢力の滅亡はありません。今回の合戦、勢力の仕組みとしては大きなシーズンを現実世界の「1年」とみて、その中で3つの国で戦い合って、一番勝ちを多く集めたところが「制覇」という言い方をしてその年の三国統一制覇となります。ただ1年間ずっと戦争をしている訳じゃなくて、いくつかの時期にまとめて戦ってもらい、インターバルも用意する予定です。 編: その1年というのは現実の1年周期ということになるのでしょうか。 上野氏: そうです。合戦シーズンはインターバルを挟みつつ1年のうちの何カ月かということになると思います。リアルな人間の生きているペースってやはり1年という単位だと思うんです。ゴールデンウィークがあって、夏休みがあってというように、現実の人間の生活と合わせたいと思ってます。 編: お休みの期間と合戦の期間は交互に来るわけですか。 上野氏: 細かいスケジュールはまだ決めていないのですが、それに近いものになるでしょうね。 編: 「三國志 Online」は、対人戦(RvR)がメインテーマになっていますが、日本では対人戦を好まないユーザーもいます。そういったユーザーさんに対してはどういったゲーム性をアピールをしていきますか? 上野氏: 合戦はかなり興味深いコンテンツにはなると思います。本来はプレーヤーの皆さん全員に踏み込んでもらうというのが我々の1つの目標ですが、それをやらなくても三国志の世界で冒険をする、ということはできるようにしていきます。合戦だけでなく、冒険や、生産や商売をやっていければいいかなと思っています。合戦しているプレーヤーのために武器や防具を作るプレーヤーもいれば、ダンジョンをクリアしてアイテムを売るようなプレーヤーもいてくれればいいと思います。 編: 「三國志 Online」のレベル上げの風景というのはどのようなものを想定していますか。 上野氏: 1人で狩っていくのもありですし、みんなでフィールドを駆け回ったり、ダンジョンにいったり……。クエストでも経験値を入手できます。リンクする敵でなければ1人で狩りを行なうことも可能です。 編: どのような敵が登場するのでしょうか。 上野氏: 最初は畑を荒らすイノシシや鹿です。ちょっと離れると盗賊なども登場します。荊州は動物系の敵が多いですね。ダンジョンである石林には大きなサソリなどの他にも幻想的なモンスターが増えて来ます。 編: ダンジョンに行く目的はなんでしょう? 上野氏: クローズドβテストではNPCに話しかけて飛ばされる、という形になります。プレーヤーの目的はボス狩りになります。基本的にはストーリーの背景があって、討伐しに行く、という形になります。 編: シナリオやストーリーはどういった形でプレーヤーに提示されていきますか。 上野氏: NPC達と会話を重ねることでゲームの背景が見えてきます。バックボーンとしてのストーリーがあって、動乱の世界で、陰謀めいたものが進行していて……といった感じになります。 編: 三国鼎立でガンガンやりつつ、その裏で“闇の魔王にも立ち向かっていく”というような? 上野氏: 魔王かどうかはまだ言えませんが。解決していかなくてはいけない問題があります。それに向けてプレーヤーは進んでいくことになります。
■ 6つの武器で区分けされる独創的なジョブデザインを採用した理由
