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★PCゲームレビュー★

FPSジャンルの金字塔「Quake」シリーズ最新作
渾身のシングルプレーヤーモードをレポート

「QUAKE 4」

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発元:Raven Software
  • 発売元:ライブドア
  • 価格:7,329円
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • 発売日:10月18日(日本は10月27日発売)



 押しも押されぬFPS界の金字塔シリーズの最新作、「Quake 4」が登場した。気合の入ったPCゲーマーならば絶対に無視できないビッグタイトルである本作は、多くのファンの期待を受けてどのように生まれ変わったのだろう。本稿ではシングルプレイレビューと題打ち、本作の基本的な位置づけと、シングルプレーヤーモードの内容を中心にお届けしたい。マルチプレーヤーモードについては別稿でお届けする。


■ これまでの id Softwareブランドとは趣を異にするシリーズ最新作

以前のシリーズでは一人だった主人公だが、今回はNPCのチームメンバーと行動を共にすることが多くなる
クリーチャーのデザインは「Quake II」そのもの。デティルアップしたサイボーグ戦士たちの迫力は文句なし
ステージを進めて行く中で多様なギミックが登場するようになったのも従来との大きな違いのひとつだ
 FPS(=一人称視点シューティング、First Person Shooter)という一大ゲームジャンルを切り開き、ゲーム界に革命を起こしたゲームデベロッパーid Software。idは'93年の「DOOM」をリリースしてFPSジャンルを成立させてのち、FPS界のリーディングカンパニーとして常にゲームエンジン技術の最先端を走ってきた。

 そして同社の看板シリーズである「Quake」シリーズは、技術のみならず、PCゲーム文化に大きなインパクトを与えてきた。完全な3D世界とインターネット上のオンラインプレイを実現した'96年の「Quake」、リッチなシングルプレイ・ストーリーラインを表現した'97年の「Quake II」。そして、「競技的なゲーミング」のフォーマットを確立した'99年の「QUAKE III Arena」。「Quake」シリーズの系譜そのものが、オンラインゲーミングのプロ化やMOD文化の創造などに大きく貢献してきたこと異論の余地はないところだろう。

 本作「Quake 4」はその系譜の最新作にあたるものだが、これまでの「Quake」シリーズとは異なり、idは直接開発に関わっていない。本作の実質的な製作はRAVEN Softwareが行なっている。同社は古くからidのエンジンを活用して独自のゲームを開発してきたことで知られるゲームデベロッパで、「StarWars: JEDI KNIGHT」シリーズや「Soldier of Fortune」シリーズなど、ストーリーや世界観を重視するシングルプレイ志向のアクションを開発してきたことで定評がある。

 今回RAVEN Softwareが開発を行なった「Quake 4」は革命的な要素には欠けるものの、「Quake II」の世界観をベースに、これまでシリーズに無かったリッチな演出と意外な展開を含むストーリーを実現。従来はあまり語られることのなかった世界観を補完し、拡張する作品として新たに生まれ変わった。

 そのストーリーを描きだすのは、現行最強の3Dエンジンのひとつ「DOOM 3」エンジン。この強力な3Dエンジンの表現力によって、本作のグラフィッククオリティは申し分の無いレベルに仕上がっている。マップ内の感じとしては、闇を強調しエッジの強い映像を押し出していた「DOOM 3」とは対照的にソフトで明るい感じに変化し、プレイしやすさが向上した。また「DOOM 3」ではやや不自然な感のあったキャラクタの質感も本作では向上しており、より自然になった肌のシェーディングはもはや実写に近い迫力がある。

 このあたりはグラフィックステクノロジーというよりは、純粋にアーティストの経験や技術レベルの洗練に起因するところだろう。開発のRAVEN Softwareは映画原作のゲームを多数製作してきており、そうした経験が同作に活かされているようだ。いずれにしてもこういった演出的な改良は、本作のストーリー展開をより身近に感じさせる意味で一役買っている。

マップは全体的に明るめになり(あくまでも「DOOM 3」との比較ではあるが)、プレイしやすくなった。しかし暗い場面もやはりあるため、フラッシュライトは健在

人物の表現が非常に進歩している。「DOOM 3」ではわりとプラスチックっぽかった肌の質感が自然になり、挿入されるカットシーンのクオリティが非常に高いものになった


■ 「Quake II」から8年…… 人類 対 Stroggの戦い、再び

「Quake II」では描かれなかった惑星強襲シーン。Stroggとの戦いは、このように巨大な惑星間の戦争だったのだ
 本作「Quake 4」のシングルプレイモードは「Quake II」のストーリーラインを受け継ぎ、人類と地球外種族との戦いを描いていく。

