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★GC・PS2ゲームレビュー★

奇妙な世界観に肩まで浸れるタイトル
「Killer7」



 殺し屋集団“Killer7”を操作し謎を解き明かしていく多層人格アクションアドベンチャー「Killer7」がプレイステーション 2、ニンテンドーゲームキューブ用に発売された。本作は現代のアメリカをモチーフとした“合衆国”を舞台に多層人格の殺し屋や残留思念やゾンビ風の敵が跳梁跋扈する。リアルと幻想の境目が溶けたようなストーリー展開は、圧倒的なインパクトが連続する奇怪な世界観を構築している。開発はPS「シルバー事件」やPS2「michigan」を代表作に持つグラスホッパー・マニファクチュア。本稿では、PS2版をメインにこの作品の魅力に迫ってみたいと思う。

 舞台は2003年の“合衆国”……とはいえリアルとは異なり「テロリズムの鎮圧のため航空輸送の撤廃とネットワーク端末の駆逐を完了」が実現したというスーパーフィクションな設定となっている。この大国に新たな民“笑う顔”のテロリズムが横行する。プレーヤーは殺しのプロフェッショナル集団“Killer7”となり、“笑う顔”の根絶のため全6話(前・後編などに分けると9話+α)をクリアしていくのがゲームの目的だ。




■ 7人の殺し屋の人格を交替しながら殺(ト)れ

 スーツ姿の殺し屋、車椅子の殺し屋など各人格の外見は個性派ぞろい。それぞれに超人的な特殊能力を持ち合わせているという設定もシビれる。スパイものやスーパーヒーローものの映画に憧れていた人にって、動かしてみたいと思わせる魅力を持った殺し屋たちといえるだろう。

 殺し屋集団“Killer7”のメンバーはハーマン・スミスを頂点に、ガルシアン・スミス(蘇生能力)、ダン・スミス(魔弾発射能力)、カエデ・スミス(結界解除、血液吸収能力)、コン・スミス(移動速度上昇能力)、コヨーテ・スミス(跳躍能力、鍵開け能力)、ケヴィン・スミス(透明化)、マスク・ド・スミス(障害物除去能力)の計8人。操作できるのは常に1人なので、このメンバーを入れ替えつつ物語を進めていく。

 多層人格者である主人公は、サブメニューから上記の人物名を選ぶだけで人格だけでなく身体まで瞬時に入れ替わることができる。人格が覚醒さえしていれば交替に必要な物はなく、何度でも交替が可能。PS2版の場合は数秒のローディングが入るのが少々気にかかる点だ(GC版はPS2版よりも読み込み時間が短い)。

人格の交替を選ぶことで旧人格は血泡となり、新しい人格の身体に再構成される。この間、時間は停止している。別人と交替すると考えたほうがわかりやすいだろう

 人格の交替がもっとも必要とされるシチュエーションは、ルート上の謎を解く場合だろう。謎の解除には対応した人格に交替し、□ボタンで特殊能力を行使させる。例えば、コヨーテなら南京錠を開けることができるし、カエデなら血文字の血を吸収して残された暗号を読むことができる。

 最高に笑わせてもらったのが、グラスホッパー・マニファクチュア作品にはお約束のプロレスラーキャラであるマスクさん(あえてさんづけ)の謎の解除方法。謎を解くというか筋肉に物を言わせて突き進むパフォーマンスは極上のエンターテインメントだった。ぜひ一度マスクさんの勇姿をゲーム内で確認していただきたい。

 バトルを有利に進めるためにも人格の交替は必要不可欠。遠くの敵の弱点を狙うにはスコープ付き自動拳銃を所持しているカエデ・スミスを、何十発も弾丸を撃ち込まなければ倒せない敵には二丁拳銃のコン・スミスに交替することで状況を打破できる。謎、そして敵の特性を見抜き、即座に対応した人格を呼び出すことが勝利への近道となる。

 また、サブメニュー以外でも、「ハーマン部屋」というセーブポイントのテレビからも別人格に交替することが可能だ。テレビからの交替の利点は、何と言ってもサブメニューからは交替できないガルシアン・スミスに替われることだ。

 人格の体力が尽きた場合、その人格は仮死状態となる。死亡現場には首の入った紙袋が放置され、一番最後にアクセスしたテレビのあるハーマン部屋まで戻される。ここから人格を再選択してゲームを継続するわけだが、ここでガルシアン・スミスを選択することで死亡した人格を蘇生できる可能性が生まれる。ガルシアンを死亡現場に向かわせる事で、首の紙袋は自動的に回収されハーマン部屋で蘇生させることができるのだ。

蘇生は○ボタン連打で行われる。SEは電子音でレトロな感じ



■ 1本のルート上を走る特殊な移動システム

通常画面が3人称視点の3Dアクションゲームのような「Killer7」。だが、実際はキャラクタが一定のルート上を移動しているに過ぎない。○ボタンを押している間はキャラクタがルートを前進し、ルート上の曲がり角も自動的に曲がる。古い例えでわかりづらいかもしれないが、移動の感覚はおもちゃの車は動かず背景のフィルムだけが上から下へ流れていくドライブゲームに似ている。

