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ガマニアCOO 浅井清氏インタビュー
日本法人の新しい位置づけ、次期主力タイトルの動向を聞く

3月収録

会場:ガマニア・デジタル・エンターテインメント本社

 台湾のゲームメーカーとして、唯一日本展開を果たしているガマニア・デジタル・エンターテインメント。Taipei Game Showでもお伝えしたように、台湾では「リネージュ」シリーズを筆頭とした韓国産タイトルを主軸に、公称6割のユーザーシェアを占めている大手中の大手である。

 一方、日本はというと、残念ながら、「ラグナロクオンライン」や「リネージュ II」に匹敵するようなヒットタイトルには恵まれていないが、携帯電話での決済にも対応した汎用性の高い課金プラットフォーム「GASH」のライセンスビジネスを背景に、ねばり強いビジネスを展開している。

 今回は、日本法人の実質的なトップ浅井 清氏に、今後の日本法人の展開について話を伺ってみた。


■ガマニアグループとして、ガマニアジャパンとしての戦略

ガマニア最高執行責任者 浅井 清氏
「エターナルカオス」プロジェクトマネージャー 大久保氏
編: まず最初に、ガマニアグループ全体における日本法人の位置づけを教えてください。

ガマニア最高執行責任者代行 浅井氏: 基本的にガマニアは台湾を中心に、韓国、日本、中国では香港と北京と展開をしていて、それぞれ独自にパブリッシャーとして展開をしていこうという形になっています。日本は日本に合った形としてオンラインゲームのパブリッシャーとして展開していきます。

 「巨商伝」などがそうなのですが、日本で描いたイラストやデザインをゲームの中に取り込んでいって、他の国にもサービスをしたり、「O2JAM」では、日本で作曲してそれを他の国にも広げていくといったことも考えています。日本はゲームのビジネスが非常に進んでいるところがあるじゃないですか? そういった日本のいい部分を取り込んで世界に発信する役割を担っているところもあります。

編: これまでの日本法人のイメージは、例えば「首都高バトルオンライン」などをライセンスして台湾を初めとした世界に持っていくという、パブリッシャーよりもライセンシー的な位置づけだったように思いますが、今年はまたパブリッシングが前面にでてきたという印象を受けますね。

浅井氏: そうですね。グループ内のファンクションから考えれば日本のゲームメーカーのタイトルのライセンスをいただいて、アジアの各地域で配信していくというビジネスは今後も継続していきます。最近では「首都高バトルオンライン」だけではなくて、「ゲットアンプド」なども台湾でサービスさせていただいてます。こういった案件に関しては今後とも日本がサポートしていければなと。日本のゲームをアジアに持っていく上でのゲートウェイの役割も今後は強化できればと思っています。

編: 日本の具体的なビジネス内容をもう少し具体的にお教えてください

浅井氏: パブリッシャーとして現在5タイトルを手がけています。そのうちMMORPGが3タイトル、「エターナルカオス」、「巨商伝」、「エバークエスト」ですね。他にカジュアルゲームが2タイトル、「O2JAM」と「ココカン」ですね。「O2JAM」と「ココカン」は現在はまだβテスト中です。「ココカン」に関しては非常に長きにわたってテストをしていまして、台湾社内の問題や、こちらのリソースの問題もあってちょっと引っ張っているんですけれども、とりあえず現在はこの5タイトルをパブリッシングしています。

 他には、弊社の「GASH」という課金プラットフォームを他社にライセンスしていくという部分で、「スカっとゴルフ パンヤ」、「首都高バトルオンライン」、「ストーンエイジ」、「童話王国」、「クロノス」といったタイトルと運営させていただいております。これらのタイトルはどんどん追加していく予定があります。

 また、サーバーのホスティングサービスやダウンロードサービスなども部分的に手がけています。メインは消費者とのBtoCのビジネスで、+αの部分で、BtoBのGASHプラットフォームの展開を行なっています。

編: そうした結果、現在では「www.gamania.co.jp/」でいろいろなタイトルを扱うようになってきたわけですが、これはいわばゲームポータルビジネスの一環と捉えていいのですか?

