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★PCゲームレビュー★
■架空の世界を舞台にした、“海”の戦い
ゲームの操作性は初心者プレーヤーでもすんなりと楽しめるカジュアルなもの。それでいながら特に兵器データはこだわりを感じさせるほどに細かく、シミュレーションファンも唸らせる。「軽さ」と「重厚さ」を併せ持つ独特の味のあるゲームで、シリーズのファンを獲得している作品である。 今作は1931年、日本では満州事変が起こる年、世界が第2次大戦へと進んでいくその時代に新たな金属「レアメタル」が発見され、各国がその金属の使用法に注目、実用化を果たしたという現実の世界とは分岐した架空の世界が舞台となる。レアメタルによりもたらされる新機関は人々に豊かな生活を実現させるかに見えたが、各国はその技術により「超兵器」を建造。世界は「連合軍」と「枢軸軍」に分かれて、大戦を勃発させてしまう。 プレーヤーは独立国の海軍を率いて、連合、枢軸軍と戦っていく。艦隊を操作して、さまざまなミッションに挑戦することになる。船はカーソルキーによるラジコンのような直感的でわかりやすい操作方法を採用。攻撃はほとんどが自動で、マウスによって任意の対象に攻撃するという手軽なシステムになっている。「アクションゲーム」と銘打っているが、ゲームに不慣れな人も、強い船で任務に望めば安心というゲームバランスだ。 筆者はこのシリーズに触れるのは初めてだったが、間口の広いアクションゲームでありながら、兵器に対するスタッフの深いこだわりと、それでいながら船をハリネズミのように砲台だらけにできるそのケレン味にニヤリとさせられた。「戦争」をテーマに、実在の兵器を扱ったゲームは多数登場しているが、そのほとんどがシミュレーションで、さまざまなコマンドを覚えたり、補給の概念などリアルな代わりにちょっと取っつきにくいゲームが多い。その中で、カジュアルさをもつこの作品は一味違った魅力を主張している。 史実の戦いに詳しいマニアから、「架空戦記」好きの人、さらには「宇宙戦艦ヤマト」から連綿と続く、「船に乗ったクルー達が過酷な戦場を切り抜けていく」といったアニメ風のドラマを好きな人も楽しめる作品である。 ■自由に艦をカスタマイズして、熾烈な戦いに挑め! プレーヤーは、最大4隻の軍艦を率いて戦いに挑む。最初はちょっと頼りない駆逐艦でのスタートとなるが、功績を積み、資金を得ることで自由な編成、そして思うがままに設計した艦船で戦いを楽しめるようになる。 挑戦するミッションも多彩なものが用意されており、敵空母の探索から港施設の破壊、潜水艦の掃討、輸送船の撃沈、さらには敵の超兵器を相手にする場合もある。戦う時刻も朝、昼、夕刻、そして深夜と変わる。マップもバラエティー豊かで、変化に富んでいる。それでいて、1マップあたりの戦闘時間は10分ほどで、捜索が中心のマップは敵が見つけられないと、くたびれてしまうが、ほとんどは心地よい緊張感で戦っていける。 ミッションに合わせて船を“小改造”していく感覚も楽しい。深夜のミッションには暗闇を照らす「探照灯」が必要となり、潜水艦を相手にするには機雷が有効となる。開発費をつぎ込んでいくことで次々と新しい装備や船が使用可能になるため、機関や電装部品をマイナーチェンジさせたり、資金を貯めて最新鋭の船を“旗艦”にしたりと、だんだんと「自分なりの艦隊」を作り出すことができるようになっていく。 「自分なりの戦艦を造る」というのが本作の大きな魅力。ベースとなる船体に、艦橋や煙突を取り付け、大砲を積んでいくその作業は非常に楽しい。しかし重量制限や、スピードなどの兼ね合いもあって、自由度が高いだけに最初はちょっと取っつきにくい点もある。実用的な船を一から造るのは、最初は少し難しいだろう。初心者は「完成艦」を購入して、これに改造をくわえていくのがオススメだ。主砲をより強力なものにしたり、ところかまわず、重量が許す限り機銃を積んだりと、かなり「オモチャ」的な感覚も強く、童心を刺激する楽しさがある。 筆者は対空装備に特化させ、たくさん機銃を積んだ船と、それとは対になるように機雷を多く装備した対潜水艦用の船を用意して、艦隊全体であらゆる敵に対応できるように造っていった。