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ピーター・ムーア氏インタビュー
日本での成功なくしてXbox 360の成功あり!?

マイクロソフト、インタラクティブ・エンターテインメント・ビジネス、エンターテインメント&デバイス事業部、コーポレート・バイスプレジデント、ピーター・ムーア氏



■ どうなった「日本での成功なくしてXbox 360の成功無し」宣言

「ブルードラゴン」は日本のXbox 360を救えるのか?
 北米と欧州で好調なXbox 360は2006年3月末までに全世界で320万台越えを達成した。北米が180万台、欧州が110万台、日本を含むその他の地域が30万台という内訳で、日本では20万台前後といわれている。Microsoftは2006年7月までには500万台出荷を見越しており、さらにその先、2006年内には1,000万台出荷を予見した。北米と欧州で吹き止まないXbox 360旋風を見越せばこれはかなり現実味のある予見だといえる。

 日本と韓国のコラボ企画であった「Ninety-Nine Nights」はついに4月に発売されたもののXbox 360のキラータイトルというほどの牽引タイトルにはなれておらず、Unreal Engine3.0ベースでナムコ開発の超リアリズム・ハードボイルド3Dアクションゲーム「フレームシティ」は正式に発売中止の決定も報じられた。このこととは無関係だと思うが、筆者が取材する範囲内においても、Xbox 360“専用”タイトルとして開発されていたタイトルがPS3とのマルチプラットフォームになったり、あるいはXbox 360での開発/発売を断念してPS3専用タイトルに方針を転換する日本のゲームスタジオも出てきている。

 5月以降、Xbox 360には「デッドライジング」(カプコン)、「ブルードラゴン」(ミストウォーカー/マイクロソフト)といった日本発のビッグタイトルが控えているが、PS3やWiiの登場を待つ買え控え層の首を振り向かせることができるかといえば、実際問題、結果はわからないが、爆発的なヒットは難しいかもしれない。

 このあたりについて、マイクロソフト、インタラクティブ・エンターテインメント・ビジネス、エンターテインメント&デバイス事業部、コーポレート・バイスプレジデントを務めるピーター・ムーア氏に聞いてみた。

「日本でのシェア拡大に向けては、日本のゲームユーザーに喜ばれるタイトルを出すことを続けていくしかないと思っている。『ブルードラゴン』(ミストウォーカー/Microsoft)や『ロストオデッセイ』(ミストウォーカー/フィールプラス/Microsoft)などのタイトルがその代表的なタイトルとなるだろう。Xbox Liveの普及も重要で、クラシックなアーケードゲームを手軽に楽しめるXbox Live Arcadeも、日本のユーザーに受け入れられると考えている」(ムーア氏)

 言っていることが去年のXbox 360発売前と全く変わらない内容だったので、正直、驚いたのだが、言葉通りに受け取れば、「地道に日本ユーザー向けタイトルを出していけばいつかは……」ということなのだろう。言葉の裏を読めば「シェアとして全く伸びる見込みのない日本市場に対して、なにかアグレッシブな具体策を用意してもがくよりは、好調な北米、欧州からガンガン攻めていく」といった感じだろうか。

 2005年5月のE3直後、日本で開催されたXbox 360プレスカンファレンスにおいて当時のXbox事業本部長、丸山嘉浩氏は「日本市場の成功なくしてXbox 360の成功無し」と宣言したものだが、その丸山氏も今はXbox 360ビジネスの表舞台から退いてしまった。あの公約(?)は丸山氏と供に取り下げられた……と考えるのは邪推が過ぎるだろうか。


■ 夏はみんなゲームしないだろう?