浅井氏: 台湾ではゲームポータルとして進めている部分がありますが、日本ではポータルをやっていくにはそれなりの体力やノウハウが必要で、ポータルとしてやっているハンゲームやNEXONと単純に競合するのは日本のマーケットでは難しいかな、と考えています。

編: GASHの手応えはいかがですか?

浅井氏: ガマニアが台湾や韓国で先行して進めているオンラインビジネスのノウハウに基づいているんですが、ひとつひとつのゲームが個別の課金チャンネルを持つのではなくて、プラットフォームとして展開をしていくのが効率としていいだろうと。1つのプラットフォームということで、有料課金ということに関して、ユーザーさんにより遊びやすく、ゲームへの敷居を下げるという意味では、ずいぶんマーケットに認知をされてきたなという手応えはあります。ずいぶん成績が伸びてきています。

 ただ、扱っているタイトルはまだ10本に満たないですし、その点では満足はしていません。今後GASHを使って遊んでいくゲームはどんどん増やしていきたいです。また、GASH IDを使ってさまざまなサービスを受けられるようにもしていくつもりです。例えば現在でも「エターナルカオス」や「巨商伝」が無料で遊べますし、いつ開始するかは未定ですが、GASHユーザーを対象にしたコミュニティーサービスの展開も検討しています。現在考えているのはブログなどです。ただ、我々はあくまでオンラインゲームに特化したビジネスなので、ブログでNo.1を取ろうなどとは考えていません。オンラインゲームを楽しんでいただくための付加価値として、追加していこうということを検討しています。

編: ガンホーさんも似たような展開を考えているようですが、今後は正面きって戦おう、といった感じですか?

浅井氏: いやいや(笑)、けっしてそんなことはなくて、GASHでつながっているさまざまなタイトルで遊んでいるユーザーさんに対して、横のつながりを作っていきたいと考えています。ブログも前面に出すものではなくて、あくまでもオンラインゲームのサービスの+αの部分で、ユーザーさんにゲームをより楽しんでいただくためのサービスです。

編: CEOへのインタビューで、「ガマニアのポータルは失敗した」というコメントがありましたが、これについてどう思われますか?

浅井氏: 台湾のガマニアは「シールオンライン」や「リネージュI・II」、「エバークエスト」など大きなタイトルを扱っています。結局コンテンツが前に出過ぎてしまっているんですよ。これに対してガマニアをポータルとして前面に出していこうという動きがバッティングしてしまったんじゃないかなと。どちらかに特化するべきだったと私は思うんですよね。今後はゲームの部分に特化してやっていこうという戦略は台湾においてもいいのではないかと思いますね。

編: それはスクウェア・エニックスさんのプレイオンラインに近い考え方でしょうか。

浅井氏: 最近のスクウェア・エニックスさんのオンライン戦略の正確なところ把握していませんが、ゲームタイトルがいくつかあって、コミュニティーや課金のベースにプレイオンラインという入り口があるという点では、似ているかもしれないですね。特に意識はしていないですが。

編: 今後もガマニアが展開するプラットフォームはあくまでPCのみなのでしょうか? 例えば携帯などは?

浅井氏: 携帯も考えています。ただ、携帯はGASHプラットフォームとして展開していくというよりは、携帯でオンラインゲームを楽しんでもらったり、現在PCでプレイしているオンラインゲームの付加価値としてのサービスを考えています。携帯のコンテンツも配信していきたいです。将来的な展望として、考えています。単純な携帯ゲームの配信ではなく、オンラインゲームであることと、PCゲームの連動という部分で特化して、今までの携帯ゲームとはちょっと違った展開をしていきたいですね。

 先行して成功している会社もたくさんありますので、課金ビジネスとしてどこまでやれるかという部分ではいろいろ検証している段階です。PCでオンラインゲームを楽しんでいる方のためのツールとしての部分もイメージしています。


