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★PCゲームレビュー★

ホグワーツを思う存分探検できる
欲張りなアクションアドベンチャー

「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」
  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 発売元:エレクトロニック・アーツ
  • 価格:オープン価格
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:2004年6月26日(発売中)



■小説、映画とも異なる独自の切り口でファンタジー世界を表現

映画と同じ「質感」をもったホグワーツ魔法魔術学校。この学校を探検し、授業に挑戦、学校生活を楽しめるのが本作の魅力
 小説、映画とも日本でも大きな人気を誇る「ハリー・ポッター」。幼い頃に両親を亡くし、叔父夫婦のもとで愛のない生活に苦しめられていた少年ハリーは、一通の手紙で運命が変わる。彼の両親は魔法使いであり、手紙は「ホグワーツ魔法魔術学校」への入学案内だった。学校で彼はロン、ハーマイオニーという親友を得、魔法使いの能力に目覚めていく……。

 児童向けの小説にしてはちょっとボリュームがある内容も、「謎解き」を絡めた本筋の楽しさがぐいぐいと読者を引き込んでいく。教室にたどり着くのにも苦労させられる謎の仕掛けに満ちた校内や、箒の乗り方や妖しげな薬を調合する魔法の授業、といった独特のリアリティーをもつ魔法使いの世界。意地悪な級友をやっつけたり、テストに悩んだりという等身大の学生生活。

 また、耳くそ味まである「百味ビーンズ」や、もぞもぞ動く「カエルチョコレート」といった、登場する食べ物がまったく美味しそうに感じられないところなど、英国風のユーモアも兼ね備えている。こういった世界観の深さも、この作品の大きな魅力だ。

 今作、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」では、脱出不可能と言われる魔法使い達の監獄「アズカバン」を脱走した囚人シリウスが、ある目的を胸に秘めハリーをつけねらう。3年生となったハリーは、不安を抱えながらも学園生活を送り、この事件をきっかけに、また一段大人へと成長していくことになる。

 PC版「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」は、同名の映画をモチーフにしたアクションアドベンチャーゲーム。同作はPS2/GC版もリリースされており、それぞれ個性的な味付けが魅力となっているが、PC版も大胆なアレンジが行なわれている。ハリーだけではなく、ロンやハーマイオニーと協力して、ゲームを進めるというコンセプトはそのままに、「魔法の試験」を中心に置き、ハリーの世界を題材にしたかなり純度の高いアクションゲームとなっているのである。

 キーボードのカーソルキーでも操作可能だが、マウスとW、A、S、Dのキーを使用するいわゆる“FPS方式”での操作が一番しっくりくる。魔法は掛ける対象によって種類が自動的に変化し、簡単操作で多くの魔法を自在に使いこなす感触は非常に楽しいものがある。PC版独自のキーボードでの操作を覚えなくてはならないという敷居の高さがあるが、是非、低年齢のユーザーにも遊んでもらいたい内容である。


【スクリーンショット】
主人公ハリー・ポッター。不幸な境遇にもめげず、親友と共に、立派な魔法使いへと成長していく 親友のひとりロン・ウィーズリー。ちょっと臆病なところもあるが、ムードメーカー的な明るさのあるハリーの友人 親友のひとりハーマイオニー・グレンジャー。勉強熱心な優等生。友達作りが苦手なところもある彼女にとって、2人は得難い友人だ
「闇の魔術に対する防衛術」を受け持つルーピン教授。ハリーにディメンターに立ち向かうための方法を授ける 「死神犬グリム」を思わせる黒い犬。遠くからハリーを見つめるその目には、大きな秘密が隠されている 森の番人ハグリット。今作では「魔法生物飼育学」の先生として、ハリー達に授業をすることに



■ホグワーツ魔法魔術学校3年生として、新しい呪文を習得

 ハリー、ロン、ハーマイオニーは、ホグワーツの3年生として、それぞれ新しい呪文の習得に挑戦する。本作では3人はそれぞれ、別の呪文の習得に挑戦するのである。

 最初はロンが“光の縄”を使いこなす呪文、「カーペ・レトラクタム」を学ぶ。この「学習方法」がものすごい。学校内の隠し扉を超えると専用の「迷宮」が拡がっている。目もくらむような高さにある足場。ロンは虚空に浮かぶ光の球に呪文で光の縄を出し、引っかけて底も見えない深い裂け目に飛び出していく。

 非常にケレンに満ちた、おどろおどろしいフィールド。そこをアクションで突破していくのが今作の「授業」なのだ。高所恐怖症の人は近づくことができないような恐ろしい高さにある、細い足場。爆発するキャンディーを投げつけてきたり、氷の球を投げかけてくる小妖精。間違いなく命がけの“冒険”なのだが、「こういうテストで卒業できるなら挑戦してみたいかも……」という気持ちもわいてくる。冒険好きの少年にとって、非常に理想的な「勉強」だといえるだろう。