 ×ボタンを押すと、キャラクタはその場で180度ターンを行なう。ルートを戻る場合や、敵から逃げる場合に活用できる。移動速度は選択した人格によって異なるが、足が特に遅いと感じる人格は1人もいなかった。大概の敵の移動速度よりプレーヤーキャラクタの移動速度の方が速いので、180度ターンさえできれば敵から逃げることだけはたやすいことだろう。

 キャラクタが移動していると、分岐点に差し掛かることがある。この場所をジャンクションと呼び、進行方向の決定や、アイテムの取得、選択した場所を調べるなど行動を選択する。ジャンクションで選択したい方向に左スティックを倒すことで、その行動を取ることができる。廊下ならHallwayというようにジャンクションの選択先の表記は英語なので、多少の英語力があると遊びやすい。

 この移動システムの長所は探索の手間が省けて楽なこと。ルートとジャンクションのおかげで画面上のオブジェクトを調べて周る必要もないのはとてもありがたい。短所は移動テクニックで敵の包囲網を突破できないこと。敵の“"笑う顔”はほぼルート前方に出現する。そのまま前進で駆け抜けようとしても必ず捕まってしまうので、先に進む場合は戦闘が不可避なのが厳しい。


■ 見えない敵を撃て! 攻撃のルール

 ルート上を移動していると一定のポイントで敵が出現。敵は自爆を狙ってくるので、組み付かれる前に射撃で処理するというガンシューティングに近いバトルになっている。バトルシーンのR1ボタンを押した状態の攻撃体勢時のみ3人称視点から1人称視点に変わり、照準の移動も自由になる。

 ゾンビのような敵の“笑う顔”は都市迷彩によって透明化しており、初めは攻撃が当たらない状態になっている。敵の出現は必ず笑い声が伴うため、笑い声が聞こえたら即座にR1ボタンを押しっぱなしにして1人称視点の攻撃体制を取る。この状態でL1ボタンを押すと視野内をスキャンし、“笑う顔”を視覚化させることができる。

 索敵後は左スティックで照準を動かし、○ボタンで攻撃するだけ。最初は「アナログスティックで照準を調整するのは厳しいなあ」と苦戦していたが、Rボタンを押しながら×ボタンを押すだけで一番近い敵を捕捉し自動的に照準をセットしてくれることに気づいてからは大分楽になった。ガンシューティングやFPSに縁遠いプレーヤーでも割と簡単に敵を捉えることが可能だろう。

 また、攻撃する人格によって攻撃武器、攻撃力、命中精度などが異なる。さらに、ダンは発砲後に照準が上にブレていくが、コヨーテは左にブレるといった具合に人格ごとに癖がある点にも留意したい。あらかじめメインで戦う人格を決めておき、特定の敵や謎解きの部分だけ別の人格に交替するという方法を取るのがお勧めだ。

 “笑う顔”を手っ取り早く倒すには、“笑う顔”の弱点である腫瘍を撃ち抜くのが効果的だ。L1ボタンで敵を視覚化した後は、敵の体の一部に腫瘍(光っている部分)が現れる。この一点を撃ち抜くことで、“笑う顔”を一撃で葬ることができる。狙うのは難しそうだが、敢闘でプレイしている時は自動的に腫瘍に照準が合うので、割と適当に弾を撃っても当たるところがお手軽でよい。

 また、人格の体力回復に必要な“薄い血液”の収集にも腫瘍を狙うことが有効。腫瘍を打ち抜いて倒すと、敵からより多くの血液を回収できるからだ。この敵の血液をハーマン部屋のテレビに持っていくことで、血液から血清を精製することができる。

 この血清は各人格のスキル強化に使用する。強化スキルは「POWER(攻撃力)」、「SPEED(攻撃速度)」、「WAVER(命中精度)」、「CRITICAL(後述する腫瘍への命中率)」の5種類。敵を倒せば倒すほどスキルが上昇し強くなり、バトルが楽になるという仕組みだ。

 お手軽な攻撃方法のおかげで、戦闘周りの敷居は広くなっているといえる。チマチマと腫瘍を狙っていくことが多くなるため、撃ちまくりの爽快感をこのゲームに求めることは難しい。だが、見えない敵に襲われるという恐怖感、そして敵を倒した時の解放感は存分に堪能できるバトルといえるだろう。


■ トゥーン調のグラフィックが殺しの演出を際立たせる

 このゲームはダーティーな殺し屋の活躍が主体であるため、グラフィックスにリアルさよりも凄みが求められていると考える。そんな要求に応えているのが「Killer7」で採用しているセルシェーディング。陰影の強調されたキャラクタは全身から殺気を放出しているかのような凄みをまとっている。生と死が紙一重という殺し屋のダークな設定にジャストフィットした表現方法といえるだろう。

