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【Xbox 360】
まず最初に登場したのは、ゲームリパブリックの岡本吉起氏。これまで「バイオハザード」シリーズや「ストリートファイター」など数々のゲーム制作に携わってきたことでも知られる岡本氏だが、Xbox 360については「いいハードです」と開口一番切り出した。 岡本氏は「詳しいことは言えないが……」と断わりながらも、「現在2作品を手掛けている。それぞれの作品でハードウェアに求めるものが違うのだが、その両方を許容するほどの性能」だと言う。ゲームの詳しい内容については語られなかったが、制作中のゲームは「1本は、苦手だろうと思われるかもしれないが、ワイワイ系のパーティゲーム」だそうで、もう1本は岡本氏が得意とする「アクション系」だという。ただ、このアクションゲームも「今までやったものとは違い、『えっ、そんなの日本で大丈夫なの?』といった雰囲気のタイトル。あえて挑戦しているけど、自信はあります」と力強く言い切った。
最後にユーザーに対してのコメントとして「全力で開発している。どれくらい期待されているのかわからないが、期待をいい意味で裏切るようにしていきたい」と抱負を語った。 ■ ミストウォーカー、坂口博信氏が大作RPG2作品を発表
今回発表されたタイトルは、鳥山明氏がキャラクタデザインを担当した「ブルードラゴン」と、井上雄彦氏、重松清氏、植松伸夫氏といった豪華メンバーで制作が進められている「ロストオデッセイ」の2タイトル。2作品ともゲームジャンル的にはRPGだが、それぞれ雰囲気の違ったゲームに仕上がりそうな予感だ。 「ロストオデッセイ」は、前述の豪華メンバーの他、この作品の制作のために立ち上げられたという開発スタジオ「フィールプラス」とマイクロソフト・ゲーム・スタジオで制作されている。ちなみにフィールプラスには「ファイナルファンタジーVII」から「ファイナルファンタジーIX」で坂口氏とともに制作に携わっていた川井博司氏が在籍しており、制作に加わっている点でも注目が集まっている。 「ロストオデッセイ」のストーリーは、1000年生きている男の物語。坂口氏は「死ねない男の話。何回か家族も持ち、恋愛もし、死に別れも経験した、心の渇いたある意味悟ったキャラクタ。RPGは成長していく物語なので、そういった意味ではRPGに相応しくないキャラクタだが、その設定を逆手に活かした作品。実験的な側面もある」と説明。1000年生きていると言うことだが、大きな歴史のイベントを紹介していくようなものではなく、「ちょっとホロっとしたり、感動したりといったものを入れていきたい」という。 ここで紹介された重松清氏だが、「出来上がってきたものを見て、不覚にも涙ぐんでしまった。作家という職業柄、文章を大切にして欲しいと考えながら仕事をした。だが、なおかつそれを超えた感動を感じた」とかなりのハイレベルな仕上がりとなっていると答えた。 また、井上雄彦氏は「実はRPGをやったことないし、ゲームの仕事は (今後) やらないだろうと思っていたが、この企画をもらった時、ゲームらしくないと言うか……坂口さんに『人間を描きたい』と言われ熟慮の末参加を決めました」と経緯を説明。さらに井上氏は、「漫画を書くときに筆を使うなどアナログの方向に向いているが、ゲームとのミスマッチがいい方向に向かうことを期待している。漫画は、キャラクタを造り、連載の中で育っていくものですが、今回は生み出して坂口さんに育ててもらうことになる。どのように育っていくか気になっている」と続けた。
