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特別インタビュー

オンライン化、そして3D化で生まれ変わった「メテオス」
「メテオスオンライン」



 キューエンタテインメント株式会社が11月9日よりオープンβテストを実施中の「メテオスオンライン」。今回、キューエンタテインメントCTOで本作の開発ディレクターを務める平井武史氏と、チーフデザイナーを務める堀田 昇氏にお話を伺う機会を得た。ロングインタビューとなったので、今回は前編としてお届けしよう。

→後編はこちら


平井武史氏。アイレム、セガ・エンタープライゼス、ユナイテッドゲームアーティスツを経てキューエンタテインメントの設立に参加

――まず、「メテオスオンライン」のスタッフは何名ぐらいいらっしゃるんですか?

平井氏 サーバー担当、Web担当など合わせて全部で17名ですね。立ち上げは6名でした。エンジニア3名、ディレクター、企画、デザイナー。プログラマーはクライアントしか知らない(笑)状態で。僕がもともとプログラマーだったんですが、SEも兼任してやっていたんですよ。それで多少知識があったので、知り合いの伝をたどって、「こういうモデルにしたらいいんじゃないか」と構想を立てて。最初からPeer to Peerではなくてサーバーモデルにしよう。チート対策だけはしっかりしよう、と考えていましたね。

――それはずいぶんミニマムですね。大手のパブリッシャーさんと組んでやろう、ということは考えになかったんですか?

平井氏 何回か他社さんと一緒に仕事させていただいたときに思ったのが、結局コミュニケーションロスが多くなってしまって……納期に間に合わないし、自分の思っているレベルのものに仕上がらないということが多かったので、苦労してでもそこを最初に超えたいということがありまして。設計も最初から自分でやりましたあとは作りたい一身で、苦労など「何も考えてなかった」っていうこともありますかね(笑)。

堀田氏 基本的に作りたがりなんですよ。「メテオスオンライン」のスタッフは一から全部やりたがる人が多くて。「任せるよりは作る!」みたいな(笑)。

平井氏 オンラインゲームに関してはトラブルをたくさん聞いていたんですよね。たとえば「サーバーが落ちる」ですとか、「チート対策ができてなくてクライアントのデータが流出してしまう」だとか。それを「どうして流れてしまうんだろう?」と思っていたんですよ。自分が作るとどうなるか、ということではなく、「どうしてなんだろう?」と。そこを体験してみたかったということもありますね。

――体験ですか!(笑)

平井氏 「どうやったらヒューマンエラーが起きるんだろう?」ということをシステム的に体験してみたいということが最初にありましたね。当然、この体験するというのは、そうならないような体験をしてみたいということです。

――それをまさにクローズドβテストで体験されたんですよね。

平井氏 局所的な話なんですが、クローズドβ開始数時間前に、ファイアーウォールの設定をミスってしまって、リモートでアクセスできなくなったんです。直接データセンターに行って作業をする羽目になりました。そのときは何から手をつけていいかわからない状態で。全部を閉じることはできたんですよ。堅牢な状態……たとえて言うなら将棋でまだ1手も指していない状態にはできたんですね。でも、1手指すとボロボロになって。「何から開けていこうか?」というところを苦労した記憶がありますね。

 iモードのコンテンツを過去に手がけていたことがあったんですけれども、そのときWebのパッチの設定などを作っていたんですが、今回その時と同じミスをしてしまったりもしましたね。本当に細かいところを……。クローズドβ前にクローズドできなかった(笑)ときはあせりました。(堀田氏に)何が苦労しましたかね?

堀田氏 いや、すべて……(笑)。

平井氏 人が少ないので、とにかく「コミュニケーションロスだけはやめよう」ということと、「あわてるのはやめよう」と。「何かトラブルがあったらまずはエスカレーション(トラブル事例を連絡して引き継ぐこと)してくれ」とスタッフに言ったら、それがたくさん来ちゃって、僕がパニックになりました(笑)。

――平井さんが倒れちゃったらプロジェクトが動かなくなっちゃったりするんじゃないですか?

平井氏 そんなことはないですよ。スタッフは優秀なので、逆に僕が倒れると喜ぶと思うんですよ。ねえ?(と堀田氏を見る)

堀田氏 (笑)。

平井氏 僕は上で旗を振っているだけなので。皆自主的にやってくれますし。最初は苦労しましたけれども、今となっては皆頼もしいですね。

■ 「メテオス」は「オンライン」で生まれ変わった

――そもそも「メテオス」はオンラインを想定されたゲームだったんですか?

