|
「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」インタビュー |
会場:幕張メッセ
今年の12月23日より正式サービスを開始することが決定したMMORPG、「スター・ウォーズ ギャラクシーズ(以下、SWG) 完全日本語版」。発売まで既に3カ月を切っているが、現状としては未だクローズドβテストすら始まっていない段階である。また東京ゲームショウ2004においても、出展されたのは英語版のデモのみという状態。
ここで普通に考えれば、本当に開発が間に合うのか半信半疑になってしまう。しかし、これまで7年間に渡って「Ultima Online」の運営に携わってきたエレクトロニック・アーツが言うのだから、その底には確かな自信があるのだろう。その辺りの事情も含め、北米より来日したLucas ArtsのJulio Torres氏、Sony Online EntertainmentのJason Ryan氏、そして日本語版プロデューサーの河辺正純氏の3人に話を伺ってきた。
右が開発プロデューサーのJulio Torres氏、左がイベントマネージャーのJason Ryan氏。両者とも快活な応対が印象的だった |
Julio Torres氏 僕はLucas Artsに所属するJulio Torres。「SWG」の開発プロデューサーとして、ゲームデザインや企画関連を担当している。「SWG」には他タイトルにはない大きな特徴として、既に“スター・ウォーズ”という世界が確立されている。その世界観を保ちながら、いかにしてゲームシステム開発するかという所が難しく、そしてやり甲斐を感じているよ。
Jason Ryan氏 私はJason Ryan。Sony Online Entertainmentでイベントマネージャーを担当している。ロールプレイやPvP面のユーザーサポート、他にもキャラクタ同士が結婚する際の牧師役等、ゲーム内のサポート全体を総括している。
編 今回「SWG」を日本市場向けにローカライズを行なうに至った、その経緯について教えてください。
Jason Ryan氏 前々から日本には、スター・ウォーズのファンが沢山いることを知っていた。それとは別に、日本は世界に誇るゲーム大国というイメージが我々にある。だから「SWG」はきっと日本でも受けると思っているんだ。「SWG」が英語以外の言語へローカライズされるのは今回初めてなのだけど、これを決めるときの会議も、「あぁ、日本でやるの? やろうやろう」と意見がすんなり通ったのが印象的だったな。
Julio Torres氏 それと、エレクトロニック・アーツ(以下、EA)側からの働きかけもあったよね。
編 日本語版へのローカライズは、EA側とSOE側との、どちらからのアプローチによるプロジェクトなのでしょう?
Julio Torres氏 どちらからってわけじゃないんだけど、「SWG」を世界に広めていこうという気持ちは、お互いに持っていた。それに、今までPCやコンソール機で、Lucas ArtsのタイトルをEAからずっと出してきて、パイプも既にあった。
編 他言語版へのローカライズが初ということで、開発上特に注意している点はありますか? またサーバーのログイン可能範囲や2バイト文字の表示等、日本語版の基本仕様についてもお聞かせください。
河辺氏 日本語ローカライズ版のプロデューサーを担当している、エレクトロニック・アーツ・ジャパンの河辺です。我々はこれまで、「Ultima Online」を初めとする多数のPCタイトルをローカライズした実績とノウハウがあります。「SWG 日本語版」に関して、技術的な問題は今のところまったくありません。
サーバーに関しては、日本国内に専用のものを3基設置することが決定しています。勿論、GMサポートやイベントの類も日本人が行ないます。そしてもうひとつ、どの言語バージョンの「SWG」でも、総ての国のサーバーへログインすることが可能です。でないと、真の意味でワールドワイド展開とは言えませんからね。
編 その辺りは「Ultima Online」とまったく同じ形式ですね。やはりこの形式がもっとも理想的なのでしょうか?
河辺氏 はい。やはり日本人の場合は英語に対し、どうしても嫌悪感というか苦手意識があります。なので「SWG 日本語版」を運営するにあたり、国内に専用サーバーを設置することにしました。ゲーム外のテクニカルサポートには特に自信があり、電話でもサポートを受け付ける予定です。
全世界のプレーヤーが好きな国のサーバーに接続できる点ですが、GMサポートの言語が設置した場所に準ずるため、大きな混乱は生じないと見ています。「Ultima Online」日本サーバーの例を挙げるまでもなく、外国人だらけになってゲームにならないよ、ということはないので安心してください。
編 現在のローカライズ進行状況について具体的に教えてください。
河辺氏 「SWG」の英単語は全部で200万ワード近くあるのですが、これは一般的なタイトルの20本分以上と非常に多い。更に「SWG」の場合はスター・ウォーズの公式用語というのがあって、これに準拠しつつ翻訳する点に苦心しています。なので求められるローカライズの品質もかなり高いのですが、我々も“スター・ウォーズのためなら死ねる”というスタッフを多数揃えて頑張っています(笑)。作業量的には、ようやく50%を超えたといった所ですね。
編 翻訳の範囲については、いったいどこまでが対象としているのでしょうか?
