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Wolrd Cyber Games 2004現地リポート

「WCG2004 Game Conferance」が開催
Bill Roperほか、有名ゲーム制作者が続々登場

会期:10月6日~10日(現地時間)

会場:Bill Graham Civic Auditorium

 アメリカはカリフォルニア州のサンフランシスコで開かれている世界規模のゲーム大会「World Cyber Games 2004」も各ゲームの予選リーグが開催され、会場は一気にヒートアップし始めた。今回、そんな会場の横でこっそりと開催されていたのが「WCG2004 Game Conferance」、世界中からWCG2004をのぞきに来るメディアやゲーム開発者向けの後援会だ。朝の9時30分から始まり、夕方18時までキーノートスピーチと5つの講演を行なうという長丁場のカンファレンスとなった。本稿ではその中から興味深い内容をピックアップしてお伝えしようと思う。


■「ゲームとネットワーク市場は今まで以上に加速する」
マルチプラットフォームでリアルタイムにゲームを遊ぶために必要なことを語ったキーノートスピーチ

David Jones氏
 今回のGame Conferance、開会一発目のキーノートスピーチは、「レミングス」シリーズや「GTA(Grand Theft Auto)」シリーズを手がけたDavid Jones氏が登場。近年、PCはもちろんのこと、インタラクティブTV、3Dグラフィックスチップを搭載の携帯電話までを含んだ「ネットワーク接続可能デバイス」の普及により、新しいマルチプラットフォームの可能性に対して言及していた。

 氏はこれまでのWCGを例に取り、2001年のWCGは「オンラインPCゲームとコンソール機のオンライン戦略の未来」、2002年は「オンライン対戦という概念が普及し、独り立ちの時期を迎えた」、2003年は「マルチ対戦環境を備えたゲームの増加」をふまえ、2004年は「リアルタイムに接続可能なゲームがマルチプラットフォームへと普及する」とコメント。考えられる媒体として、最大のインストールベースになりえる可能性のあるインタラクティブTVと、3Dグラフィックス技術を搭載した次世代携帯電話をゲームプラットフォームとして挙げた。それ以外にもブラウザベースのゲーム、ソニー・コンピュータエンタテインメントやMicrosoftが発売を予定している次世代機が、オンラインゲームのプラットフォームとして増加していき、今から4年後になる2008年には数にして合計約30億台ものプラットフォームでのネットワーク接続が行なわれるようになると予想をしていた。

 インタラクティブTVやブラウザベースのゲームは別としても、今後次世代コンシューマゲーム機、PCがオンラインゲームのプラットフォームとしてこれまで以上に普及してくるのは当然の方向性だ。そして、「自宅以外でもゲームを遊ばせる」ためのデバイスとして3Dグラフィックスチップを搭載した携帯電話が、補完的にネットワークへ接続可能なゲームプラットフォームとして普及するのは十分に考えられることだ。例えば、MMORPGを通常は家で楽しみ、オークションやアイテム整理といった戦闘以外の部分に関しては職場や学校から携帯電話で接続する、というゲームライフスタイルが予想できる。現在NVIDIAやATIが携帯電話向けの3Dグラフィックスチップを相次いで発表しているが、消費電力の激しさから即採用というレベルまでには至っていない。これから燃料電池を初めとしたパワーユニット面での問題を解決する必要がありそうだ。


■「ティーンエイジャー以外の層へ向けたゲーム制作、マーケティングが必要」
Bill Roper氏が語るゲーム制作論

Bill Roper氏
 David Jones氏のキーノートが終わり講演のトップバッターとなったのはBill Roper氏。氏は今回のWCGでも種目になっている「Warcraft III」や「Starcraft」をはじめ、「Diablo」などPCゲームユーザーなら誰もが知っているタイトルの開発に携わっている。米Bllizardを退社後、自らの会社Flagship Studioを立ち上げてから初めて公の場に姿を現わして講演を行なうということで、その内容に注目が集まった。「近年、ゲームというものを1つの重要な経済市場として世界が認めてきている」という言葉を皮切りに講演はスタート。

