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Electronic Entertainment Expo 2005現地レポート

「Age of Empires III」シニアデザイナーBruce Shelley氏インタビュー
新エンジンによる美麗グラフィックスと濃厚なストーリーに注目

5月18日~20日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 シリーズ外伝である「Age of Mythology」を挟んで、実に6年ぶりの新作となるEnsemble Studiosの「Age of Empires」シリーズ最新作「Age of Empires III」。システム、エンジン、ストーリーのすべてを一新し、満を持しての登場となる。

 今回インタビューに応じて頂いたのは、「Age of Empires」シリーズの主要クリエイターのひとりとして知られるBruce Shelley氏。弊誌でもインタビュー等でたびたび登場してきているAoEシリーズの顔である。

 短いインタビューだったが、ストーリー、システム、エンジン、そしてマルチプレイと多方面にわたって質問を重ねることができた。中でも、今回の新大陸を舞台にしたストーリーの背景に、同氏のアメリカ史に対する深い思い入れがあることがわかったのは収穫だった。


■ 新大陸を舞台に繰り広げられる壮大なストーリー

Bruce Shelley氏本人にデモをしていただいた。今回は本人も特に気に入っている作品のようだ
――今回のAoE3での貴方のポジションを教えてください。

 ゲームにおけるストーリーを書いたり、調査をしたりしています。私は公式にはリードデザイナーではないので、アートデザインを手伝ったり、世界中を飛び回ってPRを手伝ったりしています。シニアデザイナーという役職です。もっとも、これはもっとも年上のデザイナーという意味でもありますね(笑)。

――そのストーリーについてお伺いしたいのですが、新大陸をモチーフにした理由とはなんでしょうか?

 ゲームに、新しいトピックを入れたかったのです。古代、中世というシリーズの時間の流れの中で、今回のAoEは非常に興味深い地点に立っています。今現在、我々人類が宇宙の開拓をしようとしているように、そしてヨーロッパ人がネイティブアメリカンと初めて出会った時のように、彼らの新しい物との出会いというものは非常に衝撃的なものだったはずです。また、リアルタイムストラテジーゲームが多くの人々に受け入れられているということもあり、先ほども申し上げた要素をこのAoEで表現しようと思ったわけです。

――アメリカ新大陸をモチーフにしたゲームですが、ゲーム内で登場するネイティブアメリカンでプレイできないのはなぜですか?

 ゲームの基本的なコンセプトは、ヨーロッパがアメリカ大陸を発見するという事です。ですので、そのコンセプトを上手く伝えるにはこの方法がベストだと考えたのです。

 実際当時のネイティブアメリカンがヨーロッパ人と対等に戦うという事はありえなかったのです。また、ネイティブアメリカンはその事については非常に敏感で、それをゲームにすることができませんでした。ですので、ヨーロッパ人が新大陸に来て、ネイティブアメリカンと同盟を組むという事が一番いい方法だと考えました。

――なるほど。ストーリー上での魅力的な部分を教えてください。

 ストーリー全てが魅力的だと思います。特にこのストーリーは、私が育った国のものでもありますし、カナダ、北アメリカ、南アメリカにも後に大きな影響を与えたものです。私自身、先祖がアメリカ独立戦争で戦った事もあるので、このテーマに関しては特別な思い入れがあります。個人的にはネブラスカ州のバッファロー伝説といったアメリカ的な光景が好きで、これらはシングルプレイゲーム内でも反映されています。ストーリーはひとつの家族を描いたストーリーになっており、ヒーローが一幕目で登場し、その孫がヒーローとして2幕目で登場そして3幕目でその孫娘が……といったようなストーリーになります。アメリカ人の殆どは皆このようなアメリカ大陸移住からの歴史を持っているので、共感できると思います。

――ゲーム画面を見るだけでも、ずいぶん細かく歴史的な要素が再現されている印象を受けましたが、このような歴史のディテールは図書館などで調べたのですか?

 歴史図書館などで資料を見て調べ、実際の史実に基づいて作っています。新しく歴史を作ったりという事はしていません。実際の歴史をエンターテイメントとして提供したいと思っています。当時実際にあった建築物、兵士の服装、兵士の種類というものをゲームに取り入れています。


■ 物理エンジンと新システム導入の理由とは!?

AoE3発表当初に公開され話題を集めた画面。これがホームシティだ
――ゲームの中に物理エンジンを入れていますが、これはRTSでは非常に珍しい事です。なぜわざわざ物理エンジンを搭載したのでしょうか。

 ユーザーは新しいテクノロジーがゲームに入ることを常に待ち望んでいます。今まで、RTSというジャンルでそのようなテクノロジーが入ったものはありませんでした。このことは、プログラマーにとっては大きな挑戦でもありました。目標を常に高く設定することで、アーティスト陣そしてプログラマー陣も一緒となり今までのWindowsゲームの中で最高峰の作品を作ろうとしました。物理エンジンというテクノロジーをRTSに取り入れ、そしてグラフィックスも非常に綺麗なものを作ることで、ユーザーが見ただけでも楽しめる物を作り出し、ユーザーコミュニティ間で評判になるようなゲームを作りたいと思ったのです。

――物理エンジンをRTSに入れるという新しい試みを取り入れた今回の作品ですが、実際に動いているものを見て満足度はどれぐらいですか?