 地球外知的生命体Strogg。危険なエイリアンである彼らは地球を侵略し、多くの人類を意思のない肉と機械の混合体、サイボーグにしてしまう。これに対抗する人類は最強の艦隊をStrogg本星に派遣するが、ほぼ全滅。しかし、ただ一人生存した兵士が攻撃を成功させ、惑星防衛システムをダウンさせることに成功した。ここまでが「Quake II」の物語である。「Quake 4」では、時は進み、人類がStroggの本星に対して本格的な攻勢を開始する。

 ゲーム冒頭のカットシーンで現われるのは、外宇宙からStrogg本星表面への降下を試みる地球軍艦隊の姿。Stroggの惑星防衛システムにより多数の強襲着陸船が破壊され宇宙空間に死体をバラまきつつも、主人公 Mathew Kane属するRhino分隊を乗せた上陸船は、辛くも惑星表面への着陸を成功させる。

 この時点からプレーヤーは、地球軍所属のエリート兵士としてStrogg本拠地への最終的反撃作戦を遂行していくことになる。主人公は冒頭で気を失っていた間に、Rhino分隊の他のメンバーと離れ離れになってしまっている。まずは前進して分隊に合流し、作戦行動に加わることが最初のミッションだ。

オープニングはのっけからグロテスク。Stroggの惑星防衛システムに撃破された着陸船の中身が、宇宙空間を漂う 着陸船に乗り込むRhino分隊の隊員たち。彼らは後々にもゲームに登場し、プレーヤーと行動を共にする仲間だ ミサイルに追われ、墜落寸前の姿勢で惑星表面へと突き進む。果たせるかな、これが「Quake 4」の全ての始まりだ

NPC隊員たちは結構有能なので、基本的にはプレーヤーのペースでゲームを進められる。敵に接近されると銃床でブン殴って倒したりもする
ミッション内容はいつでも[TAB]キーで表示される。道に迷ったらまずこれを見ておけば間違いない
 操作系は極めてオーソドックスで、「古き良きシンプルなFPS」といった印象。平行移動、照準、射撃と複雑な要素はほとんどない。ただひとつ従来の「Quake」シリーズと「DOOM 3」との違いとしては、右クリックによるズーム機能が一部の武器に付加された程度。基本操作を把握するまでFPS経験者であれば数分も必要としないだろう。まったくFPSが初めてという人でも、マウスによる視点移動になれてしまえば、そう大きな問題はない。

 基本操作はシンプルさを維持しているが、ゲームプレイは従来のシリーズから大きく変化した。これまでの「Quake」や「DOOM 3」の主人公は基本的に1人きりで行動して敵をぶち倒していたが、本作の主人公 Mathew Kaneはエリート部隊Rhino分隊所属の一メンバーとして他のメンバーと行動を共にする。暗いダンジョンに一人で閉じ込められるのが苦手な人もこれで安心だろう。

 NPCとして登場するRhino分隊の仲間達だが、敵を倒すための単なるコマとして動くわけではない。戦闘はもちろん手伝ってくれるが、作戦を進める中で映画の登場人物のようにふるまい、さまざまな困難に小隊として協力して立ち向かう情景を強力に演出する。それぞれのステージを攻略していく中、ときにはNPCが先導し、あるときはプレーヤーが前に進みといった感じで、ゲームプレイを通じて映画的な流れとゲーム的な流れが交互に現われる。この流れが、ときに目的を見失い敵を射撃するだけのプレイになりがちだった旧シリーズのシングルプレイとは根本的に異なる部分である。

 このようにストーリー演出をぐっと押し出したゲーム内容のため、従来の「Quake」シリーズとはプレイ感覚がずいぶん異なる。たとえば本作では、ゲーム中の進行に応じて、プレーヤーには随時何らかの「ミッション」が与えられる。他のジャンルの表現をすればミニクエストが次々に与えられる感じで、ゲームを進めていく中でちょっとした達成感を頻繁に味わうことになる。単なるFPSというよりはアクション・アドベンチャー的な色彩が濃いわけだ。

 当のミッションはTABキーでいつでも確認することができ、今何を目指すべきかを明確に示してくれるため非常にプレイしやすい。またこれにマップの構造も貢献している。基本的にStrogg基地の中で進行するゲームなので主舞台は人口施設ということになるのだが、随所に設置された自動ドアはミッションの進行に関係ない部分にロックがかかるようになっている。

