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★PS2ゲームレビュー★

ラクガキもよし、ワルガキに変身しても良し
「ラクガキ王国2 魔王城の戦い」

  • ジャンル:ラクガキ変身アクション
  • 発売元:株式会社タイトー
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(9月22日)



  平面に描いた線が立体のキャラクタとなる、「ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国」の続編。前回はラクガキ同士をコマンドバトルで戦わせたが、今回はラクガキをプレーヤーが操作して敵を倒したり、ギミックを解いて地形を越えていくアクションゲームになっている。また、前作はまず“ラクガキありき”というゲームシステムであったのに対して、今作は敵となるワルガキの姿かたち、そして能力をコレクションできる“キャプチャー”によってワルガキにもなれてしまう。どうやら“ワルガキを参考にして、ラクガキを作ってもらいたい”ということのようだ。

 舞台設定も前作とはガラリと変わって、「ガラクタ市場」から「魔王城」となった。主人公は、やんちゃ盛りの「ピクセル王子」。ひょんなことからピクセル王子が目覚めさせてしまった魔王によって、お城は魔王城と化してしまう。何やら事情を知っていそうな「ハコイヌ」を背負って、お城を元に戻すためのピクセル王子の冒険が始まる。




■ 「ラクガキの杖」でいろんなワルガキに変身し放題

 主人公のピクセル王子は人間で、敵のワルガキに直接、攻撃することはできない。その代わり、ワルガキに近づいて「ラクガキの杖」を振ること=キャプチャーすることはできる。キャプチャーすると、その場で王子はワルガキに変身し、その能力を使って戦うことができる。「ラクガキの杖」は使用回数に制限があり(ノートモニュメントで回復する)、制限時間で変身が解けて元の王子の姿に戻ってしまうが、初めて訪れる場所を楽に進むための方法がわからない場合でも、そこにいるワルガキに変身すれば簡単に解法が見つかったりする。

 例えば、高いジャンプ力が必要な地形のある場所で(一応近くにジャンプ台も用意されていたりするのだが)、その付近にはワルガキがぴょんぴょん跳ね回っていたりする。そいつに杖を振って変身すれば、そのステージの地形を簡単に越えていけるのだ。

大きな池のそばに氷属性の技を持つ敵がいて、この敵をキャプチャーして属性攻撃で戦闘していると、池に氷が張っていることに気付くだろう。これを渡っていけば、難しい飛び石を渡らずに池を渡っていける、といった具合だ

 ワルガキを倒すとカードを落とすことがあり、これを拾えば時間や回数の制限なくそのワルガキに変身することが可能となる。そのためには、杖の形をしたノートモニュメント(セーブポイント)で方向キーの左、上、右にそれぞれカードをセットしておく必要がある。自分で描いたラクガキも、カードとしてセーブされるので、それもセットすることでいつでも変身できるようになる。これで、近くに変身できるワルガキがいない場所でも、方向キーで3つのラクガキを使い分けて進んでいけるというわけだ。

 方向キーの下を入力すれば、変身を解除してピクセル王子に戻れる。キャプチャーしたいワルガキが出てきたら、ピクセル王子に戻って「ラクガキの杖」を使えばいい。

セーブポイントでは、ライフや「ラクガキの杖」の使用回数を回復するだけでなく、ラクガキを描いたり、技を設定したり、変身できるよう方向キーに割り当てたり、集めたワルガキカードを確認することができる


 「ラクガキの杖」は、ワルガキに変身するだけでなく、変身と同時にそのワルガキ固有の能力を使うことができ、その能力をコレクションできる。例えば、まだ持っていない氷属性の「うでワザ」であるアッパーを持つ敵に変身したとすると、次のセーブポイントから、ほかのワルガキカードや自分のラクガキに、氷属性のアッパーをエディットできるようになる。つまり新種のワルガキに変身していくことで、攻撃のバリエーションが増えていくのだ。技はたくさん用意されていて、プレーヤーはとりあえず敵に変身することで初めての技をお手軽に試用することができる。

