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PSP「メタルギア アシッド2」開発者インタビューPart2
ディレクター野尻真太氏に聞く

【PSP「メタルギア アシッド2」】
12月8日 発売

価格:5,229円

 今回の記事は発売中のPSP「メタルギア アシッド2(以下、MGA2)」についてのゲーム紹介とディレクター野尻真太氏(文中敬称略)へのインタビューの第2弾となる。ゲームの基本的な遊び方については前回の記事を参考にしていただきたい。今回は本編以外のモードを中心にお伝えしたい。


■ 「LINK BATTLE」

 LINK BATTLEはワイヤレスLAN機能のアドホックモードを利用した2人用の通信対戦モード。両プレーヤーともスネークとヴィナスを用いた2対2で戦い、勝利条件を満たしたほうが勝者となる。勝利条件は2つあり、対戦相手のユニットを2人とも戦闘不能にするか、対戦相手のターゲットをすべて破壊するのが条件だ。ちなみにLINK BATTLEモードは、本編でヴィナスと遭遇しないとメニューに追加されないので注意。

 このモードには特殊条件が設定されている。いずれも本編とは異なる条件ばかりなので、いざ対戦という時にまごつかないように覚えておいてほしい。

●プレーヤーの移動および方向転換はキャンセルできない(索敵時)
●戦闘不能になったキャラクタは一定コストで復活しない
●開始して1ターンは対戦相手のエリアに進入できない
●対戦バランスを明らかに崩す恐れのある特定のカードは使用不可能




■ 「ARENAモード」

「ARENAモード」では本編のデッキを読み込んで使用する
 「メタルギア」シリーズに登場した歴代のボスと戦うモード。ステージは通信対戦と同じものを使用し、ミッションクリア形式で進行する。勝利すると、ポイントまたはカードが入手でき、中にはこのモードでしか入手できないカードもある。

 本編で一度クリアしたミッションを再度選択した場合は、「エクストラミッション」が発生する。敵に見つからないように隠れてゴールを目指す「スニーキング」、全ての敵を倒す「エリミネート」、指定されたカードのみでクリアする、といった特定の条件を課せられる「トライアル」、「スペシャル」が用意されている。このエクストラミッションをうまく活用すれば、短時間で高ポイントを稼ぎ出せる。カードのコンプリートには必須のモードだ。


MGA2開発者インタビューPart2
野尻真太氏に聞く

野尻真太氏

株式会社コナミ「メタルギア アシッド2」ディレクター

■ 外伝ならではの自由な発想

――続編ということで意識されたところはどこでしょうか?

野尻: 「メタルギア アシッド(以下、MGA1)」の仕事のコンセプトは「尖れるだけ尖ろう」だったんです。そうでないとゲーム業界に我々の位置がなくなってしまうので。変な言い方ですけどね(笑)。そして続編の「MGA2」は、「尖りつつもきちんとゲームとして整理しよう」、というところを意識しましたね。尖ってばかりでは尖り屋になってしまいますから。

――「メタルギア」シリーズの外伝的な位置づけにある「MGA」シリーズですが、逆に外伝であることでむしろのびのびとしたゲーム内容になっていると感じました。

野尻: はい(笑)。外伝という位置づけの中でこそ、こっちのカラーが出せたと思っています。私に小島秀夫(氏)の真似は絶対できないと思うんですよね。リアルな世界観とか、緻密な設定とか、そういう小島カラーは私とはちょっと違う。私はどちらかというと、無茶して話を動かすのが好きなんです。「え、そうなるの?」という感じ。小島と同じことをやろうとしても、それは偽物になってしまいますからね。

――シナリオを書いたのも野尻さんですが、今作のシナリオで伝えたかったことは何でしょうか?

