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会場:台北世界貿易中心
入場料:大人200台湾ドル(約800円) 共通項は、どのエリアでもプレイステーション 3シアターを出展し、大きな話題を集めたこと。Taipei Game Showにおいても、ショウ最大の話題として各メディアの取材が集中した。またPSPの人気も高い。どちらかというとゲーム機というより、メディアプレーヤー的な使われ方をされているのが特徴だが、それならばと、来月3月に映像、音楽の配信をコアとしたストリーミングサービス「P・WALKER」をSo-netと共同で展開する。国が違えばやり方が違う。SCE Asiaを取材すると、そのことを強く実感する。本稿ではSCEの台湾ビジネスの動向をお伝えしていきたい。
■ 「Tourist Trophy」、繁体中文版「TALKMAN」など、多彩なラインナップを出展
PS2では、目下売り出し中のバイクレースシミュレータ「Tourist Trophy」を、ヤマハの協力を受けて実機バイクを展示するなど大々的に出展。そのほかには「サイレン2」、「RULE OF ROSE」、「ローグギャラクシー」、「ワンダと巨像」、「ACE COMBAT ZERO」、「太鼓の達人 六代目」など、最新のラインナップが揃っていた。 余談だが、台湾の大通りに行くと、信号待ちする車の行列の先頭に、数十台のスクーターが並ぶ光景をいくらでも見ることができる。排気量は50ccから125cc程度のものが主流で、数年前に中型以上のバイクの規制緩和が図られ、台湾でも大型バイクに乗る環境は整ってきているが、今年も老若男女年齢を問わずバイクといえばスクーターという状況は変わらない。 だから、ショウ前日のSCE Asiaブースを見たときは、「Tourist Trophy」という日本の自動二輪文化の粋を集めたようなタイトルが台湾ユーザーに理解できるのかなと思ったのだが、ブースでの反応は上々で、売り上げも「グランツーリスモ3」並みに好評だという。現地スタッフによれば、「スクーターに比べれば高嶺の花ですが、やっぱり乗りたいんですよ」ということだ。実際、よくよく見るとヤマハの実機バイクを熱心に眺めたり、写真を撮る来場者も多かった。TTは台湾でのバイク人気に乗じて意外な人気を集めそうだ。 映像出展では、「ファイナルファンタジーXII」の人気が高かった。台湾では、日本のRPGの人気が高い。これはPS2のみならず、PSPでもその傾向が顕著とのことで、売れ行きが良いだけでなく、テキスト量も多いため、中文への翻訳の優先順位も高い。「FF XII」は、残念ながら中文版の予定はないというが、日本と同じ3月16日に発売を開始する。これは明確に平行輸入版対策だが、パッケージ外装のテキストはしっかり中文化のものを印刷し直した上での同発である。こうした水面下での努力が、SCE Asiaビジネスの本質的な部分でもある。 一方、PSPは、ナムコとXPECが共同開発しているアクションゲーム「BOUNTY HOUNDS」の参考出展のほか、繁体中文版で発売予定の「Blade Dancer」、SCE Asiaオリジナルである繁体中文対応版の「TALKMAN」、そして日本と同時発売する「ナムコミュージアム Vol.2」、「Mobile Train Simulator京成・都営浅草・京急線」などなど、多彩なラインナップを出展。 「TALKMAN」は、もともと多言語対応を前提としたコミュニケーションソフトで、起動時に標準言語が選択できる。中国語にも基本対応しているが、中国語は中国語でも中国大陸で使われている簡体字である。しかし、SCE Asiaが展開する台湾や香港では、いまだに繁体字が使われている。こうしたことから、SCE Asiaではアジア展開するために、テキストを繁体字に入れ替えている。また、国家間のデリケートな問題に対応するため、ガイド役のマックスが振る国旗の代わりにイラストが用いられている。こうした細かいカルチャライズもSCE Asiaの強みといえる。 なお、PSPは提供メディアがUMDで海賊版が極めて少ないことから、ハードの売り上げに対するソフトの売り上げ、いわゆる装着率が非常に高いという。UMDデータをROMに落とし込み、メモリースティックに保存するタイプの違法コピーは存在するというが、システムアップデートでシャットアウト可能だという。PSPのシステムソフトウェアは、PSPそのものの機能を強化してくれるため、ユーザーの利用度も高い。PSPは基本設計として、海賊版に強いポータブルデバイスと言える。PSPは展開2年目にして早くも“まともなビジネス”としてすくすくと育ちつつある印象である。 なお、2005年の売れ筋は、PS2では「ワンピース」、「ナルト- ナルティメットヒーロー3」など、日本のマンガをモチーフにしたものが人気で、「ソウルキャリバー3」や「ワンダと巨像」といった世界的に支持される大作もそれなりに売れたが、予想したほどではなかったという。PSPでは「天地之門」、「みんなのゴルフ」、「リッジレーサー」など。
ここに挙げたものは、すべてSCE Asiaの仕切りで販売されたもので、コーエーやElectronic Artsといった自社で流通を確保しているメーカーは含まない。他社流通については、コーエーの「真・三國無双」シリーズが、PS2、PSP共に人気のようだ。
■ PSP普及のカギを握るPSPオンラインサービス「P・WALKER」
「P・WALKER」は実は韓国で企画されたサービスで、台湾が韓国と同様、政府の推進により、無線LANインフラが市内に整備されていることから、実験的な導入に踏み切る。人口の集中する台北市は、日本の京都府にも似て、碁盤の目のように南北東西に幹線道路を延びている。現在は大通り沿いならほとんど無線LANにアクセスできるという恵まれた環境が構築されている。大通りのみならず、地下鉄やスターバックスなども完全にカバーしており、繁華街の喫茶店でPSPを介して「P・WALKER」を利用するということが、何の不自然もなくユーザーに受け入れられる土壌がすでに存在しているわけである。 「P・WALKER」の利用料は無料で、通信費だけで利用できる。サービスの仕切りは、接続ソフトウェア「NUD(Network Utility Disc)」をSCE Asiaが無償提供し、ストリーミングコンテンツはSo-netが用意。ユーザーは、YIFLYやHinetといった台湾の大手キャリアと契約し、そのインフラを介してサービスにアクセスするというイメージだ。 SCE Asiaとしては、PSPの無線LAN機能をアピールできる絶好のチャンスであり、So-netはブロードバンドコンテンツのPSPへの二次活用、キャリアは利用者の増加に結びつけられ、政府も警察や国防だけでは使い切れない無線インフラをより活用でき、そしてユーザーは通信費だけでコンテンツを利用できるという、全体にメリットのある“省エネ”サービスである。 ただ、SCE Asiaにとっては、収入ゼロのため、リスクの高いビジネスになる。NUDの配布、ユーザーサポートといったコスト的なリスクだけでなく、平行輸入版のPSPにNUDを配るのかどうかといった問題や、いよいよメディアプレーヤー化してソフトが売れなくなる懸念など、アジアならではのリスクが山積している。
SCE Asiaとしては、有料コンテンツの配布は避けて、まずは無料で提供し、PSPの普及に繋げていく考えだ。個人的には台湾でも展開されるPlayStation Spotの台湾独自の動きに期待したい。いずれにしても、SCE Asiaは日本や欧米とは異なる独自戦略を一歩踏み出したといった印象である。
□Taipei Game Showのホームページ (2006年2月18日) [Reported by 中村聖司]
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