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★PCゲームレビュー★

去っていった少年を追って旅立つ少女
前作の続きを描いたストーリーRPG

「英雄伝説 空の軌跡 SC」

  • ジャンル:RPG
  • 発売元:日本ファルコム株式会社
  • 価格:8,400円(限定特典版)
       9,975円(完全版 FC&SC)
       3,150円(ドラマCD&フォトストーリーブック)
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:2006年3月9日発売予定



  •  日本ファルコムの「英雄伝説 空の軌跡 SC(セカンドチャプター)」は、2004年6月に発売された「英雄伝説VI 空の軌跡」の続編となる。ストーリーは前作のエンディングからそのまま続くという、明確な連続性を備えた続編となっており、ファン待望の作品となっている。1年半という時を経て、再び物語が動き始めるのだ。


    ■ エステルは強くなることを決心する……さらに掘り下げられるキャラクタ性

     「イース」、「ドラゴンスレイヤー」シリーズと共に日本ファルコムの看板作品である「英雄伝説」シリーズ。「イース」や「ドラゴンスレイヤー」シリーズがアクション要素の強いRPGであるのに比べ、「英雄伝説」シリーズは、昔ながらのシンボルエンカウント方式を採用したオーソドックスなRPGであり、濃密なストーリー、豊かなキャラクタ描写を実現していて、「イース」などのリアルタイム性の高いアクションRPGとはまた違った魅力を備えている。

    主人公エステル・ブライト。姿を消したヨシュアの姿を求めて、世界の影で動く「身喰らう蛇」の陰謀を突き止めるため、彼女は再び旅立つ
    パートナーを選択することも。大きなストーリーラインに変化はないが、キャラクタ達の関わり合いが変わってくる
    本作は前作と濃密な繋がりを持っている。前作をプレイしてから挑戦することを強くオススメしたい
     「空の軌跡」では、鉱山から採掘される水晶のような結晶体、七耀石(セプチウム)から生み出される“導力”という神秘のエネルギーで動く機関「オーブメント」が発達した世界で物語が展開する。主人公は国家から独立し、人々の依頼によって魔物の退治からもめ事の調査まで請け負う「遊撃士協会」の一員、エステル・ブライトである。

     前作ではエステルは兄弟のように育ったヨシュア・アストレイと共に見習い遊撃士として冒険の旅に出た。旅先で様々な経験をし、多くの人とふれあう中で、2人は成長していった。その冒険の中でエステルは自分の中のヨシュアへの想いに気付くこととなる。

     しかし、ヨシュアは大きな秘密を抱えていた。彼はこの世界を混乱に陥れようとする謎の組織「身喰らう蛇」と繋がりを持つものだった。国内のクーデターを阻止するという大きな任務を見事達成し、喜びに沸く祭りの夜、ヨシュアは一方的にエステルに別れを告げ、行方をくらませてしまう。

     「空の軌跡SC」の物語はここからはじまる。何故ヨシュアは去ってしまったのか。クーデター事件から、遊撃士協会は様々な事件で暗躍する「身喰らう蛇」の影を察知している。組織はどうやらこの世界に大きな混乱をもたらそうとしているようだ。エステルは組織の正体を突き止めるため、そしてヨシュアにもう一度会うために、もう一度自分を鍛え直し、一人前の遊撃士にふさわしい実力を身につける事を決心する……。

     本作「空の軌跡SC」は前作からそのまま繋がっている。今回エステルと冒険を共にする人々の多くは前作と同じメンバーであり、旅先には多くの人との“再会”が待っている。最近発売されたゲームで、ここまで前作と密接な繋がりを持つ続編は珍しいのではないだろうか。「あ、ひさしぶり」という感じで、街の住人1人、1人が前作のストーリーと繋がりを持っている。もちろん、本作は前作をプレイせずにはじめることも可能ではあるが、思い入れがまったく異なってくるだろう。前作をプレイし、そして今作に取り組むことを強くオススメしたい。

     さて、エステルに関わった人々は、エステルとヨシュアの仲の良かった光景を覚えている。しかし、再会するエステルの傍らには、ヨシュアはいない。「ヨシュアは?」と聞いてくる人々に、エステルはこみ上げてくる様々な想いをグッとこらえて、笑顔を向ける。そんなエステルを仲間は気づかう。

