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会場:Los Angeles Convention Center
昨年のE3ではVIP限定公開だったが、今年のE3では、ついにElectronic Artsブース内に「SPORE」シアターを設け、Will Wright氏を含む「SPORE」開発スタッフによるデモンストレーションが公開された。「SPORE」シアター前には、連日朝から長蛇の列ができ、前評判どおりの人気の高さを示していた。本稿では、リアルタイムデモの内容から、「SPORE」の魅力をお伝えしていきたい。 なお、「SPORE」の概要については、過去2度のGDCレポートで詳しく触れているので、「SPORE」を初めて知ったという読者は、まずはそちらから参照いただきたい。
■ プロシージャル生成で、ギャラクシー規模の生命体バリエーションを実現するクリーチャーメイキング
クリーチャーフェイズは、「SPORE」が内包する6つのフェイズのうち、微生物世界を扱ったタイドプールフェイズの次にあたる。クリーチャーメイキングによって、プレーヤーの望み通りの生物を誕生させ、陸上や海中を舞台に種としての活動を開始していく。 クリーチャーフェイズ後は、部族的な活動を行なっていくトライバルフェイズ、都市を構築し、文化的な活動を行なっていくシティフェイズ、都市の規模を国家規模にまで広げ、対抗勢力との武力衝突や外交によって文明としての立ち位置を明確にするシヴィライゼーションフェイズ、そしてUFOを取得し、ギャラクシー規模でテラフォーミングや惑星規模の植民地化していくスペースフェイズと続いていく。 クリーチャーフェイズで作成したクリーチャーは、後々のスペースフェイズまでプレーヤーの分身となり、種としての個性をアピールできる重要な要素である。それだけにクリーチャーメイキング機能は、高いポテンシャルが求められる。 GDCレポートでも触れたが、「SPORE」の革新性はこのクリーチャーメイキングに隠されている。プロシージャル生成(パラメータとスクリプトによってオブジェクトを自動生成するアプローチ)によって、ほぼ無限のキャラクタバリエーションを実現しつつ、データサイズはKBレベルまで落とし込む。過去にあらゆるデベロッパーがチャレンジしつつ、到達できなかった領域に「SPORE」は踏み込もうとしている。 プロシージャル生成の仕掛けは、膨大な量の「ポリネート(受粉)コンテンツ」にある。クリーチャーメイキングでは、胴体、触覚、頭、手、足、しっぽなどのパーツを「ポリネートコンテンツ」と呼び、その集合体によってひとつの種を形成する仕組みになっている。考え方としては新しくも何もない、普通の考え方である。 普通ではないのは、ポリネートコンテンツのバリエーションの圧倒的な豊富さ。そして長さ、向き、角度、大きさなどをスケーラブルに変更できるカスタマイズ性の高さ、それでいてなお完成時に生命体としての整合性を維持するプロシージャルアニメーションシステムなどである。たとえば、「SPORE」のクリーチャーメイキングで、オタマジャクシに、目を付け、触覚を付け、手足を伸ばしていくとする。目の位置はどこにあってもいいし、触覚の長さ、向き、角度も自由に調節でき、手足は長さはもちろん、いくつ関節をつけてもいい。 この結果、あたかも人間のような二足歩行のオタマジャクシもできるし、カブトムシのようなオタマジャクシにもできる。形容しがたい妖怪のようなものもいくらでも作れる。さらに皮膚のテクスチャ、模様などを工夫すれば、広い銀河にあって同じ生物はふたつとない個性的な生き物を創造することができる。クリーチャーメイキングは、ユーザーに種の誕生主としての興奮を与えてくれる要素だ。 もっとも、キャラクタには、パワー、スピード、ステルス、草食性、肉食性、センス、ソーシャルといった可視パラメータがあり、各ポリネートコンテンツをどう受粉させるかによって、能力が変化していく。あまりに能力が低いと活動に支障がでるため、必然的に動物らしいデザインに落ち着くことになる。あたかも妖怪のようなクリーチャーは、少数派になりそうだ。 なお、プロシージャル生成されるコンテンツは、クリーチャーだけではない。ゲーム内に登場するあらゆるオブジェクト、たとえば、建物、乗り物、兵器、UFOなどに対して、それぞれ個別にメイキングツールが用意されている。「SPORE」は、プロシージャル生成によって、全フェイズが構築されているといっても過言ではない。
