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会場:韓国国際展示場(KINTEX)
入場料:5,000ウォン(約650円)
■ 2年目にして様変わりする「G★」。国際ゲームショウとしての地位確立に尽力
今年で2年目を迎える「G★」は、KAMMA(韓国アミューズメント協会)が主催していたKAMEXを吸収する形で、KGDI(韓国ゲーム産業開発院)主導で運営されている。昨年は第1回ということもあり、「G★」実行委員長として韓国政府情報通信部のDae-Je Chin部長官のDae-Je Chin氏が出席し、盛大なオープニングセレモニーが行なわれたが、今年はオープニングセレモニーそのものがなく、穏やかな開幕となった。 展示規模は、KINTEXの全5ホールをすべて使用し、昨年比62%増。4日間の日程で、東京ゲームショウと同等の16万人の参加を見込む。また、今年から出展スペースと商談スペースを完全に区切り、より商談しやすい環境を整備したり、併催イベントも韓国最大規模のゲームカンファレンス「KGC(Korea Game Conference)」に加え、専門学校や大学などの教育機関が学生来場者に対してそれぞれの魅力をアピールする「アカデミー館」、ゲームメーカーに就職を希望する来場者に対してコンサルティングを行なう「ゲーム就業展示館」、アーケードゲームの歴史を中心に30年のゲーム史を振り返る「ゲーム歴史館」など、ゲームメーカーの出展のみに留まらない、一工夫ある出展が目に付いた。 今年の主な出展メーカーは、NEXON、WEBZEN、NCsoft、Hanbit、Neowiz、JoyCity Entertainmentなど。このうちNEXONが、今年最大規模の90コマを確保し、あとはまちまちの大きさで、昨年に比べると不揃い感が目立った。ブースの間隔も前年以上で、特に実質ビジネスデイの初日は、ゆったりと見て回れた反面、空間ばかりが目立つ寂しい結果となっていた。 大手メーカーで今年未出展だったのは、Gravity、NHNなど。Gravityは8月にプライベートショウを開催したばかりで、NHNは東京ゲームショウに出展したなどの理由は見つけられるものの、共にグローバル展開を意識しているメーカーが未出展なのは、国際ゲームショウを目指す「G★」において残念な結果となっている。 なお、昨年と今年で視覚的に明瞭な違いとして挙げられるのは、昨年までKAMEXの遺産として残されていたアーケードゲームの出展が、今年8月に韓国の成人ゲームセンター一斉摘発を受けて、出展を見合わせていたことだ。違法なのはメーカーそのものではなく、射幸性ゲーム機(商品券を排出する液晶型の大型スロットマシン)による賭博行為だが、過去の出展でも射幸性ゲーム機の展示が多かったため、UNIANAやソノコンなど、ビジネスの中心をオンラインゲームに転換した一部のアーケードゲームメーカーを除き、直に影響を受けることになった。 射幸性ゲーム機の出展は、韓国のゲームショウのみで見られる一種の名物として常に一定の存在感を示していたが、今年は見事に完全に消え去っており、今後も復活することはないと思われる。現地関係者によれば、最近では、成人ゲームセンターや射幸性PCバンに変わって急成長を遂げつつあるのが、現金を直接賭けるインターネット賭博サイトだという。韓国のオンラインゲームを中心としたデジタルコンテンツ市場は、リアルマネートレードやアカウントハッキング、偽国民番号による登録など、さまざまな問題を抱えているが、また新たな懸念材料が浮上しつつあるようだ。
■ 今年はNEXONの一強状態に。NEXONブースに見る韓国オンラインゲーム事情
ブースイメージは、AppleStoreを彷彿とさせるシンプルかつスタイリッシュな雰囲気で、機能性よりデザイン性を重視した構成で、ブランドのイメージアップを図っていた。出展の中心となっているのはカジュアルゲームで、その傾注ぶりは、昨年大作MMORPGとして個別ブースで出展していた「ZerA」(正式サービス中)の出展を取りやめ、ユーザーの支持の厚い「メイプルストーリー」や「マビノギ」、「KartRider」といった既存タイトルの出展およびファンサービスに注力していたことでも伺える。 その一方で新作タイトルも豊富で、クエスト主体のミステリーMMORPG「プロジェクトSP1」、カジュアルサッカーゲーム「KickOff」、カジュアル対戦格闘ゲーム「KOONGPA」などが初公開され、日本未発表タイトルとしても横スクロール型オンラインシューティングゲーム「ナナイモ」、武侠MMORPG「九龍制覇」などが公開されていた。 これらのカジュアルゲームは、ビジネスモデルにも一工夫あり、1日当たり2時間まで無料、それ以上のプレイを望む場合は、1カ月有効となる1,000円弱のクーポンを利用、さらにプレイスタイルに合わせて有料アイテムも用意するというユーザーフレンドリーなハイブリッド課金が主体となっている。 この1日2時間無料スタイルの基本的な考え方は、収益性の向上よりも健全性の維持に重きが置かれており、1日2時間というリミッターをメーカー側が設けることで、公序良俗に反するほどの長時間プレイを防ぐために一定の効果があるだろうという考え方に基づいている。長時間プレイをするコアゲーマーに実効があるかどうかではなく、親が子供に遊ばせるゲームとしてNEXONが選ばれるかどうかを重視しているところが新しい。NEXONでは、今後、海外事業の強化に加えて、安全な遊び場を提供することに関する社会的な責務を負うことを明言しており、こうした動きがオンラインゲームの発信基地となっている韓国側から生まれるのは頼もしい限りである。
なお、本日行なわれた戦略発表会の内容については、追って詳しくお伝えするつもりだ。
■ 今年のトレンドはアクション/FPSが中心。MMORPGは特殊な存在に?
