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会場:幕張メッセ
主力タイトルである「ラグナロクオンライン」も次期アップデート「Episode 5.0: The Republic of Schwarzward」を発表したが、例年に比べると比較的大人しい印象だった。しかし、一般日である2日目のステージイベントでは、昨年同様の“大入”で、健在ぶりを見せつけていた。TGS恒例のインタビューでは、「ラグナロクオンライン」関連のプレゼンテーターとしてすっかりお馴染みの制作担当廣瀬高志氏に話を伺ってきた。 意外に話が盛り上がったのは、PKサーバー「Urdrワールド」の追加について。廣瀬氏は極めて前向きに捉えており、文字通り好戦的な発言が目立った。中には違和感を覚える人もいるかもしれないので、先回りして補足しておくと、廣瀬氏は、過去にも何度が触れたようにバリバリのコアゲーマーで、特にFPSは、名のある大会で入賞を果たしたほどの実力を持つ。雑談では「いま注目のFPSは何ですか?」と聞いてくるほどで、インタビューでの発言は、そうした廣瀬氏の個人的趣味が強く反映されており、「ラグナロクオンライン」の方向性が今後PvPに強く傾くというわけではない。
■ 「ラグナロクオンライン」PvPイベントの舞台裏
廣瀬高志氏氏: ありがとうございます。しかし、内容はぜんぜんダメでした。実はスーパーノービスの意外な強さを見せてイベントを盛り上げるという試みを考えていたのですが、スーパーノービスを担当したGMが白ポーションのショートカットを忘れていて、試合開始直後にすぐ倒されてしまって焦りました。勝てて良かったです 編: ああ、すぐ倒れていたキャラいましたね。でもあの劣勢から挽回できたのはさすがだなと。 廣瀬氏: セオリーどおりではないのですが、チェイサーが敵の武器や鎧を剥いでしまって、その上でストームガストで凍らせて各個撃破しました。普通はストームガストで凍ることはないですよね、皆さん必ず対応していますから。凍ってしまうと動けませんから、そうなると昨年のRWCのように、凍った方が徐々に押されてしまってジリ貧で負けると。 編: 正直、地味な戦いだなと思いました(笑)。 廣瀬氏: 結果的にそうなってしまいましたね。とはいえ、阿修羅覇凰拳で勝ってもおもしろくないじゃないですか。というか、予定ではスーパーノービスが活躍するはずだったんですけどね(笑)。 編: 前々から聞こうと思ってましたが、現在の「ラグナロクオンライン」のPvPは数字的優位が決定的になったあとの展開には一抹の寂しさがありますよね。 廣瀬氏: そこなんですよね。仰有るとおりで、そこを盛り上げるのがスーパーノービスの役目だったんです。マジシャンにファイアボルトという地味な魔法があるんですが、スーパーノービスはあれを無詠唱で連発することができるんです。それを使うと、ポーションによる回復が間に合わないぐらいのスピードでダメージを与えることができるので、それで最後のひとりを倒すとおもしろいかなと思ったのですが、予定が狂ってしまいましたね(笑)。 編: しかし、プレス戦じゃなくてよかったと思いましたよ。昨年のようにワイワイ力押しで運が良ければ勝てるというPvPではなくなっていますよね。 廣瀬氏: 昨年プレス戦で負けたのはトラウマになってました。我々としてはぜひまたやりたいところです(笑)。
■ 「Episode 5.0」のコアは実は180種類の新カードの実装にあり!?