■「エターナルカオス」無料化の動きについて

編: ガマニアさんが日本で本格的に展開したのは2002年の東京ゲームショウだったように記憶しています。大々的にブース展開を行ない、そこで初めてガマニアというゲーム会社が日本のユーザーに認知されたわけですが、今年になって「エターナルカオス」無料化などの動きで再びガマニアが目立ってきたな、という印象がありますね。

浅井氏: 2002年に台湾から進出してきたときには日本のマーケットがまだちょっと把握できていなかったかなと、力押しで展開しようとした部分は正直あったと思います。ただ、そこから3年近くやってきて、日本のユーザーにあった形でサービスができるか、という部分でだいぶ方向転換ができたかなと。プラットフォームの展開も含めてですね。

 以前は「エターナルカオス」1本でいこうとしていたのですが、マルチタイトルの展開プラス、GASHプラットフォームの展開で日本のマーケットに合った形で展開できているかなと感じています。ビジネス的にも去年の後半から会員数も増えてきて、手応えを感じています。

編: 結果として選択したビジネスモデルが「基本料金が無料、アイテム課金」ということになりますが、これについては?

浅井氏: 私たちが持っている今あるコンテンツをいかに多くのユーザーさんに手に取っていただいて、楽しんでもらうための選択です。オンラインゲーム自体を知らない方が日本ではまだかなり多いと思うんですよね。月額課金でやっていく形だけでは、ユーザーさんのすそ野が広がっていかないだろうと。

 去年の後半、さらに2005年から2006年は日本のオンラインゲームが大きく拡大していくタイミングかなと考えてまして、この中でユーザーさんに楽しんでいただく方法の1つとして無料化を行なってみました。「エターナルカオス」に関しては、3年に渡って展開してきたタイトルなので、正直最近はユーザ数の伸びが鈍化している部分もありました。

編: 月額課金モデルとして設計された「エターナルカオス」を、半年や一年ではなくて、3年経ってから課金モデルを一新するというのは前代未聞のケースだと思います。これについてはどうおもわれますか?

浅井氏: 3年たってゲームが少し古くなっている部分も正直あると思うんですよ。ユーザーさんのコミュニティーも固定ユーザーさんが支えてくれるという部分があったんですが、MMOとしてこのまま月額モデルを続けていて、仮にユーザーさんが減ることがあった場合、果たしてそれがユーザーさんにとっていいサービスが継続できるんだろうかと。より多くのユーザーさんに参加していただいて、初めてMMORPGとしておもしろくなるのかなというのが1つの理由です。

 もう1つは去年の年末から“ハンターチャンス”というアイテムのランダム販売を始めていて、それが好評だったこともあります。「アイテム販売は儲かるんだろう」とよくいわれますが、私たちとしては長時間遊んで自分の欲しいアイテムを獲得できる人もいれば、短時間で多少お金を払ってでも自分の欲しいアイテムを手に入れられればその方が満足度は高いというユーザーさんもいる。ユーザーさんのプレイスタイルはいろいろあると思うんですよね。こういったさまざまなプレイスタイルに対応することを考えた上での無料化とアイテム課金制の導入にふみきったわけです。

編: ユーザーからの反応はどうですか?

浅井氏: アイテム課金制の導入については、一部で批判的な意見もあることは事実です。しかし、全体としてはむしろ好意的に受け止められているかなと。接続数やアクティブなアカウント数はハンターチャンスを始める前より伸びています。ユーザーさんのプレイスタイルに合ったサービスになったのかなという認識はあります。

「エターナルカオス」プロジェクトマネージャー大久保氏: 始める前、無料化も視野に入れてハンターチャンスを試験的に導入したんですが、我々としてもユーザーからのバッシングは覚悟していたんですけれども、正直に言えば思ったほどではありませんでした。それはうちの「巨商伝」のアイテムモールや他社さんのゲームである程度こういうビジネスモデルが認知されていたというのがあるかもしれませんね。