 任天堂「Wii」は秋から冬に発売されるといわれている。そしてソニーPS3は11月11日に発売される。

 あと数カ月間は、“次世代ゲーム機”と呼ばれるゲーム機として、Xbox 360は唯一の存在でいられる。かつて「日本におけるXboxの失敗の最大の原因はPS2発売前に出せなかったこと」とMicrosoftは分析していたが、今回はその反省点を克服した形だ。実際、それは北米と欧州で良い結果をもたらしている。

 この優位性を活かすには、ハードとソフトを売りまくってプラットフォームをフル回転させることなのだが、日本でのXbox 360の展開はそこまでうまくまわらないようだ。

 「Xbox.jp」サイトのXbox 360のソフトの発売スケジュールを見てみると一目瞭然で、この夏のXbox 360ソフトの発売スケジュールはかなり寒い。マルチプラットフォーム展開されたタイトルのひとつだったり、PC版が既に出ているものだったり、北米で半年前に発売されているものだったり……と、少なくともXbox 360拡大のために日本のゲームユーザーに配慮して用意されたタイトルとはいいにくいものがほとんどなのだ。しかも、上でムーア氏が指摘した「日本のゲームユーザー向けタイトル」は、なんとWiiやPS3の発売を待ってから発売されるような感じだ。

 上でXbox Live Arcadeのことをムーア氏が言及しているが、正直言って、これを目当てにXbox 360を購入する人は少ないだろう。携帯ゲーム機で遊べるような内容が、据え置き型ゲーム機のキラーコンテンツにはなりえない。ただし、一度獲得したXbox 360ユーザーを掴んで離さないコンテンツとしての価値は高い。Xbox live Arcadeで新規Xbox 360ユーザーを獲得できると本当に信じているのであればその考えは改めるべきだ。

 いずれにせよ、少なくとも日本においては、Xboxの反省から学んだ教訓が実践できなさそうな雰囲気だ。これから夏にかけて日本に魅力的なタイトルが少ないのはどうにかならないものなのか。

「夏というのは、みんな、ゲームから離れて外に出る季節だ。それは日本も、北米も欧州もです。それに今年はサッカーのワールドカップもあるからね」(ムーア氏)

「Mass Effect」(Biowareマイクロソフト)
 ジョークなのかマジメな受け答えなのかはわからないが、とにかく、日本におけるXbox 360の夏商戦は本腰を入れないということを認めるというわけだ。欧米、欧州ではWiiやPS3発売前に「TESTDRIVE UNLIMITED」(Eden Games/ATARI)、「Mass Effect」(Bioware/Microsoft)、「Gears of War」(EPIC/Microsoft)、「John Woo presents STRANGLEHOLD」(MIDWAY)など、E3期間中のピーター・ムーア氏のプレスカンファレンスの言葉を拝借するならば「2世代目の次世代ゲーム機向けゲーム」が登場する。これの「有る」と「無い」が北米/欧州と日本とでのXbox 360の温度差をさらに決定的なものとするのではないか、と心配だ。


■ Microsoftは日本へのXbox 360普及を諦めたのか

 5月9日に開催されたMicrosoftのE3プレスカンファレンスのオープニングの映像を飾ったのは、「ブルードラゴン」でもなく「ロストオデッセイ」でもなく、まして「Ninety-Nine Nights」でもなく「Gears of War」だった。そしてPS2独占供給だったはずの「グランド・セフト・オート」シリーズの最新作「同4」がXbox 360専用タイトルとしてリリースされることがプレスカンファレンスの真ん中ごろに報告された。そしてラストでは「Halo 3」の制作発表が行なわれ、プレスカンファレンスの幕は閉じた。

    追記修正:当初、「グランド・セフト・オート4」がXbox 360専用タイトルとしてリリースされるとしておりましたが、追加取材により、「グランド・セフト・オート4」はPS3でもリリースされるが、追加シナリオがXbox Live経由で独占供給されることが明らかになりましたので、ここに訂正してお詫び申し上げます。

