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会場:幕張メッセ
ただ、数少ない出展タイトルのひとつである「Flight Simulator」シリーズ第10弾「Flight Simulator X」は、ゲームとしてのクオリティもさることながら、ローカライズの内容が非常に良く、往年のFSファンから、フライトシムにあまり縁のない新しいPCゲーマーまで幅広くお勧めできる万人向けの良作に仕上がりつつある。発売時期は今冬、価格は未定となっている。本稿では、「Flight Simulator X」の最新仕様とローカライズ内容について紹介していきたい。なお、「Age of Empires III: The Warchiefs」については、別途開発者インタビューにて詳しくお伝えしたい。
■ 「FS 2004」の76倍の精度で実装される精密な地表データ
話を聞く限りでは、内部的にはWindows Vistaのβ版とハイエンドクラスのビデオカードを使ってエミュレーションすることですでに一応動いてはいるとのことだが、正規の方法ではないためフレームレートががた落ちになり、まともにゲームができないという。「Flight Simulator X」は、北米ではホリデーシーズンに発売される見込みだが、上記の理由から、発売後もしばらくはDirectX 10モードは当分の間お預けになる公算が高い。 しかし、DirectX 10モードをひとまず抜きにしても売りをいくらでも挙げられるのが「Flight Simulator X」の素晴らしいところだ。 まず第一に挙げられるのが、地形データの精密さと自然さである。まず精密さは、前作「FS 2004」では76メートルを1ピクセルで表現していた地表データを、「FSX」では1メートル1ピクセルと、単純に76倍の精度になっている。
これにより世界中の海岸線がこれまでにない精度で表示されるだけでなく、この精度は等高線にも適用される。従来型フライトシム、特にFSシリーズの弱点であった山脈の表現を完全に克服し、陰影も含めた山脈の起伏を見事に表現している。これはもうスクリーンショットを見れば一目瞭然である。
もう少し補足すると、前作での課題だった文化圏ごとの建設物の違いにも対応し、「FSX」では、ヨーロッパ、アジア、中東など、文化圏ごとに異なる建物が自動生成される。精密な地形の上に地形に即したテクスチャが張られ、さらにその上に自動生成オブジェクト、そして東京タワーやエッフェル塔といったランドマークが正確な座標の上に載る。
すべて作り込みではなく、自動生成される部分が多いとはいえ、精度、密度共に格段に向上しているため、「FSX」はDVD-ROM2枚組、インストールサイズ12GBと、PCゲームとしては超特大のゲームになっている。なお、自動生成オブジェクトについては、ビジュアルとパフォーマンスに直接影響を及ぼす部分であるため、スライダーで密度を調整できる。DirectX 9モードでグラフィックスオプションを最高にしてプレイするためには、Core2DuoクラスのデュアルコアCPUとハイエンドビデオカードは覚悟しておいたほうがいい。
■ ミッションモード&ATCによるロールプレイが楽しい。パイロットライフが満喫できる「FSX」
「FSX」で初搭載されるミッションモードは、フライトに明確な目的とクリアを設定した新しいゲームモードで、「フリーフライト」ではとっかかりが掴めないというビギナー層に向けたコンテンツである。全部で50以上のミッションが用意され、すべて独立したストーリーが盛り込まれている。 ストーリーテラーは、パイロット(プレーヤー)とコパイロット、航空管制官の3人で、教官から教育を受けるようなチュートリアル向けから、特定のオブジェクトを達成するいわゆるミッション系、そしてフライトシムならではのエマージェンシー系まで、ビギナーから上級者までバラエティに富んだシナリオが用意されている。チュートリアルだけで12本も収録されているため、まったくの初心者でも小型ジェットからプロペラ機、ヘリコプター、グライダー、果ては大型旅客機まで飛ばせるようになる。 ミッションモードのデモを見ていて感心したのは、すべて日本語ボイスに吹き替えられていることだ。総勢31名の日本人の声優がシチュエーションに応じたボイスを吹き込んでいる。たとえば上級者向けのエマージェンシー系ミッションでは、パイロット同士の和やかな雑談から始まり、トラブル発生を受けて真面目なやりとりが行なわれ、エンジン停止が発覚した後は一転して緊迫した会話が繰り広げられる。どちらかというとユーザーの想像力頼りだった「FS」シリーズが、一気にストーリー性の高いコンテンツに進化した印象である。 また、ゲーム中重要な要素である航空管制官とのATCを使ったやりとりは、前作までは英語版そのままの英語音声が使用されていたが、「FSX」ではわざわざパイロットの音声を「日本人の英語」に吹き替えている。さらに年齢層に応じて使用する言葉が若干異なるということで、年齢層、男女別にそれぞれ3パターン、計6種類の日本語版オリジナル音声が吹き込まれている。声を当てているのは声優ではなく、現役を含むパイロットや航空管制官経験者が担当しており、実際のプロが声を当てているのだから当然のことだが、実際の通信を聞いているような錯覚に陥る。ミッションモードでは、コパイとの会話の合間にATCのやりとりを行なうシーンがあるが、コパイとの会話は日本語で、ATCでは英語に切り替えられる。演出のこだわりぶりには思わず唸らされてしまった。 なお、ATCの音声は、空港ごとに入れ込むのではなく、空港名やエアライン、その他専門用語などを単語として入れ込み、状況に応じて文章として生成される。その数5,500個。この仕組みにより、ATCに対応した空港なら、どこでも日本人英語を交えた航空交通管制が行なわれるわけである。 マルチプレイモードは、LANプレイと、GameSpyを使ったインターネットプレイに対応。複数人で同じ視界を共通するフライトインストラクションモードと、片方は飛行機に乗り、片方はATCを担当するATCモードの2種類を用意。最大プレイ人数は、現在検証中ということだが、32名まで視野に入れてテストを行なっているという。 ユーザー間のコミュニケーションは、ボイスチャットを使う。ATCモードは、片方は管制塔に入り、各種レーダーを参照しながら飛ぶ飛行機に対して音声で指示を出すという非常にマニアックなモードだ。ただ、フライトシムファンの間では、ユーザーによるATCは、古くから楽しまれてきた経緯がある。今回の実装は、フライトシムファンの間で楽しまれてきたATCモードがついに公式サポートされたということになる。 なお、最後にエンドユーザーが気になる要素についていくつか補足しておくと、まずサードパーティーのシーナリーについては、互換性は維持するものの、地表データの精度が76倍になっているため、そのまま追加すると不自然な表示になる。空港や飛行機はそのまま使用できるが、「東京シーナリー」のような地形データ系のシーナリーは、そのまま使うのはかなり厳しい見込みだ。 一方、ゲームコントローラについては、すでに発表されているようにXbox 360のゲームパッドがそのまま使えるが、「サイドワインダー」シリーズのジョイスティックの再販予定はない。その変わりスラストマスターと組み、「FSX」向けジョイスティックを発売する予定としている。日本での発売は来年にずれ込みそうだが、発売が楽しみなこの冬期待の大作である。
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□マイクロソフトのホームページ (2006年9月23日) [Reported by 中村聖司]
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