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Electronic Entertainment Expo 2005現地レポート

Microsoftブースレポート PCプラットフォーム編
エピックスケールで展開される2つの次世代RTSに要注目
「Age of Empires III」、「Rise of Nations: Rise of Legend」

5月18日~20日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 Microsoftのゲーム部門Microsoft Games Studios(MGS)は、今年、XboxとWindowsで別々のブースを構え、それぞれのプラットフォームをアピールしていた。メインはやはり最新プラットフォームであるXbox360だが、次期OSの開発を進めるMicrosoftとしては戦略的にゲームプラットフォームとしてのWindowsも軽視できず、Windowsタイトルは、Microsoftの本流であるOS(Windows)チームがバックアップするという「一国二制度」体制で展開されていた。2つのプラットフォームを同時展開するMicrosoftならではのユニークなエピソードといえる。

 肝心の出展タイトルは、2タイトルだった昨年に比べると格段に充実。Ensemble Studiosの人気シリーズ最新作「Age of Empires III」を筆頭に、「Rise of Nations」シリーズ最新作「Rise of Nations: Rise of Legend」、昨年に引き続き2度目の出展となる「Dungeon Siege 2」、「Vanguard」、Xboxからの移植となる「Fable」、そして早くも拡張ディスクの登場となる「Zoo Tycoon 2: Endangered Species」の計6タイトル。安定感たっぷりの粒ぞろいのラインナップといえる。


■ 「Age of Empires III」はエンジンだけでなく、ゲームデザインも全面的に改良

「Age of Empires III」のゲーム画面。風に吹かれて草木がざわめき、煙がたなびく。空気感を感じさせる抜群のグラフィックスだ
 まず最初に紹介したいのは、今年3月のGame Developers Conferenceでゲームエンジンのデモを行ない、高い評価を集めたリアルタイムストラテジー「Age of Empires III」。ゲームの開発は、我々の想像以上に順調に進んでおり、欧米でクリスマスシーズンには発売される見込み。日本でも順調にいけば年明けにはプレイできることになりそうだ。

 ゲームエンジンの先端性についてはGDCレポートで詳しく紹介しているので、今回はゲーム内容を中心に見ていく。今回、Ensemble Studiosのデモを受けて驚いたのは、「Age of Empires」シリーズ最新作でありながら、まったく異なるゲームデザインを採用しているところだ。最終的に敵勢力を打倒するというコンクエストゲームの部分は維持しているが、そのプロセスが激変してしまっている。

 今回戦略の中心拠点となるのは、町の中心や城などではなく、ホームシティと呼ばれる“首都”になる。「Age of Empires III」の発表時に、謎の夕焼けの町並みのインゲームショットが公開されたが、アレである。このホームシティは、ランダムマップ上のどこにあるという具体的な存在ではなく、多分に概念的な存在で、たとえばドイツならベルリン、イギリスならロンドンといった具合に、本国の首都をビジュアル化したものになっている。  すでに発表されているように、「Age of Empires III」は、新大陸を舞台としたヨーロッパ諸国の勢力争いがテーマになっている。ホームシティは、これまで曖昧だった首都の概念を明確に規定し、さらにマップ上での戦いを総力戦ではなく、限定戦争という位置づけを明確にした新しいシステムといえる。

 このホームシティは、これまでキーボードショートカットを駆使して入力してきたあらゆる戦略的なコマンドが実行できる。具体的には、ユニットの生産、進化、新しいテクノロジーの開発などがそれに当たる。今回ユニットは、戦場で“生産”するのではなく、必要な分だけその都度、本国から輸送されるという、リアリティのあるプロセスを経て戦場に出現することになる。

 現在のテクノロジーの履修状況や進化の過程を、ホームシティという個々のシナリオとは完全に切り離した部分に置いたことで、シングルプレイでは、これらを引き継いでキャンペーンを継続することが可能になっている。つまり、最新作ではシリーズ初のグランドキャンペーンが楽しめるわけである。これはRTS史上でも、極めて大きな進化といえる。

 次に重要なのはXP(経験値)という新しいリソースの存在。これはその名のとおり、文明の経験値で、特定の箇所から採集することはできず、敵を倒したり、建物を建設したり、ユニットを進化させたりすることで蓄積される。貯めたXPは、ホームシティでさまざまなテクノロジーのアップグレードに利用することができる。

 ちなみに時代の進化に経験値は必要なく、特定の建物を建設し、金と食料を払うことで行なえるようになっている。進化させる際に、「Age of Mythology」の従神の選択のように2つの選択肢が用意され、そのいずれかを選ぶことになる。「Age of Empires」では神ではなく、政治家を選ぶ。これにより文明の方向性が変化していくようだ。

 第3の注目要素は、入植、交易、探検など、いかにも新大陸らしいフロンティアスピリッツ溢れる要素をシステムとして取り込んでいるところだ。これまでの作品では、交易は建物の市場に付随したマイナーな金稼ぎ手段のひとつで、速効を求めるユーザーにはまったく支持されなかった。

 今回は、新大陸入植のプロセスの中に、交易が重要な要素として組み込まれており、見た目も相まってかなり楽しませてくれる。交易対象は、同盟国やNPCだけでなく、自勢力も含まれる。基本的なシステムは、前線に町を中心に建設するような感覚で、入植ポイント(foundation)に建物を建設し、町の中心(拠点)から、入植ポイントの間を馬車でつなぐというもの。