上野氏: 基本的には6つの武器タイプとそれぞれのレベルがあります。これのどれかを伸ばすか、すべてを伸ばすかは遊び方次第ですが、一番高い能力レベルにキャラクタレベルが設定されます。例えば最初に両手系武器がレベル10になればキャラクタのレベルも10になる。 ここでちょっと趣向を変えて弓に持ちかえて投射系武器のレベルを上げると、キャラクタのレベルは10のまま、投射レベルが1から上がっていき、投射レベルが11以上になればキャラクタのレベルも11になります。レベルに応じて変わるのは今のところは「生命」と「気力」です。 編: 武器が“ジョブ”的な意味合いを兼ね備えているのは非常に独創的ですが、なぜこのようなシステムを採用したのでしょうか? 上野氏: 職業による行動の縛りがプレーヤーとしてやりづらいと感じたんです。職が決まっていた方がすんなりとゲームの世界に入れるし、プレーヤーとしてもやりやすいのですが、バランスを取るときに特定の職業だけ強くなりすぎたりということが起きやすい。また、特定の職業が足りないためにパーティーが組めないということがよくある。それならばセカンド、サードキャラクタでやればいいという話もあるのですが、それにしてもプレーヤーはログアウトして別キャラでログインしなくてはいけない。いざログインしたらキャラクタは全然別なところにいたりとか。それは「三國志 Online」のゲームシステムとマッチしないと思いました。それならばいっそのこと同じキャラクタで切り替えられればどうだろう、と考えたわけです。 最大の懸念はスーパーマンができあがってしまうことですが、その時だけはある特定の能力だけが強いということにすればいいじゃないか、ということで一番結びつけやすかったのが「武器」だったのです。 編: 今回6種類の武器があり、いわば6種類のロールがあるわけですが、これは順次増えていくと考えていいのでしょうか? 上野氏: ロールの数を増やすか、スキルを増やすかは難しい問題だと思っています。職を増やすとその時期だけみんな同じ職業になってしまいがちですが、「三國志 Online」では武器がひと種類増えるだけなので皆が同じ武器を使う、というわけではないでしょうから入れやすいとは思いますね。ただ、現在はスキルを増やしていく方に行くと思います。 スキルシステムも今後はアイデアを練り込んでいきたいなと思っています。現在はスキルを覚えていくだけのシステムなのですが、正式サービスまでにもう一捻りできたらいいなと思っています。 編: 例えば両手系武器を例に取りますと、両手系武器にも色々なグレードがあるのでしょうか? 上野氏: 武器にはグレードがあり、更に同じ系統でも両手剣と両手斧、といった種類があります。例えばリーチが違ったり、攻撃スピードが違ったり、攻撃力や見た目が違います。 編: 「三國志 Online」のバトルシステムは、リアルタイムで、アクション性は控え目といった印象ですね。 上野氏: そうですね。「三國志 Online」のバトルはアクション性を追求したものではありません。ただし、ただクリックするだけではなくて、どのタイミングでスキルを使うかが大事になってきます。スキルのタイミングはアクションゲームのようにシビアにするのではなくもう少しゆったりとした間隔を取りながらやっていきたいと思います。 編: そうなると「EverQuest」や「EverQuest2」、「ファイナルファンタジーXI」のような欧米スタイルのパーティープレイをイメージしてしまいますが、実際どのようなゲームを参考にしたんですか? 上野氏: 何と比較して、というと難しいのですが、参考にしたゲームとしては北米やアジアで人気のあるタイトルや、もちろん「信長の野望Online」などの自社タイトルもです。開発しているスタッフもどのMMORPGをやっていたかでバランスの感覚など基本的な意見が違うんですね。そこが難しいというか、面白い部分でした。 編: 上野さん自身はどのようなバランスに仕上げたいと思われていますか。 上野氏: 極度にストレスがかかるバトルはダメだと思うのですが、全くかからないのも良くないと思うのです。「ちょい堅め」くらいに持って行ければ一番良いと思うのですけど、これが一番難しいところなので、慎重に調整します。
■ 有名武将がプレーヤーのために戦場で暴れ回る!?