 技の中には炎属性、氷属性、雷属性など、属性を備えたものがある。ステージによっては属性攻撃することでスイッチを入れる仕掛けもあるので、コレクションした能力は、まんべんなくラクガキに割り振ってセットしておくといいだろう。

左から炎、氷、雷属性の技を使用しているところ。属性攻撃で相手に攻撃し続けると、何度かに1回、特殊効果を発動する。炎属性では体に炎が燃え移り、数秒の間操作不能となる(水に入ればすぐ消える)。氷属性は凍り付いて数秒間動けなくなり、雷属性はしびれて少しの間動きがにぶくなる
属性攻撃によってスイッチが入る仕掛けがあるので、属性はまんべんなくワザに割り振っておきたい。炎属性で攻撃するとスイッチが入ってワルガキが降ってきた ある程度ゲームを進めると、これまでクリアした部屋の扉が1個所につながったホールに出る。ワルガキカードの拾い忘れがあれば、探しにいける ワルガキカード集めは、コンプリート欲を刺激する。すでにカードを持っているワルガキに近づくと名前の付近にカードが表示されるので、これでカードの有無を判断できる


 どんどん敵に変身して技を(言い方は悪いが)巻き上げていくのは、病みつきになる楽しさがある。ワルガキに変身して、操作感覚を確かめながら、「これは強い」だの「これはイマイチ」だのと戦っていくことが、あとで自分のラクガキを描く上でヒントになり、少なからず役に立つ。

 ゲーム中、落書きを強要されるようなことが一切ないため、最初はアクションゲームとしてどんどん先へ進む楽しさにとりつかれ、ラクガキをせずに遊んでいた。ある程度進んだときに、ふと、「そうだ、ラクガキしてないじゃん!」と思ってラクガキを開始したのだが、結果、それはそれで良かったように思う。

 というのも、敵を倒していく中で、コイン(経験値)を集めてレベルアップすることでピクセル王子が強くなっていくほか、レベルアップによってラクガキのパーツの役割が増えていく。例えば、最初は「あたま」や「しっぽ」などのパーツは描けないが、ある程度ゲームを進めていれば、そういったパーツやラクガキツールのコマンドが使える状態になっているというわけだ。

 それに、パーツに割り振れるワザも、前述の通りワルガキからキャプチャーすることで増えていくため、筆者の場合はゲームを先に進めた分、たくさんのワルガキから様々な技をキャプチャーしていた。おかげで、ラクガキしてみようと描き始めた際、すでに迷うほどパーツの役割やワザが集まっていて、ラクガキ作業はあれこれ選べて迷い苦しみながらも、とても楽しいものになったのだ。


■ ある時ふと気づく、マイキャラを自分で作れるラクガキツールの楽しさ

 前作では「カラー石」をたくさん使ってラクガキの線を多く引くことで、強いラクガキが作れた。今作では、例えば足のパーツを作った場合、足の形や大きさ、太さ、長さ、本数などによって、移動スピードや歩幅、ジャンプ力、滞空時間などさまざまな能力に影響が出る。

 というところで、スレンダーに描いたら力が弱かったとか、デザイン的に描きたい形があるけれど、実用性を考えるとこの形にするべきか、といった悩みが出てくる。ラクガキ初心者の人は、その辺を心配されるかもしれないが、いきなりイチからすべてを作る必要はないのだ。まずは集めたワルガキカードをラクガキ帳で開いて、そのパーツを変えたり付け加えたり、といったところから始めるのがオススメ。ワルガキを見ていて創作意欲に火がついたら、新規にラクガキを作ってみるといいだろう。

