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World Cyber Games 2004現地レポート

World Cyber Games 2004閉幕
総合優勝はオランダ、2位の韓国は最多メダル獲得で意地を見せる

会期:10月6日~10日(現地時間)

会場:Bill Graham Civic Auditorium

 米国サンフランシスコで開催されていた世界最大規模のコンピュータゲームの世界大会World Cyber Games 2004が、現地時間の10月10日、全日程を終え、初の海外開催となった第4回大会の幕を閉じた。本稿では第4回大会の感想をふまえつつ、WCG 2004の熱戦の模様をお伝えしていく。


■ バランスの取れた公平性の高い名実共に世界最大規模のゲーム大会に

CSの次に高い注目を集めた「Warcraft III: The Frozen Throne」決勝。手前が韓国のWelComeTo選手、奥がオランダのGrubby選手。試合は2:1でオランダのGrubby選手が勝利した
実況解説を行なうRadio iTGのスタッフ。ゲームの知識だけでなく、画面を動かしながら解説するという特殊なテクニックも必要。なかなか難しい仕事だ
上部に見える大型モニタで試合を観戦し、実況解説は手元の携帯ラジオで聞く。スマートなe-sports観戦スタイルだ
 WCG第4回大会は、公式種目が過去最高の8種目となった一方で、国別団体戦がなくなり、メダル数も12個から8個へ減少し、日程も前大会の7日から5日に絞られるなど、都合5回の開催を通じて初めて運営のスリム化が図られた大会となった。

 国別団体戦がなくなったことで、韓国の「StarCraft」プロ軍団のように、複数のプロゲーマーの存在が獲得メダル数に与える影響は小さくなり、その一方でメダル1つの重みは増すという全体の均衡が図られた大会ともなった。

 競技種目で見ても、昨年はRTS3種目(「Warcraft III: Reign of Chaos」、「StarCraft: Brood War」、「Age of Mythology」)、FPS3種目(「Unreal Tournament 2003」、「Counter-Strike」、「Halo」)、SPORTS1種目(FIFA Soccer 2003)と、市場シェアを無視した不均衡な選定だったのに対し、今年はRTS2種目(「Warcraft III: Frozen Throne」、「StarCraft: Brood War」)、FPS3種目(「Unreal Tournament 2004」、「Counter-Strike: Condition Zero」、「Halo」)、SPORTS3種目(「FIFA Soccer 2004」、「Need For Speed: Underground」、「Project Gotham Racing 2」)とバランスの取れた選定となった。

 SPORTS種目が2種目も増えているのは、同ジャンルの人気が高い米国での開催だからということもあるのだろうが、大会運営が多くのプロゲーマーを抱えるSAMSUNGから第3者機関であるICM(International Cyber Marketing)に名実共に委ねられた証拠だろう。いずれにしても、これらのドラスティックな変更は、WCGの未来にとって明るい材料であることは間違いない。

 なお、大会運営は韓国SAMSUNGがWCGのために設立したICMが担当していたが、審判や実況は北米のスタッフを採用し、会場アナウンスや試合の実況はすべて英語で行なわれた。WCGは開催当初から世界規模の国際大会だが、大会運営をすべて英語で行なったのは今回が初めてだ。

 実況解説は、米国を拠点にCPLを初めとした数々のe-Sports大会の実況を担当してきた実績を持つe-Sports実況集団「Radio iTG」が担当。各タイトルにつき2名の担当が付き、注目度の高いカードを中心に代わる代わる実況解説を行なった。

 実況の受信は、ラジオのFM放送もしくはインターネットのストリーミング放送を通じて行なわれ、大型パネルで映像を見ながら、携帯ラジオ(会場入り口に5ドルでロゴ入りラジオを販売)で実況を聞くというスタイル。