上野氏: 個人の生産に関しては、お金を集めるために売るという作業的な扱いより、作りたいものを作り、売るために生産する楽しみのあるものを目指していますね。国家レベルの内政的な要素については、今の段階では明確にお答えできません。色々組み込もうと検討中ですのでご期待ください。 編: プレーヤーが国家に所属した際は、どのような制約、縛りがあるのですか? 上野氏: 縛りはプレイ上はありませんが、1アカウント内で2つ以上の勢力にまたがって所属することはできません。アカウントで姓名の姓が同じになります。「一族」で勢力に所属するというイメージですね。 編: 仕えるのは勢力なのでしょうか、武将なのでしょうか。 上野氏: 仕官自身は勢力に対して行ないます。そして自分の好きな武将に仕えていく。最初の段階で武将は1つの勢力につき7人ずつ登場する予定です。クローズドβテストではまだそこまで実装していません。武将自身は何人かお披露目で出てくるだけです。 編: 好きな武将、例えば関羽に仕えるメリットにはどのようなものがあるんですか? 上野氏: 関羽を呼び出せるということに尽きますが、関羽だから特別に何かということは今のところないです。 編: つまり、合戦で呼び出せる武将は、自分が仕官している武将と言うことになるわけですか? 上野氏: 基本的にそうなりますが、今後変えるかもしれません。好きな武将と仕える武将が違う場合もありますし、魏に仕えているけど呉の武将がいい、といったこともありますので。もちろん合戦で敵の武将を呼び出すわけにはいきませんが、ここら辺はよく考えなくてはいけないですね。後は、関羽に仕える人はそれでコミュニティになってくれるのではと思います。関羽のファン同士で「関羽のここがいいよね」などと話し合ったりして欲しいですね。 成都を歩いていたらふらっと出会ったりとか、合戦の時に力強い援軍として現われてくれたりとか……今のところ主に合戦時でしょうね。ただ、「合戦だけですか?」という声はあちこちから聞こえてきますので、考慮しなくてはいけないですね。 編: 武将を呼ぶための条件は? 上野氏: コーエーならではのパラメータである「親密度」が関わってきます。どうやって上げていくかは実際にプレイして調べていただきたいのですが、ひたすら同じことを繰り返すことで上げていく、というのはやりたくないです。 編: 例えば関羽がクエストを出して、それを解くことで親密度が上がる、というようなイメージですか? 上野氏: そうですね、そういったアプローチもあると思います。この他にも「会う」というのが1つのキーワードになります。しかし常に特定の場所にいるわけではないし、他のプレーヤーに情報を聞いてもすでにいなくなっている場合もあります。出会えると親密度が上がりますが、なかなか出会えないという。いきなり酒屋にはいると張飛が飲んだくれているのもありかなとは思います。 編: 「三國志」シリーズだと、孔明、司馬懿などはシリーズによってはとんでもない能力を持っていたりしました。「三國志 Online」では知力に秀でた軍師系の武将の能力はどの表現するつもりですか? 上野氏: やはり合戦では1人の武将として登場し、プレーヤーを助けてくれるのですが、どのように活躍するかはまだ言えません。ただあまり武将の影響力を強くすると呼んだもの勝ちになってしまうので、そこら辺は工夫していきます。基本的には武将の個性をそこに投射する形になります。ただ、孔明だから敵全員がスタン、とかいうのはさすがにまずいと思うのですが、孔明ならではというのは考えていきます。 編: ちょっとわからないのは、各都市、各エリアに武将がいてドラマティックな展開も起こると言うことですが、これをどうシステム的に再現するのかな、という部分です。例えば桃園の誓いのような、有名武将同士の邂逅はその場にいる1部のプレーヤーしか見れないのか、あるいは蜀に所属していると他勢力武将のイベントには巡り会うことができないのでしょうか? 上野氏: そういうことはありません。どこかに所属していても中国の各地を歩き回る事はできます。ですから蜀のプレーヤーでも魏や呉には行けます。キャラクタ判別上はどこかの勢力に所属したプレーヤーは勢力の旗を背負うことになります。でも、リアルで考えればそんなことはしてませんよね。基本的な考え方としては有名武将同士の出会いというより、1プレーヤーと武将の出会いに主眼を置いてます。
