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価格:10,500円
DVD-Video4枚に本編映像を約200分、特典映像を約180分収録予定という超弩級の内容となっている。なぜこれほどのボリュームになるのかといえば、「第4回スーパー歌謡ショウ『新・青い鳥』」がそれだけの濃い内容となっているからに他ならない。激しい殺陣を見せる一方で、じっくりと歌を聴かせ、日替わりゲストによるストーリーの分岐、すみれさんの復活、脇侍の登場などなど……見所を挙げていくときりがない。 初めて3幕に分け上演された本編だけでも相当の分量で、さらに「花組カメラ」、「広井カメラ」、「茅野カメラ」といった特典映像が3時間。どんな映像が収められているのか、気になるところだろう。「第4回スーパー歌謡ショウ『新・青い鳥』」の内容にも触れながら広井王子氏、陶山章央氏、西原久美子さん、伊倉一恵さんに色々とお話を伺ってみた。
2006年年明けの公演が予定されている「2006年新春歌謡ショウ」は、「スーパー歌謡ショウ」から続く内容となっている。このインタビューを読みながら新春の舞台を楽しみにして欲しい。 ■ すごかった“殺陣”の苦労話 -- ゲームに近づける形で演出されている今回の舞台ですが、それに伴って陶山さんの出番もかなり増えているかと思うのですが? 広井王子氏: かなりどころじゃないよね(笑)。 陶山章央氏: いままでで一番、出番も見せ場も多くいただいた分、ずっと殺陣の稽古をしていたのですが。思い残すことはないですね。やりきったという感じです。 広井王子氏: 昨日たまたま、武田くん(ベロムーチョ武田役の武田滋裕さん)と話してて聞いたら、初日稽古に来たときに、「僕はこれはできません!!」って陶山君がいきなり言ってたという(笑)。それぐらい、分量も多かったし、チャンバラだらけだし、出番は多いし、このチャンバラをどうするんだよという不安はあったと思うんですよね。 そこは今回、西ヤン(西村ヤン太郎役の西村陽一さん)がずっと担当してくれて、1カ月間べったり陶山君にくっついて、本当に丁寧に(殺陣を)付けてくれたんでね。絶対僕たちが何とかするからって、JACの連中もみんな協力してくれて、それで完成したチャンバラですから。通常では考えられないくらい分量が多いんです。普通のお芝居でも、あれだけ殺陣は入れないですよ。 -- すごく決まっていましたよね。 陶山章央氏: その気になってやりました。 広井王子氏: 大事だよね、その気になってやるというのは。 西原久美子さん: 自分の出番のない時に、後の方でずーっと他の稽古の邪魔にならないように (殺陣の) 稽古してたよね。 陶山章央氏: せずにはいられないという状況でしたので(笑)。 伊倉一恵さん: もう小屋 (劇場) に入って本番中もずっと、袖や廊下で本物の立ち回りをする時の刀はないんですが、ハンガーで二刀流とかずっとやってましたよね。 陶山章央氏: (ハンガーが) ちょうど良いんですよね。 広井王子氏: 立ち回りの中で特に難しいんですよね、二刀流というのは。斬ったときに片方の手はどこに行けばいいのかとか、いろんなことが難しいんですよ、実はやってみると。 -- それを全て体に憶え込ませるわけですよね。しかし、殺陣は相手がいるものですから難しいですね。 広井王子氏: そうなんですよ!! 陶山章央氏: 相手に関して言えば、嘉島典俊さん (根来幻夜斎) がパーフェクトに素晴らしい方ですので、おかげで何とかなったという感じですよね。 -- 想像しながらお一人で練習するのは難しいですよね。 広井王子氏: でも、(嘉島さんを) つかまえて練習してたんでしょ? 陶山章央氏: 嘉島さんとはいっしょに舞台に立つのは初めてだったので、最初はやっぱりいきなり「稽古しましょう」というわけにはいかないんですけど、徐々に嘉島さんの方が付き合ってくださって、何とかこうなりました。 