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★PCゲームファーストインプレッション★

巨大な娯楽産業に成長する映画業界を
多彩な視点から活写した意欲作

The Movies 日本語版

  • ジャンル:映画会社経営シム
  • 開発元:Lionhead Studios
  • 販売元:ラッセル
  • 価格:オープンプライス(通販価格:7,000円)
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:2006年1月27日発売予定



  •  「The Movies 日本語版」(以下、「The Movies」)は、ピーター・モリニュー氏のLionhead Studiosが開発したハリウッド映画会社経営シミュレーションである。プレーヤーは映画会社のオーナーとなり、映画という巨大なコンテンツ産業に身を投じ、一流の映画監督、おかかえの大スターを育てつつ、ヒット作を連発する世界を代表する映画制作会社に成長させていく。

     ゲームは、ちょうど映画がエンターテイメントとして認知された1920年代からスタートし、巨大な娯楽産業へとダイナミックに成長していくその過程を追体験することができるのも大きな特徴だ。時代と共にセットは豪華になり、スターは世間の評価が向上するに連れて大きな存在へとなっていく。人々を熱狂させる「映画」とはどんなものなのか? 本作はそのテーマを正面からとらえ、のみならずプレーヤー自身の映画製作まで可能になっている。今回のファーストインプレッションでは「The Movies」の各要素を紹介していきたい。


    ■ 映画黎明期から、巨大産業に成立する映画の歴史を追体験

     「The Movies」は、広大な敷地に「俳優養成所」を建設するところからスタートする。この建物を建てるために建設員を、メンテナンスするために清掃員を雇い入れる。俳優養成所が建ったら、次はキャスティング事務所、クルー用の設備、制作部の事務所、そして最初のセットを建設する。これらを道でつなぎ、芝生や植物を植えて環境を整えれば、最初の映画スタジオが誕生する。

    本作はチュートリアルモードも含めすべてのメッセージが日本語化されている(音声は英語)。ゲーム本編そのものも細かくガイドが入り、初心者でもすんなりとプレイできる
    映画黎明期をうまく再現した撮影風景。時代が進むと、セットは盛大に、撮影風景もより本格的なものになっていく
     オープンしたスタジオには多くの職を求める人材がつめかける。彼らを起用すると、いよいよ映画を撮影することが可能になる。中でも「スター」の存在が重要となる。本作でのスターは監督か映画の主役となる。それ以外のクルーやエキストラは経験を積むだけで有能になっていくが、スターは映画のできを大きく左右する存在。ルックスや性格、そして演技の経験などをきちんと吟味して雇用したい。

     プレーヤーが最初に撮影できる映画はウェイトリフティングに使うバーベルの前で役者がオーバーなアクションをするコメディー。キャスティングの場所で監督と主役を決め、クルーとエキストラをそろえるとリハーサルが開始される。これが終わるとすぐに撮影開始だ。

     映画を撮影している場所をズームすると、クルーが小道具を運び込み、カチンコが鳴って、監督がメガホンで声を張り上げ、役者はカメラの前で一生懸命演技しているのが確認できるだろう。リアルな映画の撮影風景がきちんとゲームの中で展開しているのである。この再現度は、実際の映画の撮影の雰囲気を良く表していて、初めて目にした誰もが驚きの声を上げるに違いない。

     撮影が終わるといよいよ公開になる。この時収録した映像をプレーヤーも実際に見ることができる。'20年代らしく、モノクロかつノイズの強い映像で、バーベルの前で珍妙な演技をする俳優の姿は、チャップリンの無声映画時代を思い起こさせる。

     この映画を皮切りに、プレーヤーは様々な映画を撮影していく。映画の技術は飛躍的に上がっていき、脚本部が作られ、ホラーやコメディー、SF、ロマンスなど様々なジャンルの映画が撮れるようになる。セットも宇宙船の内部から、西部劇の荒野、ビジネスオフィスや地下鉄のセットなど多彩なものが制作できる。研究部にスタッフを割り振ることで衣装部などもより多彩な小道具が用意できるようなる。作成できる映画も白黒の無声映画から音声が付き、カラーになり、フィルムの質も上がっていく。