浅井氏: むしろ社内の方が反対意見が大きかったかもしれないですね。私がごり押ししたという形もありますが、繰り返しますが、アイテムを売れば儲かるという単純な考えではなくて、いかにユーザーさんにゲームを楽しんでもらうかを考えた結果なのです。実は一年以上前から考えていたことでして、システム的にも準備をしていました。社内で議論を重ねて、去年の年末にスタートした、というところです。

編: ゲームメディアに携わる側の人間としてアイテム課金に対する懸念事項として、ゲーム世界の中にリアルマネーが入ってしまうということがあります。もちろん制限はかけていますが、抜け道はいくらでもあって、理論上は制限なしに入ってきてしまいますよね。そうするとゲームバランスがとれなくなってしまうのではないかと思うのです。特に今までは月額モデルだった作品の場合のバランスは大丈夫なのでしょうか?

浅井氏: そこが一番大事な部分だと思うんですよ。一時的にアイテムが売れても、それでバランスが壊れてしまえばゲームとして成立しなくなってしまうので、大きくバランスに影響がでない範囲でやっていこうと。

大久保氏: 細心の注意を払いましたが、ゲーム内の相場で多少予想よりずれた場合もありました。今後も調整していくつもりです。ハンターチャンスは韓国では行なっていない日本独自のサービスですが、今後はハンターチャンス用のオリジナルアイテムも用意していく予定です。ゲームバランスに関しては我々が一番慎重になっている部分です。

浅井氏: もともと韓国と日本ではゲームバランスが違っていて、日本のユーザーさん向けにカスタマイズしていた部分がありまして。レベルの上がりやすさなど日本独自のバランスになっています。正直、ハンターチャンスを始める前後ではゲームバランスは変わっている部分もあると思います。相場などはユーザーさん自身が作っていくところがあるので、ゲームバランスも、アイテム課金の後自然に形成されていくのではないかと思っています。

編: コアユーザーの反応はどうですか?

浅井氏: アイテム販売はプレイ時間が長いユーザーさんの方が利用なさっていますね。アイテムの効能などはある程度プレイしないと有効に使いこなせないと思います。コアユーザーさんの方がハンターチャンスを有効に使ってゲームを楽しんでいただいていると思っています。


■「エバークエスト」の今後の展開

編: これだけアイテム課金のゲームが増えてくると、「エバークエスト」もアイテム課金制をとるのではないか、というところがあると思うんですが。

浅井氏: 現時点ではまったく考えていません。うちのラインナップとしては、「エターナルカオス」を入門用として、「エバークエスト」は上級者向けのゲームとしてとらえています。「エバークエスト」のバランスに関しては私たちがむやみに手が出せるものではなく、ある程度完成されたゲームだと思っていますので、現在のバランスでユーザーさんに楽しんでいただくかというところで考えています。

編: ガマニアは「EQII 東方版」の制作など、業界的にもびっくりするようなことをやってきますよね、「エバークエスト」に関してもクライアント無料というのはサプライズでした。こうなるとアイテム課金をしても、もう驚かないぞ、というところもあるのですが(笑)

浅井氏: 将来的に可能性は0ではありませんが、現在は考えていません。常に新しいサービスを模索しているのは確かですが。仮に私がアイテム課金制を導入したいといってもSOEさんがNOという可能性はありますね。クライアント無料などは開発元といろいろ相談しながらすすめています。そういったことは開発元と慎重に話をしながら進めています。

編: 「エバークエスト」に関しては今後もアップデートや、追加パックの発売が予定されていますが、今後これも無料で行なっていくのでしょうか?

浅井氏: 通常のアップデートに関してはもちろん無料で行なっていきます。拡張パックに関しては、今までユービーアイから販売されていますので、たぶん今までと同じようにパッケージで販売していくという形になると思います。発売が予定されている「EverQuest: Gates of Discord(GoD)」と「EverQuest: Omens of War(OW)」に関しては現時点でいつというお話はできませんが、日本語版の準備は進めています。まずはDirectX 9対応のバージョンアップを近々に控えています。

編: ちなみにDirectX 9への対応は、当初アナウンスされた予定よりかなり遅れてますね?