広井王子氏: 共演者にも恵まれましたよね。「サクラ大戦」を理解してくださって、僕たちの方はわりと素人みたいなものだと言うことをちゃんと理解した上で、きちんと付き合ってくださったんですね。それはとても感謝してますね。嘉島さんも3歳とか4歳から (舞台を) おやりになっている方ですから。 陶山章央氏: 今回、僕はほとんどが嘉島さんとの殺陣だったんです。ですが、剣ではないのですが、少しほかの方とも絡む所があったので、(そのシーンと比べると) どれだけ嘉島さんが相手だとやりやすいんだということがわかりましたね。その方は殺陣をやったことがない方でしたので、ある意味、僕と同じなんですね。僕と同じ (レベルの) 人とやると、すごく大変なんだと思って。だから、嘉島さんは僕といっしょにやっていて、大変だったんだろうなぁと思いましたね。 広井王子氏: なるほどね。 (陶山さんは) すごいことに気づいてますよね。百戦錬磨って、(嘉島さんのような) ああいうことなんでしょうね。相手がどう来ても相手をキチンと魅せてくれるというか、自分がどうこうじゃなくて、相手を魅せられる役者っているんですね。 それに当然、幻夜斎も強くなければ、今度は大神がかっこわるいですからね。だから、そこも魅せつつ、格好いいところもみせてあげられるというか。そこはやっぱり素晴らしかったなと思いますね。でも、(陶山さんが) そこにくっついていくのは大変ですよ。 -- 体がクタクタになるまで練習したという感じですか? 陶山章央氏: そうですね、体はもうヘトヘトという感じでしたね。ヒジというか、関節に負担がけっこう来まして、あぁ、こんな風になるんだと。 広井王子氏: 立ち回りの稽古をやってて、「(体が痛くて) 昨日、眠れなかったんですけど」と言ってきたのは、初めてですよね。「ゲームやってて眠れなかったんですけど」というのはありましたけど(笑)。立ち回りをやってて眠れないなんて……「ひとつわかると、ひとつわからなくなるんです」って言ってたよね。 陶山章央氏: いや、目をつぶると (殺陣の) 順番が出てくるんですよね。それで「次の日の稽古で間違わないようにやらなきゃ」と思っていると、大変でしたね。 西原久美子さん: 殺陣を憶えるだけじゃなくって、いつも使わない筋力をつかうでしょう。ずいぶんと鍛えられたんじゃない? 広井王子氏: やせたんでしょ? 陶山章央氏: そうなんですよ。 広井王子氏: そりゃあれだけ動けば、やせるよね(笑)。 陶山章央氏: 稽古前まではグータラしてたので……。
伊倉一恵さん: それはね、いっしょ。花組もいっしょ(笑)。「サクラ大戦」ダイエット!!
※画面は制作中のものであり、予告無く変更する場合があります ■ 歌への心構え、演技への心構え -- そういった意味では、今回は歌も多く大変だったんじゃないですか? 広井王子氏: 歌は……多く聴こえた? 1曲多いくらいなんだよね。 -- 第3幕が歌が多く、一気に見せる展開でしたので、そのように感じましたね。 広井王子氏: なるほどね。 伊倉一恵さん: 私的にはですね、第1幕で任された「夢の中に」という曲がデリケートな歌だったんですよ。歌って、けっこう歌い上げちゃう歌の方が気持ちも良いんですよね。フォルテが2つ、3つ付いているのをバァ~っと歌っちゃう方が楽だったりするところがあるんです。「夢の中に」っていうのは絶対フォルテでは歌えないんですね。ピアノとかピアニッシモで、優しく高音をながく……。ハイトーンのロングトーンのピアニッシモみたいなのって、楽曲的には難しいところがあるんです。そういった曲を任されちゃったんですよね。 なので、ずーっとマスクしてましたね。フォルテで歌える曲は少々のどが痛んでいても力任せで歌えるんですが、「夢の中に」だけは痛んでたら歌えない。なので、たばこを吸っている人のそばには行かないし、飲みに行く席でもなるべくたばこの煙のこないところに行ってましたね。 