平井氏 ニンテンドーDSのときは、想定して作ってはいませんでしたね。ただ、「メテオス」のプロトタイプはPCで制作していて、プラットフォームを探していたんですよ。そこで、DSが一番向いているということで、DSに落とし込んだという経緯がありまして。ですが、プロトタイプ「メテオス」のインターフェイスはそんなに洗練されていなくて、あんなにアクションパズル然としたタイトルになるとは思っていなくて……もともとゆっくり考えるゲームだと思っていたんですよ。DS版はもうほとんど格闘ゲームじゃないですか。

 操作系に関しては、DS版を終えて、PCで「オンライン」を手がける際に、3カ月間ほどずーっと操作系には悩んでいましたね。アクション性が高い状態を残さないと、誰にも「メテオス」と認めてもらえない。「3つそろえる」ということと、「打ち上がる」という行為と、アクション性が高いという3つの要素がそろって初めて、「メテオス」ですから。

――最初は、むしろ多人数オンラインプレイには向かないのでは? と思いました。

平井氏 そこを理解していただけるとありがたいですが……実際そうなんですよね。MMORPGのようにキャラクタの位置情報だけを渡しているだけではなくて、リアルタイムにデータを渡していますから。6人分のパケットの圧縮や暗号化は苦労した部分ですね。特に今までの落ちものパズルですと、落ちたブロックは動かないじゃないですか。それが動くなんていうことを想定したインターフェイスは考えなくていいので、ユーザーの操作だけを覚えていればいいんですが、「メテオス」の場合、ユーザーの操作と動くブロックがあるので、「どれだけのデータを送ればいいんだろう?」とスタッフとも悩みましたね。特にパケットを小さくする方法には苦労しました。

――対戦要素があったDS版のころからそれを想定されているのかと思っていました。

平井氏 実はDS版のときに通信していたのはキーデータ(ユーザーの操作)だけなんですよ。4人分の対戦を1つのDSで処理していて、バックグラウンドで4回まわしているんですよ。今回はそういうわけにはいかないし、しかも遅延があるクライアントのデータだけでは信用できないので、サーバーでデータを計算しなくてはいけない(笑)。

 あれだけ早いゲームにも関わらず、システムとしては画期的なものになったんじゃないかと思います。今後、落ちものパズルを含めた今作のような「遠隔地で何かをやり取りしあうようなもの」には、今のシステムが使えると思っていますね。その英知は築けたかなと考えています。せっかくいいものができたので、今後も共有していこうかと思っています。

 エンジンという観点では、「メテオスオンライン」で3Dグラフィックスを採用したのも、「我々も勉強していかなければ」と思った部分もありますね。

――昨今各社さんで次世代機にも対応するエンジン周りの整備研究が進んでいますが、多種多様なターゲットクライアントがあるなかで、それに合わせてグラフィックスも落とし込みが必要になると思います。その研究も大変じゃなかったですか?

堀田 昇氏。DS「メテオス」でもチーフデザイナーを務める
堀田氏 はい。そういった意味でも「手をつけておかなければならない」ということで、「メテオスオンライン」では3Dになっています。

平井氏 2Dの絵を描いていると、リテイクする(描き直す)のが大変なんですよね。今回、リテイクが増えると思ったので……。それで「3Dにしたい」と伝えました。おかげで、すごくたくさんのリテイクを流して(笑)。

――それは大変だったんじゃないですか?

堀田氏 リテイクは基本ですね(一同爆笑)。

平井氏 いいことかどうかわかりませんが、作ってもらってリテイクするという。最初はコンセプト部分だけを伝えて作ってもらうんですが、ベースを作ってもらってから「こうじゃないよ」と(笑)。

――それってデザイナーさん側からすると、せっかく作ったものをリテイクされるわけですよね?

堀田氏 ヘコみますね(一同爆笑)。それぞれ思っているものが違うので、解釈が違うと、どうしてもリテイクはかかります。できるだけ意図を汲んで考えるんですけれども、どこかがちょっとずれるだけで、かなり違ったりするので。でも、結果的にいいものになるので、それも納得はいきます。「それもありですね」ということで(ちょっと強調気味に)。ただそれは時間のあるときにだといいんですが……。それを開発末期で言われたりとかよくしますね(笑)。

平井氏 どうしても末期のほうが目立ってくるんですよ。最終的な絵を見たときに「あ、違う」ということが。いつもご迷惑をおかけしています。今回、プレイキャラクタにボイスをのせたということもあって、アニメーションにボイスをのせて初めて「あ、違うな」と思うこともありましたね。

――感覚的なチューニングで、いろんなものが乗って初めて「違う」ということが見えてくることもありますよね。

平井氏 特に、悪いところは最後に見えるんですよね。僕は最初にいいところが目に付くんですよ。「この動きはここが面白い、あそこはいいね」、という感じで。最終的にゲーム画面に落とし込んで、「あれ、何か違う」とか……。

――「メテオス」をオンラインで作る、という感覚はデザイナーさんとしてはどうでしたか?

堀田氏 今回3Dになったので感覚がまったく違ったということと、オンラインだったので「DSとは違うものを作ろう」という感じだったので、新鮮に作れましたけれど。DS版もすごく愛着があるので、そこから好きなところを抽出して作ったりとか、「違う解釈でもいいんじゃないかな」ということで惑星には遊びを入れてみたり、いろいろ楽しくやれたと思います。

――素人目には、6人同時プレイということで画面情報からなにから変わって大変だったのかなと思いました。

堀田氏 大変でしたね。もうボタン1つ置けないぐらいですから。

――「メテオス」はパズルゲームにしても情報量が多いほうだと思いますが?

