【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

★PCゲームレビュー★

インターネットによるシナリオ配信が遂に開始
これはWizフリーク向けに叩き付けられた挑戦状だ!

ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~
追加シナリオ『テッドの迷宮』

  • ジャンル:ダンジョンRPG
  • 開発/発売元:IRIコマース&テクノロジー
  • 価格:無料(本体は別途必要)
  • プラットフォーム:Windows Me/2000/XP
  • 発売日:配信中


 Windows専用のタイトルとして発売され、好評を博している「ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~」。今回のWizは本編もさることながら、インターネットを介した様々な試みも同様に注目されている。そして、そのInternet展開の目玉といえる、追加シナリオの配信が遂に始まったのだ。それでは早速、追加シナリオ第一弾「テッドの迷宮」のレビュー記事をお届けしよう。


■ Wiz外伝用の追加シナリオが登場。第1弾となる「テッドの迷宮」は無料配信

 「ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~」(英題:Prisoners of the Battles)は、国内のスタッフによって作られた、RPGのスタンダードといえるシリーズの最新作である。Wizは初代の発売から既に20年近くが経過し、数多くの関連タイトルも作られているが、本作はオーソドックスな「1~3」作をベースとしている。そして、伝統あるWizの名を汚さぬよう細心の注意を払いながらも、単なる模擬作に留めない様々な要素が盛り込まれているのだ。

 筆者は本作の初プレイから2カ月余り経過しているものの、「これがWizの最高傑作!」との気持ちは今も同じだ。今からでも決して遅くはない。かつてWizに熱中した人を含む、総てのダンジョンRPGファンに本作をプレイして貰いたい思っている。なお本作の概要面については、こちらの記事を参照して欲しい。

PCゲームレビュー「ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~」

 本作は他のシリーズ作にはないユニークな展開として、公式サイトで追加データのダウンロード配信を行なっている。それらの中でもプレーヤーから特に期待されているのが、追加シナリオによって新たなダンジョンへの冒険が可能となること。その待ちに待った追加シナリオが、今回初お目見えになったというわけだ。本稿で扱うのは、この追加シナリオ第一弾の「テッドの迷宮」である。

 今回のテッドの迷宮は、正規ユーザーであれば無料でダウンロードが可能となっている。詳しくは後述するが、このボリュームのダンジョンをタダで遊べるのは、はっきり言って破格のサービスといってよい。公式Websiteでは他にも、新機能「モンスター図鑑」やバグフィックス等が施されたアップデートパッチが公開されているので、購入者は確認しに行ってみよう。

Windows専用として生まれ変わったWiz。シンプルではあるが幅広いプレーヤー層の期待をまったく裏切らない、シリーズの集大成的な内容である 本稿を見て初めてWizに興味を持ったという読者は、前回のレビュー記事もぜひ参照頂きたい 倒した敵のグラフィックや能力値を一望できる「モンスター図鑑」。追加ダンジョン以外にもネット配信機能はあるので要注目


■ 全プレーヤーがレベル1からの挑戦となる苛酷なダンジョン「テッドの迷宮」

個性的で憎きモンスターは今回も健在。写真のボーパルバニーに、いとも簡単に首を刎ねられた冒険者は数知れずだ
 それでは本題へと移ろう。今回紹介する「テッドの迷宮」は、本作の中では4つめに相当するダンジョンだ。しかし、最初からプレイできる3ダンジョンとは、根本的な仕様がかなり違っているので気を付けてほしい。まず、テッドの迷宮に挑戦できるのはレベルが1のキャラクタに限られ、一切のアイテムを中へ持ち込めない。しかも一度地下へ降りると、ダンジョンを完全に制覇するまでは二度と地上へ戻れないのだ。まるでRPGの始祖「Rogue」を彷彿とさせる、苛酷なシステムといえよう。

 ダンジョンの内部には宿屋や寺院といった施設があり、キャラクタの回復やレベルアップ、蘇生などは行なえる。しかしショップで実行可能なメニューは、アイテムの売却と鑑定のみ。つまりマジックアイテムの購入や保管、そして魔法効果の付加は行なえない。クラスチェンジすらできないのだ。冒険者の環境面は、生き延びるための最低限のラインといってよい。