西原久美子さん: お酒も飲まなかったですものね。 伊倉一恵さん: 稽古場でも埃を吸わない、立ち回りの時も埃を吸わないようにしていました。立ち回りの時はいっぱい酸素がいるから、(マスクをしていると) 苦しいんですけどね。でも、のどを痛めたくなかったからずっとマスクをしていたりしましたね。ちょっと気は遣いましたけどね。何気ない曲の方が大変だったりするんですよね。 広井王子氏: 舞台はね、録音を一回すればいいのではなく、毎日やらなきゃならないから。それを維持していくのって結構大変なんですよね。稽古場もあるし。ずーーっと維持しなくちゃいけないわけでしょ。それは大変ですよ。 西原久美子さん: ずーっときれいな高音出ていましたよね。 伊倉一恵さん: いたわってましたね。 広井王子氏: プロの仕事だよね、本当に。 伊倉一恵さん: 最後の「なかに~」という高音の所がね。田中公平先生もねぇ、しろたましろたましろたま♪……「何小節しろたま続くのよぉ、!」みたいな感じなんですよ (笑)。気持ちよく作曲しちゃって、公平先生。「書き手はこれだけのばしてもらったら気持ちが良いだろうな」って思うんでしょうね(笑)。でも歌うほうはねぇ、それに応えるとなるとちょっと大変でしたね。 西原久美子さん: 私が大変だったところは、第3幕って短いじゃないですか? だからこそ、本当に集中して一気にやっていくんですけれど、あいだに幕間というか楽屋(でのシーン)が出てくるじゃないですか。ミチルになりすぎていると、アイリスに戻れないんですよ。台詞忘れるんですよね。「さよ~なら~」といってボロボロ涙を流して母様や仲間のこととか色々な想いでいっぱいのミチルから、ずっと現実のアイリスに戻って「わかった!」って花組が忘れかけてたことにもっていくのが大変でした。稽古中もなかなかできなくて、そこだけやると台詞も出てくるんですけど、繋げてやるとわからなくなっちゃう。 伊倉一恵さん: ミチルになっているということですね。 西原久美子さん: もう、本当に短いだけにミチルになりきらないと陳腐になっちゃうと思って、一生懸命に集中してやりました。 伊倉一恵さん: 本当の舞台とかだったら、もうちょっと時間があると思うんですよ、ミチルからアイリスに切り替わるまでの時間が。たとえば、伊倉一恵が何かを演じて、伊倉一恵に戻るまでの時間は、涙を拭いたりお茶の1杯か2杯も飲んで、しばらく経ってから伊倉一恵に戻ってくると思うんですけど、舞台上では制約があるじゃないですか。そんなに長い時間、ボーッとしている時間は見せてられないですよね。 そうしたらやっぱり、その時間の中でどんどん切り替わっていかなくてはいけない辛さはありますよね。それはやらなければ仕方ないんですけど、私たちは。本当の舞台だったら、あんなに急にフッと戻れることはそうそうはないかもしれないですね。 広井王子氏: そういう感情の揺れ方を観せる……たとえば新劇とかね、そういう舞台もあるとは思うんですよね。でも、「サクラ大戦」はそうじゃないので、そこはもう「役者の腕でやって」っていう。「そういう風に観せて」っというところでしょうね。 西原久美子さん: そこがプレッシャーとしてあるといえばあるし、やりがいもありますね。 広井王子氏: そこらへん、(「サクラ大戦」は)キャラクタショウだからといって、あまり乱暴に“気持ち”がないのに舞台が展開しちゃうとつまらないものになる。やっぱり、“気持ち”はあるんだよね。その“気持ち”を付けられるか付けられないかが役者の腕だと思うのね。そこで観れるか観れないのかということになっちゃう。だから、「スーパー歌謡ショウ」が大人の観られる舞台にちゃんとなっているのは、そこは役者がキチンと作っているからだと、僕は思っていますけどね。