 時代やマップによっては、道路の脇を蒸気機関車が走っており、入植ポイントを押さえることで馬車の高速版として交易に利用できる。さらにユニットを運ぶようなこともできるようだ。ちなみに交易相手には、中立勢力であるアメリカ先住民族も選択できる。彼らをいかにうまく利用するかも重要なようだ。

 今回のデモで、ゲームシステムの根幹となる部分は理解できたが、実はマルチプレイの部分は、よくわかっていない。後日期間中に、リードデザイナーであるBruce Shellyとのインタビューが予定されているので、マルチプレイに関してはそこで補足するつもりだ。

【Age of Empires III】
現在開発中の映像。ディテールについては今後変更される可能性もあるので、雰囲気を掴む程度にしておいてほしい。3段目はキャンペーンのイベントシーン。今作でフォトリアルな演出はさらに強化された


■ ヒストリカルから一転、SFファンタジーになった「Rise of Nations: Rise of Legend」

SF、ファンタジーのエッセンスを混ぜ合わせたRTS「Rise of Nations: Rise of Legend」
 「Rise of Nations: Rise of Legend」は、Brian Reynoldsが手がけたRTS「Rise of Nations」の続編で、いわゆる「Rise of Nations 2」に相当する作品である。開発元は、前作同様、Big Huge Games。今回は、「Age of Empires III」の圧倒的パワーの前に、比較的目立たない印象だったが、「Age of Empires III」とはまたベクトルの異なる、次世代3DRTSのあり方を見せつけてくれた。こちらの発売時期は2006年となっており、完成にはまだしばらく時間がかかりそうだ。

 ゲームのキーワードは“Magic & Technology”。前作では中世の世界を舞台に、壮大なコンクエストを繰り広げるという内容だったが、今回は魔法とSFが共存するファンタジー世界が舞台になる。新規開発の3Dエンジンを採用し、2D、3Dのコンパチエンジンを使っていた前作のイメージを完全に払拭している。

 とにかく驚いたのは、派手なエフェクトと、ユニットや建物の巨大さ。拠点となる施設は、画面を覆い尽くすほどに巨大だったり、足が6本、手が2本の“メカロボ”も人型ユニットを踏みつぶせるほどにデカイ、そのほか巨大なドラゴン、召喚モンスターなどなど、それらが細かいギミックで動き回り、ミサイルやレーザー、範囲魔法を撃ちまくるから、とんでもなく賑やかな画面になる。

 ブースで取材をしていたらたまたまクリエイターのBrian Reynoldsがぶらりと視察に来たため、「前作が歴史だったのに、なぜファンタジーなのか」と聞いてみたところ、「自分のやりたいことを実現するには、舞台をファンタジーにするしかなかった」という答えが返ってきた。ヒストリカルRTSでは表現形式に限界があるのは事実で、まるでファンタジーMMORPGのようなエピックスケールのゲーム映像を見せられると、その意見に頷かざるを得ない。

 ただ、基本的なゲームシステムは前作と変えていないようで、ボードゲームスタイルのConquer the World Campaignは、舞台をオリジナルの世界で実現。きちんとワールドマップとゲーム内で2重の国境線が引かれるのも変わっていない。逆に進化したのはマルチプレイモードで、マッチメイク用のロビーも準備し、20分程度で濃厚なゲームプレイを堪能できるシステムを検討しているという。

【Rise of Nations: Rise of Legend】
どこかしら往年の名作「Total Annihilation」シリーズの雰囲気を感じさせる「Rise of Nations: Rise of Legend」は、TAはSFとファンタジーの両方のバージョンが存在するが、RoNは混在形式を採用。ちょっと楽しみなRTSだ

【Vanguard: Saga of Heroes】
今年で2回目の出展となる「Vanguard: Saga of Heroes」。発売時期は2006年春と決定。「EverQuest」の元クリエイターが開発しているMMORPGだけに期待される。こちらも期間中にクリエイターインタビューの予定が入っているので、詳しくはインタビューレポートでお伝えするつもりだ

【Dungeon Siege 2】
いよいよ2005年8月に発売される「Dungeon Siege 2」。東京ゲームショウで見たときよりもまた一段と作り込まれていた。デモで見た中ではペットのパワーアップがおもしろい。アクションRPGファンは長く遊べる大作に仕上がりそうだ

【Fable】
欧米で大ヒットしたXbox向けアクションRPGのPC移植版。PC版では、グラフィックスが強化され、16の新クエスト、9つの新エリアを収録、新しい装備品などもあるようだ。欧米での発売時期は2005年秋を予定

【Zoo Tycoon 2: Endangered Species】
動物園経営シミュレーションゲーム「Zoo Tycoon 2」の拡張ディスク。コアラ、亀、グレイウルフといったレアな動物を収録。乗り物を使ったツアーなど、動物園機能も充実。発売時期は2005年秋が予定されている

□Microsoft Games Studiosのホームページ
http://www.microsoft.com/games/
□関連情報
【3月10日】3Dゲームファンのための「AGE OF EMPIRES III」エンジン講座(前編)
現行グラフィックス技術の全部入り。「HalfLife2」や「DOOM3」を超えるグラフィックスを俯瞰視点で楽しむ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050310/aoe3.htm
【3月13日】3DゲームファンのためのAGE OF EMPIRESエンジン講座(後編)
こだわりの影生成と算術合成されるディテール、次回作はXbox2?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050313/aoe3.htm
【3月10日】Ensemble Studios、「Age of Empires III」を正式発表
新大陸を舞台にフォトリアルクオリティーで挑む新世代RTS
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050106/aoe3.htm

(2005年5月19日)

[Reported by 中村聖司]


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