 課せられる制限はそれだけではない。魔法使いと僧侶の系統に分かれた呪文は、例えレベルアップでそれらを習得したとしても、初期状態では封印されていて使えないのだ。そしてダンジョンの要所ではボスが待ちかまえており、これらを倒すことで封印を解き、使用可能な呪文が1ランクづつ増えるというわけである。ここまでの説明だけでも従来の3ダンジョンはおろか、過去のWizシリーズのどれとも違った雰囲気なのがおわかり頂けるだろう。

城前の掲示板に書かれた衝撃の事実。これまでキャラを鍛え上げた人も、心機一転でレベル1からの再挑戦となるのだ 地下一階へ降りたすぐの場所で、最低限必要な武具は入手できる。しかしこれでは、一人前の冒険者とは到底いえない状態 帰るべき拠点が無い! テッドの迷宮では、今まで常識だと思っていたプレイスタイルの多くに相違点がある

装備もままならない、帰るべき拠点すら定かでないという状態なだけに、モンスターと戦う際の不安は一層増す ダンジョン内にいくつかの施設はあるが、モンスターも同様に出現する。最初にやるべきはこれらの場所を覚えることだ ダンジョンの中で休息するというのはRogueを思い出す。同じWizとはいえプレイ感覚が大きく異なりとても新鮮

従来通り条件を満たすことで、5×5のミニマップが表示可能となる。しかし今回は、写真のスイッチにも数多くのトラップが……
 これらの制限が意味するのは、総てのプレーヤーにとってゲームバランスを一定に保ち、緊張感のあるプレイを提供することにある。従来の3ダンジョンはレベル20程度まで育てれば一応クリア可能なものの、そこでプレイを止めてしまう人が少ないのはフリークならばご存じの通り。元来やりこみ要素が非常に強いタイトルであるため、クリア後も延々とキャラクタを成長させ、ダメージやAC値が1でも優れたマジックアイテムを更に追い求めるプレーヤーが数多くいるのだ。

 仮に従来の方向性と同じダンジョンを追加したとしても、プレーヤーによって挑戦するキャラクタの強さに幅がありすぎるため、ゲームバランスの調整は事実上不可能といってよい。そこでテッドの迷宮では上記の制限を設けることで、キャラクタの強さに関係なく難易度を保っているわけだ。愛着のあるキャラクタをそのまま使えないのは残念だが、これらの事情を踏まえると致し方ないといった所である。

 テッドの迷宮の1フロアは20×20マスで、全20階の構成。つまり、従来の3ダンジョンを全部合わせたよりも規模は大きい。しかも各フロアの難易度は「リュードの洞窟」よりもふたまわりは高いのだ。すなわち、総てのプレーヤーがまっさらの状態でスタートし、苛酷なダンジョンを突き進むというのが、追加シナリオ「テッドの迷宮」の基本コンセプトである。

ダンジョン内では時折、同じ境遇に陥った冒険者のメモを発見できる。これらに記された内容はかなり重要 かなり独特な仕様ではあるが、ゲームの本質面は従来のWizと変わらない。戦闘とレベルアップを繰り返しながら、更に奥へと進んでゆく マップ内のトラップは実にいやらしい。踏破後にあらためて見直すと、例えば重要な十字路には大抵、回転床が仕掛けられている


■ 既存ダンジョンとは大きく異なる独特のノウハウ追求が面白い

単純にダンジョンの奥へ進むだけでは、総ての呪文の封印を見つけられない。マップを確認しながらくまなく踏破してゆこう
エレベータは単なるショートカットのみの機能ではない。これを用いて上層へ戻ることで、新たな仕掛けも発見できる
ダンジョンの規模が広いだけに、途中に設けられた拠点を見つけたときは安心する。しかし写真の時点では全体の1/3すら達していない
 最初の地下1階を初めとしたダンジョンの所々には、宿屋等の施設やエレベータといったショートカットが用意されている。冒険者はこれらの区切りを目標としながら、呪文の封印を1ランクづつ解き、最深部へと向かってゆくのが基本的なゲーム展開だ。

 ただし難易度は全般的に高いため、挑戦時はくれぐれも覚悟するように。基本的にWizにおける難易度上昇は、モンスターの数値面を強力にするタイプと、マップ中の仕掛けによってプレーヤーを悩ませるタイプの2通りがある。「テッドの迷宮」は後者の傾向が非常に強く、最初の地下1階から思わず唸ってしまうような新トラップが続出するのだ。もちろん、回転床やダークゾーンといった既出のトラップも、ごく当たり前のように登場する。この辺りの詳細については面白さのキモともいえる部分で、ネタばれにも結びつくため是非とも自分で挑戦してみて欲しい。