やっぱり、9年かけてキャラクタをよく理解しているし、そういった意味でも役者の皆さんは稽古場に来ると、キャラクタになってますからね。そういった中で、その時々の脚本の中でシーンが飛んでいるところの感情を、どうやって埋めていこうかというのが、お稽古になっていると思いますね。 ■ 派手な舞台装置の舞台裏
西原久美子さん: 武ちゃん (武田滋裕さん) が爆発したりね。 広井王子氏: あぁ、あれはどうしようかと思ったね。ずいぶん前から、あれは計画していたんだけど、やっぱりああいうのは危ないんだよね、舞台上でやるのは。 西原久美子さん: 「近づいちゃダメ」っていわれてた。 広井王子氏: 火薬入れるのはねぇ……。実は消防法で火薬の量は決められているんですよ。だから、そこで火薬使うと、こっちのシーンでは使えないとか、こちらで派手なことやってしまうとここで使えないとか、色々帳尻合わせなければいけないんですね。 伊倉一恵さん: 総量が決められているんですか? 広井王子氏: そうなんです。また、その総量というのは小屋によって違うので、青山に行くともっと使えるんですけれど、東京厚生年金会館は制限が厳しいんです。 それで申請しに行かなきゃいけない。勝手にやっちゃうと今度は逮捕されちゃう。それで、バランスよく使おうということで。でも、あそこのシーンだけはこだわってて、どうしてもビックリさせたかったので、弾着という……体に着るんですけど……あれやると実は毎回シャツがダメになるというのに最初は気がつかなくて(笑)。同じシャツが公演分いるという。なおかつ稽古やるんだったら、稽古でもいるということで。 同じシャツを20着そろえるのがけっこう大変! 俺までかり出されて、「広井さん、どこか知らない?」って。何万円もするものは使えないしね。リーズナブルで、武ちゃんが着ても“らしい”もので……というのを揃えるのが大変でしたね。はじめのシーンで着ているシャツは実は僕が古くから着ている私物のアロハで、はじめはそれを探しに行ったんだけど無くて。それで仕方なく、「親方に買ってもらった」という台詞を入れて、弾着用のアロハにして、毎回やってましたけどね。 -- 舞台上で演じている側としての印象はいかがですか? 迫力がありますでしょう? 西原久美子さん: そうですね。(爆発して)あぁやって死なれたら、すごいショックですよね、アイリスとしては。ものすごくショックを受ける。だからそれがすごく怒りになって、そのあと幻夜斎に言う台詞なんかも、本当に自然と怒りがこもっていくし。 広井王子氏: そこら辺も面白いんですよね。稽古場で作っているときは弾着付けてないですから。ですから、アイリスが気持ちを怒りに持って行くところとか観ていると「長くねーか?」とか思ってたんだけど、実は“ババーン”と爆発して照明があそこにいくと、その間がすごく良いんですよねぇ。だから、稽古場から舞台に変わると間尺が変わったりとかするのを調整するのが、演出の茅野イサムさんの役目ですね。 西原久美子さん: で、そのあと瞬間移動するんですけど、それがどんでん返しの仕掛けになっていて、スタッフが心配して(笑)。どんでんの真ん中に軸があってまわるじゃないですか。私のことだから、真ん中を押すんじゃないかとかね。 一同: (笑) 西原久美子さん: 消えた? って思ったら、まわりすぎてまた戻ってきたり。 広井王子氏: そりゃ、おかしい(笑)。それはお正月だよね、ネタとしては。そりゃドリフだよ(笑)。 西原久美子さん: 色々心配されましたねぇ。花火も出るし。火傷するんじゃないかって。「ここに立たないと火傷しますから」って言われたり。 広井王子氏: 一応、低温火薬という舞台用の火薬を使っているんですが、やっぱり直接当たったりすると赤くなったりしちゃうので。 -- そういうのは、舞台に行かないと練習できないということですか? 伊倉一恵さん: そうですね。鉄パイプが組まれた下水道のシーンとか、あのセット自体が現場に行かないと組んでもらえないので、(セットに出てくる) 階段の角度や寸法は稽古場では一切わからないんです。