廣瀬氏: そうですね。今回はルーンミッドガッツ王国ではない、異なる文化圏が舞台になりますので、これまでは石造りが中心でしたが、今回は鉄の塊のような、明らかな文化的違いがありますね。グラフィックスは荒廃した工場地帯のようなイメージで作っていると聞いています。 編: 余談ですが、どちらかというと「エミル・クロニクル・オンライン」に近い雰囲気ですよね。 廣瀬氏: 確かにECOは鉄橋などがあったりして近未来なのかなと思わせるところがありますよね。ECOと比較しないまでも、既存のラグナロク世界とは違ったイメージですよね。 編: この機械的、スチームパンク的な世界観というのは、「ラグナロクオンライン2」でも取り入れられるようですが、これって果たして北欧的なのかなと(笑)。 廣瀬氏: 直接の関連性はないようですが、「ラグナロクオンライン2」では銃とかも取り入れられるみたいですね。 編: 蒸気機関や鉱石採取技術ですとか、こうした背景設定は、ストーリーやクエストにも影響してくるのですか? 廣瀬氏: 工場が多いということで、現実に近いのですけど、大気汚染がひどくなっています。それにちなんだクエストや、アインブロックとアインベフの間でひとつのドラマも生まれます。貧富の差などもあったりして人間くさいドラマが展開されています。中にはちょっとした恋話などもありますよ。 編: それはNPC同士の? 廣瀬氏: そうです。NPC同士の恋愛をプレーヤーが手助けをするような展開ですね。 編: 今回新たに実装されるクエストはいくつぐらいですか? 廣瀬氏: アインブロックを中心に7つぐらい全部で10前後ぐらいでしょうか。 編: 今回はフィールドマップも多数追加されますが、対象レベルはどの程度なのでしょうか? 廣瀬氏: 今回は極端に高レベルユーザー向けではありません。フィールドだと60~70、ダンジョンだと70~80ぐらいでしょうか。 編: 蒸気機関車なども確認できますが、あれは乗れたり、動いたりするのですか? 廣瀬氏: 私もそうだったらいいなと思うのですけど、残念ながら動きません。そういうところを作り込んで頂けるとありがたいのですけどね。「ラグナロクオンライン」の乗り物は、これに限らずすべて動きませんから、システムとして入っていないのだろうと思いますね。 飛行船などもありますが、時間が来ると発車して背景が流れるような演出はありません。一瞬でワープするような感じですね。仮に実際に動くシステムを実装すると、待ち時間が発生することになりますが、私はそれはそれで楽しいと思います。そこで会話なども発生して、楽しいと思いますけどね。 編: それは今後の課題というわけですか。過去にもフェイヨンのように、グレードアップした例もなくはないですからね。 廣瀬氏: そうですね。要望は出したいと思います。仮にそうなったらコモドのカジノとかもちゃんと動くようにしたいですね。 編: カジノではないですが、ついにアルデバランターボトラックという新たな遊びの要素が追加されますね。 廣瀬氏: アルデバランターボトラックは、高レベル、戦闘向きキャラクタでなくても、レースを通じて経験値を獲得できるというところがウリのひとつです。 編: バザー用の商人キャラでも楽しめると? 廣瀬氏: そうですね。基本的にジョブによる格差は生まれないようにしています。ただ、TGSでこれはちょっとというのをひとつ見つけたので、早急に対処してもらうつもりです。 編: といいますと? 廣瀬氏: シーフ系にバックステップというスキルがありますが、あれが使えちゃっているんですね。あれをうまく使うと、後ろ向きの状態で高速に移動できてしまうので、これはダメでしょと(笑)。 編: 長編クエスト「The Sign」が追加されますが、長編と言うからにはかなり長いのですか? 廣瀬氏: 神器クエストほどはないですが、「ラグナロクオンライン」で最大級のクエストであることは間違いないです。対象レベルは、80以上。高レベル向けですね。クエスト達成後に入れるようになるゲフェニアがそもそも高レベル向けですので。 編: 80というのはパーティーということではなく、ソロでということですか? 廣瀬氏: ソロでも行けるように設計してあります。ただ、クリア後にいけるダンジョンはきついかもしれませんね。そこでは余所では手に入らないアイテムなどもドロップしますから、効率を考えればパーティーで行ったほうがいいでしょうね。 編: 最近のオンラインゲームは、プライベートダンジョンを利用して、シナリオを複数人で解かせるアプローチが一般的になってますが、「ラグナロクオンライン」はまだまだソロプレイにこだわる感じですか。 廣瀬氏: 確かにまだそういったクエストは入っていませんね。考え方としては、Gravityは「World of Warcraft」を意識していることもあり、開発スタッフも注目している人が多いようで、その影響でソロ向けがメインになっているということも実はあったりするのかもしれません。 