韓国のオンラインゲーム市場は、MMORPGから始まり、徐々にメインストリームがカジュアルゲームにシフトし、近年はカジュアルゲームの多様化が進み、あらゆるジャンルのカジュアルオンラインゲームが用意されているといった印象だ。レース、カート、パズル、サッカー、バスケ、野球、ゴルフ、スノーボード、テニス、アクション、格闘、シューティング、フライトシューティング、FPSなどなど、韓国メーカーに掛かればすべてのゲームはカジュアルゲームになるといっても過言ではない状態になっている。 その中でもメジャーなジャンルのひとつとなっているのが、FPSスタイルのカジュアルオンラインゲームだ。日本でも展開が予定されているタイトルとしては、テクモ/SeedCの「Warrock」、NHN Japanの「Special Force」などを第一次世代だとすると、現在はそれらの人気を受けて、第二世代に相当するタイトルが無数に生まれている。会場で見られた限りでも、Webzenの「HUXLEY」、Neowizの「A.V.A」、「CROSS FIRE」、Hyosungの「LANDMASS」など。いずれも、基本プレイ無料、アイテム課金制を採用しており、世界観やキャラクタなどで個性化を図っている。 また、これから商用化されるジャンルの新たな潮流として注目されるのが、「真・三國無双」スタイルの3Dオンラインアクションゲームだ。こちらは日本に本家本元的な「真・三國無双BB」がサービスインしたばかりだが、韓国ではまだメジャーなタイトルはなく、これから成長が期待される分野といえる。 会場で見た限りでは、Neowizの「WARLORD」、WEMADEの「蒼天」、Webzenの「一騎当千」、NEXONの「KOONGPA」、NCsoftの「ATrix」、そしてこれは韓国産ではないが、大本命としてHanbitSoftが全面展開していたFlagship Studiosの「Hellgate: London」がある。ちなみに関係者の話によれば、11UP/コーエーの「真・三國無双BB」の出展も「G★」運営事務局から要請されたようだが、時期尚早として断念したようだ。仮に出展されていたら、「G★」の台風の目となっていたかもしれない。 一方、MMORPGの新作は、メジャーどころではNCsoftの「AION」とWebzenの「SUN」のみと昨年にも増して減っており、「風の王国」、「リネージュ」、「ラグナロクオンライン」など、一時はアジアを覆うほどの人気を見せた韓国産MMORPGの衰退ぶりは、定点観測しているものとして一抹の寂しさを覚える。 個人的な感想としては韓国のオンラインゲームファンは、日本のオンラインゲームファン以上に見る目が厳しい。しかも、何の未練もなく次のゲームに集団移動してしまうところが大きなビジネスリスクになっている。それゆえに開発が守りに入り、真の意味で次世代のMMORPGが到来しないという負のスパイラルに陥っている印象が強い。
MMORPG成功のカギを握るのは、美しいグラフィックスや目新しいシステムではなく、RPGの原点である魅力的なストーリーラインと、オンラインゲームならではのコミュニティシステムにあることに気付かなければMMORPGの復興は難しいだろう。韓国クリエイターの奮起に期待したいところだ。
□G★ 2006のホームページ (2005年11月10日) [Reported by 中村聖司]
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