現場に行って作ってもらって、舞台稽古から確認できるという感じなんです。 広井王子氏: 立ち回りもそうですね。稽古場でも尺とってやりますけど、舞台に行ってから道具を置いてみたりしてみないと、実際にはわからない。だから、あれだけのことやろうと思ったら、舞台稽古のあいだ、小屋を借りていないといけないんですよね。で、舞台稽古は今回3日間でしたっけ。3日間たっぷりかかりましたね。 (舞台シリーズの) 最初の頃は1日で舞台稽古をやっていたんですけど、これだけの規模になってくると、しっかりやらないと怪我をするので。奈落に沈んだりとか、穴が開いているわけですからね。役者は演技もしながら、そういったところまで気を配らなければならない。だから大変ですよね。 伊倉一恵さん: “派手な感じ”という点では……役者としてこの世界に入って、こんなにゴージャスなセットの、ゴージャスな衣装の、ゴージャスな照明の、素晴らしい楽曲に恵まれた作品に、一生のうちにそんな役に巡り会える人ってあまりいないと思うんですよ。 私は新劇を勉強したんですね。それはそれでもちろん別の面白みがあって、感動できるものがあります。でも、こんなにお金のかかっている舞台に立たせてもらえる役者がね、役者を志してやっている人の中で何人いるだろうと思ったときには、私たちはそれを9年もやらせてもらって、年ごとに派手になって、とても感謝しますね。幸せですね、今年も幸せでしたね。 また、私たち的にはですね、今年は少し趣向が違っていて、オープニングでチルチルとミチルがせり上がって登場するんですよ。お客さんがね、今回は道化とかいてどうなるんだろうと思っている中、音楽が始まってスーッと舞台に上がっていく瞬間というのは鳥肌が立つ感じ。あの幸せは、ほかではちょっと無い感じですね。 広井王子氏: それはもう、僕が客席から観ていても、お客さんも「ワァ!!」ってなったものね。それがもうビリビリビリと伝わってくるのは、感じましたね。 それは、来年ファイナルだって言うのもあったでしょうね。今年、舞台として、スーパー歌謡ショウとしてある程度充実したものになんとかしなきゃという想いもありましたね。いつも以上にということで。それで選んだのも「青い鳥」ですし。僕たちの“青い鳥”ってなんだろうね、舞台をやり続けてきて「サクラ大戦」にとっての“青い鳥”ってなんだろう。ゲームであったり、お客さんであったり、そういったものが原点にあるよね……というところから始まって、「お客さん、この立ち回りを観たかったんじゃないかな」とか、「ストロングスタイプの大神を観たかったよね」とかそういうのを全部叶えようというか、僕も観たかったしね。 だからそういう意味では、陶山君にもすごく負担がかかったし、花組にもかかったし。最初の台本の読み合わせだけで、たっぷり4時間もかかって。 伊倉一恵さん: 拍手が出ましたね、終わったあと。 広井王子氏: そんなの無いよね、読み合わせが終わって拍手が出るとか(笑)。 伊倉一恵さん: あぁ、終わった、良かったみたいな (笑)。 広井王子氏: こんなのやったら何時間かかるんだって(笑)。その中から、ここは饒舌すぎるとか、ここは役者の演技でできるから台詞はいらないとか、削ぎ落としていってああいう舞台に仕上げていきましたね。そこはね、役者さんも入って、ここはこうしようとか相談して。第3幕なんかもグッと絞りましたしね。 伊倉一恵さん: 書き手としてはつらいところがいっぱいあったと思いますけどね。 西原久美子さん: せっかく書いたのにバサバサ切られてね。 伊倉一恵さん: まぁ、そうも言ってられないので、演出家はバサバサ切っていきますよね(笑)。泣いてるところもあると思いますよ、作家は。でも、そんなのどこの芝居でもあることで、それこそ新劇でもありますしね、書き手と演出家の闘いというのは。 西原久美子さん: 陶山君なんか、台詞憶えてすっごく練習したのに、バサッと切られたしね(笑)。 