初期の駆逐艦は搭載できる兵器も少ないため、弱点を補い合うこの方法は有効だろう。もちろん、バランスは人それぞれ。ひとつの船であらゆる対象に向けた兵器を装備するも良し、反対に一種類の装備に特化したテーマをはっきり出した船で艦隊を組むのもカッコイイ。試行錯誤も、本作の楽しみ方のひとつだ。 実在の戦艦に詳しい人は、「史実」にこだわってみる、といった方法でも楽しめる。知識さえあれば、手に入るパーツを組み合わせて、かつての戦艦達を蘇らせ戦うこともできるのだ。自由に船を造って、架空の名前を付けるよりも、一段深い思い入れをこめることができるのではないだろうか。 4つの船を自由にカスタマイズできるというのが今作ならではの大きな魅力。技術が向上し、今まで旗艦として使っていた船より強力な艦船を造船できるようになった場合、以前の船は「有用な2番艦」として活躍することになる。世代交代の感覚は、より一層艦隊に愛着をもたらす。ゲームの序盤を過ぎたあたりからは、戦いと共に、「艦隊の育成」にも大きくハマってしまうはずだ。 本作で設計・カスタマイズできるのは戦艦だけでない。空母や潜水艦、さらに航空機まで設計が可能なのだ。これらの船や装備の運用は戦艦とまた違った感触を与えてくれる。筆者は特に、空母の運用が気に入ってしまった。「雲竜型」の空母は18機も艦載機が積めるため、戦闘機部隊を2つ、攻撃機と爆撃機の部隊をひとつずつ積み込み、3番艦に配置して戦場で飛行機を飛ばしまくった。戦闘機達は実にまめに働いてくれて、巡洋艦と駆逐艦だけの艦隊の時とは一味違った派手な戦闘が楽しめた。 飛行部隊はそれぞれ経験値を持っており、運用していくことで強くなっていく。この要素もまた、空母に独自の魅力を加味してくれる。経験値は部隊に割り振られているため、飛行機をすべて代えても部隊の腕前は鈍らない。最新鋭の機体を優先的に配備させたりという“えこひいき”も可能だ。また、飛行機はそれぞれ、船と同じように、ベースとなる機体にさまざまな改造が施すことができる。オリジナル機体での飛行部隊を造ることも可能だ。 これら「主役」を務める船の他に、本作では「支援艦隊」と「爆撃機」という要素が存在する。支援艦隊はその名の通り戦いを補佐してくれる艦隊で、1艦隊あたり最大4隻、最大3つの支援艦隊を編成することができる。作戦に投入することで、非常に有用な活躍もしてくれる。プレーヤーの艦隊がフォローできない戦場を巡らせるも良し、大きな戦いが予想させる海域に先に突入させてつゆ払いをさせるも良し、共に海を進むことで大艦隊として敵を撃破しまくっても良しと、便利に使うことができる。 支援艦隊を投入することで「眼」が増えるのも大事な利点だ。敵兵器の探索などはこの存在がありがたい。支援に使用する「従属艦」はコストも安く、編成次第では立派な戦力となる。また、プレーヤーを潜水艦部隊にする場合、搭載武器の少なさから、地上施設の破壊などに不向きになりがちだが、支援艦隊の火力に補佐してもらえばいい。 ただ、難点もある。支援艦隊が破壊したターゲットによる功績はプレーヤーに加算されない上、もし艦隊が撃破された場合、大きな損害になる。プレーヤーの艦隊だけで戦った場合の方が有利な場合もあるのだ。 爆撃機はプレーヤーの階級が上がるほど有利な支援が得られるようになる。敵の地上部隊などを破壊してくれる心強い味方になってくれるだろう。 後述する「やりなおし」をする事で、プレーヤーの資金は潤沢になり、圧倒的な戦力を獲得できるようになる。もちろん、ストイックなプレイを貫き、手持ちの艦隊をやりくりして戦うことも可能だが、戦艦などの強力な兵器を使って、撃破していく臨場感は興奮させられるものがある。また、戦場に合わせて、足の速い優秀な駆逐艦部隊で海域を高速で突き進んだり、潜水艦部隊でピンポイントの攻撃を行なったりと、手駒が増え、選択肢が増えれば、さまざまな角度で本作を楽しむことができるだろう。