     スタッフ達も多くなり、作品も多彩なセットを使って撮影され凝ったものになっていく。役者は徐々に演技がうまくなり、画面には多くの小道具が登場してくる。スタジオの充実と共に映画の質の向上を確かに感じられるようになる。プレーヤーはプレイしていくことで映画の進化の歴史を確かに感じることができるだろう。

     多彩な要素が入っている本作だが、ゲームでは頻繁にアドバイスが入り新要素に関してもすんなりと理解できる。また、多少無理な増築をしても資産は順調に増えていく。ゲームのバランスはそれほどきついものではなく、ゲーム初心者にもオススメできる作品である。

     時代の表現も興味深い。特に音楽は、'20年代のスローペースなジャズ、'40年代の勇ましいラジオなど、それぞれの時代をイメージしたBGMが入る。映画に使用されるBGMも変化し、出演者の服装なども変わっていく。映画は常に時代の変化に敏感である。'40年代は、戦争映画がもてはやされるようになるなど、観客のニーズも変化する。本作は映画の歴史、そしてアメリカの風俗史も体験できる、「文化」の香りのする作品となっているのである。

    職を求めて事務所に訪れたキャラクタを建設職員に雇用する。キャラクタをつまみ上げていく様子などはモリニュー氏の「ブラック&ホワイト」シリーズを彷彿とさせる 俳優養成所、キャスティング事務所、制作部など、映画に必要な施設を次々と建てる。映画を撮影するためにどんな施設が必要なのか、ゲームをプレイすることで色々な知識がつく 芝生を植え、道を整備する。トイレやレストランなどさまざまな施設を建てても、映画制作費に比べたらわずかな額なので、そうそう資金繰りに困るようなことはない
    いよいよスタート、俳優と監督を雇用する。スターの誕生である彼らがどんな作品を作るか、プレーヤーの腕の見せ所だ 最初の脚本はあらかじめ用意されている。俳優、監督、クルーをキャスティングしたら、撮影スタートだ。 最初の映画が完成。フィルムはノイズだらけで、俳優の演技はイマイチ。スタッフも経験不足だ
    作品が完成するとレビューが行なわれる。さんざんな評価。この失敗を糧に、質の良い作品を目指す 車などの装飾品を配置することで、スタジオの格が上がっていく 脚本部を設立する。時代のニーズとスタッフ達の得意なジャンルを考えて、質の良い作品を生み出そう
    スタジオが発展することにより、様々なセットで多彩な作品を撮影できるようになっていく
    音声が付き、時代考証が深くなり、映像もカラーになる。映画の技術も速いスピードで発展していく。映画史を肌で実感できる作品である。シーンの中には名画のパロディーもたくさん登場する。映画ファン必見だ


    ■ 輝きを増していくスター達、彼らのワガママにどう応えるか?

     映画はスターを抜きにしては成り立たない。彼らは本作で一番重要なファクターである。スタジオはスターと共に発展し、看板スターと代表作を作るのがゲーム中盤の大きな目標になってくる。

    スターは他のスタッフとは比べものにならない細かいパラメーターが用意される。彼らの要求を満たしながらよりよい作品づくりを目指そう
    スターのギャラ一覧。1人の要求を満たすと他のスターが嫉妬するなど、スターの実力が上がっていくにつれバランスが難しくなる
     スターは得意なジャンルや様々な不満を表すパラメーターを持つ。スターはその他のキャラクタとパラメーターの数から明確に違うのである。彼らの機嫌を取らなくては良い映画を撮ることはできない。最初のころは主役スターと監督さえいれば映画を作ることができるが、そのうちに助演にもスターが必要となっていく。プレーヤーは多くなっていく彼らの管理に頭を悩ますようになっていく。