 数字で表すと100%満足しています。開発関係者も実際に満足していたり、メディアからも沢山の賞賛の声がよせられており満足しています。人々の中にはPCゲーム市場はもう下り坂だという事を言っている人がいますが、私はまだこのPCゲーム市場に可能性を見いだしていますし、まだまだ良いゲームを作ることができると思っています。PCゲームビジネスはまだまだ重要なビジネスです。

――物理エンジンを搭載したことについて、ゲームプレイに直接影響がある部分はありますか?

 実際に大きくプレイに影響を与えるかはわかりません。しかし、ゲーム中に登場する大砲などの弾は、敵兵士に当たったり建物にぶつかった場合、物理エンジンによって跳ね返ったり突き抜けたりします。この跳ね返った弾が別の兵士に当たるとその兵士がダメージを受けたりします。物理エンジンによって、このような小さい要素がゲームプレイに影響されますが、さほど大きな影響を与えることはないでしょうね。

――新規の要素としてホームシティというものがありますが、これはどのようなコンセプトで生まれた要素なのでしょうか。

 ホームシティという破壊されない絶対的なものを持つことで、よりプレーヤーが楽しめるようにしています。通常のプレイ時に建物を建てたり、何かを発見したり、貿易を行なったり、または敵兵士を倒すことによって経験値を得られます。一定の経験値を貯めることによってホームシティーをアップグレードすることができます。これは、RPGのキャラクタのレベルアップという要素を取り入れたものです。このホームシティをアップグレードすることによって、新しい兵士を送り出すことができるのです。

――RTSのような忙しいゲームでは、ホームシティに戻ってゆっくり戦略を練るゆとりはないように思えるのですが。

 実際シングルプレイでのホームシティ画面操作は、通常のゲームとゲームの間で操作するので、ゲームプレイに影響することはありません。ホームシティ画面での操作も、基本的にアップグレードする項目を選ぶだけなので、そんなに時間がかかるわけではありません。

 マルチプレーヤーモードでは、このホームシティにハンディキャップをつけたりします。これによりテクノロジーレベルでハンディキャップを付けることができます。しかし、まだこの辺の仕様については詳しく決まっていません。数カ月内に決まると思います。

――とするとプレイ中のホームシティの役割は、ユニットの生産だけでしょうか。テクノロジーの研究解決はゲーム中には行なわないのですか。

 その通りです。また、テクノロジーの研究開発は、これまでのようにマップ上の建物から行なえます。少し変わっているのは、古い世界では行ないませんが、新しい世界ではできるというところです。Age3の建物ではテクノロジーを研究できますが、Age2の建物ではできない。というような感じになります。ですので新しい世界では典型的なAgeゲームが受け継がれています。


■ マルチプレイの基本仕様とAoE3発売後のRTS市場について

――マルチプレイはどのような感じになりますか? また最大何人でプレイできますか?

 弊社ではESO、Ensemble Studios Onlineというマッチメイクサービスを提供していますが、現在リニューアル中です。これらのサイトはハードコアゲーマーを対象にしたサイトで、まだどういうものになるかは具体的にはわかっていないのですが、あるハードコアゲーマーの意見を取り入れ、彼らが望むものを提供していきたいと思っています。このESOは無料で使えます。現段階では最大8人でプレイできるのですが、おそらく1対1の対戦がメインストリームになるでしょう。

――マルチプレイは、基本的にヨーロッパ人同士が、アメリカ大陸で戦うというイメージでいいのでしょうか?

 はい。マルチプレイではヨーロッパの国々同士が、アメリカ大陸で戦う事になります。たとえばフランス対イギリスであったりという事です。ネイティブアメリカンは中立軍としてマップに登場します。プレーヤーはマップ上に点在するネイティブアメリカンと同盟を組むことができ、彼らのテクノロジーやユニットを作成、利用することは可能です。

――E-SportsタイトルとしてWorld Cyber Gamesなどの世界大会で採用されることを意識して制作していますか?

 特にそのような事を意識して作っていることはありません。もし彼らが我々のタイトルを使用したいということであれば歓迎します。ただ、我々が自分からWCGのような所にアプローチしていくというつもりはありません。

――今後AoE3はRTSのジャンルとしてどのような立場になると思いますか? 現在の「Warcraft III」のマーケットを覆すものになりえますか?

 AoE3は非常にいいものになると思います。2005年、2006年度に発売されるRTSの中で一番売れたタイトルに成り得ると思います。「Warcraft III」は、発売されてもう長いゲームなので特に意識はしていません。人々は新しいゲーム、面白いゲームに興味を示すものですから、我々としてはその辺に関して何ら問題はありません。

――ありがとうございました。

□Ensemble Studiosのホームページ
http://www.ensemblestudios.com
□「Age of Empires III」のホームページ
http://www.ageofempires3.com/
□関連情報
【5月19日】Microsoftブースレポート PCプラットフォーム編
エピックスケールで展開される2つの次世代RTSに要注目
「Age of Empires III」、「Rise of Nations: Rise of Legend」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050519/e3_mspc.htm

(2005年5月22日)

[Reported by 中村聖司]


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