厳密には「ラグナロクオンライン」でもPTでプレイするクエストもあるにはあります。竜之城では複数集めて参加するタイプのクエストがありますね。ですから、システム的にはすでにあって、いつでも拡充は可能ですね。 編: 今回、全体としてみると、ジョブやスキルの追加がなくて、少し寂しい印象がありますね。 廣瀬氏: 確かに去年のTGSは上位2次職でしたから多くの注目が集まりました。ただ、今回はカードイラストの公募の後なので、ユーザーの注目度は高いと思いますよ。日本からも35作品が入賞しましたし、180種類のカードが新たに実装されますから、地味と思われるかもしれませんが、待ち遠しいアップデートだと見ています。私自身もアインブロックを連呼して新エリアを強調していますけども、カードの追加は今回のアップデートのポイントのひとつですよ。 編: カードについては控えめな発表でしたね。 廣瀬氏: カードについてはGravityの公式サイトや弊誌の公式サイト、それからファンサイトを通じて公開されていますので。期待しているユーザーさんは、すでに詳しくチェックして、どこに狩りにいくかまで決めていると思いますよ。初出だったら、もっと派手にお見せしたのですけどね。 編: なるほど。韓国と日本では、3年経過した現在もアップデートタイミングに時期のズレがあるわけですが、これは日本の制作側としてはやりにくいのではないですか? 廣瀬氏: 正直にいえば、それは同時にやりたいですよね。アップデートを完全同時というのは難しいでしょうが、新しい情報を発表するタイミングは同時でできたらいいですね。実はそれができない事情というのもあるのですが、日本のユーザーさんがファンサイト等を通じて、韓国の発表を先に知ってしまうというのは、運営側としては非常にやりにくいのは事実です。
■ PKサーバー「Urdrワールド」実装にかける意気込み
廣瀬氏: そうですね。実は、私の中では年内には必ず入れようと思っていて、少しずつ準備は進めていました。 編: これは日本運営側としてどのようなポリシーに基づいて実装されるものなのでしょうか。 廣瀬氏: 「ラグナロクオンライン」の中では、いわゆる対人戦というものは用意されていますが、PvPマップと攻城戦と限定的で、さらに本格的に参加するためには一定の仲間が必要になります。1人で攻城戦に参加したところで結果は見えてますからね。 また、レベル上げのような場所でも対人戦をやりたいという声は高まっていました。掲示板等の書き込みでUrdrワールドへ期待する声も上がっていましたから、ある程度のニーズはあると判断し、実装することにしました。 編: Urdrワールドのレギュレーションはどうなるのでしょう? 廣瀬氏: 仕様に関してはまだ詳しくお知らせできません。参考までに韓国の状況をお知らせしますと、街の中、それから街に隣接するエリアは安全ですが、それ以外では自由にPvPが行なえるようになっています。 編: かつての「ウルティマオンライン」を彷彿とさせるようなカオスな世界が現出されるわけですね。 廣瀬氏: そのとおりです。私もそれに近いイメージを抱いています。 編: 端的にいえばPKサーバー。 廣瀬氏: そうなります。PK好きのためのワールドですね。Urdrワールドは、おそらく既存のワールドとはかなり雰囲気の異なるものになるはずです。 編: 殺伐としそうですね。 廣瀬氏: 私はそれでいいと思います。PKする人は、PKするのが好きで仕方がない人です。そこに中途半端に制約を設けたり、倒したときに厳しいペナルティが課せられるようでは、PKする楽しみが薄れてしまう。これは私の個人的な意見ですが、PKする楽しみを味わってもらいたいと思っています。やるからには中途半端ではおもしろくないですよ。 編: なるほど。このUrdrワールドにはどれぐらいのユーザーが集まると考えていますか? 廣瀬氏: 実はぜんぜん未知数なところです(笑)。攻城戦に参加しているユーザーがだいたい3万ぐらい。ですから、全体の約3割近くのユーザーが対人戦に参加していることになりますが、GvGは好きでも、PKは嫌いという方もいらっしゃるでしょうから、参加者数は蓋を開けてみないと見えない部分ではありますね。 編: レギュレーションは未定と言うことですが、韓国では数年前から運営されていて、それなりの実績の積み上げがあるわけですが、日本はそのまま実装するワケじゃないよということですよね? 廣瀬氏: そういうことになります。これからじっくり詰めていきたいところでして、本サーバー(既存ワールド)とは違うルールをどうするかという部分ですね。 編: 懸案としては例えば? 廣瀬氏: たとえば、モンスターを倒したときの経験値が本サーバーより若干高い。これをどうするか。日本のユーザーと韓国のユーザーさんはプレイスタイルが異なりますからね。日本人向けのアレンジが必要なところですよ。 私が一番気にしているのはデスペナルティー関連ですね。韓国では、チャット禁止になったり、いわゆる経験値が下がるデスペナルティもあります。