     スターの得意ジャンルを伸ばすか、それとも時代のニーズに合わせた作品を作るか、将来性を見越した育成が重要となっていく。しかし、同じジャンルの映画ばかり撮るのも得策ではない、いくつかのチーム、何人かのスターの起用し、多彩な作品を提供していくことが求められる。映画を撮影していない時にもスターには仕事がある。使っていないセットで演技の稽古をしたり、他のスターと親密度を上げるのも重要だ。チームワークが映画の完成度を上げてくれるのである。

     出演を重ねることでスターはだんだん要求が大きくなっていく。自分専用のキャンピングカーや、取り巻きも欲しがったり、何より多額のギャラを要求してくる。プレーヤーは良い作品を作るためには彼らに応えなくてはならないが、他のスターとの兼ね合いも難しい。常に一番がいい人、自分がスターだと自覚したい人、作品に出れば出るほどその要求は大きくなっていく。

     そういった要求をかなえることがそのままスターの「格」になる。取り巻きを連れ、飾り立てたキャンピングカーを使い、オーラに包まれてスタジオを歩く彼らの姿はその名の通り輝いている。要求をかなえることで、映画の格も上がっていくのだ。

     ただ、要求を聞いてばかりもいられないだろう。時代は変わっていく、フレッシュなスターも必要となるし、スタジオの名声を聞きつけて他の映画会社からスターが移籍を望んでくることもある。スターの解雇という究極の決断もまた必要になってくる。

     得意なジャンルを作るか、オールラウンドの経験を持つ名脇役にするか、女流監督を育て上げるか……。ゲームをプレイしていくことでプレーヤーはより明確なビジョンを持ったスターの育成が必要となっていく。世代交代を考えた雇用も必要となるし、時代が進み、映画の質が上がってくるとスタッフ、エキストラの数もそろえなくてはならない。クルーはまた、取り巻きとしても必要なため、本作では人手不足は深刻な問題にもなりかねない。観客の要求も厳しくなっていく中、どうカバーして質の良い作品を作り出せるか、オーナーの腕の見せ所である。

    スター達を交流させることで、よりよい映画を撮影できるようになる 空いているスタジオを使い、演技の稽古も可能だ スター達は舞台衣装の他、普段着も時代にあった服装をさせないと不機嫌になる
    クルーを取り巻きに任命することでスターの格が大きく上がる スター専用のキャンピングカー。1人に渡すと、他のスターも強く欲しがる。周りに装飾品を置いて、格も上げなくてはならない 研究所を設立することでより時代にあった服や小道具、施設などを用意できるようになる
    スタジオの施設はスターだけではなくスタッフにも有益なものだ。スタジオの格は常に上にしておきたい レストランで交流させることも彼らを満足させるにはどんな手を打てばいいのだろうか 毎年発表される映画賞。質の良い作品を撮影し、賞を獲得することで映画会社の格を上げるのだ


    ■ 自分だけのムービーを作成! 無限の可能性を秘めた「The Movies」

     「The Movies」は映画スタジオ運営と共に、オリジナルムービーの作成も同じくらいの重きが置かれている作品である。本作の様々な機能を使うことでプレーヤーは自分の思い描くムービーを作ることができる。

    オリジナルの脚本、そしてアレンジで自分だけの映画を。プレーヤーによっては経営シミュレーション部分以上に夢中になる要素だろう。日本人プレーヤーがどんな作品を作るのか、非常に楽しみだ
     「The Movies」における「映画」とは、細かいシーンの積み重ねである。例えば階段を上るシーンや、銃で撃たれるシーン、にらみ合うシーン、キスシーンなど、名作映画を彷彿とさせるシーンがセットと、脚本のジャンルごとに用意されている。これらを組み合わせ、数分から数十分の作品に組み上げていくのだ。

     オリジナルの脚本を作れば、これらを自由に組み合わせ、自分だけの映画を作ることができる。まずホラー、アクション、SF、ロマンス、コメディーといった脚本のジャンルを決める。自分が現在持っているセットで、どんなシーンが作ることができるかを調べ、その組み合わせを工夫するのだ。時代が進み、セットが充実すると、映画のスケールからテーマ、演技など選択肢は多い。