 テッドの迷宮で必要とされる独自のノウハウ面について幾つか紹介してしておくと、恐らくプレーヤーが最初にしんどいと感じるのは、ほとんど素っ裸の状態でダンジョンに放り出されるため、十分な装備を確保するまでに時間が掛かることである。例えば、仮に前衛クラスに二刀流をさせたいと思っても、最初はノーマル品のサブウェポンすら入手できないのだ。そこで、例えば両手武器や後衛用の防具といった、これまではスルーしていたアイテムも、装備候補として検討する必要性が出てくる。

 これはマジックアイテムについても同様で、時には呪いが掛けられた武具ですら、装備すべきかどうか真剣に悩むこともある。“攻撃回数プラス”のエンチャント付加が当たり前だった従来のダンジョンが、いかに贅沢な環境だったのかをしみじみと感じることだろう。ダンジョン全編を通じてアイテムのやりくりには苦労し、今ある環境でくぐり抜けるというサバイバル的な発想が強く求められるのだ。

 封印を解除するまで魔法が使えない件については、その代わりマジックアイテムの巻物やポーション類が今回は大活躍する。何故かというとマジックアイテムは封印に関係なく、誰でも扱えるのだ。特に戦闘時に素早く行動できるシーフにとって、これらを使わない手は無い。今まで気に留めなかったからかもしれないが、今回は巻物類のドロップ率が心なしか高く、消費系マジックアイテムの活用は攻略の鍵を握っている。

 次にグループ編成面についてだが、ショップにおけるエンチャントが不可になったことで金銭の利用法が減り、無料でアイテム鑑定を行なえるビショップの利便性がやや落ちている。仮にマジックアイテムの鑑定を総てショップで行なっても(=金銭が減る)、極端なデメリットが無いのだ。上位職であるビショップはただでさえ成長速度が遅いため、編成時には気を付けたい。

 もうひとつ編成時に注意すべき点としては、毒や麻痺を治療するための薬を購入できないため、僧侶が必須なことである。メンバー全員が麻痺したがために全滅、というケースが今回は意外と多いのだ。反面教師として筆者のグループ編成を例に挙げると、誤って僧侶の代わりにビショップを入れてしまい、死因のトップが毒という情けない状況が最後まで続いた。

(5月27日追記)

 クラスチェンジに関する仕様説明について記事を一部訂正する。本来クラスチェ ンジを行なうための施設「訓練場」は地上に設置されており、ダンジョンへの侵攻 中はこれまで利用不可能であった。しかし、今回の「テッドの迷宮」においては、ダン ジョン内のキャラクタでも、冒険中断後に訓練場でのメニューを選択することで、 クラスチェンジが可能となっている。

 この件について開発側に問い合わせたところ、「テッドの迷宮」を侵攻中のキャラ クタはクラスチェンジを行う手段が無いため、敢えてVersion.10実装時に仕様を 変更したとのことだ。キャラクタの状況的に考えて、本人が直接足で施設へ赴き、 訓練を積むはずなのでこれは少々違和感がある。だが、クラスチェンジを希望す るプレーヤーへの救済策として、このような仕様になっているわけだ。ちなみに、 例え死亡してダンジョンに横たわっているキャラクタでも、この方法でクラスチェ ンジを行なえる。グループ編成に頭を悩ませている読者は参考にして欲しい。

テッドの迷宮における最難関のひとつといえる場所。この直後に、石化ブレスを吐くトンボが群を成して襲いかかってくる 個人的に悩まされたのが終盤におけるこの仕掛け。フロア全体に急激な水流が入り組むように流れており、スイッチで切り替えねばならない 迷宮に張られたメモはヒントが詰まっているので熟読しよう。今回はショップでのエンチャントを行えないが、実は……

他人から見ればいまひとつぱっとしない装備品の数々だが、入手時に苦労しただけに、そのひとつひとつにたっぷりと思い入れがある 魔法が篭められた巻物やポーションはくれぐれも売ってしまわないように。戦闘時にこれらを素早く使える盗賊が今回は大活躍する 浮遊呪文「レビテイト」を使れば写真のトラップは簡単にやり過ごせる。しかし、この先にある封印を解かねば呪文を使えないのだ


