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Game Developers Conference 2006現地レポート

「Ninety-Nine Nightsのすべて: 次世代キャラクターデザイン」
世界に受け入れられるための「N3」の戦略とは

3月22日開催

会場:San Jose McEnery Convention Center

左より、サンユン・リー氏、水口氏
 「Game Developers Conference(GDC) 2006」において、Xbox 360に関連するセッションはかなりの数に上ったが、その中で、この「Ninety-Nine Nights(N3)のすべて: 次世代キャラクターデザイン」はかなりの人気だったのではないだろうか。それに応えるように、キューエンタテインメント株式会社代表取締役CCOの水口哲也氏、そしてPhantagramのサンユン・リー氏が、日本で来月、4月20日に発売される「N3」について、アツく語ってくれた。

 「アクションゲームとして次世代機にふさわしいクオリティを引き上げること」、「戦争における双方の正義を体験させることで、ゲームにおける新しいドラマ性を追及してみよう」……“大軍勢アクションとドラマの融合を目指そう”これがプロデューサーとディレクターの2人がこのタイトルを開発するにあたって最初に確認しあったことだという。この2つの要素がXbox 360上で化学反応を起こせば、それは新しいものになるに違いない、そう確信してチームは開発を続けてきた。

■ 戦略性と爽快感のバランスに留意した軍勢アクションゲームシステム

圧倒的破壊力を持つ「オーブスパーク」はキャラクタごとに異なる
 リー氏によれば、このゲームのゲームデザインコンセプトとして、まず戦闘シーンをどう表現するか、ということを考えたという。従来の軍勢アクションが1対100~500人をターゲットとして戦うのに対し、1対1万人という大きさのシステムを目標として掲げた。この時点で、従来の軍勢アクションとは異なる戦闘スタイルを考える必要があった。

 「N3」において、これは「ガーディアンシステム」、つまりプレーヤーキャラクタが、仲間に指示を出すことで、AIコントロールして戦う、いわゆるリアルタイムストラテジー的要素の導入に結実した。1万人を1人で相手するのは見た目にも無理がある。また、この要素の導入で、同ジャンル他社のゲームとの差別化を図ったわけだ。

 リー氏は、「ガーディアンシステム」とプレーヤーキャラクタのアクションを、20:80のバランスで構成することにした。また、1人だけでなく、それぞれのプレーヤーキャラクタにいろんな動作を付けた。これにより、同じゲームを遊んでいても、その戦闘スタイルはまったく異なるように味付けすることができる。それぞれのキャラクタは武器が異なるだけでなく、独自のアクションを複数付けることによって、戦場の雰囲気すら変えてしまおうというもくろみがあったようだ。

 また、「オーブ」システムにより、X、Yボタンの組み合わせによる通常攻撃によるコンボ、それにより出現する赤いオーブをチャージすることで使える「オーブアタック」、さらにオーブアタック中に敵を倒すと出現する青いオーブをフルに溜め込むことで発動させられる「オーブスパーク」と、オーブのチャージを戦略的に行なうことで、周囲の敵を一掃できる強力な攻撃が可能となる仕組みも取り入れ、爽快感を生み出している。このオーブアタックやオーブスパークもキャラクタごとに異なり、オーブスパークは専用のプログラムまで用意している。

■ 世界戦略を視野に入れたキャラクタデザイン

 「N3」のキャラクタは、“ワールドワイドで受け入れられるように”という使命を帯びてデザインされている。キャラクタデザインに関してはさまざまな手法が考えられてきたが、「N3」においては、7人のキャラクタに中世のヨーロッパを基準に東西入り乱れるいろんな要素を分担させつつ、それぞれのキャラクタをブラッシュアップしていく手法がとられた。

 2タイプ描かれたプロトタイプのイラストから、いきなり3Dモデルを起こし、そこでそれぞれのキャラクタにさらに要素を盛り込んでいく。そして1つを選び、ブラッシュアップの一連の作業を繰り返した結果、キャラクタデザインがほぼ固まったのは半年後。見ての通り、アニメ的なデフォルメと、リアリスティックなテイストの中間でバランスを取ったデザインになっているが、これがワールドワイドを狙った戦略の結果というわけだ。