 「もはや、ゲームはティーンエイジャーだけのものではない。アメリカのゲームプレーヤーの平均年齢は29歳、女性は26%に及ぶ。プレーヤーの層にクリエイターも対応しなければならない」、「ゲームはプレーヤーが操作するのを受け身でいるだけではなく、プレーヤーとインタラクティブでなければならない」と語った氏は、クリエイター側がプレーヤーを改めて見つめ直し、クリエイターは世界を作ってプレーヤーを遊ばせるだけでなく、クリエイター側から積極的にプレーヤーに働きかけるべきだとの考えを述べた。これは、現在日本メーカーが日本のプレーヤーに対して心がけていることと重なる部分が多く、「クリエイターが作りたい物を作る」という感覚が色濃く残っていた米国のゲーム制作に一石を投じるコメントといえるだろう。

 また、今後におけるゲームの主な動向としては、GPSテクノロジー、そしてボイスチャットテクノロジーとの融合が注目だと語った。また、近年Amazon、Paypal等の成功を例にあげ、ユーザーがオンラインでクレジットカードを使ったショッピングに抵抗を感じなくなってきていると話し、パッケージとしての販売に限らず、今後は、Valveが開発したSteamを初めとした、ネットワーク経由でダイレクトにゲームソフトが提供されていくだろうと語った。さらに話はマーケティング手法にも伸び、ハリウッドならば映画を原作としたゲームの制作、音楽業界ならばElectornic Artsが「Need for Speed UnderGround」で行なったような「ゲーム内での音楽プロモーション」なども活用していくべきだとコメント。2008年には334億ドル(約3兆5000億円)までの発展が予想される、ゲーム市場をどのように進んでいくのかに対し、一定の方向性を示した言えるだろう。


■「コンソール機で初めて成功したRTSはピクミンだ!」
Tim Train氏が語るコンソール機におけるRTSの現状とは

Tim Train氏
 Bill Roper氏に続き登場したのは、これまたRTS畑から登場したTim Train氏。氏はSid Meier氏などと組んで「Civiraizationシリーズ」や「Alpha Centauri」の制作に携わり、Big Huge Gamesに移籍してからは「Rise of Nations」の開発に携わっている筋金入りのRTSクリエイターだ。今回の氏の講演テーマは「家庭用ゲーム機におけるリアルタイム・ストラテジーゲーム」。いかに家庭用ゲーム機でリアルタイム・ストラテジーゲームを作れば良いのか、彼自身の経験から今後のRTSの必要性が語られた。

 まず氏は「StarCraft 64」、「Command & Conquer ports」、「Army Men RTS」、「Alien vs. Predator」といった、これまでにコンソール機でリリースされたRTSタイトルをあげ、これらのタイトルがいまいち成功しなかった理由を説明した。RTSは基本的に「動かしたいキャラをドラッグで選択し、行動内容と目標を指定する」という形でゲームが進んでいくが、キャラ選択を十字キーやスティックでポインターを動かす時点でゲームシステムとして破綻していると説明。またテレビでは解像度が低いため大量のキャラをいっぺんに表示させると、どれがどのキャラだか判別が難しくなるなどPCモニタの方法論で画面構成をするのも失敗の原因とした。また、対戦を行なう場合、画面を縦に分割しても横に分割しても表示可能なゲーム内領域が狭まり、ゲーム進行を阻害する。こういった事例から、コンソール機でRTSを遊ぶことは困難と考えたそうだ。