倒されたプレーヤーが失った経験値を、そのまま倒したプレーヤーが得たりもします。 編: そうなると、PKでレベル上げも可能と? 廣瀬氏: そういう仕様だったと思います。PKサーバーではPKが一番の楽しみですから、縛りすぎないように、甘くなりすぎないように留意したいと考えています。 編: どのようなプレイスタイルが主流になるのでしょう? PKギルドが横行するのか、1対1の遭遇戦がメインになるのか。 廣瀬氏: それもちょっと見えないところですね。たとえば、現在、PvPマップで、いきなり戦闘を始める人と、「これからやりますけど、いいすか、叩きますよ?」とか「これから始めます、よろしくお願いしますね」と確認取ってから始める人の2タイプがいます。どちらかというと私は完全に前者のタイプですが(笑)、武士の戦いみたいに正々堂々とやるのはPKとは呼べないだろうと思っています。いきなり先制攻撃して、攻撃されたほうも「なんだコノヤロウ」というような世界のほうが楽しいですよね。 編: なかなか攻撃的な見解で、本音全開といった感じですね(笑)。 廣瀬氏: ご存じのように普段は私、FPSをやっていますからね。 編: ええ。そういうことですよね。わかります。 廣瀬氏: スポーツマンシップに乗っ取った競技を否定するつもりはないですが、PKサーバーですと用意される以上、そこでユーザーがどのような戦いをするかは、それはユーザーの自由だと思います。いきなりPKしたからといって、このワールドではノーマナーにはならない。 編: PKサーバーにおけるノーマナー行為ってのはなんだろうと。これは興味があるところですね。 廣瀬氏: そうですね。そこも考えていく必要がありますが、いずれの場合にしてもGMが介入することは望ましくないと思っています。仮に“黒い”ユーザーがいるとすれば、それは自警団を作ってPKすればいい。PKサーバーのおもしろさは、ユーザーがユーザーを裁くことができるという所だと思います。 編: PKとPKK、どういう楽しみ方もいいのではないかと。 廣瀬氏: そうですね。 編: BOTも倒せると? 廣瀬氏: BOTに関しては、我々も真剣に、最優先で取り組んでいる課題で、軽々しい発言は控えたいのですが、仮にUrdrワールドでBOTを発見したら、自警団を組織して倒したいと考える方はいらっしゃるでしょうね。 編: Urdrワールドがオープンしたら、廣瀬さんもやりそうですね。 廣瀬氏: 正直やりたいですね。ただ、プレーヤーの皆さんと同じように、レベル1からのスタートになりますから、本サーバーのほうのキャラクタのレベルもなかなか上げられない状態でして、さて出来るのかなと(笑)。ただ、私がUrdrワールドに入ったら、モチベーションは高いと思いますよ。 編: どのようなプレイスタイルを望みますか。 廣瀬氏: うーん、PKもPKKもどっちもやると思います。気分によって、ちょっとムカムカしてるときはPKみたいな(笑)。そういった具合に、一種のストレス発散のツールとして使ってもらってもいいのではないかなと。 編: そういう荒っぽい世界におけるGMのありかたというのはどういうものになりますか? 廣瀬氏: ノーマナー行為がどうなるのかというのもひとつ関係してくると思いますが、基本的にGMが止めに入るといったたぐいのことはしたくないですね。 編: GMが全員PKになったりといったイベントがあると楽しそうですね。 廣瀬氏: ヒール軍団を作って街を荒らすとかですか(笑)。基本的にユーザーさんが参加して楽しければ、割と何でもありのイベントができるのではないかと思いますよ。 編: ジョブバランスについていかがですか。 廣瀬氏: 確かにソロでもPKがしやすい職業、難しい職業というのは出てくると思います。たとえば、モンクがつかつかと歩み寄って、阿修羅覇凰拳出されたらどうしようもないですからね。でも、それを意識して阿修羅覇凰拳を外せば、今度はモンクがピンチになりますよね。両者にとって一定のリスクはあると思います。 ジョブバランスを一定にするのは無理ですよね。格闘ゲームですら、ランキングが付いて有利不利が確定している。ただ、常連のPKを見つけたからといって、1対1でやる必要はないわけですからね。仲間を集めて、数で対抗してもいい。 編: 何にしても、制作担当肝いりのプロジェクト。これは楽しみですね。
廣瀬氏: ユーザーさんにも気に入って頂けるのではないかと期待しています。11月の実装まで、少しバタバタになると思いますが、11月頭には仕様も含め、詳しい話ができるのではないかと思います。ご期待ください。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2005年9月18日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
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