坂口氏は井上氏のコメントに「魂を込めてデータを造っています」と自信の溢れるコメントを返した。会場で公開されたムービーでは美しいグラフィックの中、ドラマチックなストーリー展開を予感させるキャラクタが次々と描かれていった。実際のXbox 360のゲームプレイムービーは流されなかったが、現行のXboxのムービーに匹敵するグラフィックスでゲームプレイが可能になるはずで、その世界観の表現は確実に次世代に進むことを予感させるものだろう。 もうひとつの作品は、鳥山明氏がキャラクタデザインを手掛け、Xbox用「Blinx」等の制作を手掛けてきたアートゥーンが開発を手掛けている「ブルードラゴン」だ。 「ブルードラゴン」は、古代遺跡で溢れている星を舞台に描かれるSFタッチの作品となっている。“影”がモチーフになっており、キャラクタの影がドラゴンやフェニックスとなり戦闘するようだ。“影”をこれまでのRPGなどで言うところの職業のように切り替えたりしながら、200種類以上あるスキルを集めたりカスタマイズしてやり込んでいく要素を持つという。坂口氏は「やりこみ要素のある深いシステムにしたい」と意気込みを語っており、プレイし甲斐のある作品になりそうだ。 さらに坂口氏は「次世代のパワーを感じられる作品にしたい」と語った。具体的には「物理シミュレーションであるとか、影や水の表現。そしてフィールドに入ると色々とさわったときにやたら反応する。ワクワク感のある、めいっぱい詰め込んだ物作りを目指している」とコメントした。 キャラクタデザインの鳥山明氏は残念ながら登場しなかったが、コメントを寄せ坂口氏が代読した。鳥山氏は「『ドラゴンボール』、『ドラゴンクエスト』、そして今回の『ブルードラゴン』、とよほど僕は『ドラゴン』に縁があるようです。『ブルードラゴン』は、ファイトあふれるクリエイターで昔馴染みでもある坂口さんからのお話しでしたが、ゲームは『ドラゴンクエスト』のデザインをやっていますので、似たような感じでしたら、おことわりしようと思っていました。ところがシナリオを読むと、全く違う世界観で、SF的要素も強く、世界観を紹介するイメージカットも、斬新ですばらしいモノでした。これなら楽しく仕事できそうだと確信し、デザインさせていただくことにしました。そのシナリオはとても少年誌的で、ハラハラドキドキの大冒険SFストーリーです。読んでいると頭の中でアニメーションのように画面が浮かび上がりものすごくワクワクしてしまいました。このワクワクがないと僕はダメなんです。いつも優秀な人達と仕事ができて本当に幸せです」とコメントを寄せている。 しかし坂口氏によれば、すんなりと鳥山氏と作業が進んだわけではなかったようだ。坂口氏は「シナリオの最初の段階でもめまして、うまく歯車がまわらなかった。しかし、根幹の部分でアイディアを頂いて、エネルギー感に繋がった」と、作品にとっていい方向に向かったようだ。 やはり鳥山氏のパワーは絶大で、坂口氏は「とにかく鳥山明氏の絵を動かせる、ゲームを作れるのが何より嬉しい。絵が出来上がってくると3D化して早く動かしたいと思ってしまう」と嬉しそうに語り、アートゥーンの松本氏も同様のことを語っている。会場ではXbox 360そのものではないが、ゲームのモデリングを使ったグラフィックスによるハイビジョンムービーが公開されたが、迫力いっぱいにキャラクタが動き、ドラゴンが火を噴くシーンが描かれていた。
ちなみに音楽は「ブルードラゴン」も「ロストオデッセイ」も植松伸夫氏。坂口氏は「音楽の力は大きい。安心する」と絶賛。まだすべて書き上がっていないと言うが、植松氏は今回すべての曲を自分で書くと申し出たという。「『ブルードラゴン』はポップな色で、『ロストオデッセイ』の色はドラマティックかな。これまであんまりやってこなかったジャズボーカルを『ロストオデッセイ』で入れたらどうかと提案してみた。今後も挑戦していきたい」と、挑戦していく姿勢をみせた。 ほんの少しだけ坂口博信氏にお話を伺うことができたのだが、今回Xbox 360のソフトを制作することになった経緯については、「正直、ハードはどこでも良かった。次世代ハードウェアであればどれでも実現することができると思う。でもゲーム作りはそれだけじゃないでしょ。今回、売れないと言われた『ファイナルファンタジー』を米国で広めた丸山さんと、『ファイナルファンタジーVII』から『ファイナルファンタジーIX』まで一緒に制作に携わった川井さんを紹介されて、これならと思った。やばい橋を渡ってきた2人とならやれるじゃないですか」とコメントして貰えた。 また、鳥山氏や井上氏から注文があったか問うてみると「クリエイターから上がってきたものに負けないものを作り上げようと言う想いで作っている。だから一度も注文が帰ってきたことはないですね。素直に驚いてくれる。