■ 数百人が入り乱れる合戦、攻城兵器や聖獣、有名武将なども登場
上野氏: 中国のマップをそのまま全て再現するとなるとおそらく開発に10年かかってしまうので特定の部分だけを切り出していきます。クローズドβテストでは、荊州と司隷の一部分を実装します。初心者村を中心とした荊州と、長安を中心とした司隷です。正式サービス時でβテストのエリアと各勢力の近辺といったところを予定しています。 編: いわゆる三国鼎立の形はできそうですが、中国マップを1枚マップで再現するわけではないのですよね? 上野氏: そうですね。ゾーニングしていく形になります。ダンジョンや街に行くときもエリアの切り替えはあります。 編: 合戦場とモンスターと戦うフィールドは別個に存在するのでしょうか。 上野氏: 別です。平時はそもそも合戦場に入ることすらできないという特別なフィールドになっています。特殊なインスタンスエリアという扱いです。 編: そこのキャパシティはどのくらいを考えていますか? 上野氏: 1インスタンスに最大数百ぐらいを考えています。最大でどこまで行けるのか、それをβテストで試したいと思っています。ただ実際700や800になってしまうと、プレイにならない。おそらく快適にプレイできるのは100から500ぐらいの間ですよね。実際50人プレーヤーがいたら味方に誰がいるか覚えきれないですから。 今回5人で1つの徒党、そして5個の徒党で連合となりますが、これでぎりぎりかなと思っています。人間が認識できる良いところの数字ではないかと思います。25人単位ならばまとまって話ができるかなという考え方です。 編: それでは「三國志 Online」の合戦は、数字的には100vs100の戦闘ということになるわけでしょうか? 上野氏: いえ、さすがに1つのインスタンスでは足りないと思うんです。ですから合戦場を複数個用意してそれぞれで勝敗を決める形になると思います。合戦の長さもどのくらいが適当かも考えています。オープンバトルは根を詰めるので結構疲労するんですよ。一応2時間を考えていますが、30分、45分という単位も考えています。 編: 発表会では巨大兵器や聖獣といった要素が紹介されましたが、これはどういった影響を及ぼすのでしょうか。 上野氏: 巨大兵器は作ったかいのある性能になっています。作るのに結構苦労するのですが、とても強い威力を持っています。しかし、巨大兵器が強すぎると対人プレイがつまらなくなってしまう。ここのバランス調整をしていかなくてはいけませんね。 編: 巨大兵器や聖獣はどういったケースで使用することを想定しているのでしょうか? 上野氏: 合戦場では、合戦の最中に砦などを作っていくので、衝車のような兵器はこれを壊すために使います。もちろん人の手でも壊すことはできますが。他にも投石機のようにプレーヤー達にダメージを与える巨大兵器もあります。 そして多くのプレーヤーを無差別になぎ倒すことができるのが聖獣となります。聖獣も非常にパワフルなので使い所と性能のバランシングが肝となります。合戦の度に絶対聖獣が必要だ、となってしまうのも成り立ちづらいし、あくまでも窮地に陥ったときの切り札、というような形でしょうか。 編: それは召喚条件を厳しくする、ということでしょうか。 上野氏: そうですね。しかし聖獣を召喚すれば勝ちということではありません。目標としては「あそこが聖獣を呼び出したぞ」といわれるようなところですね。「聖獣を呼び出して勝ったぞ」ではなく、あくまで呼び出したこと自体がすごいというくらいにしたいですね。しかし厳しすぎてもおもしろくないので、その当たりのバランスを試行錯誤しています。 編: 聖獣は個人に所属するのでしょうか、それとも勢力ですか? 上野氏: 今はまだ言えないですが、1人では呼び出せないので勢力に近いものになると思います。呼び出すためには何かを集める必要があるのですが、意図的にそれを集める訳ではなく、結果として集まったというくらいにしたいです。 聖獣は呼び出すことに成功してもプレーヤー達の意志で制御されるものではないので、聖獣の前に自分の味方がいたらまずいわけです。戦局を一変させる可能性はとても高いのですが、どうなるかはわからない。勝っているところが使うと逆に苦境に陥ってしまうかもしれないので、使い所が難しいかもしれません。 編: 一方、コントローラブルな巨大兵器はどのようなものになりますか。 上野氏: 砦と同じように戦場で組み立てる形になります。リソースを集めて作成します。クローズドβテストで入れていないのですが、この巨大兵器については合戦だけでなく普段の冒険とも絡んでくる要素を入れていきたいですね。