 そんな状況に一端の解決策を提示したのがニンテンドーゲームキューブの「ピクミン」シリーズだ。ピクミンではユニットの種類を極限まで減少させ、加えてユニットに赤や青といった単色の色分けをすることで、解像度の低いテレビ画面でも判別を可能とし、ボタンと方向キーの組み合わせによってユニットの直接選択を可能にしたのだ。また、氏は今までにおけるRTSは、最初に資源を集め、次に建物を建て、ユニットを生産し、最後に敵を攻撃するという長いプロセスを通過しなければいけないという部分を問題点として指摘した。FPSの様な誰でも気軽にいつでもゲームを始められ、楽しめ、そしていつでも終了できる、といった要素が今後のRTSに必要であるという事を語った。ちなみにこの部分に関しては、別記事でお届けする予定の「Empire EarthII」が“クイックスタートモード”という形で、気楽に始められるRTSを実現しているようだ。

 現状PC用にゲームシステムが構築されたRTSをそのままの形でコンソール機に移植してしまうと、どうしても良い結果にならないことが多いのは確かだ。しかし、今回の講演で「ピクミン」というコンソール機におけるRTSの方向性を提示したことで、今後コンソールでRTSを楽しむチャンスが増えるのかもしれない。


■日本市場での成功のキーはいったい何か?
北米・ヨーロッパ市場と日本市場の特性の違いとは?

Norman Cheuk氏
 さて、その後も講演は進んでいったのだが、やはりもっとも興味深かったのは最後のトリを飾る講演だろう。この講演を担当したのはMicrosoft Game Studio JapanのNorman Cheuk氏。氏は約1年前に日本へ異動し、日本ゲーム市場を研究に携わってきた。今回はその研究結果の発表というわけだ。

 氏はまず「日本市場は北米・ヨーロッパ市場に比べるととても特殊な市場」とばっさり。海外に比べてRPG、それもコンソール機市場がいまだに日本市場では強いことを指摘した。しかし、ここ最近では各種MMORPGを多くのユーザーがPCで遊んでいることを紹介、その引き金となったのが「ファイナルファンタジー XI」であることを指摘した。氏によれば、FFXIはFFというコンソール機のRPGからの延長であり、その下地があったからこそコンソールでゲームを遊ぶ層が、抵抗感無くPCでゲームを遊ぶことへ移行することができたとコメントした。

 話は変わって氏は、これからの日本市場に関して近年100Mbpの回線が普及し、ブロードバンド化が日本では進んでいる。ゲームにはファンタジーベースのゲームとリアリズムベースのゲームの二種類に大別することができるが、日本人はファンタジーベースの物を好むと説明。その理由として、アニメーション文化の影響が強いと解説した。

 また日本ではMMORPGが普及しているが、プレーヤーは自分だけのレアアイテムをほしがる傾向が強くあるので、日本市場を狙ったゲームを作る上では今後そういうレアアイテム(プレミアムコンテンツ)を作ることが重要であるとも説明した。そして、日本市場での成功のキーは「緻密な世界観の設定」、「感情移入ができる深いストーリー」、「キャラクターの造形」この3つが、日本人好みに調整されている必要があると結論づけた。そして、その3点の前提があった上で、作られるゲームはある程度簡単である必要と、やりこめる要素が要求されるのだとコメントし、講演を終了した。


 World Cyber Gamesという「ゲームを遊ぶ人」の為の祭典で行なわれたゲームカンファレンスあったため、E3や東京ゲームショウで行なわれるカンファレンスに比べると参加人数は少ない印象があったのは事実だ。しかし、World Cyber Games初の海外実施ということで、講演を行なうメンバーもかなり充実してきた印象がある。来年以降、どういったメンツによってカンファレンスが行なわれるのかが大いに期待したい。

□World Cyber Games 2004のホームページ
http://www.worldcybergames.com/
□World Cyber Games 2004日本公式サイトのホームページ
http://www.worldcybergames.jp/2004/
□関連情報
【10月9日】World Cyber Games 2004がサンフランシスコにて開催
WCG史上初の海外大会は多目的ゲームイベントに成長
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041009/wcg04_01.htm

(2004年10月10日)

[Reported by Tyokuta@ukeru.jp]


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