     序盤の物語は、前作と同じ場所で展開される。エステルの悲しみを知り、彼女を応援する仲間達。冒険の間に知り合った人々。かつての事件、繋がりを経て、世界は変化している。前作をプレイしていた筆者にとって、訪れる場所で様々な記憶が蘇ってくるのを感じた。物語が進行する世界と、繋がりが深くなっていくこの感覚は続編ならではのものである。

     幽霊騒ぎや市長選挙のごたごたなど、一見小さな事件の裏で、実は大きな陰謀が進行している。全体的には身近な、人々の生活が伺えるような暖かなトーンを持ちながら、やがて世界を揺るがす強大な敵の姿が明らかになってくる。ほのぼのとしたノリやコメディー要素、そしていきなり始まる探偵風の調査など、前作のトーンをきちんと継承しているのが個人的には嬉しかった。

     何故ヨシュアは姿を消さなくてはいけなかったのか、そして次第に明らかになっていく「身喰らう蛇」の強大な力。ゲームを進めていき、キャラクタに入れ込んでいき、ストーリーに引き込まれる。RPGの持つ本質的な楽しさを本作は間違いなく持っている。

     「終わらない物語」はゲームのある意味での理想である。魅力を感じたキャラクタ、世界、彼らともう一度会える。止まったと思った世界でもう一度冒険が楽しめる。筆者自身、前作に魅了された一人である。エステルとヨシュアは再び出会えることができるのか、早く物語を進めたい。1ファンとして、待ち望んだ作品がついに登場したことを祝いたい。

    かわいい物に目がない女剣士アネラス・エルフィード。エステルと共に遊撃士の訓練場で自分を鍛えていた ケビン・グラハム。大阪弁を話す七耀教会の巡回神父。ノリのいい性格をしているが、相当な実力の持ち主 女王の孫娘、クローゼ・リンツ。今は一緒にいることができないエステルとヨシュアの関係に心を痛め、エステルに積極的に協力をしてくれる
    ヨシュアが去ってしまったことを納得できず、狼狽するエステル。やがて彼女はヨシュアを探すため、この世界に進行している陰謀を暴くためにより強くなることを決心する
    遊撃士の修行場で自分を鍛え直すエステル。しかし修行場は謎の敵に襲われてしまう。エステルはアネラスと共に敵に立ち向かうことに
    修行を終えたエステルはパートナーと共に海の街ルーアンに向かう。かつての冒険で知り合った人々との再会が待っている。現在ルーアンは市長選の真っ最中だが、人々の間では空を飛ぶ不気味な白い影が噂になっていた。エステルは調査を開始するが、実はオバケが大の苦手なのだ


    ■ チェインクラフト、新アーツ、駆け引きの楽しい戦闘システム

     海の街ルーアン。現在ここは市長選挙の真っ最中である。港の人々と街の人々がそれぞれ候補を立てている。そんな中、些細な事件で住人達の感情が爆発し、ルーアンの橋をはさみ、2つの勢力がにらみ合いを始めてしまう。まさに一触即発の空気。その時、どこからともなくリュートの音が……。ボートに乗り、リュートをかき鳴らしながら現われるは、誰あろう漂泊の吟遊詩人オリビエ・レンハイムである。

    一触即発の空気を見事に変えてしまうオリビエ。前作から全く変わっていない、まさにオリビエらしい登場の仕方である
    今作で追加されたチェインクラフト。キャラクタ達の掛け合いが楽しい
     「争いは何も生まない。心の断絶を乗り越え、手を取り合えるような歌を歌おう」彼は集まった街の人々の前で朗々と、歌う。完全に陶酔している彼の姿にどっと白ける街の人々は「とりあえず落ち着こう」と、どこか疲れた足取りで来た道を引き返す。オリビエというキャラクタを非常にうまく表現したシーンであり、筆者も「そういえばこいつはそういうキャラクタだったよ!」と思わずニヤリとさせられてしまった。

     「空の軌跡SC」は前作同様キャラクタの表現が見事である。女王の孫娘であり、将来は責任ある立場に立たなくてはいけない重圧に何とか立ち向かおうとする健気な少女クローゼや、元不良の凄腕剣士アガットなど、彼らの“変わっていない”姿を見ることができるのは楽しい。

