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■ 高須氏「世界でも類を見ないエンターテインメント企業体となる」
後の質疑応答で、過去のセガとの件と比べ、高須氏は「セガさんとは実際に話し合いを進めていく過程で、“ちょっと違うな”と感じた。企業の統合での最大のリスクの1つは、企業風土が合うかどうかだ。今回ナムコさんとは、作業をしている現場の人間が“ぜひ実現させるべきだ”、“両社の担当者レベルで非常にいい話だ”という意見がお互いの認識になっている。過去の失敗よりもこれからに関心をもっていただきたい」と語っていたのが印象的だった。また、「外的要因で決定された統合ではない」ことも強調していた。
さらに高須氏は、「今回の統合は両社の事業特徴や強みから考えるとベストな考え。経営陣は新しい扉を開くものと前向きに考えている。また、創業以来両社は夢と感動を提供していくことを使命としており、スピリッツの面でも共感できることが大きな要素としてあった」と続けた。「ターゲットや領域の拡大による領域の拡大とともに、新しいエンターテインメントの場を生み出していくことが必要不可欠。ナムコとバンダイでは、事業拡張、新規事業の創出をワールドワイドで拡大していくために、統合を決意した。それぞれの強みやノウハウ、展開事業領域の重複が少ないため、力をあわせたときのシナジー効果、補完効果とも非常に高い組み合わせ。今回の統合により、キャラクタとテクノロジとロケーションの融合を図る」と、今回の統合の目的を続けた。
新会社である「株式会社バンダイ・ナムコホールディングス」の資本金は100億円(予定)、設立後の2006年4月期の売り上げは4,600億円の見通し。株式移転比率は、ナムコ普通株式1株に対し、持株会社普通株式1株、バンダイ普通株式1株に対し、持株会社普通株式1.5株となる。持株会社「バンダイナムコホールディングス」は両社の中間地点である港区に設立され、バンダイとナムコは新会社の完全子会社となる。
また、記者からの質問で「この統合によってリストラを予定しているのか?」と問われた高須氏は「リストラはまったく考えていない。統合によって優秀な人材はもっと必要になる。バンダイ、ナムコの経営体制を維持していきたい」と完全に否定。株価の算定については、「将来の予想を含めた全ての要素が含まれている」とし、「ディスカウントキャッシュフローを両フィナンシャルアドバイザーのアドバイスに基づいて決定した」と比率の根拠を示した。また、本日付で中村会長からバンダイに売却された700万株は、「当面は金庫株として運用する。当面売却の予定はない」と答えた。
統合会社では、グループ全体の中長期経営戦略の立案や遂行、ナムコ・バンダイなど子会社群の事業面における各種戦略の実行・支援、事業活動の管理を行なう。この会議には新会社のメンバーだけでなく、バンダイ、ナムコ両社から各事業セグメントを代表する社長、ならびに役員が参加する予定で、経営と執行の効果的な連動を図るための推進役となる。
■ 2段階の統合への流れ さて、バンダイ、ナムコの2つのグループの統合は段階的に行なわれる。まず、9月27日に「バンダイナムコホールディングス」が設立され、バンダイ、ナムコは完全子会社化。各グループの上場企業は今までどおり、バンダイ、ナムコを中間持株会社とし、存続するという。高須氏は、「バンダイとナムコは、今の事業形態を維持しつつ、将来の事業戦略を持株会社が検討して戦略を練っていく。ある意味業界にとっては理想的な構図」と述べ、バンダイ・ナムコホールディングスに関しては、「ブランドをきちんと維持するための持株会社。2つのブランドを維持・発展させていきたい」と、あくまでお互いのブランドを尊重する姿勢を示した。 その後、将来的には、グループ全体を、トイホビーを中心としたトイホビーグループ、ゲーム事業やネットワーク事業を行なうコンテンツグループ、アミューズメント事業を行なうアミューズメントグループという3つのグループを柱とし、映像事業を行なうビジュアルグループ、関連事業グループを加えたグループ体制をイメージしているという。具体的な日程は未定。
高須氏によれば、「今回の話が無くても、バンダイは2006年度には純粋持株会社にしようという構想を社内的に言っていた。企業には適正規模がある。とくにエンターテインメント業界では会社が大きくなるとスピーディな決断がしにくくなるということで、“将来は小さな会社にしようよ”という話をしてきた。そういったなかで今回ナムコさんといいお話が出てきたということで、まず、“バンダイとナムコの上に純粋持株会社を置きましょう”と。“その後、再編することによって5つのグループにしていきましょう”と。これはいつやるかは今後の課題だと思うが、グルーピングすることでスピーディな経営スタイルをとっていきたい。イメージとしては中小企業の集合体。それぞれ主体的で独立的な経営が行なわれているほうがいい」と統合のメリットを改めて強調していた。 また、重複している事業、間接部門での効率化、両社による物流部門の構築など、効率についても逐次追求していく。「このグループで3年後には連結売り上げ高5,500億円、経常利益550億円(10%)を目標とする。これはまだ見通しが立ったわけではなく、あくまで目標だ」と高須氏は述べた。
最後に新体制の下でバンダイの社長に内定した上野氏、すでにナムコの社長である石村氏が紹介され、プレゼンテーションは締めくくられた。
■ ユーザーにとってはこれからが注目? 今回の記者会見に関して、基本的にはあらかじめ発表されたリリースの補填的内容が主となり、両社のこれからの具体的プランが、ゲームユーザーにとってはっきりとは明らかにはされなかったのが残念だ。 「本日、全社員を集めて統合に関する話をした。社員から“このゴールデンウィークにナムコさんのロケーションでバンダイグループの製品を扱ってもらえないか”と早速反応があった。そんなあらゆる面であらゆる可能性がある。例えば、“ナンジャタウンでバンダイのキャラが踊りを踊る”といった、たくさんの夢を考えられる。ディズニーランドは日本に1つしかないが、ナムコのロケーションは全国にたくさんある。早速中村会長にお願いしてみたら“いいね、やろう”となった。このスピードが大事。コンテンツとテクノロジーとロケーションの融合が今回の経営統合の最大の目標」と高須氏が言うとおり、お互いのメリットを活かした事業戦略が回り始めれば、かつてない規模でのエンターテインメント業界に旋風を巻き起こすことができるかもしれない“無限の可能性”を秘めていることは間違いない。 しかしながら、開発部隊を社内に持つナムコ、社外に発注する形のバンダイグループが現状発表される中期イメージに沿ってひとつにまとまったとき、気になるのは、例えば、バンダイの多角的コンテンツ量に対し、ゲーム化にあたって、バンダイグループの開発部隊はもちろんのこと、ナムコの開発部隊がそれにかかりっきりになるような事態が起こらないかといった懸念がないわけではない。高須氏の言葉によれば、「中期目標のイメージに関してはまだ決定したものではなく、今後経営戦略会議で検討していく。ナムコ、バンダイの2つのブランドを維持・発展させていきたい。ゲーム部門をいかに次世代機に対応させ、より面白い、より国際的なソフトを作り上げるか。このことによって、年齢層も広げていけるのではないか」ということで、グループの今後に注目が集まりそうだ。
いずれにしても、まずは6月に行なわれる株主総会が次の焦点となるだろう。その前のE3 2005の両社の出展内容にも影響が現われるかもしれない。今後とも目の放せない統合劇となりそうだ。
□バンダイのホームページ (2005年5月2日) [Reported by 佐伯憲司]
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