河辺氏 これについては完全に決まっており、モンスターやNPC等の生物に関しては、アルファベットのままです。それ以外のアイテム名等の固有名詞は、総て翻訳します。
編 音声による会話は吹き替えを行ないますか?
河辺氏 はい、行ないます。ですが「SWG」の場合は喋る場面って意外と少ないんですよ。例えばチュートリアルや、宇宙船に乗った際の案内くらいですね。
編 単純な翻訳以外の面で、日本市場向けに「SWG」の仕様を変える可能性はありますか?
河辺氏 私の中で構想はいくつかあります。ですが、最初はゲームプレーヤーの立場に立ち、なるべく早い時点で遊んでもらうことを重視します。さきほど申し上げた最低限のローカライズを施した段階で、ひとまず稼働させるつもりです。ですが、それで立ち止まるつもりは全くありません。この点については色々な構想があって、これからSOEさんを大いに困らせようかと思っています(笑)。
編 いまお話できる範囲では具体的にどのようなプランがあるのでしょう? 例えばスクウェア・エニックスより発売予定の「EverQuest II 日本語版」は、日本市場向けにコントローラ操作なども視野に入れているようですが。
河辺氏 まだ表に出せる段階のものはないですね。私は、日本のユーザーは世界でもっとも厳しい目を持っていて、要求するレベルも高いと思っています。よって、「SWG 日本語版」が単なるローカライズのみで成功するとは考えていません。この点は発売後の展開に注目して下さい。
編 「SWG」の英語版プレーヤーが、日本語版へと移行しやすいようなキャンペーンは行ないますか?
河辺氏 既に各種メディア等でも紹介してもらっていますが、英語版プレーヤーに対しては、日本語版のClosedβテストの優先権を与えています。もうひとつ、弊社の“EAストア”にて、「SWG 日本語版」を割安で買えるような優遇措置も設けます。スター・ウォーズのファンはとても熱心で、中には英語が苦手なのに一生懸命辞書を引きながらプレイする人達がいることも、重々承知しております。彼等には是非とも「SWG 日本語版」を続けてもらいたいし、そういった人達へ向けての感謝の気持ちも込めています。
中央はEAJオンライン事業部プロデューサーの河辺 正純氏 |
Jason Ryan氏 うーん、あまり対抗意識は感じていないかな。というのも「SWG」は、他のMMORPGとゲームのタイプが全然違うと思うんだ。例えば北米で「SWG」が発売された時も、「EverQuest」からプレーヤーがどっと移動はしなかった。今後「EverQuest II」がリリースされても、「SWG」からプレーヤーが大幅に減ることはないだろう。
編 なるほど。想定している主なプレーヤー層について気になったのですが、MMORPGのファンとスター・ウォーズのファン、この両者の割合についてはどう考えているのでしょうか?
Jason Ryan氏 それは両方だよ(笑)。でも我々が特に気を付けているのは、ベテランプレーヤーでもカジュアルプレーヤーでも、どのタイプのプレーヤー層でも居場所があるようにすることだ。例えば現在開発中の、「SWG」拡張版「Jump to Lightspeed(以下、JtL)」は、アクションゲームが実装されており、これはMMORPGの初心者でも簡単にプレイできる。特定のスタイルでしか遊べない、という風にしないことを意識している。
河辺氏 「JtL」では、プレーヤーが戦闘機等に乗って宇宙へと飛び出すことが可能で、フライトシューティングの要素を最大の醍醐味としています。よって、MMOは遊ばないけど飛行機やシューティングが好き、というプレーヤーにも積極的にアピールします。過去に「X-Wing vs TIE Fighter」というタイトルがありましたが、あれがアップグレードして、「SWG」に丸々取り込まれているような感じですね。
編 話を聞いていると、一般的なMMORPGと比べてかなり間口が広い印象を受けますね。
河辺氏 これからの「SWG」は、MMORPGだけでなくスター・ウォーズのファン、そしてシューティングゲームのファンの3つの層にアピールしていくでしょう。
編 「JtL」の後も、「SWG」の拡張パックは発売されてゆくと思います。今後の「SWG」の方向性としては、ユーザー層を広げることに重点を置くのでしょうか? それとも、キャラクタのレベル上限を拡張といった、成長方面に重点を置くのでしょうか?