     大阪弁を使う巡回神父ケビンという新しいキャラクタや、前作ではあまり活躍しなかった女剣士アネラスとの交流も楽しめる。ストーリーを進めていくと姿を現わせてくる「身喰らう蛇」のメンバーもまた個性的だ。恐ろしさと不思議な魅力を持つ強大な敵に、エステル達はどう立ち向かっていくのだろうか。

     そうした仲間達の個性が大きく発揮されるのが戦闘シーンである。マップ上の敵とぶつかることによって戦闘画面に切り替わり、画面左に表示される「ATバー」の行動順に行動していく。マップ上で敵の背後からぶつかれば先制攻撃が可能になり、有利に戦える。ATバーには“クリティカル”や“HP回復”といったボーナスが表示されることもある。敵の行動を阻止する特殊攻撃などを使って行動順に干渉することで、ボーナスを有効に使うことができる。

     キャラクタは「アーツ」と「クラフト」という特殊能力を持っている。アーツはそれぞれが持つオーブメントにクオーツをセットする事によって使える“魔法”である。クオークはカスタマイズが可能で、キャラクタによって回復魔法を得意にさせたり、炎の魔法のエキスパートにさせたりとある程度プレーヤーの意志で設定できる。

     「クラフト」はキャラクタ固有の“必殺技”である。エステルは自慢の棒術で広い攻撃範囲を持ち、クローゼは相棒であるハヤブサのジークと協力して攻撃を行なう。オリビエはキザでアガットは熱い。各キャラクタの個性が楽しめる攻撃であり、特に敵の特殊攻撃を阻止する技は重要になる。フィールドに存在する一般的なモンスターすら特殊攻撃は強く、注意が必要だ。

     さらに今作では「チェインクラフト」が追加された。これは複数のキャラクタで行なう協力攻撃で、敵に大ダメージを与えることができる。「空の軌跡SC」の戦闘シーンではキャラクタがよくしゃべる。エステル役に神田朱未、クローゼに皆口裕子、オリビエに子安武人などキャストも豪華である。チェインクラフトでは「いくわよ!」、「まかせろ!」といった感じで、声の掛け合いも楽しい。レベルが上がることで、3人協力、4人協力の技も使えるようになる。どんな掛け合いが生まれてくるのか、楽しみだ。

     本作は早い段階から4人のフルメンバーで戦える。オーブメントの機能も解放されていて、選択肢が多く、初心者には少しシステムが複雑に感じるかもしれない。ちょっと感じたのは、ボスキャラクタのHPが少し高めかな、ということだ。あくまで序盤の印象であるがダメージの割に敵の耐久力が高めで、ボスとの戦いがほんのちょっと長く感じた。

     うまくチェインクラフトを使ったり、オーブメントの組み合わせを考えたり、クラフトを工夫したりと、戦闘を繰り返し自分なりの効率のいい戦い方を追求することで、戦いはより楽になるだろう。

    フィールド上の敵と接触すると戦闘シーンに切り替わる 敵を大きくはじき飛ばすアガットのクラフト「フレイムスマッシュ」 炎が降り注ぐスパイラルフレアはオーブメントに炎系のクオーツを多くセットすることで使えるアーツだ
    クローゼのオーブメント。スロットに水属性が多いため、回復系に向いている 威力はイマイチだが攻撃範囲が広いエステルの「旋風輪」 チェインクラフト発動時にはカットインの演出が
    CP(クラフトポイント)は敵に攻撃を受けたりすることで増加する。CPが100を超えることで強力なSブレイクが使用できる。アガットの「ファイナルブレイク」は広範囲に大ダメージを与える Sブレイクは使用することでATバーの順番の一番上になり瞬時に発動する。クローゼのリヒトクライスはパーティーのHPを大きく回復させ、戦闘不能も回復させる アネラスのSブレイク「光破斬」。パーティーのメンバーを選択する際、Sブレイクの能力は選択するための大きな要素となる


    ■ 視覚的に楽しめる料理に、道具も充実した釣り、より多彩になったやりこみ要素

     「やりこみ要素」の充実も本作の特徴である。ゲーム序盤でパートナーをシェラザードかアガットを選ぶことで、ストーリーの大筋は変わらないがセリフまわりが変化する。キャラクタの掛け合い、展開する小さなドラマは本作の大きな魅力だ。入れ込んだプレーヤーならば繰り返しプレイしたくなってしまうだろう。