平井氏 そうですね。DS版を作っているころも言ってましたね。

堀田氏 「この情報は見せなきゃいけない」、「これは教えておかないと(表示しておかないと)」とドンドン追加されたり……。

平井氏 「なぜ6人にしたんだ! 4人でいいじゃないか」とか言われましたね。確かに4人なら十字に画面を分割すればきれいに収まるんですよね(笑)。一番苦労したのはライブじゃないですかね?

堀田氏 今回はほかのプレーヤーの情報がアイテムも含めてすべて見えるんですよね。あれを作るのに苦労しましたね。

平井氏 本当に通信しているんだ、ということが実感できるようにするためにも必要だったし、見るということと魅せるという行為を必ず入れたかったということがありまして。それと、ライブ映像は見るときと見ないときがあると思うんです。僕はライブを見ないときはフィールドを一番キレイに大きく見せたいし、見るときはよりライブ感を感じて欲しかったんですよ。だから、対戦中にもライブ画面を自由に開けたり閉じたりできます。ライブはウィンドウを開いた瞬間に描画するので、「途中から再生なんかできないです! ウィンドウは開けっ放しにさせてください」って何回も言われましたね(笑)。

 それから、ライブを見るときは自分のフィールドと同じ大きさにしたいということで、画面のサイズも2種類を用意しています。フィールドと同じ大きさのライブを横に並べると、どんな状況になっているのかがわかりやすいんですよね。それを表現してみたかったんです。言うほうは簡単ですけれど(笑)。

堀田氏 最初は背景も贅沢に作っていたんですけれど、どんどん削られていって何度も作り直して……「ライブ出すと重いです」とか……「キャラクタを6人出すと動かない」とかいろいろありましたね。

平井氏 自分のフィールドにキャラクタが全員集まると、ライブの映像を含めると6人×2で12人描画しないといけないんですよね。

堀田氏 どんどんしわ寄せが来て、すごいポリゴン数に……。でもクオリティは落とすなと。背景は手間をかけて作っているんですけれど、それをLowモデルにして、前と変わりがないように……ということを地味に続けて、見た目あまり変わらないようにしたつもりです。

――クライアントも2つありましたよね? これもコンバートしてるわけじゃないですよね?

堀田氏 別データですね。そんな中、「“滅亡”を3段階入れろ」と。「ええ? 今でもひいひい言ってるのに、この星壊れるんですか?」……「いや、入れないと」と言われまして。

――(笑)それはまたなぜですか?

平井氏 それまでは、ライブで視覚的に見たときにその惑星がどういう状況か……元気なのかそうでないのか、わからなかったので、わかってもらえるようにするにはどうしたらいいかを考えた結果、背景の演出しかないと。それで「3段階用意してください」と。

堀田氏 最初は4段階ぐらいあったんですよ。でもそこは「そんなに細かくしてもわからない!」ということで交渉して。

平井氏 僕としては「3つになればいいな……」と思って「4つ」と言ったんですけどね(笑)。

――その辺は読み合いですね(笑)。

堀田氏 確かに、自分の星が滅亡しているのに、世界が平和で“のほほん”としてたんですよ。海は青くて草がなびいていて……でも滅亡しているというのはおかしいなと。実際入れてみたら、なんだか滅亡していく感じが出て。

平井氏 しかも、相手を滅亡に追い込んでいる感じもよく出るようになったんですよ。“やっつけた感”も出るんですよね。今のバージョンを見ている方にはわからないかもしれませんが、元の滅亡表現がないバージョンを見ている側からしたら、「やった!」という気持ちになれる度合いの差がすごいんですよ。堀田を倒したときも「やった!」と(笑)。

堀田氏 ……仕事はすごく増えたんですけどね(一同爆笑)。

――その前にデザイナー側が「滅亡」と(笑)。

平井氏 「後でお前を滅亡させてやるぞ」と思っていたかもしれませんね(笑)。「メテオスオンライン」では、攻撃の対象は変えられるじゃないですか。テストプレイ中にも、なぜか僕だけいつも攻撃にさらされてるんですよね(一同爆笑)。




 後編でもさらに「メテオスオンライン」の開発秘話!? が展開する(予定)。お楽しみに!

(C)Q Entertainment Inc. 2005,2006
(C)BANDAI/NBGI 2005 All Rights Reserved.
※画面は開発中のものです。

□キューエンタテインメントのホームページ
http://www.qentertainment.com/
□「メテオスオンライン」のページ
http://www.meteosonline.jp/
□関連情報
【10月13日】キューエンタテインメント、「メテオスオンライン」クローズドβ募集を開始
GAME Watchでも応募枠を1,000名確保
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061013/meteo.htm
【9月13日】キューエンタテインメント、PC向けオンラインゲーム事業に参入
「メテオスオンライン」、「AngelLoveOnline」の2タイトルを発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060913/qent.htm

(2006年11月17日)

[Reported by 佐伯憲司]



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