社会現象にまで発展した「グランド・セフト・オート」の最新作はXbox 360に 「グランド・セフト・オート4」の入れ墨を入れたピータ・ムーア氏


タイトル表示だけだったTECMOの「デッド・オア・アライブ・エクストリーム2」。日本におけるXbox 360への最大の貢献者だったTECMOがこの扱いだったE3プレスカンファレンス
 日本向けのタイトルは幾度も流れたことのある「Ninety-Nine Nights」のムービーが流れ、TGSの時と同じ「ブルードラゴン」のイメージ映像が流れ、「デッド・オア・アライブ・エクストリーム2」に至ってはタイトルロゴの表示のみに留まった。なんというか……タイトル数稼ぎのためにひっぱってきた程度の扱いで、実際に世界中のゲームメディアが集まるプレスカンファレンスでこうした日本タイトルの映像が出てきたときの拍手はまばらだった。「Gears of war」、「グランド・セフト・オート」、「Halo 3」では悲鳴が起こり、指笛がこだまするのと比べるとかなり寂しいものであった。「デッド・オア・アライブ4」の映像をかなり長めに流し、スクウェア・エニックスの参入や日本向けタイトル・日本発タイトルがXbox 360に充実していく未来像を時間をかけて説明していた昨年のE3プレスカンファレンスとはだいぶ様相が違う。

 改めて何度も言う必要はないとは思うが、こうした今年のプレゼンを見る限り、MicrosoftはXbox 360をもはや欧米、欧州向けを“大”前提としたマーケティング戦略に移行するように思える。

 試験を受ける際、高い点を取るためには難しい問題は後回しにして易しい問題から取りかかった方がいい。あのプレスカンファレンスを見る限り、“難しい問題”の日本に固執して時間と金を浪費するより、それ以外の世界におけるXbox 360の普及を先行させ、ゲーム機としてのデファクトスタンダードを確立してしまおうとする戦略にすげかわったように思えるのだが……。

 かつて日本でのパソコン市場はNECのPC9801シリーズがナンバーワンシェアを誇っていたが、ワールドワイドに普及したMicrosoft Windowsアーキテクチャの影響が日本にも波及し、その結果、日本のパソコン市場もWindowsプラットフォームに席巻された。Xbox 360……あるいは次の世代でもいいが、とにかくMicrosoftのゲーム機が世界でのデファクトスタンダードとなれば、世界中のゲームパブリッシャーはXbox 360前提のゲームソフトをリリースするようになるだろう。日本のゲームスタジオも、世界で売ることを意識すれば、その流れに追従するようになるかもしれない。

 日本を直接攻めるのではなくて、日本以外の世界を征服して外堀りを埋めてしまえばいつか日本も世界の流れに追従するだろう……そんな考えが今のMicrosoftにはあるように思えてならない。

「日本にも注力していく」とムーア氏
「我々、Microsoftは『征服』という言葉は使えない(笑)。それはともかくとして、いや、そういう戦略を採っているわけではない。確かに我々は今、日本以外の国に注力しているが、同時に日本にも力を注いでいる。日本のゲームユーザーの求めているものを提供して日本のゲームユーザーから支持を得られるようにしていきたいと常に考えてはいるつもりだ」(ムーア氏)

 「日本を諦めた」と答えるはずはないと思っていたが、意味合い的には「日本も気にしてはいるけど、でもやっぱり日本以外の地域に重きを置いている」という感じの答えになっているように思える。

 実際、力のかけ具合がどのくらい違うか……はXboxの日本サイトとワールドサイトの「近日登場予定タイトル(Upcoming games)」の量を見れば一目瞭然だ。


■ 来年の今頃、Xbox 360がシェア・ナンバーワンをとっているはずだ

 ソニーはPS3をゲーム機としてだけでなく、汎用コンピュータとして訴求していくことも明らかにした。ソニーブースで公開されたPS3用のWebブラウザは、Windows Vistaを彷彿させるマルチウィンドウ&3Dグラフィックスベースのインターフェイスでかなり本格的なユーザビリティを備えていた。