 先へ進みたい気持ちが強くてラクガキを忘れていたが、やり始めたら前作に比べて作りたい形に近いものが簡単に作れるようになっていて、めちゃくちゃ面白い。例えば直線を引くときも、前作では手描きでゆっくりスティックを倒して引いたが、今作はポイントを指定するとその間を直線で結んでくれるので、簡単に直線が引ける。さらに、パーツを1つ描き上げるごとに、それをどんな風に立体化するのか6つのタイプから選べる。これは、パーツの形状は能力に影響するとあって、一度決めた後でもう一度選び直すこともできる。パーツのコピー/ペーストや反転コピーなどもでき、3Dモデルを作るための本当にごくごく簡単な子供向けアプリケーションといった作りになっている。

線を描いてパーツを作ったら、どんな風に立体化するか選択。最初のパーツは絶対「からだ」になるが、次からパーツの役割を選択する
ワルガキを見てみるといろいろ参考になる。これは煙の部分を半透明で表現してある。パーツの半透明化は、ゲームを進めていく中でカラーパレットにカスタムモードが追加され、そこで設定できる 好きな技を設定する。□ボタンは連続攻撃ができ、成長に伴ってコンボ回数が増えていく


 また前作のラクガキは、クレヨンで引いたようなぼやっとした輪郭線が特徴だったが、今回は主線がない。丸いものはツルっとした感じで、角のあるものはくっきりと角が出るので、以前のスケッチが立体化したような何とも言えない質感とは異なる。より直線的なラクガキが描きやすくなった感じで、ワルガキにもメカや細かいパーツをつけたものが多い。

 また、前作では、使用できる色に制限があったところが一番むずがゆい思いをしたのだが、今作は「このパーツはこの色にしたい」と思えば、自由に色を使える。一旦なにがしかの色で描いたパーツを選択してパレットの色を選べば、後から制限なく簡単に色を変えられるので、好みの色の組み合わせを見つけるため、あれこれ色をチェンジするのも楽。

 描いたパーツには、役割を設定できる。絶対必要なからだのほか、うでやあし、あたまなどを中心に、ゲームを進めることでどんどんパーツの数が充実していく。パーツは、技のエディットに関係してくる。

 ワザのエディットは、◯△□×のボタンに好きなワザを割り当て、ボタンで攻撃する。「からだワザ」ならボディプレスなど体全体を使った技、「うでワザ」ならパンチなど腕を使った技、「いどうワザ」はジャンプやダッシュなど移動に関する技といった感じだ。パンチやキックなどの技は、繰り出す方向を左右どちら側にするかまで細かく設定でき、回転技なら回転方向まで設定できる細かさ。成長によってコンボ攻撃の数も増えていく。

 そして、ラクガキの動きのタイプを選べるのが面白い。とことこ歩く感じ、ワイルドにガバッと踏み出して歩く感じ、ふわふわした感じなど、これが違うだけで同じラクガキでも雰囲気がガラリと変わって見える。また、ラクガキが発する声も多数のタイプから選べる。可愛らしい感じのワルガキに獣みたいな声を当てたり、ゴツいラクガキにヒロインっぽい声を当てる、といったことがついやりたくなる。

ワルガキの中でも気に入って使っている「ツインホーク」。万能タイプで足も長いし蹴りが強く、使い勝手が良い ビジュアル重視の「ハートさん」。足が細すぎたのか、変な動きをする。汗が回転するのがチャームポイント 実用性重視で腕を巨大に描いた「やけくそくん」。腕力は高い。だがなぜか両手を上げて内股で歩くので女性っぽい


 ちなみにラクガキがイマイチ思ったように立体化されない、理想通りの動きをしないといった場合、ワルガキが素晴らしいお手本になる。ちゃんと関節が曲がらないときなどは、ワルガキカードが平面にどんな形状で描かれているのか確認すれば参考になる。