 昨年まではFPSこそ英語の解説を行なっていたが、RTSはハングルのみで、しかも実況している先は我々観客ではなくTVカメラという問題外の状況だったのに比べると格段の進化だ。加えて、試合会場と観客席を物理的に隔離したことで、「Counter-Strike: Condition Zero」ではライブ放送も可能になった。WCG第4回大会は、従来の大会に比べあらゆる点で運営スタイルの進化が感じられる大会だった。

【「Warcraft III: The Frozen Throne」決勝】
珍しいオーク同士の対決となった「Warcraft III: The Frozen Throne」決勝。韓国のWelComeTo選手は、超高速の手の動きが特徴的だった。手のブレ具合で彼の手の動きの速さがわかるだろう。一方、オランダのGrubby選手は、1セットを取られてから2、3セット目を連取して優勝を決めた。手の動きはごく一般的なプレーヤーのスピード、スタイルだった


■ 結果を残したオランダ、総合力の韓国、声援を力に変えた米国

初の総合優勝となったオランダ。各ジャンルにまんべんなく優秀なプレーヤーがいるのが強みだろう
優勝インタビューを受ける「StarCraft」金メダリストのxellos_kr選手。「StarCraft」は韓国勢対決ということもあり会場の盛り上がりは今ひとつだったが、各国が精鋭を送り込む中、4年連続の金は見事
4位が確定し、閉会式を待つドイツ代表。今年もほとんどの選手が予選リーグを突破したが、決勝トーナメントでは「FIFA Soccer 2004」、「Unreal Tournament」などを落とすなど、メダルに届かない試合が多かった
 さて、実際の試合展開は、大会前の下馬評通り、ホスト国であり初のホーム試合として絶大な地の利を得る米国、前大会の覇者ドイツを筆頭としたヨーロッパ勢、そしてWCG発祥国であるプロゲーマー大国韓国の三つどもえの展開となった。

 8つの金は、米国、ドイツ、韓国、オランダの4カ国に集中し、最終日を終えてみれば、3つの金を獲得したオランダが初の総合優勝の栄冠を手にした。しかも、「Unreal Tournament 2004」と「Warcraft III: The Frozen Throne」という個人戦の最激戦区(UT:73名、WC3:98名)を制しての堂々の優勝。過去のWCGでは毎回いいところまでいきつつ結果を残せなかったが、4大会目にして初めてe-sports大国であることを実証した。

 2年連続2位となった韓国は、4種目を終えた9日目時点で「Need For Speed: Underground」の銀のみと出遅れ、オランダ、米国、ドイツに続く第4番手に位置づけていたが、最終日の10日に決勝が行なわれた4種目すべてにおいてメダルを獲得し、最終日を大いに湧かせてくれた。

 最終的な成績は、金メダル確実とされた「Warcraft III: The Frozen Throne」決勝でまさかの敗北を喫し、金2銀3銅1と、1位のオランダの金3銅1にわずかに及ばなかったが、獲得メダル数ではぶっちぎりの1位で、プロスポーツ大国としての意地を見せた。

 金の内容は、「StarCraft: Brood War」と「FIFA Soccer 2004」で、「StarCraft」は前人未踏の4年連続で、「FIFA」は昨年金銀を独占したドイツを下しての2年ぶりの受賞。また、こちらは銅メダルながら、これまで欧米がメダルを独占してきたFPS部門において、「Counter-Strike: Condition Zero」の3位入賞は見事。しかも、昨年のWCGのCS部門覇者であり、CPL等でも常勝軍団として知られるプロゲーマー集団のSKを下してを3位入賞は、アジア勢を大いに勇気づけた。

 米国は、サンフランシスコ開催ということもあり、最多の24名の代表を送り込んだが、1次リーグで同国対決が発生するなどのくじ運の悪さもあり、最終成績は金2、銅1に留まった。内容は、「Halo」と「Counter-Strike: Condition Zero」のFPS2部門を制し、FPS大国としての面目を保った。