北米、欧州では「Gears of War」は間違いなく今年最大のXbox 360キラータイトル。グラフィックスだけでなくゲームも非常に良くできていて面白い。日本での発売も期待したいが……
 値段の高さを「汎用コンピュータであるから値段は高くて当然なんだ」という議論にすげ替えているという非難の声もあるが、PS3が本当にソニー・コンピュータエンタテインメントの言うようにLinuxベースのオープン・プログラミング・プラットフォームとして展開されていくことになれば、PS3のライバルはXbox 360というよりもWindows PCということになってきそうだが……。

 Microsoftはこうしたソニーの「据え置き型ゲーム機を汎用コンピュータとして使わせよう」とする戦略についてどう思うのか。

「全く聞いたことがないほどの馬鹿げた話だ(笑)。SCEにPS3をどうやってコンピュータとして使えるのかと聞きたい。コンピュータとして使うにはデータを入力してそれを出力するというデータの流れが必要になるわけだが、PS3にはそうした手だてがないではないか。PS3をエンターテインメント“コンピュータ”と呼ぶのは別にそれはそれでいいが、いずれにせよ、今世代で重要になるのはネットワークだ。ネットワークに接続して相互に接続することでもたらされる経験というのが重要になる。SCEにはまだそういったものがなく、対して我々にはXbox liveという強力なネットワークシステムがある。これは最大の強みとなるだろう」(ムーア氏)

 さて、今、北米や欧米では、ゲーム機は出せば売れるし、ゲームソフトも出せばそこそこ売れるという、かなり過熱気味の市場状況になっている。ところが、一方、日本ではゲームプレイ人口そのものは増えつつあるものの、「据え置き型ゲーム機離れ」が起こっている。これは多くのゲームプレーヤーはゲームを据え置き型機ではなく、携帯電話や携帯ゲーム機で楽しむ方が主流になりつつあるためだ。この据え置き型ゲーム機離れに対する打開策として、任天堂は据え置き型ゲーム機ならではの楽しいエンターテインメント体験としてWiiを投入した。ソニーの方は、最先端ゲーム機でありつつも一家に一台あるとうれしい汎用コンピュータとしての価値を見出させようとしている……というわけだ。

ビル・ゲイツ氏をE3に初登場させてまでアナウンスした「Live Anywhere」。登場が噂されるWindows Mobile搭載のXboxの小型ゲーム機への布石という呼び声も高い
 一方、Microsoftの場合はXbox 360を汎用コンピュータとして使わせるとWindows PCビジネスと競合してしまうのでこの戦略は取れない。そこで、Windows、Xbox 360、携帯機器というハードウェア面での住み分けはきっちりと行ない、その代わり全てのハードウェアにおいて、共通に利用できて相互にシームレスにプレイが可能な統合ゲームプレイ環境を構築することを決断したわけだ。これが9日、ビル・ゲイツ氏自らが登壇して発表した「Live Anywhere」になる。

 今世代のゲーム機ビジネスは、3社が微妙に違うコンセプトを込めて訴求してきていると感じる。ただの性能競争だった先代での戦いとは少々様相が違う。

 Wii、PS3の全てが発売され、3社のプラットフォームが出そろう来年のE3の時点ではどのようなシェアになっているのだろうか。

「いうまでもなく当然、我々がトップだろう。何しろ我々には今勢いがある。9日にビル・ゲイツが1,000万台の出荷を予見したがあの通りになる。今年の後半、WiiとPS3が発売されたところで、この予見は覆らない。ナンバーワンは確実に我々だ」(ムーア氏)

 確かに、世界市場のシェアでは本当にこうなるかも知れない。

 ムーア氏の顔には「Xbox 360の成功は日本での成功なくしてもあり得る」と書いてあるように思えた。


□Microsoftのホームページ
http://www.microsoft.com/games/
□Xboxのホームページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
□関連情報
Electronic Entertainment Expo 2006 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060510/e3link.htm

(2006年5月16日)

[Reported by トライゼット西川善司]



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