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★PCゲームレビュー★
■新たな伝説の始まりを告げる「英雄伝説」シリーズ最新作
今作は、前シリーズから舞台を一新、“導力”という神秘のエネルギーで動く機関オーブメントによる、“導力革命”が果たされたユニークな世界で物語は展開する。オーブメントとは、鉱山から採掘される七種類の異なる性質を持つ水晶のような結晶体、七曜石(セプチウム)の導力で駆動する。 特に本作の舞台となる「リーベル王国」はオーブメント発祥の地であり、地方でもオーブメントによる街灯で道は照らされ、鉱山で使うエレベーター、さらには空を巨大な「飛行挺」が行き交っている。オーブメントが発明された「導力革命」から50年、人々の生活は一変したのである。 新しいエネルギーにより、人々の生活は豊かになったが、いまだ安全にはほど遠い。導力による魔除けの施された場所以外には強力な魔物が徘徊し、旅人を襲ってくるなど国々も平穏ではない。リーベル王国は「エレボニア帝国」と「カルバード共和国」というふたつの強国に囲まれた小国。10年前には帝国による侵略を受け、後に言われる「百日戦争」を繰り広げ、大きな戦禍に見舞われた。 この世界には国以外にも人々を助ける機関が存在する。世界各地に散らばり、支部を持つ「七曜教会」と、「遊撃士協会」である。このふたつの組織は国を超えて連携を保っており、百日戦争でも仲介の役目を果たした。七曜教会は人々の精神面を助ける存在であり、遊撃士協会は実利面で役に立っている。 協会に所属するメンバーは「ブレイサー」と呼ばれ、主に戦士として、街道の魔物退治から、積み荷の護衛など、協会から斡旋された仕事を料金をもらってこなしていく。時には子供の失せ物探しから、恋文の配達まで請け負う、「何でも屋」の集団である。国を守る軍人達からはうさんくさい目で見られることもあるが、より人々の生活に近い存在だ。 本作の主人公エステルとヨシュアは、新人のブレイサー。彼らの父、カシウスはベテランのブレイサーである。ふたりの新人ブレイサーは、物語を進めるうちに、ブレイサーとしての自覚とともに、父のすごさを実感していく。彼らの冒険は、やがて世界に関わるような大きなものとなる。物語は、今幕を開けるのである。 ■「ライトノベルズ的作品」への強いこだわり ゲームのスタートは、カシウスがエステルの元に、傷だらけの少年を連れてきたシーンからはじまる。黒髪と、琥珀色の瞳を持つ異国人の少年は、ヨシュアと名乗る。それから5年。エステルとヨシュアは16歳となった。ヨシュアはカシウスの養子となり、エステルとともに彼を「父さん」と呼ぶ。2人は、遊撃士になるため鍛練を重ねてきた。ゲームは2人が挑戦するテストからはじまる。 楽天家で元気なエステルと、冷静で細かいところに気がつくヨシュア。ふたりの描写は細かく、パワフルで暴走気味のエステルと、ツッコミを入れながらもフォローに苦労をするヨシュアの掛け合いは、同作の大きな魅力のひとつだ。
しかし、ヨシュアには大きな秘密がある。彼が5年前どんなことがあって父と知り合ったのか、彼はそれまでどんな生活をしていたのか、それを聞くことはふたりにとってタブーになっている。ヨシュアが時々見せるつらそうな、大きな悲しみを思わせる一面は、その過去に原因がありそうなのだが、エステルは追求しない。
■キャラクタ性と駆け引きが楽しめる戦闘システム RPGにおいて戦闘シーンはキャラクタ性を主張できる大きな要素であり、本作もその傾向が強い。エステルが元気いっぱいにふるう棒術、ヨシュアの鋭い双剣術、シェラザードの鞭さばきなど、見ているだけでも楽しい。 戦闘はマップ上の敵に遭遇することで発生する。イベント的な戦闘以外では、近づくと視認できるモンスターに対し、背後からぶつかることで先制攻撃を行なうことができる。反対に、追いつかれてしまうと敵側が有利になる。 キャラクタは直接攻撃のほか、他のゲームの魔法に当たる「アーツ」と、敵にダメージを受けたり攻撃を行なうことで増加する“CP”を使用して使う「クラフト」という攻撃方法を持っている。戦闘の行動順位は左に表示される「ATバー」で確認できる仕組みだ。 アーツは後述するオーブメントの設定である程度自由に設定できるが、クラフトは各キャラクタ固有のもの。エステルは範囲攻撃を得意とし、ヨシュアは単体攻撃に秀でている。