浅井氏: ずっと不具合に悩まされていたのですが、あるきっかけでようやくうまくいくめどがつきまして、4月のできるだけ早い段階での導入を目指して準備を進めています。SOE側の作業をするところまで来ています。今後のアドオンに関しては、この作業の遅れが影響してしまっています。遅れてしまった理由としては我々が考えていた以上にDirectX 9へのアップデートのボリュームが膨大で、それを全部テストするのに手間取ってしまいました。ガマニアにサービスが移行する前に止まっていたアップデートもたまってしまっていて英語版とまったく違うものになってしまっていて、これに対するデバッグにも膨大な作業量がかかってしまいました。環境の移行にも手間取ってしまいましたね。

編: いろいろな事情があったにしても、半年以上予定が遅れてしまっていて、ビジネスとしても無視できないほどの影響が出ていると思います。ユーザーにゲームに戻ってきてもらうためのプランなどは用意しているのですか?

浅井氏: まずはDirectX 9対応のアップデートを行なって、サービスをよりよくしていくというのが一番だと思うのですね。ユーザーさんも待ちくたびれて、離れてしまっている方も多いと思うんです。まずはその人たちに戻ってきていただきたいなと思っていまして、そのためにもアップデートをできるだけ良いクオリティーで、早く導入するというのを一番重要だと捉えています。

編: 内情はさまざまなものがあると思いますが、結果としてガマニアジャパンのローカライズ能力について疑問視する見方もできると思いますが、今後どのような対策を行なっていくのでしょうか?

浅井氏: 今後のスムースなアップデートと追加パックの販売、バグフィックスも含めて、あくまで正攻法で信用を取り戻していくしかないと思っています。もちろんゲーム内のイベントなどを積極的に行なって、よりゲームを楽しんでいただけるように努力していきます。

 現在考えているのはギルド応援のイベントです。ギルドを作るのに通常は10人のメンバーが必要なのですが、これを5人にして、さらに専用のギルド紹介ページを作っていきます。キャンペーン期間中に応募をしていただいたギルドには抽選でメンバー全員にプレイ期間延長などのプレゼントをしていきたいと言うことを考えています。他にもさまざまなイベントを企画していこうと思っています。

編: スクウェア・エニックスから「エバークエストII」のサービスがはじまりますが、半年にわたってアップデートが止まってしまっていた「エバークエスト」にユーザーが戻ってくるにはかなり強力なアピールが必要になると思うのですが、どのようなプランを考えていらっしゃるのでしょうか?

浅井氏: 台湾でガマニアは「リネージュ」の「I」と「II」をサービスしていますが、「II」が出たからと言って、ユーザーは減らなかったんですよ。「エバークエストII」に関していえば、スクウェア・エニックスさんが充実したサービスをなさると思いますが、「エバークエスト」もそれに負けないサービスをしていきたいと思います。クライアントも無料ですし、「II」よりも入ってきやすいという部分もあると思います。より手軽に遊んでもらって、「やっぱり『エバークエスト』はいいよね」と、ユーザーさんに言ってもらえるサービスを継続していきたいですね。

編: 「リネージュ」シリーズの場合は、台湾のガマニアであれ、韓国のNC Softであれ同じ会社がパブリッシングを行なっていますよね。そのためにフレンド登録やコミュニティーなどを共有できるという強みがありますが、「エバークエスト」に関してはまったく違う会社が行なっているわけで、スクウェア・エニックスと協力して何かを行なう、ということはないんでしょうか?