    様々な場所で行なうことができる“釣り”。小魚は大きな魚を釣るための餌にも使えるようだ
    名物を食べることで充実するレシピ。冒険に役立つという実利面も大きい
     ゲームはメインストーリーの他、遊撃士として街の住人の依頼に応える事でも様々なサブストーリーが展開する。これらの仕事は、遊撃士協会支部にある掲示板を見ることで受けることができる。強力な手配魔獣とのバトルや、届け物、失せ物探し、ちょっとした事件の解決まで様々なミッションが待っている。

     メインシナリオの途中や、冒険が一区切りつき他の街に旅立つ時にも新しい仕事が発生することもある。細かく支部に立ち寄り掲示板をチェックすることで様々な仕事に挑戦できる。クリアすることで特別な報酬が得ることができるし、ファンにとっては展開する小さなドラマこそが「ご褒美」となるだろう。

     レシピシステムは本作らしいほのぼのとしたシステムだ。「空の軌跡SC」の世界には名物料理が多数存在する。村の宿屋から、街の屋台料理、学校の食堂でもオリジナルの料理が用意されていて、エステル達はそれを食べることでレシピを覚え、自分で作ることができるようになる。食材は街のお店の他、魔物との戦闘でも入手できる。

     今作では食べると口から炎が出て敵を攻撃する「デンジャラス肉玉」など戦闘に使用できる料理も登場する。食事はグラフィックスも表示されるようになり、レシピ集めの楽しさが増した。新しい街を訪れたら、ストーリーを脇に置いてまず名物料理を食べまくるという“うっかり八兵衛プレイ”も楽しそうだ。

     今作で追加された「釣り」も注目だ。水面に波紋がある場所では釣りをすることができる。竿と餌を選んでフィッシング開始。「!」マークが出たところでボタンを押せば釣り上げることができる。場所、餌、竿によって釣れる魚が違うようだ。ゲームが進めばより多くの道具、釣り場が登場する。釣れた魚はリストに記録されていく。色々な場所で、色々な餌で魚を釣って、リストを充実させていきたい。

    掲示板では多くの仕事の依頼がある。いつ仕事が追加されるか、こまめにチェックしておくことが大事だ 「正遊撃士手帳」を開くことで仕事の進行度、シナリオを進めるためのヒントをいつでも確認できる 本作では様々な謎に関して、探偵小説のようなセリフ回しで謎解きを試みる。この“ノリ”も前作から受け継がれている
    どこで、何が釣れるか。レシピと釣りは本編をほったらかしにしてのめり込んでしまいそうだ

     今回、「空の軌跡SC」をプレイしてみて、その“変わっていないこと”に大きな喜びを感じた。悲しみを乗り越えて、より大きな秘密に立ち向かうために立ち上がるエステルと、彼女を支える仲間達。街の住人は一人一人が小さなエピソードを持っていて、ほのぼのとした気持ちにさせてくれる。この世界での冒険は、前作同様、心地よく、楽しい。

     今作がシリーズ初挑戦であるプレーヤーにはキャラクタが突然思い出話を始めたりと、感情移入が少ししづらい部分もあるかもしれない。キャラクタを前作以上に掘り下げることで、より濃密なストーリーを語りたいというスタッフの主張がよくわかる作品となっている。エステルとヨシュアは再会できるのだろうか。筆者としてもストーリーの展開が非常に気になる作品である。

    (C) Nihon Falcom Corporation. All Rights Reserved.


    【英雄伝説 空の軌跡 SC】
    • CPU:Pentium III 500MHz以上(Pentium III 800MHz以上推奨)
    • メモリ:Windows 98/Me:192MB以上(256MB以上推奨
      Windows 2000/XP:256MB以上(384MB以上推奨)
    • HDD:インストール時:1.9GB以上の空き容量
    • ビデオカード:VRAM 32MB以上


    □日本ファルコムのホームページ
    http://www.falcom.co.jp/
    □「英雄伝説 空の軌跡SC」のページ
    http://www.falcom.com/ed6_sc/
    □関連情報
    【2月27日】日本ファルコム、「英雄伝説 空の軌跡SC」を3月9日に発売
    消えた少年の姿を求めて、少女は再び冒険の旅へ
    http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060227/eiyuu6.htm
    【2004年6月22日】PCゲームレビュー「英雄伝説VI 空の軌跡」
    http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040622/den.htm

    (2006年3月8日)

    [Reported by 勝田哲也]



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