■ 上野プロデューサーの合戦ポリシー「中国制覇の報酬は“名誉”が重要」
上野氏: 現在の所死んだらバインドポイントで復活して主戦場まで走るという感じになっています。ここで人数の有利不利の調整をしようと思っています。合戦はしっかりゲームバランスを取っていきたいと考えています。 ただ勢力が3つのため、人数幅がそれほどでないだろうと思っています。どれかが多い場合は少ない2つが協力しますから。また、勢力が5や7あったりしたら、システムではフォローしきれないほどの人数差が開いてしまうと思います。 編: そうなるとずっと三国鼎立が継続されるようなイメージなのですね。合戦に勝利した際のメリットは何ですか? 上野氏: 能力的な増強ではなくて、名誉的なものにしたいと思います。勝った翌年に大きなメリットがある、というのは私の中ではちょっと違うかなと思っています。去年の結果は去年の結果として今年は新しい気持ちでやって欲しい。ただ去年優勝したのはみんながわかっている、というのは必要だと思っています。 編: 今お伺いしたお話だと合戦を継続させる部分のモチベーションがちょっと弱いかな、という気もしますね。MMORPGのPvPは、自分のお城が持てますよ、ギルド専用のダンジョンが利用できますよ、施設の利用に税金を取れますよ、といった大きなご褒美がモチベーションになってきた所があると思うんですよね。 上野氏: 自分たちが所属した勢力を勝たせるというのは、一概に豪華なご褒美だけではないと思っています。大きな報酬があるから合戦に出る、ではなくて、合戦自体を楽しんで欲しい。その結果あなた達が勝った、ということにならないと、獲物のために頑張ってくださいというのでは逆にモチベーションが続かないんじゃないかなと考えています。 編: それを実現させるためにはバトルを本当に面白くしないといけないですね。 上野氏: そういうことになると思います。それを目指さなければ作っている意味がないと思います。そのために今回のテストなどを通じて、どんどん意見を出していただいて、ガンガン改良していかなければいけないと思っています。 編: 出奔して他の勢力に所属するというのはできますか? 上野氏: 可能ですが、もう勝ちそうだからみんなその勢力に行く、となってしまったらゲームとして成り立たないので、そこは考えている部分があります。。 編: 合戦の大きな要素としては巨大兵器、砦、そして聖獣がありますが、他にどのような要素がありますか? 上野氏: あとは複数の徒党で構成できる「連合」と、それに所属する連合の「戦法」ですね。徒党を1単位として役割を持つことができます。 編: 例えばこの徒党は弓隊になる、といった形でしょうか。 上野氏: そうですね。全員に練丹系武器を装備させた純粋なヒーラー部隊とか、1つの徒党でバランスを取った編成にして遊撃隊にするなどですね。移動速度を上げて相手を誘い込むような役割も可能だと思います。色々な役割を考えて戦法を作っています。 連合に関しては、人数にこだわらず一緒に参加できるというのを大事にしていきたい。部局(ギルド的な要素)で参加するときはみんなで話し合ってまとまってみんなで合戦に参加し、連合作って作戦を練って行ければ楽しいなと思います。 編: 連合を指揮するための専用コマンドなどはあるのでしょうか? 上野氏: コマンドとしてはありません。チャットで指示を出したり、フィルタをかけて指示を届かせることも可能です。また、マップを共有して指示できるような形にしていきたいと思っています。マップでポイントを示したりできるので、集合地点の指示や攻撃ポイントの指定ができるようになります。こういったアイデアも社内テストで生まれてきました。 