浅井氏: いまのところないですね。私としてはガマニアがアジアで進めている「EQII 東方版」を日本でもやらないのかと、ユーザーさんやメディアからよく聞かれるのですが、何らかの形で提供できたらいいなあと、考えています。あくまで僕の脳内だけの話ですが、ガマニアがやるとか、スクウェア・エニックスさんがやるとかまったく具体的な形はありません。

 もちろん日本で「エバークエストII」の展開はスクウェア・エニックスさんが独占するという発表をしていますので、ガマニアが「EQII 東方版」を日本でやるということはありませんが、ガマニアグループとしてはスクウェア・エニックスさんと協力するなり、SOEさん経由でも、何らかの形で提供できたらいいなと思っていますね。難しいですが、日本のユーザーさんの期待が高いのであれば、「EQII 東方版」を日本のユーザーさんにもふれてもらいたいという気持ちがあるのは確かです。あくまで私の脳内ですが、応えられればいいなあとおもっています。


■「O2JAM」日本オリジナルの曲を近日実装予定

編: オンラインゲーム音楽ゲーム「O2JAM」のビジネスモデルを教えていただけますか?

浅井氏: 基本のプレイ料金は無料で、ゲーム自体は遊んでいただきながら、新規の曲に関しては有料で配信していくというアイテム課金に近いモデルになります。

編: 今オープンβテストでプレイできている曲は全部今後とも無料なのですか?

浅井氏: 現在はあくまでテストですので、正式サービスの時には有料化になる曲もあるかもしれません。1曲あたりの値段は通常の音楽配信が100~200円じゃないですか。高くてもそれ以上にするのは難しいですね。「O2JAM」は女性やライトユーザーさんに遊んでいただいているので、手軽に手に取っていただく値段を検討中です。アップルの「iTunes」くらいに下げられればとも思っているのですが。

編: 「O2JAM」の曲は単純な楽曲ではなく、ゲームとしてタイミングなどを設定したデータですから、1曲のコストは通常の音楽よりかかりますよね、100~200円では難しいのでは?

浅井氏: そうですね、かかります。しかし、100~200円くらいにしなければ、手に取りにくい値段になってしまいますよね。1カ月に10曲程度配信していきたいですね。今のところ日本で普通に売られている曲を配信するのは、権利関係で少し微妙です。オンラインゲームで既存の曲を使うというのが前例がないので。

 現在はこの前の段階で、日本オリジナルの曲をどんどん作っているところです。「O2JAM」は韓国のゲームで、全部韓国の曲では正直おもしろくないじゃないですか。日本のユーザーさんの耳にあう日本のオリジナルの曲を入れていければと。現在日本オリジナルの曲はサンプルで数曲程度ですが、かなり作っていますよ。

編: 販売は曲単位になるのですか?

浅井氏: セット販売を検討しています。ジャンル別にするのか、複数のジャンルを詰め合わせるかは考えているところです。「O2JAM」はオンラインでの対戦がキモとなる部分ですので、できるだけユーザーさん同士で同じ楽曲を持ってもらった方がおもしろいんですよね。曲単位で切り売りをしてしまうと、耳ざわりのいい曲ばかり選ばれてしまう傾向になるかもしれません。音楽ゲームの曲って、人気はないんだけど、ゲームとしてはおもしろいというのもいっぱいあるんですよ。そういった曲をユーザーさんの手元にバランスよく届けるためにも、まとめて販売していきたいですね。

編: 従量課金や月額課金のモデルは考えていないのですか?

浅井氏: ちょっと考えている部分もありますが、今のところ導入予定はないです。もちろん無料で遊べる曲もどんどん追加していく予定です。

編: プラットフォームはPCだけでしょうか? 携帯の方が向いているような気がするんですけれども。

浅井氏: ちなみに台湾では携帯版の「O2JAM」も作っているんですが、日本では少し慎重になっています。ひとつは日本ではコナミさんが「ビートマニア」をすでに携帯で展開していて、あまりかぶるのもなあ、という気持ちがあります。もうひとつはガマニアとしてはオンラインゲームにこだわっていきたいという部分があって、携帯のコンテンツとしてダウンロードして遊ぶのは違うかな、と思っているんですよ。

編: 現在ユーザー数はどのくらいでしょうか?

