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★特別インタビュー★

「これを持ち歩ける」ということが新しい機能
「MotoGP」

【田中文啓氏】
PSP「MotoGP」ディレクター兼アソシエイト・プロデューサー。PS2「MotoGP」にゲームデザイナーとして参加。「MotoGP3」でディレクター、「4」からディレクター兼アソシエイト・プロデューサーを務める。


 8月25日に発売された株式会社バンダイナムコゲームスのPSP用レースゲーム「MotoGP」。シミュレータ系統のレースゲームは、PSPにもそれほどリリースされていないという現状もあり、「開発が難しいのかな?」と思ったのだが……本作のディレクター兼アソシエイト・プロデューサーである田中文啓氏にPSPでの開発に関するお話を伺うチャンスに恵まれたので、早速お届けしよう。


■ 「これを持って、もてぎに行ってほしい」

――プレイステーション 2では「MotoGP」シリーズは4作まで作られていますが、PSP「MotoGP」の企画意図は?

 ご存知のように、このシリーズが一番売れているのがヨーロッパなんですよ。ヨーロッパの方で「リッジレーサーズ」がPSPとともに売れたこともあって、そうなると、「『MotoGP』もPSPで遊びたいよね」という声が出てきたんです。我々としても、PSPで「MotoGP」を出すとすれば、「持ち運んで遊んでもらえるよなあ」と。「MotoGP」の世界を手の中に入れる、所有して遊びたい、という感覚ですね。

 それと、製品ができ上がって来て「あ、こういうこともあるな」と感じたんですが……。ヨーロッパはもちろん、日本やアメリカでも、各サーキットにこれを持って行って、パッとマルチプレイヤーモードでレースを開催してもらう。もしくは、PSPを持っている人を見かけたら、こちらもPSPを出してゲームを立ち上げてみる。上手く行けば、そこでレースができますよね。見ず知らずの人たちが「MotoGP」という1つの競技でつながって、さっとレースを遊んでもらって、楽しいひと時を共有してもらえるんじゃないか、と思ったんですよ。レースが始まったらしまってもらって、観戦に集中してもらうと。空き時間にまた遊んでもらえばいいですよね。このあたりが1つの狙いといえます。

――そうすると、やはり日本版にはもてぎ(ツインリンクもてぎ)が入っていないのが……

 そうですね。日本のファンの方々には本当に申し訳ないですね。次回作を今、お約束できる状態ではないのですが、将来的には入れたいと思っています。次回作があれば当然入るべきサーキットだと思っています。

――そのコースのセレクトはどのような経緯で行なわれたのでしょうか?

 主力であるヨーロッパの市場を意識しているのは間違いないです。ただ、あれ以上コースを入れようとすると、簡単な話、発売が遅れます(笑)。シンプルな話ですけれども。PS2版とまた違って作り直しになっていますので。コンバートできれば楽だったんですが、全部作り直しています。そうしないと入らないですね。

――「リッジレーサーズ」も「MotoGP」もPS2に近いクオリティのグラフィックを実現していると思いますが、それも全部作り直しによるものということですね?

 削らなければならない要素は多々あれど、それをいかにお客様の目に触れないようにするか、それが我々の腕の見せ所でもあるんです。だから、静止画のスクリーンショットを撮ってみれば、PS2とPSPのグラフィックスの差はわかると思います。でも、動いているところを見たら、それほどの違いは感じられないし、「すごいな」と思ってもらえるものになっていると思います。

――そういった意味では、失礼な話かもしれませんが、ゲームモードも含め、「納期優先」で入れられるものを入れてあるのか? と思ってしまいますが? 売り時があることはわかります。

 それは正しいところとそうでないところがあると思います。まず最初にユーザーの皆様が「これは入れてほしいな」と思っているゲームなり機能なりと、我々ができる作業の取捨選択をしていった結果、という形ですね。だから、お客様が「これがほしいな」と思っているものはちゃんと入っているという自信はあります。