編: ちょっと細かい話ですが、ヒーラーの人がかけられる範囲魔法の範囲は徒党、もしくは連合全体だったりするのでしょうか。 上野氏: キャラクタ単体に対するサポート系技能ならば同じ勢力内であれば誰でもかけられます。ヒールは自分から一定の範囲内にいるキャラクタを対象にできます。逆にいうとパーティー単位でかけるスキルはなかったと思います。徒党が5人というのも、例えば8人メンバーがいたら4:4で連合を組めばいい。合戦でなくても連合が組めるようにしたのは、普段の冒険でも、6人メンバーが集まった場合、3:3の連合を組んで武器を変えてバランスを取るようにしました。 連合は集まったプレーヤーすべてに冒険を楽しんでもらいたいと思って作ったシステムです。色々検討した結果一番ちょうど良かったのが5という数字だったんです。パーティーの人数枠というのは自分でMMORPGをプレイしていてもきつく感じていました。連合システムならば、出遅れてきたメンバーに合わせて徒党を組み直すことも可能になります。 編: 大人数のリアルタイムバトルの欠点は、どうしても「数の暴力」になるところです。それに対抗するために、レイドボスはメンバーを上限まで集めないと倒せないくらいに極端に難しくしてしまう。これによっていよいよ敷居が高くなる。この辺はバランス取りがすごく難しいところだと思います。 上野氏: 確かにそこは難しいところです。ちょうど良くしたつもりでも大人数で一気に、とプレーヤーは考えるでしょうし。レイドボスに関してはいわゆる「取り巻き」の数をパーティーの人数で合わせることで対応していきたいと思います。ボスとの対戦はインスタンスになるので、何人入ったかによってチューニングが可能になっています。
■ 狙いは全世界。ゲームパッドを含むあらゆるインターフェイスに対応
上野氏: ホントに先の話ですね(笑)。現在はビジネスモデルをどうするかも決まっていない状態ですが、クローズドβテスト後に決まってくると思います。 「三國志」シリーズはプレイされる方の年齢が比較的高めなところもあるので、あくまでも私の個人的な考えではありますが、月額の方が良いかと思っています。私はインターネットが従量課金だった頃からオンラインゲームをプレイしていますが、テレホーダイがひとつの契機になってユーザーが一気に増えたのを目の当たりにしました。それを考えるとやはり上限があったほうが安心してプレイしていただけるのではないかと思っています。 編: 日本では世間の目も厳しくなっているRMT(リアルマネートレード)ですが、これに対してはどのように考えていますか。 上野氏: 私はゲームの中のお話しかできないのですが、ゲームのバランシングなどはRMTを使わなくてはダメだ、という状況にならないようにしていきたいと思っています。RMT対策は、GAMECITYと合わせて運営上でやっていくしかないかなと思いますね。 編: ということは、RMTに対してシステム側で何か施策を施しているということはないですか? 上野氏: 他社さんだとコール機能があったりするみたいですが、ゲームシステムとしてそれを盛り込んでいることはないですね。 編: 今後の展開についてはどのような計画を立てていますか。 上野氏: 今回のβテストのフィードバックをいただいて、私達自身のネットワークの問題やサーバーの負荷の問題、キャラクタの成長レベル、武器の偏りとか、そういったものを見た上で次のテストバージョンを作っていきたいと思っています。 編: 次のテストはオープンテストになってくるのでしょうか。 上野氏: 今のところオープンと考えていますが、どのような形になるかは今後考えていきます。今後のスケジュールに関しては、どちらかといえば今回のテストのフィードバックの量に拠るところが大きいと思います。バトルなど直さなくてはいけない部分が出てくると思うので、その様子を見て判断します。 編: マルチプラットフォーム展開への可能性について教えてください。 上野氏: まずはなんといってもPCをしっかりと、というところからですね。ここ最近出たハードはネットワークも意識していてグラフィックスも良くなっているので、PCがしっかりしたら他のプラットフォームへの展開も考えていきたいですね。 