 このような工夫がなされているおかげで、複雑なマップ構造を持ちながらも無意味に彷徨ってしまうようなことはないのだ。序盤からずっとサクサクっと最後まで気持ちよくゲームを進めることができる。このあたりのユーザーフレンドリーさは、さすがにRAVEN Softwareの十八番といったところで、FPS初心者にも安心してオススメできる内容である。ただし、グロテスクな表現が多いので、その点だけは注意してほしい。

ミッションの内容は多彩で、プレーヤーは野外も含めてStrogg本星を縦横無尽に駆けずりまわることになる

「DOOM 3」エンジンの限界に挑戦するかのようなこの巨大な宇宙船は、主人公のRhino部隊が所属する本隊の基地だ。ストーリーを通じて、度々ここに来ることになるだろう

いろいろな乗り物が登場することにも注目。通常のプレイとは一味違った感触でゲーム展開に華を添える


■ 半生物・半機械のクリーチャー達、そして武器のアップグレード

レールガンを装備し、そのうえリアクティブ・シールドまで張るクリーチャー。手こずる相手だ
奥の敵の動きに注目。避ける、突進する、隠れるなど、それぞれに個性ある動きをする。敵のバリエーションは「DOOM 3」に比べて豊かになった
初代「Quake」から再登場のネイルガン。本作では次々にアップグレードし、オリジナル以上に強力な武器へと変貌していく
 ゲームを進めていく中でやはり印象に残るのは敵キャラクタたちだ。本作では「Quake II」のテーマを引き継ぎ、いびつに機械化され戦闘マシーンと化した「元人間」が、倒すべきクリーチャーとして登場する。

 そのデザインテーマは「DOOM 3」のデーモン達にも通じるところがあるが、本作のクリーチャーの大部分は元々人類であるがゆえに、敵が装備する武器も多彩だったりする。ときにはプラズマガンやレールガンといった、プレーヤーにとっても虎の子のような強力な武器を装備した敵も相手となり、それぞれに違った対応が求められる。

 またこれらの敵は知能も決して低くなく、障害物に身を潜めつつ隙を見て射撃してくるなど人間くさい動きを見せてくれる。本作ではロケットランチャーやグレネードランチャーなどの爆発が壁を貫かなくなったので、この種の障害物を利用する敵は非常に手ごわいのである。これに対応するプレーヤーは回り込んで撃破するといったタクティカルな動きが必要となるわけで、アクション性の多様性が増している点は高く評価できるところだ。

 また、こういった敵キャラクタの設定が、本作のストーリー展開において「極めて重要な伏線」となっているのだが、詳しくはネタバレになってしまうのでやめておこう。本作のプレーヤーは、ストーリー中盤で必ずや劇的な展開を目にするはずだ。

 そして、長いシングルプレイの間ずっと同じ武器達を使っても飽きないよう、多彩さを加えるのが、「Quake」シリーズ初となる武器のアップグレード要素である。

 Rhino分隊の一メンバーとして行動する主人公だが、分隊には当然役割分担があって、主人公のような突撃兵のほかに、工兵や衛生兵といった役割のNPC達がいる。ゲーム進行のいくつかのポイントで、工兵の隊員が主人公の武器を改良してくれる場面がある。例えば序盤で手に入るネイルガンは、射撃速度向上、ズーム機能付加、といったアップグレードを経ていき、使い勝手が向上していく。最初はただ撃つだけのものも、最後にはズーム時に敵をロックオンして、自動的に敵へ弾が誘導されていくようになる。

 まだいろいろあるのだが、ともかくプレーヤーは武器がアップグレードされる都度、武器の使用順位や条件を再度考え、自分なりのプレイスタイルを構築する機会を得るわけだ。アップグレードはストーリーに沿って一直線で、内容の組み合わせや順番が選べるわけではないのが少し残念だが、ゲームプレイに変化を加えてくれる要素として見逃せない。

 NPCの役割分担について少し触れたが、プレーヤーと行動を共にすることの多い工兵と衛生兵は、マップ攻略中にプレーヤーのアーマーと体力を回復してくれる役割も持っている。彼らがそばにいればいつでも、話しかけることで工兵ならアーマーを、衛生兵なら体力を満タンまで回復してくれる。回数に限りがあるのでそんなに甘くはないが、これを要所要所で利用していくことがスムーズなゲーム攻略のカギになるだろう。彼らNPCは、主人公と同じように敵の激しい攻撃に晒されれば死んでしまうにも関わらず、主人公以上に敵へ突っ込んでいく事が多い。できる限り彼らを死に追いやらないよう頭を使ってプレイしたい。

