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会場:San Jose McEnery Convention Center
「アクションゲームとして次世代機にふさわしいクオリティを引き上げること」、「戦争における双方の正義を体験させることで、ゲームにおける新しいドラマ性を追及してみよう」……“大軍勢アクションとドラマの融合を目指そう”これがプロデューサーとディレクターの2人がこのタイトルを開発するにあたって最初に確認しあったことだという。この2つの要素がXbox 360上で化学反応を起こせば、それは新しいものになるに違いない、そう確信してチームは開発を続けてきた。 ■ 戦略性と爽快感のバランスに留意した軍勢アクションゲームシステム
「N3」において、これは「ガーディアンシステム」、つまりプレーヤーキャラクタが、仲間に指示を出すことで、AIコントロールして戦う、いわゆるリアルタイムストラテジー的要素の導入に結実した。1万人を1人で相手するのは見た目にも無理がある。また、この要素の導入で、同ジャンル他社のゲームとの差別化を図ったわけだ。 リー氏は、「ガーディアンシステム」とプレーヤーキャラクタのアクションを、20:80のバランスで構成することにした。また、1人だけでなく、それぞれのプレーヤーキャラクタにいろんな動作を付けた。これにより、同じゲームを遊んでいても、その戦闘スタイルはまったく異なるように味付けすることができる。それぞれのキャラクタは武器が異なるだけでなく、独自のアクションを複数付けることによって、戦場の雰囲気すら変えてしまおうというもくろみがあったようだ。 また、「オーブ」システムにより、X、Yボタンの組み合わせによる通常攻撃によるコンボ、それにより出現する赤いオーブをチャージすることで使える「オーブアタック」、さらにオーブアタック中に敵を倒すと出現する青いオーブをフルに溜め込むことで発動させられる「オーブスパーク」と、オーブのチャージを戦略的に行なうことで、周囲の敵を一掃できる強力な攻撃が可能となる仕組みも取り入れ、爽快感を生み出している。このオーブアタックやオーブスパークもキャラクタごとに異なり、オーブスパークは専用のプログラムまで用意している。 ■ 世界戦略を視野に入れたキャラクタデザイン 「N3」のキャラクタは、“ワールドワイドで受け入れられるように”という使命を帯びてデザインされている。キャラクタデザインに関してはさまざまな手法が考えられてきたが、「N3」においては、7人のキャラクタに中世のヨーロッパを基準に東西入り乱れるいろんな要素を分担させつつ、それぞれのキャラクタをブラッシュアップしていく手法がとられた。 2タイプ描かれたプロトタイプのイラストから、いきなり3Dモデルを起こし、そこでそれぞれのキャラクタにさらに要素を盛り込んでいく。そして1つを選び、ブラッシュアップの一連の作業を繰り返した結果、キャラクタデザインがほぼ固まったのは半年後。見ての通り、アニメ的なデフォルメと、リアリスティックなテイストの中間でバランスを取ったデザインになっているが、これがワールドワイドを狙った戦略の結果というわけだ。
また、メインキャラは「N3」の大軍団の中でも目立つように、いろんなポイントを絞り込んでブラッシュアップが行なわれたという。羽がついているのがその証で、「スターのような魅力がないといけない。遊んでいる間にそのキャラクタに惹きつけられるようなデザインを狙った」とリー氏は言っていたが、デザイナーも「これほど手を加えたことはない」と語るほど何度も手が入ったようだ。例えば、キャラクタをスリムにしたほうがいいのか? それともぽっちゃり系にしたほうがいいのか? これはスリムなほうを選んだそうだが、一概に「ワールドワイド」を狙うということはたやすいが、それを具現化するのは非常に大変だったことがわかる。
最終的には、キャラクタの性格を反映させて、目や唇の反射具合にリアリティを持たせる(潤んだ瞳などの表現)など、表現のクオリティも向上させることで、8カ月の月日を経て完成に至った。
■ 二律相反……正義と悪をキャラクタの入れ替えで再現したシナリオ
また、ドラマ性を持たせる要素には、幕間のムービーシーンも大きな役割を果たしている。本作のデモシーンは、リアルタイムのものと、プリレンダムービーが混在したものになっているが、キャラクタによっては同じ場面でのシナリオ分岐が起こり、選択肢によって展開が変わっていくだけでなく、そのシーンもカメラアングルやセリフを変化させつつ、キャラクタの性格などを浮き彫りにする、といった手法がとられている。 最終的には、敵、つまりティングバット(ゴブリン)の立場でのプレイが可能になる。今までの仲間が敵、今まで自分が使用していたキャラクタが、今度は自分の仲間を無碍もなく殺していく。そのシーンに直面したプレーヤーが、面白いと思ってくれるかどうか……水口氏はここに不安を感じていたようだ。しかし、「実際にプレイしてみると、ティングバットに感情移入しているんですね。そして、ヒーローを倒す快感も感じられるんですよ」と、実際に導入してみた結果、この「正義と悪の逆転」感覚は非常に好みのものになったようだ。 このシナリオの原点ともいえるのが、故・黒澤明監督の「羅生門」。この作品についてはいまさら語るのもおこがましいが、もう1つ、いわゆる“9.11”の際の各国メディアの反応にも刺激を受けた。ネットワークの発達した現代なら、どの国のマスコミも、ネット上で能動的に確認することができる。その反応の違いが、水口氏にとって非常に興味深かったのだそうだ。
このセッションの前日のインタビューを参照してもらえばわかるとおり、水口氏のこれまでの作品と、この「N3」には、その深遠に共通のテーマが流れているという。まだプレイできていないので、記者にはそれを感じることはできていないわけだが、「スペースチャンネル5」や「Rez」のファンがこの「N3」をプレイしたとき、どんな感想を持つのか、非常に興味深いテーマになったことは間違いない。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ (2006年3月26日) [Reported by 佐伯憲司]
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