編: 海外展開についてもう少し詳しく教えてください。海外展開は、現地パブリッシャーを探すのか、コーエーシンガポールが展開していくのでしょうか。 上野氏: 現状では「大航海時代Online」や「信長の野望Online」と同じように、海外のパブリッシャーさんと一緒にやっていく形になると思います。 編: 以前、松原(健二氏 コーエー オンラインゲーム担当執行役員)さんからコーエーシンガポールはアジアのハブであり、そこから東アジアに展開していくという計画もなくはないという話を伺いました。 上野氏: それと平行しながら考えていく形ですね。実際シンガポールの発展状況は段違いです。私が赴任した2年前のネットワーク環境は2MBの回線でしたが今は30MB、今年に入って100MBの回線も引かれるようになりました。ちょうど日本に光が入ってきたような状況です。まだ日本のほうが先を行っていますが、今後追い抜かれるかもしれません。 編: クライアントは現在日本語版が作られていますが、他言語版も作られているのでしょうか。 上野氏: 最初から“多言語版”として作れる環境で作っています。テキストデータを翻訳するだけで展開できるようになっています。ただそれが膨大なわけですけどね(笑)。 編: 日本展開では日本国内にサーバーを置いて運営するわけですが、グローバルサーバーなどを作る予定はあるのでしょうか? 上野氏: いまのところ「大航海時代 Online」や「信長の野望 Online」もやっていませんし、現状のビジネスモデルではグローバルサーバーはまだ早いかなと思っています。 編: コーエーさんの海外展開は、まだクリティカルな成功は収めていないという印象ですが、今回はどのような抱負をお持ちですか。 上野氏: 毎回チャレンジかなとは思います。ただ今回シンガポールで作っているということで、いつもと違う側面があります。そもそも「三国志」が中国起源で、しかもシンガポールには中国文化を意識できる人もかなりいますので、日本だけで作っているのとはちょっと変わった特色が出せるのではないかと思います。 編: 上野さんから見て、「これはオリエンタルなMMORPGだな」と思うところがありますか? 上野氏: オリエンタルと言うよりもインターナショナルというんでしょうか、「これ和風じゃないよな」と感じるところがありますね。それは全体的な雰囲気で、どこがと特定するのは難しいのですが。 編: グラフィックス的には「信長の野望Online」と「真・三國無双BB」を足して2で割ったような感じで、グラフィックスはコーエーさん的かなと思いました。 上野氏: モデルとかはそうですね。でも、ユーザーインターフェイスやクエストが日本風とは違うかなと。社内の意見交換でもUIが欧米的だ、という声もありました。UIの独自性としては、例えば移動方法は大抵一種類ですが、「三國志 Online」ではマウスクリックもWASDでの操作もできます。開発のメンバーに言っていたのは、全部できるようにしてくれ、ということでした(笑)。さらにキーも自由にカスタマイズもさせて欲しいと。こういったところをこだわって作っています。 クローズドβテストには間に合いませんでしたが、ゲームコントローラにも対応します。視点の移動やショートカットキーの設定なども自由に変更できます。チャットのフィルタやウィンドウの分化なども可能です。 編: 最後になりますが、クローズドβテスト、そしてその後の正式サービスに向けてユーザーさんに対してメッセージをお願いします。 上野氏: 「三國志 Online」のプロジェクトは山に例えるとまだ5合目までもいっていません。頂上までみなさんの協力を得て登っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。 編: ありがとうございました。 (C)KOEI Entertainment Singapore Pte.Ltd / (C)KOEI Co., Ltd. All rights reserved.
□コーエーのホームページ (2007年2月2日) [[Reported by 中村聖司]
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