そうやってお互いモチベーションをあげて制作に繋げていっている」のだという。ハイレベルな作品のやり取りでお互い尊重し、そこから新しいものが生まれるのだろう。 ちなみに2作品は全く違った雰囲気だが、坂口氏は「別にターゲットを分けることはしていない。ゲームは主婦でも誰でも遊んでいるでしょう? 誰でも遊べるところがRPGの良いところ。鳥山明氏のグラフィックスの方が低年齢を意識しているように見えるが、ゲームの中身は逆かも知れませんよ……」と誰でも楽しめる作品に仕上げていきたい意向のようだ。昨年から制作がスタートしているが、規模の大きな作品なだけに2年ほどはかかるという。さすがにハードウェアの発売と同時に遊ぶことはできないようだが、楽しみな作品なだけに、ユーザーとしては早く完成した作品として楽しみたいところだ。
■ 水口哲也氏の新作はファンタジーアクション「NINETY-NINE NIGHTS」 水口哲也氏のキューエンタテインメントの新作は韓国のファンタグラムとのコラボレーションとなるファンタジーアクション「NINETY-NINE NIGHTS」だ。韓国ファンタグラムは「Kigdom Under Fire:The Crusaders」を世界中でヒットさせたことで知られている。 「NINETY-NINE NIGHTS」のコンセプトのひとつは「大軍勢感」。公開されたムービーでも映画に登場するような大軍勢同士がぶつかり合うシーンが描かれていたXbox 360のグラフィックス機能は当初考えていたより優秀で、非常にたくさんのキャラクタを描画できるのだという。現状で1,000人規模の表現が可能で、最終的には2,000人を目標としているという。 また、マルチシナリオをもっと押し進めたドラマチックな体験が可能となるという。各キャラクタでプレイしていくことでゲームの世界観全体が明らかになる。アクション性とドラマ性の融合で、シナリオはすでにほぼでき上がっている。 ゲーム制作もこれまでとは違っていて、キューエンタテインメントのスタッフは韓国に在中し、現場は英語と日本語とハングルが飛び交っているのだとか。専門の通訳が2人いるというほどで、コミュニケーションを密にとって制作が進められているようだ。 水口氏にもほんの少し個別にお話を伺うことができた。水口氏は最近では音楽を扱ったゲームの制作が目立ったが、今回はファンタジーアクションということで意外な感じがしたのだが、この点については「別にジャンルから見ているわけではないので。このあいだ作ったのはパズルだしね (笑) 。テクノロジーが与えてくれる驚きは大きい。最初『セガラリー』を作っていた頃は3Dグラフィックスのすごさをどう楽しさに落としこめるかだったけど、そのうちハードがシンセサイザーのような使い方が可能になってきて、音楽ゲームの制作を行なっていた。最終的にはドラマをやりたいんだけど、やりたいことはほかにもたくさんある」とゲーム作りの本質的な欲求は変わらない様子だ。
「国内は閉塞感がある」という水口氏。今回は韓国のファンタグラムと制作し、ゲーム自体の発売は全世界規模となる。そういった意味ではこれまでにない新しい展開を見せる作品となりそうだ。 【ロストオデッセイ】 (C) 2005 MISTWALKER, INC. / I.T.PLANNING INC. All rights reserved. (C)2005 Microsoft Corporation. All Rights reserved. 画面は開発中のものです 【ブルードラゴン】 (C) 2005 BIRD STUDIO / MISTWALKER, INC. All rights reserved. (C) 2005 Microsoft Corporation. All Rights reserved. 画面は開発中のものです 【NINETY-NINE NIGHTS】 (C)2005 Microsoft Corporation. All Rights reserved. 画面は開発中のものです
□Xboxのホームページ (2003年5月13日) [Reported by 船津稔]
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