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「弦楽四重奏によるドラゴンクエストコンサート」開催 |
会場:津田ホール
スギヤマ工房の主催によるコンサート「弦楽四重奏によるドラゴンクエストコンサート」が、10月18日に津田ホールにて開催された。このコンサートの開演前に報道陣が招かれ、すぎやまこういち氏への取材の時間が設けられた。
多弁なことでも知られるすぎやま氏だが、今回はコンサートの話題だけでなく、プレイステーション 2用「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」の発売が近いこともあり、ゲームの話もたっぷりと伺うことができた。
時折冗談も交えながら、ゆったりとした口調で1時間近くも話し続けたすぎやま氏 |
「マティアス・ムジクム・カルテット」による公演は今回で3回目となるが、すぎやま氏は「やればやるほどこなれてくる。麗しくなっていく」と繰り返し強調。今後もコンサートを続けていきたいという姿勢を示した上で、その内容については、「ほぼ同じ内容で繰り返すと思う」という。「マティアス・ムジクム・カルテット」に対して、「まだまだよくなる」という期待を持っているようだ。
また具体的なスケジュールまでは決まっていないが、「マティアス・ムジクム・カルテット」でのCDを出したいとも語っていた。
11月27日に発売が予定されている「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」だが、このコンサートの当日が、ちょうどマスターアップの段階だという。「いつもは発売が延びるから、おかげで『しめた、ゆっくり作れる』なんてものだったけれど、今回は延びないんだよね」とキツイ冗談も飛ばしながら、音楽だけでなく、ゲームの内容にも触れる話が聞けた。
音楽のチェックを兼ねてプレイしたというすぎやま氏は、3Dフィールドで歩き回るという大変化を遂げた同作について、「最初は操作で『アレ?』と思ったが、5分ぐらいで慣れた。楽しく遊べる」と感想を述べた。
ゲームでの音楽については、「PS2の内蔵音源ではベストのものができたと自負している」とし、続けて内蔵音源によるサントラCDをSUGIレーベルから発売すると発表した。「従来は内蔵音源のCDはあくまで資料であり、観賞用としてはオーケストラ、というイメージだったが、今回は観賞用というコンセプトで発売する。それだけのものができたということ」と、PS2による音楽製作にかなり満足している様子を伺わせた。このCDは12月22日、3,045円で発売される。
作曲のコンセプトとしては、PS2というプラットフォームに移った今作でも、「従来から変えていない。画面はアニメのような映像に変わっているが、曲を聴けば『ああ、ドラゴンクエストだ』と思える曲ができたと思う」という。その中でもお気に入りの曲として上げられたのが、村で使用される曲。「シンプルで美しい曲作りは難しい。その点では村の音楽はよくできた。バイエルの50番ぐらいまでやった人ならピアノで弾ける程度。CDのブックレットにもこの曲のピアノ符を載せる」とかなりの自信作のようだ。
現時点で決定している事項として、まずコンサートの予定が明らかにされた。東京都交響楽団による「ドラゴンクエストV」のコンサートが、来年1月9日に東京文化会館大ホールにて開かれる。また8月からは「ドラゴンクエストVIII」の全曲をオーケストラで演奏するコンサートを開始。8月12日には東京芸術劇場大ホール(東京都交響楽団)、8月20日は愛知県芸術劇場コンサートホール(セントラル愛知交響楽団)、そして9月25日には札幌コンサートホールkitara(東京都交響楽団)で開催予定となっている。札幌でのコンサートは、これが初めての試みになるという。なお、8月からのコンサートについては、まだチケットは発売されていない。
またオーケストラでの収録による音楽CDが、来年から「II」、「III」、「IV」と順次発売される。収録は既に終わっているということなので、発売日の発表を待つばかりといったところだ。
すぎやま氏への取材の後、メインイベントの「マティアス・ムジクム・カルテット」による弦楽四重奏のコンサートが開演となった。筆者は「ドラゴンクエスト」の楽曲は、子供の頃からCDを集めるほどの大ファンだが、コンサートを鑑賞するのは恥ずかしながら今回が初めて。さしたる音楽知識もない身で内容を語るのはおこがましいとは思うが、あえて「コンサート初心者」としての視点で感想をお話ししたい。