陶山章央氏: あれは、それで良かったんですよね(笑)。 広井王子氏: だって、森光子さんの「放浪記」の初演なんか5時間だよ!! いまは2時間半。半分ですよ。 西原久美子さん: えぇ~!! 伊倉一恵さん: それはお客さんの体力も無理! 広井王子氏: いまはね、お客さん観てられない。そういった意味では時代に合わせてコンパクトにしてあるというか。今回の場合は6時間とか作れないから。ただ、書いちゃったんだよね、今回は思わず。 舞台作りの順番を簡単に説明すると、シーンがいくつあって、誰が出てるかとか、道具をどういう風に使うといった「プロット」を作り、そのあと調節して準備稿を作るんだけど、その時点では台詞も歌も入っている段階なのね。今回大変だったのは、この準備稿の段階で、渕崎さんがおめでたということがわかって、「ひえー」って。ここが一番大変でしたね、時間がないので。最初は小手先で、紅蘭のシーンを削っていったんですが、やっぱり無理で、頭から書き直しということで、もう1回プロットから、全員呼び出して「緊急会議」って。それが3月。 伊倉一恵さん: でも、結果的に良いものになったので。怪我の功名ですかね(笑)。転んでもただでは起きません。結果的にはアリ? って感じですね。紅蘭は紐育行ってて、新次郎君も見れたしね。結果的にうまい方に転がった感じで、よかったですよ。まぁ、広井さんが苦労はしましたけどね(笑)。 広井王子氏: そこだけ。まぁ、書き手はそこだけですからね。そこさえやってれば、あとは稽古場に行ったら、どんどんできあがっていくのを楽しくお弁当食べながら観てるっていう(笑)。 伊倉一恵さん: 広井さん、お弁当食べながら見てたぁ!! 第3幕なんてゴロゴロ寝ながら観てたよ(笑)。 西原久美子さん: それでチャンバラになると起きてくるんだよね(笑)。 伊倉一恵さん: 自分の好きなところだけ起きあがってきて、あとはお弁当を食べながら「うぅ~ん?」とか言いながらね、観てました。お客さんだった(笑)。 広井王子氏: 毎日楽しみでさぁ、稽古場いくのが。やっぱり面白いんだよね、できあがってくるのが。昨日できなかったことが、今日できてるっていう。もう全然変わって見えるっていう。そういうのが、もう楽しくってねぇ。 -- 紅蘭さんの登場シーンは、デジタル処理してタイミングを合わせているのでしょうか? 広井王子氏: いやいや、カッチリ尺が決まっているよ。 -- へぇ~、バッチリあっていて、すごいですねぇ。 陶山章央氏: そういった意味ではアテレコの仕事みたいですよね。 西原久美子さん: 織姫が一番大変だったんだよね。 伊倉一恵さん: そうだね、あとね、私も1カ所だけ絶対に間違えられないところがあったんだよね。レニって、立て板に水じゃないといけないキャラだから、「説明しよう!」っていう台詞のシーンはとちれないんですよね。とちるとかっこ悪いじゃない。とちれない台詞で、寸法もありで、やな感じだった、あれは(笑)。
広井王子氏: あれは間違えられないんだよね。生身の人間だったら少々間違えてもお互いの中でやれるんだけど、(紅蘭は映像だけなので) まったくできないわけでしょ。向こうはそれしか言わないんだから。そこにまるで会話しているように話していくのって、本当に声優さんの特技だよね。そういう技も見せつつね。苦肉の策で作ったのに見せ場になっちゃってるんだよね。良かったなぁって思って。 ■ 今回もやります! 「花組カメラ」