野尻: シナリオでどうしてもやりたかったのは、お客様がみんな思っていると思うんですけど「え? なんで(メタルギアで)カードゲームなの?」という疑問に答えることでした。このゲームで何をやりたかったかというと、「お客さんが自分でプレイスタイルを設計して、それを反映させる」ということなんです。アクションの「メタルギア」でもやろうと思えばできるんです。敵を倒しまくりのアサルト型で行くなり、ステルスで行くなり。ただ、それを準備の段階での戦略を設計して、その立てた戦略を実行し、上手くいかなかった場合はフィードバックしてブリーフィングで調整してまた挑戦する。武器をたくさん持ち込んでもいいし、ダンボールだらけでもいいし、そういうプレイコンセプトを組んで実行する。それをカードという形、言ってみればコマンドを自分で決定できる。それをやりたかった。

 それをプレーヤーがやらされているのはわかるんですけど、ストーリー的に「なんでカードを使うのか」ということを最後に言ってあげれば、ある意味完結するのではないかと思いまして、何とかシナリオに入れ込みました。まあ、上手くいっているかどうかはお客様の反応を見るまではわからないのですが……。自分の中では「なんでカードなのか」という結論を伝えられるはず、と思っています。

――ネタバレになるので最後の事は聞けないのが残念です(笑)。ではスネークの描き方に工夫したところはありますか?

野尻: スネークに関しては、ある程度のアイデンティティが必要かと思いまして、そこは「メタルギア ソリッド」のスタッフにも入っていただいて、調整してもらっています。そういう意味では、スネークはカラーを出していないところが多いですね、無色で。あまりそこに手をつけない用に、周りのキャストに色をつけました。

――たしかにサブキャラクタの魅力は際立っていました。

野尻: ありがとうございます。そこが上手くいくかどうか不安だったんですけどね。サブキャラたちはけっこう口調はポップにしたんですけど、言っていることはけっこう厳しい、冷たいことを言わせてます。

――ヴィナスはしれっとキツイ一言を言いますよね(笑)。

野尻: 私の女性観も混じっているヒロインですね(笑)。女の子は本質的にすごく賢い。本当に個人的な意見なんですけど、人が一番気にしているところを攻撃するのが上手いんですよ。収入ですとかね(笑)。今回もヴィナスというのは「よろしく~」とにこにこしていてセクシーなコスチュームをしているんですけど、どうやら途中からそうでもないらしい、とわかってくる。でも、あくまで口調はポップ。彼女は兵隊としての形を持っていますから、「最終的に自分を救うのは自分」という考え方をしているんですね。スネークを助けるのも自分に利益があるから、と設定しています。

 ヴィナス、ヴィンス、ワイズマン、こいつらは基本的には合理だけで動いている。助けるのも目的に必要なだけであって、不必要になれば容赦なく切り捨てる。感情を荒げて怒るのではなく、最後まで怒らずに切り捨てる、その「プロの冷徹さの怖さ」をシナリオで見せられるように工夫しました。ワイズマンはダルトンが許せないんですよ。感情で動いているやつが側にいて、ただ、許せない。穏やかではあるけど脅しをかける。プロで厳しいある人種とそうでない人たち、その二者が際立って映れば、と思います。

――ダルトンやB.B.は、たしかにスネークたちプロとは真逆の存在ですよね。

野尻: 実はダルトンとB.B.は私自身を投影しているんです(笑)。B.B.は若い私、ダルトンは大人の私かな。B.B.は力関係の外にいますし、ダルトンは警察ですからね。「人を殺すのはなしだろ」という違う価値観で動いている。どう考えてもプロの方が強いんですけど。ある意味本家ではやらない、バカを大事な役割につける。それと、私はシナリオにはどうしてもバカが登場して欲しいんですよね。バカといっても頭が悪いんじゃなくて、予想外の動きをするという意味の。他の人間は理詰めで動いているんですけど、不確定要素のヤツがいて、そいつのせいで話がどっちに転がるかわからない。そういうヤツを出した結果、本家と違うカラーを出せた要因の1つになったと思います。

――キャラの布陣や役割分担とかはゲームの設計上にも影響はあると思いますが、どうやって決められているのでしょうか?