Julio Torres氏 今のところ、まだ「JtL」の次の拡張パックの方向性は決まっていない。でも個人的には、「SWG」のユーザー層の間口を広げることを意識していきたい。もちろん魅力的なアイテムや種族・職業を増やしたりといった内容も考えている。でも「SWG」の場合はそれだけじゃなく、例えばスター・ウォーズの映画を見ただけの人や、ライトユーザー層をもっと開拓していきたいのだ。
編 ということは、「SWG」のゲームジャンルは単なる“MMORPG”ではなくなりつつあると?
河辺氏 見方によっては、「JtL」でシューティング要素が入った時点でそうなりますね(笑)。もちろんパッケージにはMMORPGという文字が入りますが、自分ではちょっと違うかな、という状態に入りつつあります。じゃあ、それを的確に表す言葉は何か? と聞かれるとなかなか思い浮かばない。
Julio Torres氏 「SWG」は他のMMORPGよりも、常に一歩先を進んでいたい。「SWG」というのがひとつのジャンルであることが目標といえるかな。
編 最終的に「SWG」が目指すものは、スター・ウォーズのファンが集まる、一種のテーマパークのようなものなのでしょうか?
河辺氏 既にスター・ウォーズのファンになっている人以外にも積極的にアピールしていきますよ。例えばテレビでスター・ウォーズの映画を見たけど、登場人物の名前まではわからないな、という人もいますよね。彼等のようなスター・ウォーズの初心者でもプレイしやすいように、ぐっと敷居を下げていきます。
「SWG」のプレーヤー層は当たり前だけどスター・ウォーズのファンが多い。しかしそれだけをターゲットにはしてはいません。Lucas Artsがどう考えているかわかりませんが、EAJとしてはテーマパーク的な雰囲気を大切にしたいですね。
編 米国での「SWG」ファンの熱気は凄いです。例えば冒頭のファンファーレが鳴ったり、ヨーダが登場するだけでも、狂喜乱舞ともいえる盛り上がりを見せています。彼等と日本のファンとの性質の違いについては、どう受け止めていますか?
Julio Torres氏 うん。米国のファンは、ああやって率直に表に出す人が多いね。でも日本のファンに熱気がないのかというと、全然そんなことはない。我々としては、彼等から伝わってくる“脈”を大切にしていきたい。各国のファンの鼓動を感じ取って、彼等がいったい何を求めているのか、常に気にしているよ。「SWG」の場合、それが国毎にサーバーやサポート体制等に特色が出てくる。そういった面で個性が出てくるのは、とても良いことだと思う。
編 話を聞いて、正に「Ultima Online」が過去に日本で行なってきたことを思い出しました。
河辺氏 「SWG 日本語版」では日本の文化に会わせた、しかもスター・ウォーズの世界観からは逸脱しないイベントを予定しています。期待していて下さい。
Julio Torres氏 どこの国でのローカライズでも言えることだけど、ただ単に翻訳するだけではダメだと思う。それぞれの国によって、例えばチュートリアルを強化してほしかったり、数多くのライブイベントに参加したいという違いがあるだろう。そういったユーザーの声を拾い集め、しっかりと反映させてゆくことが大切だね。
編 Julio氏は個人的に、今後出てくる「EverQuest II」や「World of Warcraft」についてどのような評価をしていますか?