広井王子氏: もちろん今回もあって、さっき聞いたら全部で18時間あって、それを40分に編集してお見せすると言うことで。まぁ、見せられないところもいっぱいありますからねぇ(笑)。 陶山章央氏: 見せられないところがほとんどだから!! 伊倉一恵さん: そうなんです、DVD用のおまけとして出してますけど、どこか私たちの思い出として撮っておこうよという意味合いもあるので、花組としては。最初から、「お客さんには見せられないけど、とりあえずは思い出、思い出」という所もあるので。そんな風になっちゃうんですけれど。 -- ここが見所といったところはありますか? 伊倉一恵さん: えー、陶山さんの恋愛(笑)。 -- シリーズ物ですね(笑)。 陶山章央氏: あれは、見所じゃないんです!! あれは見所じゃないんです。逆に、あれを信用しちゃいけませんよ!! 広井王子氏: でも、これだけ去年も一昨年もあれだけ嫌がってたらさ、今年は自粛するじゃない。しないもの!! 陶山章央氏: 自粛っていうか、そんなにねぇ、しゃべってないですよ。そんなに女の子としゃべったりとかばかりじゃないんですよ(笑)。そこを狙われて撮られているんですよ。 広井王子氏: でも、しゃべってると思って撮影開始してそれでもしゃべっているわけだから、一瞬じゃないわけですよ。 陶山章央氏: でも、撮影されてるとわかって急に話をやめるのも変じゃないですか。 伊倉一恵さん: まぁ、話している最中はねぇ。でも、本人も抜かってます(笑)。名誉のために言っておくと、ほかの稽古もやってましたから。 陶山章央氏: ほとんど殺陣の稽古してましたよ、今回は (笑)。もう、おかしいなぁ。そんな余裕なかったですよ、今回は。 -- その他の見所はどんなところですか? 西原久美子さん: ちょこっとだけ映っているのですが、伊倉さんに背負われている所かな。「役作りなんですよ」と言っているのですが、たぶん何のことかわからないと思うんですよ。 それは、ミチルの魂がどこかにいってしまい倒れるじゃないですか。その時にチルチルが「いっしょにお家に帰ろう」と言ってミチルを背負い、一生懸命連れて帰ろうとしながら長台詞を言うのはどうだろうかと考えたんですね。 伊倉一恵さん: 演技プランのひとつとして、考えていたんですよね。でも、私が小さくて、久美子ちゃんのほうが大きいから、見た目が美しくなくて。「この人(ミチル)を連れて帰る」という、気持ちはあるんですよ。寸法が合ってたらお兄ちゃんが妹を背負って、必死で家に連れて帰るというのは、見た目にも感動を呼ぶじゃないですか。と言う想いでやったんですけれど……。 西原久美子さん: ところが、大きな人を背負って大変だなぁって(笑)、これはやめようよって。 伊倉一恵さん: 絵的に美しさもないと、映画もそうだと思うんですけど、舞台上もやはりないとダメだろうということで、却下になっちゃったんです。だから、(ミチルを) 抱えて顔を起こしていろんな景色を指し示すと言ったようなお芝居に変わったんです。本当は連れて帰りたかったですね。……と言う貴重な練習シーンがちょっとだけ入っています。 広井王子氏: 稽古場だけのものって多いよね。実際の舞台ではないという。 伊倉一恵さん: 色々な演技プランをたてていきますから、役者は。それを試してみて、チョイスされるわけですから。その消えていった、幻の演技プランですね。 陶山章央氏: そう言えば、花組カメラでアイリスが、アイリス目線で撮っているのは面白かったですね。 西原久美子さん: あぁ、あの医療ポッドに入っている時のね。 広井王子氏: あれは面白かったね。 西原久美子さん: 舞台上のお稽古で場当たりの時だけ、ちょっと悪いかなと思いながらも、花組カメラを持って入って、医療ポッドの中から撮っているやつね。 広井王子氏: あの映像は新鮮でしたね。みんながのぞき込んだりして、あれは新鮮で面白かったですね。練習は周りで進行していて、みんなが「アイリス大丈夫かなぁ」ってのぞき込んだりしているわけ。 伊倉一恵さん: 場当たりは、初めてセットにあたるときなので、そんなに本気でもやらないし、怪我に注意して立ち回ってみましょうという稽古で、そんなに真剣でもないので、そういったことも許される感じですけれども。 広井王子氏: ある意味、映画的ですよね。こっち側 (手前) にカメラがあって、向かってくる側が映っているというのは。