浅井氏: 15,000人くらいですね。まだ曲の数も揃っていませんし、ラグなどを解消していければと思っています。対戦だけでなく、それぞれの楽器のパートを担当する協力プレイも開発の方では考えています。

編: 手応えとしてはどうでしょうか。

浅井氏: ユーザーさんの反応は凄くいいです。ただ、現時点ではまだβテストですから、ユーザーさんの意見とか不具合の報告を受けて修正し、新曲を投入しながらユーザーさんの反応を見て今後の展開を考えているところです。

 ただ、遊んでいる方にはコアな方もいて、韓国版や台湾版をプレイなさっていて、曲を増やしてほしいというご意見をいただいています。いい意味で盛り上がっているという実感もあります。そのファンに対してガマニアとしてどうサポートしていこうか考えています。正直我々も手探り状態のところもありまして、様子をうかがいながらやっています。

 「巨商伝」の時もそうだったんですが、新しいゲームを展開するときに、やり始めたときと途中で考え方が変わってくる場合もありますので、スタートダッシュをかけるのではなくて、クオリティーを上げてから大きくサービスを展開したいですね。

編: キャラクタのギターや服などをアバターとしてアイテム販売するのですか?

浅井氏: アバターのアイテムはゲーム内のポイントで売買するものと、GASHによる販売も行なっていこうと思います。このサービスを始めるのは正式サービスと同時にしたいですね。ゲームもずいぶん安定してきましたし、なるべく早い段階で曲を増やして正式サービスに切り替えたいですね。

編: 他の国では正式サービスがすでに開始されているのでしょうか? 

浅井氏: 韓国では曲のバラ売りからセット売り、定額の月額課金や新曲のみが遊べる課金など非常に多彩な課金モデルをとっています。台湾に関しては基本的に定額課金です。日本のユーザーさんにはよりゲームが盛り上がる形で、考えています。

編: 「O2JAM」で、「エターナルカオス」や「エバークエスト」などのガマニアのコンテンツのBGMを曲として提供する予定はありますか?

浅井氏: 「エバークエスト」曲で「O2JAM」にあうかはわかりませんが、自社開発の「ココカン」を入れています。他のゲームでの曲はまだ具体的には進んでいませんね。いろいろな曲を取り入れていきたいとは思っています。

編: 日本オリジナルの曲に関してはどんなものを予定しているんですか? ユーザーさんが作った曲を使うということなどもあるのでしょうか。

浅井氏: 知名度のある作曲家など、プロの方に依頼をしています。ユーザーさんからも募集も検討しています。その中から優秀な曲やおもしろい曲をどんどん取り入れていければと思っています。まず権利の管理をクリアできて、曲としていいだけではなく、譜面としておもしろい曲であれば、ジャンルを問わず取り入れていきたいと思っています。「O2JAM」でゲームの曲に興味を持つ、といった展開もおもしろいでしょうね。

編: 正式サービスはいつ頃になるでしょうか。

浅井氏: そうですね、可能であればゴールデンウィーク頃、夏前にはしていきたいと思っています。

編: サーバーはどのくらいになるんでしょうか?

浅井氏: 1つのサーバーで2,000人くらい、それを3つ揃えています。大規模なMMORPGと違って1回のプレイ時間が短くサーバーを圧迫しないので今後はどんどん快適にプレイしていただけるようになると思います。8人で対戦をできる音楽ゲームというのは今までにないゲームだと思いますので、今後どんどん充実させてアピールしていきたいですね。


■「ココカン」、「仙魔道」など今後のタイトルの予定は?

編: 「ココカン」は正式サービスに移行する予定はあるのですか?

浅井氏: 台湾ではアイテム課金制のサービスを行なっています。まだ発表はしていませんが、日本でも近々バージョンアップをしてリニューアルをして正式サービスにしていきたいと思っています。夏までにはそうなる予定です。基本プレイは無料、アイテム課金になります。

編: 正式サービスまでここまで時間がかかったのはどうしてなのでしょうか?