Julio Torres氏 僕はこれまで「EverQuest」を、3年間にわたって廃人プレイを続けていた(笑)。それで「EverQuest II」なんだけど、今はノームやオーガといった普遍的なファンタジーの要素には、それほど魅力を感じていないんだ。でもゲームシステム面では素晴らしい点が多く、商業的にも成功すると思ってるよ。
「World of Warcraft」に関しても同様で、ファンタジー的な要素にはあまり引きつけられない。実際にプレイした感触だと、インターフェイス部分が凄いと思ったかな。初心者へ向けて、ありとあらゆる面の敷居が低く作られている点は評価できるね。
競合タイトルの話が出たけど、ちょっと誤解されたくないのでしっかり言っておきたい。一般的にMMORPG市場というのは一定の大きさのパイがあって、それを各タイトルで必死に取り合っているかのような言い方をされる。でも、実際はそうではないと僕は思うんだ。MMOの人口はインフラ整備等によって、今もなおどんどん増えている。競合タイトルとパイを取り合ったり、残っている部分を探すというより、「SWG」としてはもっと市場を広げていこうよ! という姿勢なんだ。
Jason Ryan氏 過去に「EverQuest」がリリースされたときも、「Ultima Online」とお互いに市場を食い合うだけだという意見があった。でも結局それは起こらず、市場は拡大してきている。今は多数のMMORPGがあるけど、彼等との競争意識はあまり持っていない。既存のMMO市場からユーザーを獲得するのではなく、視野を広げてもっといろんな所から集めてくればいいじゃないか、という考え方だね。
編 世間一般では、「SWG」のジャンルはMMORPGだと認知されています。ですが話を聞いていると、少なからずのギャップを感じてしまいますね。
Julio Torres氏 「SWG」が、MMORPGというジャンルに括られることについては、全然やぶさかではない。あくまでもベースはMMOだからね。でも、確かに単なるMMO“RPG”と言うには、特別な味付けがされている。そういった意味では、MMORPGの中ではちょっと特別な存在になりたいと思っているかな。
編 MMORPGというジャンル名から、長時間のレベル上げが必要といったネガティブなイメージを受ける人は実際にいます。シューティング等の幅広い要素を内包する「SWG」が、“MMORPG”という呼称で伝えられることで、新規ユーザーを獲得するチャンスを逃してしまう可能性についてはどう思いますか?
Jason Ryan氏 あくまでも「SWG」のベースシステムはMMORPGだし、そういった面での不安はないよ。
河辺氏 なるほど、MMORPGのプレイには拘束力がありすぎて、その点にうんざりしているユーザーさんも確かにいますね。「SWG 日本語版」の場合はそんなヘヴィなことをしなくても、誰でも宇宙へ行けて遊べるじゃん、という敷居の低さをアピールしていこうと思います。少なくとも「SWG」は、毎日3時間プレイしないと楽しめないような類のゲームではありません(笑)。
Julio Torres氏 「SWG」を、毎日40時間プレイしないとレベルが上がらないとか(笑)そういったゲームにしたくないんだ。つい先日、「JtL」のテストプレイを新規キャラクタで行なったときの話をしよう。帝国軍なり反乱軍なりを選んで、リクルーターの場所へ行くと、もうその場でいきなり宇宙船をもらえるんだ。もちろん最初だからビギナー用の宇宙船だけど、パイロットになるためにレベルやスキルといった特別な条件はない。
我々としては、楽しさを出し惜しみするつもりはないんだ。極端な話ゲームを開始して30分以内で、「SWG」の主な醍醐味を一通り経験してもらえたらと思っている。
編 それはライトユーザーにとってとても有り難いですね。
Julio Torres氏 「SWG」は今後も進化していくけど、ゲームの中身に関しては現状ある程度満足している。これからは、どうやってその中身を伝えていくか、アピールの仕方を変えていこうと思っている。「MMORPGの中でも、『SWG』ってちょっと違うらしいよ? インストールさえすればすぐに遊べるアクションゲームもあるんだよ?」ここをどうやって伝えていくか、だね。
編 もし「SWG」が日本で成功するとしたら、最大の鍵はこの部分にあるのではと私は思います。
河辺氏 まったくその通りですね。
Jason Ryan氏 私は仕事用とは別に、プライベートでも「SWG」を遊んでいる。でも実際には週に数時間程度しか遊べなく、どちらかというとカジュアルユーザー層に含まれるだろう。一方、周りの友達は思いっきりのめりこんでる人が多い。それでも、たまにお互いに時間が合って一緒に遊ぶときは、まったく違和感がないんだ。
一般的なMMORPGでは、ベテランとビギナーとの間でキャラクタレベルに差が付くと、一緒にプレイできないことが多い。でも「SWG」にはそれがないんだ。それだけでなく双方にメリットがあって、ここが「SWG」の一番いい所だと思う。
編 最後に、日本のファンへ向けて一言お願いします
Julio Torres氏、Jason Ryan氏 「SWG」はほんと楽しいです。是非とも気軽に遊びに来てください。
河辺氏 「SWG」ファンから見てがっかりしない翻訳を心がけますので期待してください。
編 今日はありがとうございました。
東京ゲームショウ2004での模様。今回は英語版の動画のみの出展だったが、スター・ウォーズには圧倒的な知名度という強みがある。この点をどうやって活かしていくかが今後注目される |
(2004年9月29日)
[Reported by 川崎政一郎]
GAME Watchホームページ |
|