野尻: キャラやステージの布陣は本当にテクニック的なものですよね。うちのゲームってストラテジーなところがあるんで、普段はゲーム内が止まっている。できれば背景が動いたりとか、なんとかして動的な部分を作らなければいけない。例えば、鉄道ステージは最初なかったんですけど、でもやっぱり列車がガタゴトいって落ちたら死んじゃう……そういうステージも後から付け足していきましたね。で、やっぱり難しかったのがボス戦の配分です。「MGA1」ではボスがしばらく出てこなくて、ずーっと通常ステージが続くという構成でして……。「MGA2」では通常ステージを連続してこなしたストレスを、ドーンとボス戦を持ってきて空気抜きをしてやらないといけないと思いました。それで、今回はボス戦の順番を変えた部分はありますね。


■ 極力妥協しなかったカードバトル

――カードを使用してリアルタイムで移動することが、視覚的にも直感的にもやりやすくなっていますね。

野尻: これは山田というスタッフにスクリプトのディレクションを任せていまして、彼が改良・設計したシステムです。彼は「MGA1」の途中から入ったスタッフで、「MGA1」を客観的に見られた。移動面でどこが良いか、どこが良くないか理解できたんですね。それで彼が「もうすこし直感的に動いても、システムには影響がなさそう」と言ったので、任せてみました。そうしたら、「MGA2」のほうがやりやすくなった(笑)。プログラム的には大変だったようですけどね。「MGA1」は行動が予約されて、その計算を後で行なっていたのですが、「MGA2」では一歩一歩計算を行なう形にしたので。まあ、やった価値はありましたね。説明を極力少なくして移動できるようになったと思います。

――カードの性能面ではバランス調整というのが大変ですよね。

野尻: 基本的な設計思想として、効果が強いものは重いコストを付加し、弱いものは小回りが効くように低コストにしています。強すぎるものはコストや機能制限をつけますね。対戦や本編で1つのカードが強すぎるというのはやめよう、ということになりました。

――500枚ものカードから作成したデッキを保存できれば、対戦時なども便利だと思うのですが……。

野尻: 本当はやりたかったんですよ。マシンパワーの上限の問題などで実現しなかったわけですが……。思想的に入れていないわけではないです。実はデッキ保存の仕様は難しいものでして、売っちゃったりしてなくなっちゃうカードもあるわけで、その辺が難しいのです。そのあたりを実現しているカードゲームもあるんですけど、本当に迷ったんですよ。この件に関しては本当に申し訳ないところです。「MGA2」でやり残したところがあったとすれば、これとユーザー間のカードのトレーディングができれば……というところですね。

――次回作の課題、ということですね。では、「MGA」の続編はどうなるのでしょうか?

野尻: 私個人としては、「MGA2」でやりたいことをやった、という達成感があるんですよね。内容にしろ、ボリュームにしろ、ほとんど妥協せずに済んだんですよ。ある意味、「MGA」に関しては限界を感じるところがありますね。次はできれば違うものをやってみたい。何かやるならまた「とびだシッド」のような予想外の要素を入れたい、予想外のゲームを作りたいというのがあります。今後しばらくは「MGA2」の海外版をやらなければいけないので、まだ「MGA2」をやっているんですけどね。

――最後に「MGA」ファンの方へメッセージをお願いします。

野尻: まず「SOLID EYE とびだシッド」の立体映像を体験してください。「飛び出すというのはどういうことなのか? 本当に飛び出すのか?」と、疑っていただいて結構です。私のディレクションした商品はできるかぎり怪しいエッセンスを持たせたいですから、食べ物でいったら“プリン丼”(笑)。いかがわしくも無視できないものを提案していきたいですね。そして、ゲーム本編はより洗練されて、「MGA1」が楽しめた方はさらにストレスなく遊べます。ゲーム的にも完成度の高いものができたと自負しています。値上がりもしていませんので、よろしくお願いします。

(C)1987 2005 KONAMI

□コナミのホームページ
http://www.konami.co.jp/
□小島プロダクションのホームページ
http://www.konami.jp/gs/kojima_pro/
□「メタルギア ソリッド」の総合サイト
http://www.konami.jp/gs/game/mgs/
□「メタルギア アシッド2」のページ
http://www.konami.jp/gs/game/mga2/
□関連情報
【12月8日】PSP「メタルギア アシッド2」本日発売!
開発者インタビューPart1 ディレクター野尻真太氏に聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051208/mga.htm
【8月26日】コナミ、PS2版「メタルギアソリッド3 サブシスタンス」と
PSP版「メタルギア アシッド2」の情報を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050826/mgsa.htm
【5月18日】小島プロダクション発足、PS3「メタルギアソリッド 4(仮)」
PS2「メタルギア ソリッド3 サブシスタンス」、PSP「メタルギア アシッド 2」を発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050518/mgs1.htm

(2005年12月13日)

[Reported by 福田柵太郎]



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