とっても映画的な場面でしたね。 -- 今回は、日替わりゲストがあったじゃないですか。私が拝見したのは“ダンディ団”バージョンだったんですけど、ほかも観ることができるようにDVDではうまく仕掛けが施されているのでしょうか? 広井王子氏: DVDではLIPSになっていて、“ダンディ団”バージョンか、“薔薇組”バージョンか、“帝劇三人娘”バージョンか選べるようになっていて、選ぶと頭からぜーんぶ観ることができるようになってます。乗り換えていって1本になっているというやり方をしています。 -- そういった意味では完成版とも言えますね。 広井王子氏: そうですね。ある意味DVDで完成版というか。3本全部観れる完成版というかね。そういう風になっちゃいましたね、たまたまですけど。面白い試みですね、これは。(本編映像だけで300分以上なので) DVDだから可能ですよね。ビデオの時代ではこんなことあり得なかったんですけどね。 これまでは特典映像として、ゲストさんをまとめて、そのシーンだけ観るというようにしていたのですが、今回は頭からキチンと観れるようになっているので、お得じゃないかな。 -- 最後に読者に一言ずつお願いできますか。 伊倉一恵さん: 私的には、やり尽くさせていただきました。思い残すことなく。「あっ、あそこはああすれば良かった」とか思いつかないくらい、楽しくやり尽くさせていただいたので。楽しんでくださいという感じですね。 西原久美子さん: 今回やっていて、1・2幕ではアイリスが、3幕ではミチルがとってもみんなに愛され、守られ幸せな気分を味わっていたんです。特にレニとチルチルにはとても愛してもらいました。そういう幸せなアイリスちゃんをぜひ観てください。 陶山章央氏: 今回、ゲームに近い、ファンにとっては一番望んでいたというか、入りやすい舞台になったと思っているんです。ゲームのファンだけでもなく、知らない人が見ても楽しめる舞台になったと思うので、楽しんでいただきたいです。 広井王子氏: はじめるときから、ゲーム的にやることは無理だと自分の中で思っていたんですね。それはロボットが出たりとか、爆発があったりとか、秘密基地がありチャンバラがありという舞台は、(ゲームの世界から舞台に) 移しかえることは、映像なら可能かもしれないけど、舞台でやると言うことは、そんなのどこもやったことがない。無理だよねと思っていて、日常の花組さんにちょっとしたトラブルがあるという形で歌謡ショウは始まったんですよね、僕の中では。 そういう意味では、当初の歌謡ショウというのは「つばさ」を経て「紅蜥蜴」あたりでかなり良いところまで自分の中で捕まえて、「海神別荘」で「ここまでできた」という想いがあったんですが、「スーパー歌謡ショウ」って何を“スーパー”にすれば良いんだろうという点で、自分の中ですごく試行錯誤したんですね。で、やる度に「こうじゃない、こうじゃない」って自分の中でやっていたのが、今回やっぱり「そうか! やっぱり殺陣だな」という。ゲームの中のあれをやることなんだ、それが「スーパー歌謡ショウ」なんだと言うところに最終的に行き当たったところがありますね。
そういう意味では、僕にとっての“青い鳥”探しだったのかもしれないですね、台本を作っている期間というのは。それが、自分の好きだったむかし観たチャンバラだとかを、どうやって舞台に移しかえるかというのは、スタッフも揃ってきたし役者さんも9年やって信頼関係もある。そういった中で、「やろう!」っていう、「たぶんこれなら『やろう!』って言ってもらえる」ものができたかなと思いますね。バラエティとしての「スーパー歌謡ショウ」がひとつの形になったなぁって思ってます。そこを観てもらいたいと思いますね。
□セガのホームページ (2005年11月16日) [Reported by 船津稔]
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