 今作中では怪物化した元人間の“笑う顔”だけでなく、人間の殺害シーンも滅茶苦茶多い。この生々しいシーンをマイルドに、しかし通常の表現をするよりもずっと効果的に見せているのはトゥーン調のグラフィックによるものだ。特に人格が仮死状態と化した瞬間は、無機質なモデリングによる効果で死に顔が描かれきっていると思う。

 敵である“笑う顔”は元人間で爆弾に変えられてしまった異形。全身がただれているようなゾンビ然とした姿はおぞましくも、真っ赤な血を噴出させて死ぬ演出には物悲しいものを感じさせる(ウルト○マンのジャ○ラか?)。後半では、鎧に身を包んだ“笑う顔”や ミサイルを撃ってくる“笑う顔”も出現してバリエーションは豊富。大抵は近づく前に殺してしまうので、グラフィックをゆっくり見ることができないのが残念。オマケ要素としてモンスタービューアが欲しかった。


■ プレーヤーを煙に巻く難解なストーリー

 「Killer7」ではシナリオに分岐がなく、ラスト直前までほぼ一直線。謎解きの種類もアイテム収集、パスワード入力といったオーソドックスなものばかりだ。ともすれば作業的な苦痛を伴う謎解きだが、合間に入るバトルが緩衝材となりその苦痛を軽減してくれるのはありがたい。

 むしろ難解なのはストーリーの方。グラスホッパー・マニファクチュアの須田氏が書いた「Killer7」のストーリーは、真実につながる情報の提示が少なく極めて難しい。筆者は不条理と意外性が炸裂の展開の末に、エンディング画面で呆然としてしまった。各話のデモをきちんと見ていれば多少は理解できるのかもしれないが、それであるならばエンディング後の追加要素でデモ回想モードをきちんと実装してほしかった。

もっとも、「ユーザーをたやすく真実に到達させない」という手法は須田氏の手がける作品「シルバー事件」や「ムーンライト・シンドローム」に共通する持ち味。この虚脱感は貴重な体験として前向きに受け止めたい。プレイ後にゲームのストーリーについて考察して楽しむ方は、ぜひ「Killer7」をプレイして大いに悩んでいただきたいと思う。


 本作のBGMは「michigan」や「サムライウエスタン」などを手がけたghmの高田雅史氏が担当。全体的にシーンの空気感を尊重した、スローな曲調の楽曲が多い。その中で特に耳に残るBGMが、各話のボス戦直前の門番からコロシアムへ至るルートのBGM。やけにゲーム音楽しているというか、「この音楽でボス戦やらせてくれ!」と思うほど士気が高揚する。この音がボス戦手前で切れてしまうのが余りにも惜しい。

 そして音で忘れられないのが、“笑う顔”が出現する時に発する笑い声。最初は敵がどこに居るかわからない中でこの笑い声が響くと、場の緊張感が一気に増大しアドレナリンの分泌が促されるような気がする。この淀んだ笑い声は公式サイトのクリック音としても多様されているので、ぜひ一度聴いてみてほしい。

 アクションパートにしてもアドベンチャーパートにしても、救済手段が多く用意されているせいかゲームの難易度は低め。サクサクと敵を殺(と)りながら、「Killer7」でしか体験できないギリギリの世界観に浸っていただきたい。ただし、何度も言うがストーリーの難解さは超ド級。ゲーム好きというか、推理マニアの方がこのゲームには合っているかもしれない。すべての真実が見えたという方は、筆者にも教えてください…。

   最後にGC版とPS2版の差異について少々触れておきたい。一話目「天使」しか調べられなかったが、“笑う顔”の噴出する血の表現、一部のデモシーンとテキストに変更点を発見した。以下に並べた画像は、それぞれ同じシーンで左がPS2版、右がGC版。両方のプラットフォームを比較して、「Killer7」購入の参考にしていただきたい。

【噴出する血の量…PS2版の方が大量。】
【デモシーン1…GC版では“笑う顔”に襲われた女性の背中が見える。】


(C) grasshopper manufacture Inc. 2005,
(C) CAPCOM CO.,LTD 2005. ALL RIGHTS RESERVED.


□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□UNIT9のホームページ
http://www.unit9.com/
□「killer7」公式ページ
http://www.capcom.co.jp/killer7/
□関連情報
【3月11日】カプコン、GC、PS2「Killer7」
「雲男」の物語を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050311/kill.htm
【2004年3月18日】最新スクリーンショットと、主人公の7つの人格を紹介
カプコン、GC・PS2「Killer7」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040318/ki7.htm
【4月13日】カプコン、GC、PS2「Killer7」。「邂逅」の物語を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050413/kill.htm

(2005年6月23日)

[Reported by 福田柵太郎]


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