 金と銅を獲得した「Halo」は、グループCに優勝候補が集中するという事実上の決勝リーグとなった。結果は、3勝1敗が3人並び、得失点差で1位で予選を通過したカナダのJunior_ca選手が銀、2位で予選通過したZyos選手が金、そして予選リーグでZyos選手に勝ったにもかかわらず得失点差で3位となったProxa選手は予選落ちとなった。

 「Halo」は代表選手21名という他の種目に比べ小規模のトーナメントだったが、米国勢が終始トーナメントを引っ張り、今年2月にMicrosoftが主催した大会よりもレベルの高い戦いが繰り広げられた。予選リーグで北米の4選手がうまく分散していればメダル独占もあり得たと思わせる内容だった。

【「FIFA Soccer 2004」決勝】
「FIFA Soccer 2004」だけは、Electronic Artsの意向でトリを飾る大勝負として、閉会式の直前にメインステージにて行なわれた。韓国Volcano選手はフランス、ブラジルg3xcarrico選手はブラジルを使用。試合内容は、Volcano選手による一方的な展開となった


■ 最激戦区のCS部門を制したのは米国代表Team 3D、世界ランク1位のSKは無冠に

優勝インタビューを受けるTeam 3Dのメンバー。中央にいる巨漢がエースのひとりであるronald kim選手。スナイプ担当ながら1人になってからの超人的な粘りは何度も会場に大歓声を巻き起こした
Team 3Dに続いて韓国代表MaveNにも破れ、寂しくPCを片づけるSKのメンバー。勝負の厳しさを実感させる風景だ
最終日に行なわれたTeam 3Dとデンマーク代表Titansの決勝では、実に3人の実況解説が付いた
 WCG第4回大会で特筆すべきなのが、来場者たちの期待を一身に背負い、その期待に見事応えた「Counter-Strike: Condition Zero」部門におけるTeam 3Dの優勝だろう。「Counter-Strike」は、2001年の第1回大会から現在に至るまで正式種目として名を連ねている種目のひとつで、国別団体戦がなくなった第4回大会では唯一の団体競技として、今回も56カ国、総勢280名が出場する花形競技となっている。

 米国代表のTeam 3Dは、NVIDIA(ビデオカード)、COMPAQ(PC)、SENNHEIZER(ヘッドセット)、SUBWAY(ファストフード)など、大手メーカーがスポンサーとして名を連ねる米国最大級のプロクラン。昨年は決勝でスウェーデン代表のSKに敗れ、準優勝に終わったが、今年は米国での開催だけに必勝が期待された。

 Team 3Dは、予選リーグをまったく危なげのない試合展開で1位突破を果たし、ベスト16でフィンランドのastralis、ベスト8で予選で日本代表の4DNを下したシンガポールのGBRを13:2、13:6というワンサイドゲームで下して見事ベスト4入りを果たした。

 準決勝の対戦相手は、因縁の相手であるスウェーデン代表のSK。両クランはともにプロクランとして絶大な知名度を誇るが、3Dは米国、SKはヨーロッパの大会を中心に活躍しているため、なかなか対戦する機会がない。「Counter-Strike」を中心としたFPSの世界大会であるCPLでは、3Dがトーナメント途中で破れて対戦しておらず、SKとの対決は実にWCG 2003以来となる。

 準決勝は、欧米を代表するプロクラン同士が対決する屈指の好カードであるだけでなく、昨年の決勝戦の再現ともあって、多くの観客が駆けつけた。同時刻には「Unreal Tournament 2004」や「Project Gotham Racing 2」の決勝などが行なわれていたのだが、観客たちはHLTVによるライブ映像と実況解説が視聴できるLarkin Hallに集中。改めてCSの人気の高さと、プロクランの存在感の大きさを実感させた。