工兵はアーマーを回復してくれる。比較的共に行動することが多いNPCだ 衛生兵は体力を回復してくれる。いずれも回復役のNPCは戦闘で死んでしまえばそれきりなので守ってあげよう ミッション内容によっては、特定のNPCが死亡することでゲームオーバーとなることもあるので気をつけたいところ


■ 「Quake」シリーズ最新作としはやや物足りないが、FPSとしては本年を代表する秀作

「DOOM 3」エンジンをベースに、新しい水準の演出を引っさげて「Quake II」後の世界が描かれる。ここを大きく評価したいところだ
Rhino分隊は地球軍の殴りこみ役、いわば海兵隊的な役回りのツワモノぞろい。主人公はその中にあって次第に重要なポジションを占めていくが……?
 このようなゲームプレイを通じ、プレーヤーを取り巻くストーリーは次々に進展していく。Rhino分隊との合流、Strogg対空防御施設の破壊、分隊の所属する本隊を乗せる母船への帰還、そしてStrogg中枢への進攻作戦。各所でカットシーンも挿入され、リアリティにあふれるグラフィックスの効果も相まってプレーヤーをゲーム世界にぐいぐいと引き込む。

 プレーヤーは単に地べたを歩き回るだけではなく、乗り物に乗っての戦闘も時折登場する。戦車での砲撃は、徒歩では手こずる強力なクリーチャーをも一撃で粉砕する威力があり爽快だ。乗り物ならではの巨大なマシーンとの対決もあり、そのプレイ感覚も新鮮である。

 ただ惜しむべきは、本作は「Half-Life2」のような乗り物等のギミックまで視野に入れた物理エンジンを搭載していないため、動きがあまりにもシンプルすぎ、乗車感覚が旧態然としていることだろう。そのため「Quake 4」の乗り物は、あくまでも長いシングルプレーヤーにおける、ちょっとした変化球といったレベルに留まる。

 そんなギミックも搭載しつつも、基本的にはオーソドックスな構成のFPSである本作。「DOOM 3」エンジンに裏打ちされた最高峰レベルのグラフィック、凝った演出によって描かれるストーリーの内容と、FPSタイトルとして素の視点で見ても高い完成度でよくまとまっていることは事実だ。

 しかし、本作が従来PCゲーム界に革命を起こし続けてきた「Quake」シリーズの本家本流であると考えると、シリーズのファンとしては少々物足りなく感じてしまうことも確かだ。筆者としては「Quake」シリーズとそれを生み出したid Softwareを神にも等しい存在としてあがめてきたファナティックな人間であるために、「Quake」のタイトルを冠する本作の「普通っぷり」には正直言って拍子抜けした部分もある、ということを正直に書いておきたい。これは期待のしすぎといものだったろうか。そういった意味では“傑作”でも“駄作”でもなく、“秀作”と表するのが一番いいのだろう。

 開発を担当したRAVEN Softwareの仕事の質は高い。PCゲーム業界最高水準の品質といっていい。特にプレイしやすさという点で本作は他の同系統FPSに比べて非常によくできているので、従来の「Quake」ファンというよりは、むしろFPS初心者のプレーヤーにオススメしたい。次世代ゲーム機での展開も見越せば、商業的に正しい戦略を取ったといえるだろう。

(C) 2005 Id Software, Inc. All rights reserved. Published and distributed by Activision Publishing, Inc. under license. Developed by Raven Software Corporation. QUAKE and ID are registered trademarks of Id Software, Inc. in the U.S. Patent and Trademark Office and/or some other countries. Activision is a registered trademark of Activision Publishing, Inc. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners. Distributed In Japan By livedoor.


【Quake 4】
  • CPU:Pentium4 2.0GHz 以上
  • メモリ:512MB以上
  • HDD:2.8GB以上
  • ビデオカード:VRAM 64MB以上


□「Quake 4」のページ
http://www.Quake4thegame.com/
□関連情報
【10月19日】PCゲームファーストインプレッション「QUAKE 4」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051019/quake4.htm
【10月4日】ライブドア、「Quake 4」を10月下旬に発売
日本語マニュアル付き英語版で、日米ほぼ同時発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051004/Quake 4.htm
【5月22日】Electronic Entertainment Expo 2005 現地レポート
QUAKE×2、CALL OF DUTY×2、今年もACTIVISIONはFPS三昧
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050522/actv.htm

(2005年10月28日)

[Reported by GAME Watch「Quake 4」取材班]



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