■ 歯ごたえのある難易度だがフリークにとっては大満足。今後の展開にも期待が持てる

エンカウント率が引き上げられていると感じるのは、筆者だけではないだろう。1フロアあたりの密度は異様に濃い
武具を破壊された際は、たとえそれがノーマル品であっても落ち込む。何故かというと、ストック用の武具さえ手軽に入手できないのだ
 今回実装された「テッドの迷宮」は、各階によって仕掛けはがらりと異なり、最後までプレーヤーを多いに悩ませるだろう。またモンスターとのエンカウント率は引き上げられており、ウィザードアイの巻物等も購入できないため、体感的には20階分よりもっと広く感じられる。

 よってプレイする順番としては、まず3つの既存ダンジョンを楽勝だと思える位までやりこんでから、新たなキャラクタで「テッドの迷宮」に挑戦するのをお奨めしたい。仮にWizの初心者が「テッドの迷宮」へいきなり挑戦しても、序盤で投げ出してしまう可能性が高く、むしろ上級者が「テッドの迷宮」をプレイすることで、改めて本作のおもしろさを再確認できるだろう。

 それらの中でも筆者が今回特に素晴らしいと思ったのが、ショップでのエンチャントを行なえないため、アイテム入手におけるハック&スラッシュの必然性が増している所である。従来ではエンチャントが強力すぎる反面、高性能なベースアイテムを一旦入手してしまえば、後はかなり簡単になるきらいがあった。今回はそのような近道の攻略を行なえず、それだけにマジックアイテムやユニークアイテム入手時の喜びは半端ではない。今までは役立たずだと思っていた、ささやかなマジックアイテムの効果を積み重ねてキャラを成長させる過程が実に面白いのだ。

 今回は初の追加シナリオ配信ということで、敵の強さをワンランク上げた程度の、無難な内容を最初は想像していた。だがその実体は想像よりも遙かに苛酷で、良い意味で期待を裏切ってくれる内容であった。ターゲット層がかなり絞り込まれているものの、従来のダンジョンを物足りないと感じている猛者にとって、「テッドの迷宮」は必ずや満足できるはずだ。Wizフリークを自認する読者は是非ともプレイしてもらいたい。

 基本的に本作の本質面は、シリーズ1~3そして5作やゲームボーイ版の外伝シリーズの頃から変わっていない。だが本作がそれらと決定的に異なるのが、インターネットでのデータ配信を行なう所である。言うならば今回のWizは、正統派としての方向性を保ちながら、これからも進化し続けるのだ。気の早い話だが、次の追加シナリオ配信が今から楽しみだ。

未鑑定品の魔除けや石を見つけた瞬間は思わずにんまりとする。しかしそれがノーマル品だった際の落胆は「テッドの迷宮」ならでは 従来では見られなかったモンスターも数多く登場する。難易度は高いが、それに見合うだけの価値はあるので頑張ってほしい 素晴らしいアイテムを入手しても、グループ編成によっては装備できないこともある。捨てずにショップに売っておけば、いずれ買い戻す機会もあるだろう

Wizのシステム上で行なえることは、既にやり尽くした気がする。これを越えるものを作るのは極めて難しいはずだが、不安よりも期待の方が大きい ファミコン版のWizからご無沙汰だという読者もきっと居るだろう。これらのグラフィックを見て懐かしく思った人は、本作をプレイして損はない 実は本稿の執筆終了直前に、最下層でグループを全滅させてしまった……。別働隊も育てておらず、またいちからのやり直しだ。しかし、それがいいのである

(C)2005 by 1259190 Ontario, Inc. All rights reserved.
"WIZARDRY is a registered trademark of 1259190 Ontario, Inc. All rights reserved."
(C)2005 IRI Commerce&Technology, Inc.


【ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~】
  • CPU:Pentium III 1GHz以上
  • メインメモリ:不明
  • HDD:200MB以上
  • ビデオメモリ:8MB以上


□「ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~」のページ
http://wiz-pb.jp/
□関連情報
【3月24日】全ダンジョンRPGファンがプレイすべき原点回帰を目指したシリーズ最高傑作!!
PCゲームレビュー:ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050324/wiz.htm
【1月17日】IRIコマース&テクノロジー、完全新作の「Wizardry」
WIN「ウィザードリィ・外伝 ~戦闘の監獄~ Prisoners of the Battles」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050117/wiz.htm

(2005年5月26日)

[Reported by 川崎政一郎]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c)2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.