 もちろん、今のレースゲームに限らず、業界全体の風潮として「これもあれも入ってます」といった傾向が悪いとは思わないのですが……それらを入れるために例えば、「MotoGP」でシーズンモードが入っていなかったらさびしいじゃないですか。やっぱりニーズを優先して入れた結果が今の製品になっているということです。

 ただ、先ほども言いましたが、もし次があるならこのままではなくて、新しいモードを追加してみよう、といったプランはありますね。これで満足しているわけでもない、ということですね。

――もう1つ気になっていたこととしては、PSPの「MotoGP」は、PS2版の移植なのか? ということなんですが……。

 移植という言葉は、同じ作品がゲーム内容は変わらずに、違ったハードで動くといった意味合いですよね。そういう意味では「MotoGP」のシリーズも「4」にいたるまでに、ゲーム性が大きく変更されてきているものではないですよね。初代「MotoGP」からかなりいいものができていて、モードの追加などで最新の状況になっていますが、でも、骨となっているところは大きく変わっているわけではないです。PSP「MotoGP」も骨となっているところは変わっていないですね。

 製作している我々にとっては、そういった意味ではPSP「MotoGP」はある意味「MotoGP5」でもあるわけです。今回はPSPにハードを移しているので、ナンバリングはしていないですが……。「4」の日本版にはなかった通信対戦も入れていますし、データも最新版ですし。やっぱり移植作ではなく次回作という意気込みで作ってきました。

 個人的には、“「これを持ち歩ける」ということが新しい機能だ”と思っています。繰り返しになっちゃいますが、これを持ち歩いてほしいですね。そういう意味もあって、なんとかもてぎで行なわれる日本GPの1カ月前に発売日を設定したんですよ。こういうものって、例えば日本GPの前日に発売しても、サーキットで遊ぶには間に合わないってこともありますよね。そのリードタイムを取って、1カ月前に設定したんですよ。

 さらに言うと、ぜひ練習をしてサーキットで対戦してほしいですね。華麗にサーキットを走れるように。

――自分のひいきのライダーが、レース結果とは別に速いと気持ちいいですよね。

 「俺は中野(真矢)で勝つ」とか、「本当の玉田(誠)はこんなに速いんだ」とかね。そういう遊び方もしてほしいですね。

――リリースを早めにした理由はそういうところにあったんですね。

 でも実は、ライダーとバイクを作るスタッフが、私の予想を遥かに超える頑張りを見せてくれまして、2005年度の参戦ライダーを全員作っちゃったんですよね。今までもがんばってくれていましたが、今回は、1回しか走ってないようなスポット参戦のライダーまで再現しちゃってます。レアなライダーもばっちり登場しますので。

 例えば、宇川 徹選手とかも、一度MotoGPの戦列から離れた形になってますが、キャメルホンダとモリワキでそれぞれ代走していまして、両方収録しています。松戸直樹選手とか清成龍一選手とか……、伊藤真一選手もドゥカティで走ってますし。「全選手が登場する」というのは、新しいモードを追加するぐらいの価値があることだと思っています。

――MotoGPクラスはばっちり再現されている。

 3つのクラスでどれをチョイスするか、といえばMotoGPクラスになりますよね。

――個人的には日本人ががんばっている残りの2つのクラスもぜひ……。

 そうですね。去年のもてぎでは250ccクラスで日本人が優勝してますしね。


■ 「挙動エンジンはPS2版と同等」

――「2」あたりから、実際のレースの結果を反映するようにCPUライダーも動くようにチューニングされていますが、PSPではどうですか?

 「2」から、途中でCPUライダー同士で争うようになりましたね。スタート時点から、実際のレースの展開をある程度再現できるようにしています。もちろん、ユーザーの皆さんが楽しめるようにCPUライダーがいろいろなことをやっていますので、走り次第では最終順位が変わることはありますが。「4」からCPUライダーもミスをするようになったので、実際のレースを参考に、似たようなパターンでミスします。

――周回数によって、再現度も変わってくるんですよね?