浅井氏: グループ内のことなので話しづらい部分はあるのですが、日本向けのカスタマイズが思ったようにいかない部分がありまして。日本で通用するクオリティーになった時点でサービスを開始したいなと考えていたら、時間がかかってしまいました。

編: 外から見ていると止まってしまっていたように見えますね。

浅井氏: 例えて言えば階段を途中で休んでいました。台湾も含めたところで、「EQII 東方版」や「仙魔道」などの去年一年の開発をいろいろ考えていたために、リソースの問題などで「ココカン」の開発が止まってしまっていたことがありまして。去年の年末から動き始めまして、正式サービスに向けてバージョンアップを行なっています。

編: 現在「ココカン」のユーザーはどのくらいでしょうか?

浅井氏: 登録ベースで2万に届かないくらいです。さまざまなところをリニューアルしてサービスを充実していきたいですね。「ポトリスタイプ」と言っていいのかな?(笑)のゲームとしては、そこそこ遊べると思うんですよ。キャラクタなども日本のユーザーさんになじめると思います。再始動という動きに近いですね。これでユーザーさんが増えていただければと思っています。

 「O2JAM」もそうですが、短期間で遊べるゲームとして楽しんでいただけると思っています。今後こういったカジュアルゲームにも力を入れていこうと思っています。特に韓国や台湾ではMMOはある程度飽和状態で、その中でビッグタイトルをごり押ししていくのはリスクが高くなってきていまして、カジュアルゲームでユーザーのすそ野を広げるという方向に動いてきているんです。

 日本のマーケットはまだ飽和状態ではないですけれども、実は私は日本のマーケットってMMORPGに向いてないんじゃないかと。RPGという意味ではなじめる部分はあると思うんですが、1日5~10時間プレイして、それを何日も続けるというプレイスタイルは、今の日本のマーケット、エンタテイメントとして遊びとして捉えたときに重すぎるのではないかと思っているんですよね。大手のメーカーが大規模なMMORPGを展開していくという動きもありますし、うちとしてはカジュアルゲームに力を入れていこうかなと。

編: カジュアルゲームですと、今までの成功例は韓国の「ポトリス」と「クレイジーアーケード」くらいしかないんじゃないかと思うんですが、小さいゲームを出していってそれでビジネスとして成功するのかな、という疑問があるのですが。

浅井氏: 台湾では「O2jam」、「パンヤ」、「ゲットアンプド」などのカジュアルゲーム、さらには「メイプルストーリー」、「巨商伝」もある意味ライトなゲームとして運営していまして、その経験の上から判断しています。無料で手軽にゲームを遊んでもらいながら、より深く遊んでもらうためにアイテム課金制をとっています。

編: 最後に2005年のガマニアについて教えてください。

浅井氏: まず「エバークエスト」のDirectX 9の対応と、拡張パックを導入して、しっかりと運営してユーザーさんの信頼を回復していきたいです。「巨商伝」、「エターナルカオス」はもっとより手軽にプレイをしていただけるための環境を整えたいですね。「エターナルカオス」はアイテム課金制を導入したことで、バランスが変わり新しい遊び方が可能になったと思います。大幅なバージョンアップも夏頃に予定していますので、ぜひ期待してください。

 「O2JAM」はガマニアとして新しいチャレンジだととらえています。オンラインの音楽ゲームということで、MMORPGをプレイしていた人も、初めてオンラインゲームをプレイする人にも遊んでもらいたいタイトルですね。「ココカン」も化けますよ。手軽に手にとって遊んでいただければと。今年の後半からは新規タイトルで、面白い動きを見せていきます。

編: 最後の最後に確認しておきたいのですが、「EQII 東方版」の日本展開は期待していいのでしょうか?

浅井氏: あくまで私の脳内で、ということで(笑)。今現在、具体的に何か話が進んでいるということはまったくないです。ただ、日本のユーザーさんが期待していただいているという声も届いていますので、何らかの形で提供したいと、そういう気持ちは持っています。

編: ありがとうございました。

□ガマニアのホームページ
http://www.gamania.co.jp/
□関連情報
【2月26日】Gamania CEO Albert Liu氏インタビュー
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(2005年3月31日)

[Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]


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