■ プロシージャル生成の強味が遺憾なく発揮されるスペースフェイズ
実際に新しいフェイズに到達するためには、フェイズごとに定められた一定の目標をクリアする必要がある。わかりやすい例でいうと、シヴィライゼーションフェイズからスペースフェイズへ移行するためにはUFOを製造する必要がある。そのためにはRTSのような星全体の覇権闘争に勝ち抜き、莫大な資金を貯める必要がある。プレーヤーは、新たなフェイズの新たなゲーム性を楽しみつつ、種としての活動を行ないながら、少しずつ成果を積み上げ、時間をかけて次のフェイズに到達していくことになる。 「SPORE」の真骨頂は、やはりUFO取得後のスペースフェイズだ。宇宙に舞い上がると、自分の棲む星は太陽系のひとつの惑星に過ぎないことがわかる。さらに高度を上げると、惑星群が太陽を中心にゆっくりと公転していく様子が見て取れる。プレーヤーは、お隣の惑星のひとつに入植してもいいし、太陽系を飛び出して、新たな種を求めて他の太陽系を目指してもいい。 光速で宇宙を移動すると、そこには無数の恒星群があり、恒星にはそれぞれ複数の惑星を持っていることがわかる。惑星といっても地球のように生物が生活できる星は一握りで、SF映画のように氷結した星、マグマで満たされた星、水ばかりの星など、こちらもまたプロシージャル生成された無限のバリエーションが用意されている。 惑星にカーソルを当てると、生物、空気、水の有無などがわかる仕組みになっている。恒星群を移動しつつリサーチを繰り返していくと、そのうち、他の文明が棲息する惑星にたどり着く。武力的な脅しをかけて植民地化を狙ったり、UFOからいわゆるアブダクト光線を発して種のサンプルとしてキャプチャーしてもいい。また、その文明は、プレーヤーの文明より高度に発達していることもある。その場合は、外交を行なうなどして、その未知のテクノロジーを手に入れることもできるようだ。 デモでは、無通告で攻撃を仕掛けた結果、その星の文明から集中砲火を浴び、這々の体で星を離脱するシーンを見ることができた。場合によっては母星が他の文明から侵攻を受けるようなケースもあるということだ。 こうした未知の文明との遭遇は、インターネットを介して、他のプレーヤーのデータを入手することで、一層ドラマティックになる。「SPORE」のオンライン機能の全容は未知数だが、少なくともプロシージャル生成したお気に入りのキャラクタ、乗り物、そして文明そのものを、インターネット上にアップロードし、すべての「SPORE」ユーザーがダウンロードできる環境が提供される。すべてのデータは、パラメータ化されたプロシージャルコンテンツであるため、ファイルサイズは極めてミニマムに抑えられる。仮に50万個という惑星群に多くのユーザーデータをダウンロードしたとしても、そのサイズはMB単位に収まってしまう。こうなると、まさにギャラクシー規模の「The Sims」が展開されるわけで、スペースフェイズの楽しみは無限大といっていい。 「SPORE」の発売時期はいまだに未定となっているが、ひとつの目安として「2007年中」を挙げた。いつ完成するのかわからないとしていた昨年に比べると格段の進歩であり、いよいよ完成が間近に迫ったという印象を受ける。「The Sims」シリーズを凌駕する新たな超弩級環境シミュレータの完成をじっくりと待ちたいところだ。
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□Electronic Artsのホームページ(英語) (2006年5月14日) [Reported by 中村聖司]
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