■待ち受けるさまざまな局面とオリジナル要素 ストーリーが架空の独立国家を中心に置いているだけに、戦場もまたオリジナル。特に各勢力のもつ「超兵器」との戦いは驚異に満ちている。新機関を搭載し、常識とは思えないスピードで攻撃してくる「シュトルムヴィント」や、「インテゲルタイラント」、強大な空母「ペーターシュトラッサー」など、一筋縄ではいかない強力な敵ばかり。気合いを入れて挑みたい相手だ。 これらの架空兵器の登場はプレーヤーが選択するルートで変化する。連合軍と枢軸軍はそれぞれ別の超兵器を所持しているのである。最初の分岐は、オセアニア方面か、南アフリカ方面かを選択する。筆者にはオセアニア方面の方が敵の戦力が強いように感じた。 ミッションによって難易度がいきなり上がる場合があるのは、ちょっとびっくりさせられた。こちらは駆逐艦を運用するのがやっとなのに、「戦艦2隻と空母1隻を倒せ」といったミッションに挑戦しなくてはならない場合もある。この厳しいミッションに筆者は支援艦隊を先にぶつけることで何とかクリアしたが、損害で資金がつきてしまい、さらに苦しい展開になってしまった。 これは、筆者が無謀に進んだだけで、ゲームの失点ではまったくない。本作は戦いがキツイと感じたら、いつでも開発費や資金などを持ち越したままシナリオの最初からプレイできるようになっているのだ。何度かやり直すことで、戦艦や空母が加わったプレイが可能になり、「無敵艦隊」気分が体験できるようになる。 最初は苦労したステージを、鼻歌交じりで撃破できる楽しさは、「架空戦記」の爽快感にも通じる。プレーヤーがかなり有利な立場で戦場に挑めることで、編成艦隊を工夫したり、戦場に合わせて出撃艦を選んだりと、よりこだわりを持った戦いをくりひろげることができるのだ。筆者的にはじっくりプレイを積み重ねて、強力な艦隊で進めていく方法がお気に入りだ。 もちろん、腕に自信のあるプレーヤーならば、よりストイックな、求道者的プレイも可能だろう。厳しい条件のステージも少ない戦力で、ルートや戦い方を工夫して突破していく人もいるだろう。 本作の大きな魅力である「時代を越えた新要素」は、ゲーム中盤から早くも登場する。対空ミサイルという「現用兵器」を使って、今まで苦労した敵戦闘機をバリバリ落とせるのは非常に楽しい。反対に、こちらに向かって大きなミサイルが飛んで来たときは、他のゲーム以上の恐怖感を感じてしまい、その感触はユニークだった。「新兵器」の登場は、ゲームに独特のスパイスを利かせてくれている。 今回の記事作成にあたり、ちょっとズルイが、メーカー側が用意したセーブデータを見せてもらった。データは技術や生産が限界近くまで強化されており、レーザーや艦首につけるドリルなど、ケレン味とSF的かっこよさをもった兵器、さらには電磁防壁などの存在が確認できた。また、こういった夢の超兵器だけではなく、現用兵器をアップグレードしたものもあった。 日本の支援戦闘機「F-2」を空母に積んで運用できるというのは、筆者にとって是非にも遊んでみたいと感じさせられた要素だ。さらにロシアの戦闘機「Su-37」が日本の戦闘機になっていて、こちらも空母に搭載して活躍させることができる。メーカーのデータは日本のものだけだったが、本作では日本だけではなく、アメリカ、ドイツ、イギリスの兵器が運用できる。これらの超兵器にも興味がそそられる。日本所属のSu-37のように、兵器に詳しい人もニヤリとさせられるようなユニークなアレンジに期待したい。 これらの兵器の運用は、実用性は充分だが、かなりやりこまないとゲームでは使えないようだ。そういった意味では、楽しい「オマケ」要素とも言えるだろう。これらの兵器を使うも良し、使わずに「実在」するものにこだわるも良し、それぞれまったく別な戦いを体験できそうだ。さらに、本作は何度でもデータを引き継いでやりなおせるため、すべてのルートの攻略、より難易度を上げた挑戦、思い通りの艦隊の創設などさまざまなアプローチが可能で、やり込み要素に満ちている。 本作のプレイ感はあくまでカジュアルだ。そして、直感的にプレイできる手軽さと共に、創造力や知識を持っていればいくらでもプレーヤーの望む世界を実現できる懐の深さも持っている。「海戦」というフレーズにピンとくる人にはオススメできる作品だ。 (C) 2004 MICROCABIN CORP. (C) 2004 KOEI Co., Ltd./KOEI NET Co., Ltd. All rights reserved.
□コーエーのホームページ (2004年7月8日) [Reported by 勝田哲也]
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