コンサートは2部構成で、第1部が「IV」から「VII」まで、第2部が「I」から「III」までと楽曲が分けられている。まず演奏されたのは、「IV」のゲーム開始画面でも流れる間奏曲。最初から弦をはじく楽曲で、いわゆる「弦楽器の音」を期待して身構えていた筆者は、いきなり面食らってしまった。
その後の楽曲では、もちろん普通に弓で弾くものも聞けた。1つの楽器で切れ目なく音が続いていくので、オーケストラで感じる強いインパクトはない代わりに、どんな曲でもなめらかな印象を受けた。オーケストラでは会場全体を包み込むような一体感が味わえるが、弦楽四重奏では、壇上から奏でられる音楽に吸い寄せられるような感覚がある。これがすぎやま氏のいう「違う顔」や「優雅さ」なのかもしれない。
取材時には、「『VIII』の開発陣も数人はコンサートにやってくるはず。気持ちよく居眠りに来てください。ただしいびきはダメよ、と伝えた」と笑い話をしてくれたすぎやま氏。実際の演奏は確かにゆったりとしたものが多かったが、目を閉じて聴くだけではもったいない。さまざまな奏法で音楽を奏でる「マティアス・ムジクム・カルテット」の面々は、目で見ているとより楽しめる。第1ヴァイオリンの斎藤真知亜氏が、ヴァイオリンをウクレレのように構えて指で鳴らすシーンなど、生のコンサートだからこそ楽しめる「見所」がいくつもあった。
演奏の合間にはすぎやま氏も舞台に上がり、取材時にも聞かれた話題を会場のファンに披露。「今日はお話係長。いつもはオーケストラの指揮をしながらで次が気になってしょうがないが、今日はとっても楽」と笑いを取りながら、「シンセサイザーでの音楽で一番どうにもならないのが、この弦楽四重奏だと思う」と、生の音楽のよさを語っていた。
この「マティアス・ムジクム・カルテット」による弦楽四重奏コンサートは、先程のすぎやま氏の話にあったとおり、今後も大きく内容を変えることなく続けられるという。筆者としてはこのコンサートは、ファミコン版の「I」からプレイしているの長年のファンに特にオススメしたい。弦楽四重奏という4つの楽器で奏でられる音楽は、ファミコン用として少ないパートで作られたサウンドに、実にマッチしているように感じられた。第2部で流れる「I」から「III」の楽曲には、きっと涙が出るほど感動できるだろう。
【演奏プログラム】
■第1部
・勇者の仲間たちより(IV)
間奏曲~戦士はひとり往く~おてんば姫の行進~間奏曲
武器商人トルネコ変奏曲
ジプシー・ダンス~ジプシーの旅
・のどかな家並(VII)
・木洩れ日の中で~ハッピーハミング~ぬくもりの里に~木洩れ日の中で(VI)
・のどかな熱気球のたび(IV)
・失われた世界~足どりも軽やかに(VII)
・哀愁物語(V)
・血路を開け(VII)
■第2部
・序曲(I)
・Love Song 探して(II)
・王宮のロンド(III)
・遥かなる旅路~広野を行く~果てしなき世界(II)
・世界をまわる(III)
街~ジパング~ピラミッド~村
・鎮魂歌~ほこら(III)
・戦闘のテーマ~アレフガルドにて~勇者の挑戦(III)
・そして伝説へ(III)
・アンコール曲 王宮のメヌエット(IV)
□すぎやまこういち氏オフィシャルページ「すぎやまこういちの世界」のページ
http://sugimania.com/
□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.co.jp/
□「ドラゴンクエスト」のページ
http://www.square-enix.co.jp/dragonquest/
□関連情報
【5月26日】すぎやまこういち氏、「SUGIレーベル」発足
リリース第1弾は「交響組曲ドラゴンクエストV 天空の花嫁」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040526/sugi.htm
「ドラゴンクエストVIII」記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/backno/news/dqlink.htm
(2004年10月19日)
[Reported by 石田賀津男]
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