 基本的には速いライダーは早く、遅いライダーはそれなりに、雰囲気を再現できるように調整しています。2周でも5周でもFULLでも。CPUライダーの調整は「MotoGP」のころから私が担当しているんですが、年々プログラムの質も上がっていますし、転倒などの新技術も入ったりしてますので、それに合わせて力をつけながら調整して、周回数によってちゃんと展開が楽しめるように作っています。

――FULLラップの調整は大変ですね……

 でも、ネットなどで調べてみると、いまだに「MotoGP4」で250ccでシミュレーションONでYamaha Kurzで優勝しようとがんばっている人がいるんですよね。そういう人がいるから、大変でもFULLラップははずせないですね。3クラス、難易度が3つ、コースが19あって、天候が2つあって……調整すべきレースを計算するとクラクラしましたが、PSPではそこまではなかったので。

――前から気になっていたんですが、「チャレンジ」モードの課題設定はどのように決められているんですか?

 いろいろあると面白そう、というところが原点ですね。それもありますし、残念ながらレースゲームはコースを周回して、速いライダーが勝つ、というわかりやすいところがある反面、それだけしか遊びがないと取られがちじゃないですか。かといって、扱っているテーマが実際のレースだけに大きくはずしたりはできない。そうすると、周回して早い人が勝つという枠を崩さずにできるだけちょっとした“箸休め”的なものを入れたいということで頭をひねった結果です。

 「チャレンジ」モードについては、無理に遊ぶことはないです。ちょっとした休憩に使ってみてほしいし、あれはあれで面白く遊んでもらえる人にはハマってもらえる内容になっていると思います。「3」から導入された仮想サーキットといったことは、「チャレンジ」モードだからできたんですよね。峠を100km/hオーバーで走るということはいかに恐ろしいか、ということを学んでいただければ……。

――話は変わりますが、ハードが変更されたことによって、操作関連のチューニングは変化しましたか? 特にアナログではスライドパッドとアナログスティックの形の違いが操作に影響を与えそうなイメージだったんですが……。ボタンの感圧フィーリングも違いますし。とくにシミュレーションONではシビアになりますよね?

 アナログパッドでも方向キーでも遊びやすいように調整を施してあります。そこはメインプログラマーが念入りに……。最初はもちろん違和感がないとは言いませんが、数周走ってもらえれば、すぐに違和感なく走ってもらえると思います。個人的には方向キーのほうが得意ですね。

――ボタンの数が違っている点に関してはどうでしたか?

 「MotoGP4」でPS2のすべてのボタンを使っていましたから、いろいろ検討したんですが、単純に2つボタンが減っているので、アクションボタンを泣く泣く削ったりしました。役割の異なる機能を1つのボタンに割り当てることもできませんし。

――20台以上が同時に走るMotoGPのレースでは、やはり描画負荷がかかりそうなコースも多いですが、PSPでの再現は「リッジレーサーズ」とはまた違った苦労があったんじゃないですか? 見通しのいいコースとか。

 そこはうちのスーパースタッフがなるべく違和感のないように、見えないところで土木作業を繰り広げてますね。

――それは単純にコースで使われるポリゴンを削る、という作業なんでしょうか?

 1画面内に表示できるポリゴン数は決まっていますから、見えている範囲では景色が欠けたり、突然現われたりしないように裏で削っているんですよね。

――実車レースゲームをテーマにしている本作で、正直、「よく収まっているな」と……CPUの計算コストも相当かかっていると思うのですが? PS2の「MotoGP」の挙動エンジンと比べて、再現度はどうなんでしょう?

 そこがうちのスタッフの優秀なところですね。ただ、PS2の「MotoGP」とのエンジンの比較という観点で検証したことはないんですが……。プログラマーに聞くと、「同じエンジンが載せられるよ」ということで、載せちゃったらしいんですよ。出入力系の違いはありますが、基本的に同じものが載っていると思ってもらって結構です。どこから計算コストを捻出しているのかはわかりませんが。

――今回も難易度のイージーとノーマルには「ショートカット」のペナルティがないですよね?