プロトタイプのイラストと、それを3Dモデルに起こしたもの
次の段階のアルファバージョン。2タイプのモデルまでが起こされた

 また、メインキャラは「N3」の大軍団の中でも目立つように、いろんなポイントを絞り込んでブラッシュアップが行なわれたという。羽がついているのがその証で、「スターのような魅力がないといけない。遊んでいる間にそのキャラクタに惹きつけられるようなデザインを狙った」とリー氏は言っていたが、デザイナーも「これほど手を加えたことはない」と語るほど何度も手が入ったようだ。例えば、キャラクタをスリムにしたほうがいいのか? それともぽっちゃり系にしたほうがいいのか? これはスリムなほうを選んだそうだが、一概に「ワールドワイド」を狙うということはたやすいが、それを具現化するのは非常に大変だったことがわかる。

 最終的には、キャラクタの性格を反映させて、目や唇の反射具合にリアリティを持たせる(潤んだ瞳などの表現)など、表現のクオリティも向上させることで、8カ月の月日を経て完成に至った。

左はプレス提出用のスクリーンショット。まだ完成版ではなく、この時点で多数のキャラクタの中にメインキャラを置いて、目立つかどうかの確認をしていたという。そして右はほぼ完成したキャラクタのレンダリングモデル
顔の表情にも性格が出るように作りこまれた。右の瞳の反射や、唇の光沢など、光による表現もキャラクタ表現に一役買っている

■ 二律相反……正義と悪をキャラクタの入れ替えで再現したシナリオ

キャラクタによってシナリオ分岐もある
 水口氏が手がけた「ハイデフ」ゲームのシナリオの描き方……シナリオのコンセプトは、「エンタテインメントに昇華した戦争の描き方」だったのではないだろうか。本作ではそれぞれのキャラクタが2者以上の対立、つまりそれぞれの正義を多方向から描く、つまり、まったく違う立場で、同じ戦争に関わる様を描くことで、「99の夜」を浮かび上がらせる、といった手法が取られている。水口氏は、「ゲームとドラマの融合は、その調合を間違うと壊れてしまう」と、その難しさを語っていた。

 また、ドラマ性を持たせる要素には、幕間のムービーシーンも大きな役割を果たしている。本作のデモシーンは、リアルタイムのものと、プリレンダムービーが混在したものになっているが、キャラクタによっては同じ場面でのシナリオ分岐が起こり、選択肢によって展開が変わっていくだけでなく、そのシーンもカメラアングルやセリフを変化させつつ、キャラクタの性格などを浮き彫りにする、といった手法がとられている。

 最終的には、敵、つまりティングバット(ゴブリン)の立場でのプレイが可能になる。今までの仲間が敵、今まで自分が使用していたキャラクタが、今度は自分の仲間を無碍もなく殺していく。そのシーンに直面したプレーヤーが、面白いと思ってくれるかどうか……水口氏はここに不安を感じていたようだ。しかし、「実際にプレイしてみると、ティングバットに感情移入しているんですね。そして、ヒーローを倒す快感も感じられるんですよ」と、実際に導入してみた結果、この「正義と悪の逆転」感覚は非常に好みのものになったようだ。

 このシナリオの原点ともいえるのが、故・黒澤明監督の「羅生門」。この作品についてはいまさら語るのもおこがましいが、もう1つ、いわゆる“9.11”の際の各国メディアの反応にも刺激を受けた。ネットワークの発達した現代なら、どの国のマスコミも、ネット上で能動的に確認することができる。その反応の違いが、水口氏にとって非常に興味深かったのだそうだ。

インフィーとアスファ、兄妹の立場の違いがムービー演出にも表われる 最終的には、敵であるゴブリンでプレイすることも可能。インフィーに対して憎悪を抱くシーン


 このセッションの前日のインタビューを参照してもらえばわかるとおり、水口氏のこれまでの作品と、この「N3」には、その深遠に共通のテーマが流れているという。まだプレイできていないので、記者にはそれを感じることはできていないわけだが、「スペースチャンネル5」や「Rez」のファンがこの「N3」をプレイしたとき、どんな感想を持つのか、非常に興味深いテーマになったことは間違いない。

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□Xbox 360のページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
□製品情報
http://www.xbox.com/ja-JP/games/n/nnn/

(2006年3月26日)

[Reported by 佐伯憲司]



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