また、敵キャラクタの行動を遅らせたりする技もあるので、よりキャラクタによる戦闘の組み立てを感じさせる要素である。また、アーツには発動時間があり、それをキャンセルさせる技も大事だ。 CPが100を超えると、「Sクラフト」という技が使用可能になる。使用することで瞬時にATバーの先頭に立つことができ、派手な効果のある技が発動する。よりキャラクタ性を主張した派手な技が楽しめる上、戦術的にもとても実用的だ。細かくクラフトを使って戦うか、じっくりCPをためて大技にかけるか、という選択は同作の戦闘シーンにおけるもっとも戦術的な要素だろう。 ATバーにはキャラクタの行動順の表示の他に、「ボーナス」要素がある。ステータスの増加や、クオーツの素になるセピスの獲得増加、クリティカルの発生など有利なことばかり。そのボーナスが敵に行かないように、わざと行動を遅らせたりすることも重要だ。 アーツはオーブメントに、さまざまなクオーツをはめ込んでいくことで使用できる。ブレイサーが持つオーブメントは懐中時計のような形をしていて、中には回路がある。この回路にクオーツをセットしていくことで、さまざまな系統のアーツが使用できるようになるのだ。 ゲームが進むことでこの組み合わせにも自由度が出てくる。少し複雑な要素ではあるが、戦闘で得たセピスを工房でクオーツに生成する作業や、組み合わせ表を参考に、有効なアーツを模索していく手順などは、戦闘の効率とともに、「この世界で暮らしている」という実感を補強してくれる、世界観をより大事にしたシステムといえるだろう。 ■メインのストーリーを補強する多彩な要素 本作は寄り道も楽しめるRPGだ。メインのキャラクタの他、市井のキャラクタの動向にも注目する価値がある。街や村にいるキャラクタそれぞれには名前があり、夫婦仲が悪かったり、子供への教育に悩んでいたり、辺り構わずラブラブ光線を放っていたりと、チェックするだけでも楽しい。しかも彼らの中には旅行をしていたり、故郷から出稼ぎに来ていたりして、思わぬところで再会したりする。チェックをしておくとスタッフのこだわりをより感じることができるだろう。 住人達との関わりを実感できるのが、遊撃士に寄せられるさまざまな依頼だ。各遊撃支部の掲示板には、住民からの依頼が寄せられている。失せもの探しから、食材集め、事件の調査など、仕事は多岐に渡り、遊撃士の「何でも屋」ぶりが体験できる。 これらの依頼は本編となるストーリーとは別の、いわばサブシナリオとなっている。本編のシナリオを進めすぎると、依頼の期限が来て達成できなくなってしまうこともある。シナリオ中もこまめに掲示板を覗いて、仕事を進めておくのが賢いやり方だ。ゲームのやり込み要素と言うほかにも、経験値や資金稼ぎといった面でも効果的である。 旅の楽しさを補完してくれる要素としては「料理」システムがある。ゲーム内では薬や武器の他に、さまざまな食材が購入できる。この食材を使って料理を作ることができるのだが、料理のレシピを覚える方法が楽しい。旅先で、宿屋や酒場で売られている料理を食べることで、レシピを覚えていくのである。 料理はフライドポテトから王国風オムレツ、さらには「頑固パエリア」といった店の名物料理まで非常に多彩。ちゃんと、漁師町では海鮮系だったりと、ここにもこだわりがみてとれる。ちょっと残念だったのが、各料理にグラフィックがないところ。料理数は大変多いため、仕方がないかもしれないが、序盤のエステルの家での食事シーンでは、オムレツや、チキン等をきちんとグラフィックで表示しているそのこだわりに唸らされただけに、各料理を「見る」楽しさも加えてほしかった。 繰り返すことになるが、筆者はこの作品は、驚くほど丁寧に、世界観やキャラクタを練りこんで作ってあるという印象を受けた。その実感は、プレイした誰もが感じることだと思う。ライトノベルズ的世界観というと、その名の通り、「軽く」見られがちだが、この作品は、世界の考察において、きちんと「重厚さ」を持っている作品である。この感覚は、多くのプレーヤーに体験してもらいたいところだ。 (C) Nihon Falcom Corporation. All Rights Reserved.
□日本ファルコムのホームページ (2004年6月22日) [Reported by 勝田哲也]
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