 「ショートカット」ペナルティは、ハードとエクストリームで「あり」にしてあります。それと、「タイムアタックモード」ですね。それと、「マルチプレイヤー」モードではなしにしてあります。見ず知らずの方たちとの対戦では、紳士協定を結んでいただくなり、話し合いをしてもらったほうがいいかもしれませんね(笑)。ショートカットできるポイントがコースによっていろいろありますので。

――BGMに関してはどうですか? 曲が前に出るタイトルではないと思いますが。

 今回は新しいサウンドスタッフも入って、よりノリノリのデキになっていると思います。結構自信がありますよ。

――サウンドといえば、効果音に関してはいかがですか?

 効果音……エンジン音や排気音は、ナムコ時代からのサウンドスタッフのノウハウがぎっしり詰まっているんですよ。うちのサウンドは本当にいいですよ(笑)。出てくるBGMや効果音には信頼がおけますからね。中西(哲一氏)がリーダーとなって、SEとBGMのバランスを見極めて提供してくれています。SEを作っているのは彼なのですが、エンジンの形式をキーポイントにして実際に収録してきた音を加えてサウンドを作っていますね。メーカーごとの個性をきちんと再現してくれてますし。


■ 「200mの看板を見たら、ブレーキをかけて減速しましょう」

――歴代シリーズにあったチュートリアル的要素がなくなっているのは個人的に残念だな、と思うところなんですが……。

 「4」でも入れていましたが、私も個人的に申し訳なく思っています。

――このシリーズは、“ゲームから入ったユーザーにサーキットにいってほしい”、“バイクファンにもこのゲームをファンアイテムとして触ってほしい”、という意図が感じられるシリーズなんですが……。

 どちらもありますね。ゲームからTVやサーキットでレース観戦という流れは日本のユーザーに多いと思います。ヨーロッパでは逆かな。そういった意味でも、チュートリアルがないのは申し訳ないです。とくにバイクを運転していない人には。

――個人的にですが、毎回まずブレーキをかけるということを意識しないと、コーナーですぐにオーバーランという流れになりがちです。すぐに慣れますが。最近のレースゲームに慣れている方は、そんなことはないと思いますけど。

 「200mの看板を見たら、ブレーキをかけて減速しましょう」と電源を入れて立ち上がった時のメッセージに入れたいぐらいです。この記事を読んだ方にはぜひ、コースの手前できちんとブレーキをかけましょうとお伝えしておきます。

――ここ数年の「MotoGP」は、テレビ中継での視点も増えましたし、テレメトリーなどの情報も増えました。PSPでは無理かもしれませんが、リプレイでの再現に関してはどうお考えですか?

 例えばカウルの中のカメラなどを再現しようと思うと、バイクもライダーもさらに作りこまなくてはいけなくなります。そういった意味では、あの中継のクオリティを完全に再現できるとすれば、次世代機以降になると思います。個人的な夢は、無限の描画能力と無限の制作時間があれば、あのスタートシーンをそのまま上からのカメラで再現したいですね。そのあと1コーナーでの渋滞とかも。

――最後に、「MotoGP」に関してのアピールをお願いします。

 まず、先ほども言いましたが、ぜひ買っていただいて、日本GPではこのソフトを持ってサーキットで遊んでほしいですね。歴代シリーズを遊んでいただいている人も、ぜひバイク好きの友達と対戦してほしいです。8人まで遊べますし。顔の見える相手と勝った負けた、という駆け引きを味わってほしいです。

 初めてこの「MotoGP」を遊んでいただく人は、まずは「ブレーキアシスト」をONにしてもらって、サーキットをゆっくり走ってみてください。1つのコースを5周、10周すれば、少しずつうまくなっていけると思います。これをきっかけに、「MotoGP」の世界に興味をもっていただければ……おまけのムービーも入っていますので……そうなってもらえると、これ以上うれしいことはないですね。

――どうもありがとうございました。

※画面は開発中のものです
(c)1998-2006 NBGI Licensed by Dorna Sports

□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□バンダイナムコゲームチャンネルのページ
http://www.bngi-channel.jp/
□製品情報
http://namco-ch.net/motogp_psp/
□関連情報
【6月2日】バンダイナムコゲームス、PSP「MotoGP」を8月24日に発売決定!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060602/mgp.htm

(2006年9月11日)

[Reported by 佐伯憲司]



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