     最初は手持ちのデータでどれだけのものが作れるかに挑戦するのが良いだろう。プレーヤーは脚本を作るだけでなく、撮影中も役者の演技に指示が出せる。より演技をオーバーにしたり、押さえ気味にすることでも作品の雰囲気はずいぶん変わってくる。

     「スターメーカー」というツールを使うことでオリジナルキャラクタを作成することもできる。自分の思い描く俳優をゲーム内に登場させることができるのだ。細かい顔かたちを調節することができ、人種、年齢など、自由な設定が可能である。有名人のそっくりさんを作り、育て上げ、出演させるのも楽しそうだ。

     さらに本作は、このデータに自由に音楽やBGM、字幕をかぶせることができる。ゲーム内でも様々なサンプル音声が用意されているだけでなく、自分が収録した素材も取り込むことができる。このツールではシーンの長さやタイミングもいじることができ、これらの素材を使用することでまったくオリジナルの展開をさせることも可能だ。このツールではWindows Media Video(wmv)形式でエクスポートすることも可能となっており、ソフトを持っていない人にも作品を公開できる。米国の「The Movies」公式ページでは、ユーザー達の力作が多数アップロードされている。他にもオリジナルコスチュームもユーザーが作成可能となっている。

     今後の展開としては、新しいシーンや素材などLionhead Studiosが提供していく予定もあり、アドオンソフトの発売も検討されているという。米国ではユーザー同士の情報交換も活発に行なわれている。オリジナルムービーの制作は、スタジオ経営とはまた少し違うベクトルを持つ遊び方である。ユーザーの中にはこちらにのめり込む人も多いだろう。ぜひ、しっかりとしたコンテを作り、友達と素材を持ち寄ったり、ひたすら1人で作りこんだりと、楽しみながら傑作を誕生させて欲しい。

     「映画制作」という、新しいジャンルのゲームの誕生である。最初は少し敷居が高く感られることもあるが、新しいユーザー層を開拓できる可能性を持った作品だと思う。まず手にとって、そして友達に見せてみたくなる作品である。

    ゲームに同梱されているスターメーカーを使うことで、自分の思い描くスターを作成できる。渋い老俳優や、こだわりの美人女優などを作りだす事も可能だ。自分の理想の映画を作るためにもかかせないツールである
    オリジナル脚本を作成。用意されたシーンは非常に膨大で、これを選択するだけでもかなりユニークな作品を作ることが可能だ
    シーンひとつも音声や字幕を入れることで、全く別な解釈が生まれ、明確なストーリーを観客に訴えられるようになる。どんな作品が生まれるか、コンテストなどの展開も楽しみだ

    The Movies (C) 2002-2005 Lionhead Studios Limited. Lionhead, the Lionhead logo, The Movies and The Movies logo are trademarks or registered trademarks of Lionhead Studios Ltd. All rights reserved.
    Activision is a registered trademark of Activision Publishing, Inc. ATI and the ATI logo are trademarks and/or registered trademarks of ATI Technologies Inc. All rights reserved. Microsoft, the Microsoft logo, Windows and the Windows logo are registered trademarks of the Microsoft Corporation in the United States and/or other countries. All rights reserved. All other trademarks are the property of their respective owners. Marketed and distributed in Japan by Russell.
    ※画面は開発中のものです。


    【The Movies 日本語版】
    • CPU:Pentium III 800MHz以上
    • メモリ:256MB以上
    • HDD:2.4GB以上
    • ビデオカード:VRAM 64MB以上

    □Activisionのホームページ(英語)
    http://activision.com/
    □ラッセルのホームページ
    http://www.russel.co.jp/
    □「The Movies」のページ(英語)
    http://www.themoviesgame.com/
    □関連情報
    【12月13日】アクティビジョン・ジャパン、「The Movies 日本語版」
    最新スクリーンショットを公開
    http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051213/movies.htm
    【11月16日】ラッセル、米ActivisionのPCタイトルを今冬に3本発売
    「GUN」、「Call of Duty 2」、「The Movies 日本語版」
    http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051116/russell.htm

    (2005年12月21日)

    [Reported by 勝田哲也]



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