|
ガンホーオンラインエンターテイメント株式会社は、12月1日、MMORPG「ラグナロクオンライン」において臨時メンテナンスを実施し、リアルマネートレード(RMT)利用者に対する大規模な一斉措置を行なったと発表した。凍結したゲーム内通貨は、約2,637億Zenyにもおよび、1回の措置による回収額としては過去最大規模となる。 今回の一斉措置は、従来、不正ツール利用者を対象にしていたアカウント停止措置を、RMT利用者にまで拡大しているところが大きな特徴となっている。措置の対象となったのは、現金でゲーム内通貨の取引を行なっていた業者と利用者、その延長線上にある倉庫キャラクタなどとしている。アトラクションID数にして1,497件、7,850キャラクタにも上る。 同社では、措置適用の目的について、RMT利用者への警告を与えるためだとしている。独自調査の内容や検挙の判断基準については、今後の調査に影響を及ぼすため未公表としているが、新たにゲーム外の調査情報を加味した上での総合的な判断だとしている。 ところでRMTが「RMT問題」としてひとくくりに語られるようになってすでに久しいが、その実態は、本来切り分けて考えるべき要素が混在して語られるケースが多く、正しく理解されているとは言い難いのが実情だ。そこで以下では、日本国内でのRMTを取り巻く諸問題について若干補足しておきたい。 RMT問題は、現金でゲーム内アイテム等を取引するRMT行為そのものが問題なのではなく、規約で禁止されているオンラインゲームでのRMT行為、RMT利用者に対する取り締まりの方法論の不確立、運営メーカーに無断でオンラインゲームに寄生してゲーム内通貨の売買を行なっているRMT業者の存在の3点が問題である。 すなわち、取り締まりが不十分な運営者、買うユーザー、売る業者の三者が一体となって、今日の「RMT問題」を引き起こしている。どこか一カ所が悪いわけではなく「全部悪い」のが実態である。これらはもはや、ただ単に特定のオンラインゲームのゲームバランスの崩壊、アジア圏への外貨の大量流出、オンラインコミュニティの悪化といった枝葉末節レベルで語られる問題ではなく、オンラインゲームの安定的成長を考える上で、業界全体で必ず乗り越えていかなければならない課題といえる。昨今では、ゲームメディアだけでなく、一般紙やTV、新聞等でも日常的に取り上げられる問題となっていることを鑑みても、緊急を要するテーマだ。 中でも強く対応が望まれているのが、運営側のRMT利用者に対する取り締まりの方法論の確立である。利用規約にRMT禁止と謳う以上、一般ユーザーが運営側に規約に違反したユーザーを取り締まってほしいと願うのは至極当然の主張であり、運営側も取り締まる義務がある。規約違反のやり得が発生してはゲーム世界は崩壊してしまう。運営側にはそうしたモラルハザードを防ぐ義務があるはずである。 しかし実際問題として、オンラインゲームは、大規模なタイトルともなると何十万人ものユーザーがアクセスするため、目視による手作業だけではとても処理が追いつかない。また、RMT行為のゲーム内部的な動きは単にゲーム内通貨の受け渡しに過ぎないため、末端の動きだけを追っていってもそれをRMTだと断定するのは難しいのも事実だ。 このため、実効をあげるためには、RMT業者の組織的な動きを掴み、ゲーム内通貨の流れ、チャットログ、トレード履歴といった膨大なデータ群から有益な情報だけをマイニングし、アカウントにひも付けする形でデータベースを構築し、全体像を掴んだ上で文字通り一網打尽にする必要がある。さらに今回のようにゲーム外との情報のマッチングも必要だろう。ただ、当然のことながらこの作業のために必要となるリソースは膨大であり、運営側の負担増へのためらいが、RMT業者の跳梁を許し、状況の悪化を招いてきたという背景がある。
こうした真の意味でのRMT対策を行なっているメーカーはまだまだ限られており、今回、大手オンラインゲームパブリッシャーのガンホーがきちんと実効を伴う形で対策を施したことは大きく評価したい。BOTをはじめとした不正ツール対策と並び、今後も引き続きRMT対策を強化していくことに期待したいところだ。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2006年12月1日) [Reported by 中村聖司]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|