 こういった感じで、筆者の中でワルガキカード集めは、単に戦闘要員としての収集ではなく、途中から「あいつの正体、見たいなぁ」というふうに変わっていった。実際、ワルガキカードをラクガキ帳で開くことで、パーツの役割を見て「こんな使い方をしてるんだ」と感心したり、じゃあこんなことができないか、といろいろアレンジしたり試してみたくなる。ちなみに、ワルガキをエディットした場合、カードホルダーから選択し直せばオリジナルに戻るし、自分の作った改良版もセーブして残しておける。

 実際、どんな形状のラクガキでも、技のセッティングでわりとフォローできてしまう。全く戦えないラクガキというようなものには(意図して作れば別かもしれないが)ならないように思われるので、心配せずに思う存分ラクガキすればいい。3つのラクガキをセットできるという点で、弱いけれどデザインが気に入っているラクガキで道中を進み、ここぞというときには実用的ラクガキにお出まし願う、ということもできる。


■ ステージの醸し出す趣と、ワルガキ・ラクガキが存在することの妙味

 前作も、「ガラクタ市場」という街の雰囲気が好きで、“ペンジェル”で視点をぐるぐる回しながら、散歩するだけでも楽しかった。しかしあの市場にラクガキが登場して戦うのではなく、戦闘フィールドは別に分かれていたが、本作では不思議な城の中をラクガキがどんどん進んで冒険する。

 宇宙空間に浮かんだ半切りの星を、水金地火木……といくつも渡っていって戦うステージや、ホットケーキの階段を上っていくお菓子の地形、海底の洞窟を思わせるような不思議なステージ、ボーリング場のレーンの上を、車輪のついたワルガキに変身して疾走するステージ、ピンボールの盤面で巨大ボールに追いかけられるシチュエーションなど、どれもこれも印象的だ。どこか学芸会の舞台セットのような雰囲気でもあり、作りたてホヤホヤで、まだ誰も入ったことのないテーマパークに迷い込んだような気分を味わせてくれるので、是非堪能してほしいところ。そして舞台をデコレーションする、変てこなワルガキ、可愛いワルガキが、これでもかと言わんばかりにどんどん出てきて飽きさせない。

 そういった舞台に、自分の描いたラクガキで乗り込むのも独特の楽しさがある。絵面的にはまっているならそれはそれでいいし、奇天烈なら、その落差を楽しめる。




 ぶっちゃけ、ラクガキをするもしないもプレーヤーの自由だ。アクションゲームとしてクリアを目指す上で、ラクガキが必ずしも上手く描けなければ先に進めない、というものではない。

 ステージを何度も行ったり来たりして、ワルガキカードを収集する楽しみ方もある。また、技を集めてワルガキを強くすることに執心して遊ぶ方法もあるだろう。ラクガキを描くのは、思い立ったらやってみるという感じでも良いのではないかと思う。もちろん凝り性の人がラクガキ作りにはまったら、この1作に費やす時間はどれだけあっても足りることはないだろう。

 個人的には、アクションゲームを進める中で敵をキャプチャーして変身するという要素に1番の面白みを感じる。もちろんラクガキで自分のキャラを作り出せるのはとても面白い。ただ、ゲームを進めるという本筋とは重なっているけれど、それを突き詰めていくのはちょっと違う楽しみ方という感じがする。

 でも、キャラを操作して動かすという参加の仕方以上に、ゲーム内に自分の描いたラクガキがキャラとして存在するというのは、ゲームの世界に参加している感覚をより感じさせてくれる。ラクガキしたい人、子供とラクガキしたい親御さんはもちろん、変わり種の3Dアクションゲームを求めている人にも、普通にアクションゲームとしてオススメしたい1作だ。

(C)TAITO CORP.2001,2004

□タイトーのホームページ
http://www.taito.co.jp/
□「ラクガキ王国2 魔王城の戦い」のページ
http://www.garakuta-studio.com/
□関連情報
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タイトー、PS2「ラクガキ王国2 魔王城の戦い」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040814/rak.htm
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今度はラクガキに“変身”?!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040409/rak.htm

(2004年9月22日)

[Reported by 河本茉澄]


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