 試合前の下馬評では7:3でSKの勝利という予想だったが、1ゲーム目は、Counter Terrorist(CT)側有利のマップ「De_Train」で、3DがCT側だったにも関わらず、2:11で落とすというその予想通りの結果となった。しかし、その後の2、3ゲームを連続して勝利し、決勝進出を決めた。

 特に印象に残っているのは、1ゲーム目の第6ラウンド。テロリスト側のSKが残りひとりの状態で爆弾を設置し、スナイパーライフルの照準を爆弾設置ポイントに置いて待ちの作戦に出る。CT側の3Dは爆弾を解除しないと負けになるため、残りの2人で爆弾設置ポイントに向かうが、1人目はSK側の策にはまって狙撃されてしまう。2人目はSK側の作戦を察知して、スナイパーの潜伏地点を見切ってこれを撃破。後は爆弾を解除すれば3Dの勝ちとなるが、わずかに時間切れで爆弾が爆発。結局このラウンドはSKの逆転勝利となった。まさに手に汗握る展開である。

 試合の詳しい内容はCSトーナメントレポートに譲るが、3D対SKの試合でつくづく実感したのが、「Counter-Strike」のプロゲームスポーツとしての完成度の高さだ。これは、任意の選手の視点とマップ全体を俯瞰してメンバー全員の動きを観察できるHLTV(Half-life TV)の存在が大きいが、それ以外にもコンマ数秒のワンチャンスをものにするスナイパーの活躍や、敵の動きを読んで連続キルをものにするアサルトライフル/サブマシンガンの活躍といった個人技や、手足のように自在な動きで勝利をものにする見事なチームプレイ、そしてCT側、テロリスト側、資金の有無などによってダイナミックに変わってくるチーム戦術などなど、非常に見応えがある。

 最終日に行なわれた決勝戦では、前日以上に集まった観客の応援に後押しされて、デンマークのTitansに対して1ゲーム目を13:4で取り、2ゲーム目は延長戦をしのぎにしのいで、2ゲームを連取して優勝を決めた。CSは、日本代表の敗北やSKの連敗などを見てもわかるようにメンタル面が大きく左右されるゲームのようだが、3Dの母国開催での優勝は見事。新たな伝説のスタートと言っても過言ではないだろう。

【Team 3D vs SK Gaming】
事実上の決勝戦として注目を集めた「Counter-Strike: Condition Zero」準決勝の模様。SKが下馬評通り2ゲーム連取で一気に勝負を決めると思わせたが、Team 3Dが見事な逆転勝利を収めた

【「Counter-Strike: Condition Zero」決勝】
本大会中もっとも多くの来場者を集めたCSCZ決勝。Team 3Dの優勝インタビューでは、世界各国のプレスに加え、テレビカメラも複数台集まった

【授賞式】
閉会式では、8種目すべての競技に対して授賞式が執り行なわれた。賞金総額は、最高額は「Counter-Strike: Condition Zero」の5万ドル。個人種目最高は2万5,000ドル。中心選手層が10代後半から20代前半であることを考えるとかなりの高額だ

【閉会式】
メダル授与式後は、引き続き閉会式が行なわれた。WCGの旗がサンフランシスコからシンガポールへ渡され、最後に花火が打ち上げられ閉幕となった

【Farewell Party】
閉会式終了後はWCGお馴染みのFarewell Partyが行なわれた。下段の写真は、日本の4DNのエースENZA選手と、見事3位入賞を果たした韓国MaveNの選手達が雑談している模様。アジア勢としては初のメダル獲得だけに誇らしげだった。日本もぜひとも頑張ってもらいたいところだ

□World Cyber Games 2004のホームページ
http://www.worldcybergames.com/
□World Cyber Games 2004日本公式サイトのホームページ
http://www.worldcybergames.jp/2004/
□関連情報
【10月19日】「World Cyber Games 2003」閉幕
上位入賞が軒並み入れ替わった第3回大会、総合優勝はドイツ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031019/wcg_02.htm

(2004年10月12日)

[Reported by 中村聖司]


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