 3人それぞれが挑戦するフィールドはまったく別なものになっており、ハーマイオニーは石像を操ってトラップを突破していく「ドラコニフォース」、「ラピフォース」を使って、庭園のようなフィールドを突破していく。ハリーはものを凍らせる呪文「グレイシアス」。この呪文を使って、炎を吐き出すサラマンダーと戦うほか、ボブスレーのような氷のコースを、ハイスピードで駆け抜けていく。コースの外は奈落の底である。例え落ちてしまっても、少し前の場所に戻されるだけで、残酷な描写はない。こういった部分も「魔法の授業」という感覚を補強してくれる。

 本作はアクションゲームとしてはそれほど難易度は高くない。ジャンプなどの判定もかなり甘いものになっていて、ドキドキ感を体験させながら、苛立ちは感じないバランスになっている。画面だけ見ると、コアなアクションゲーマー向けに見られるかもしれないが、そのようなことはない。この難易度のさじ加減は、好感が持てる。

 魔法を含め、操作は直感的である。マウスで辺りを見回し、キーを押してキャラクタを操作。敵の弾はAとDで平行移動でかわす。ゲームでは新しく習得する呪文の他、開鍵の呪文「アロホモラ」、特定の床をトランポリンに変える「スポンジファイ」などさまざまな呪文を使う必要があるが、魔法ボタンである左クリックを押しながら対象を選ぶだけ。移動用のキーと、マウスの2つボタンだけで、さまざまな操作が可能になっているのだ。

 フィールドは、ただ突破するだけではなく、非常に多くの探索要素を持っていて、騎士の鎧や垂れ幕などに調査の呪文「デルパソ」をかけると、百味ビーンズや、カボチャケーキなどが入手できる。これら隠しポイントはフィールド上にたくさん配置してあり、くまなく歩き回って、ところかまわず魔法を試みる感触が楽しい。反応のある場所はきちんとカーソルが変化して知らせてくれるので、調査にストレスはたまらない。また、やたら反応する場所が多いのも、探索熱を煽ってくれる。

 各フィールドにはたくさんの隠し部屋が仕掛けられていて、意欲を持って探してみれば、それに応えるだけの隠し要素を持っている。見つけだしたときには爽快感がこみ上げてくる。しかも、それで「テストに合格」できるのだから、楽しさは倍増する。魔法魔術学校にあこがれを抱くような、低年齢のユーザーは、特に引き込まれる魅力だろう。

 PCゲームということで、ちょっと敷居は高いが、子供のために、親が購入することを考慮してもいいゲームバランスであると思う。リアルなグラフィックと、マウスの独特な操作性は、コンシューマゲーム機に慣れた子供には新鮮な感触をもたらすに違いない。子供にも勧められる、本物のグラフィックと優しいゲームバランスを持つ本作は、希有なPCゲームといえるだろう。


【スクリーンショット】
ロンが挑戦する「カーペ・レトラクタム」の呪文の習得。杖の先から光の縄を出し、モノを引っ張ったり、ぶら下がったりできる。高低差の激しい足場が、ちょっと恐いステージだ。金色の盾を5個集めることで、コンプリートできる
ハーマイオニーは、魔法の石像に命を吹き込む呪文に挑戦。ウサギを操る「ラピフォース」と、小さなドラゴンを操る「ドラコニフォース」。小さな魔法生物を操って、次のステージへの入口を捜していく。パズル要素も強いステージだ
ハリーが挑戦するのはものを凍らせる呪文「グレイシアス」。サラマンダーを凍らせた後、衝撃を与える「リクタスセンプラ」で粉々に砕いてしまうことも。他にも、凍った道をボブスレーのように高速で駆け抜けるなど、さまざまな仕掛けがある
フィールドには色々な仕掛けがあって、魔法をかけることで百味ビーンズなどを入手できる ガーゴイル像に「ルーモス」をかけると、像が光り輝き、隠された入り口を発見できる 光の盾を5つ集めるとビーンズボーナスルームに行ける。制限時間いっぱいまで、ボーナスアイテムを取り放題だ



■やり込み要素たっぷりな魔法魔術学校での生活

 魔法の習得に挑戦するステージは、ボリュームがあってやりごたえがある。それでいて、セーブポイントが細かく設置してあるために、好きなところで切り上げられるという手軽さを併せ持っている。

 ゲームは魔法の習得だけではない。もちろん、原作そのままのシーンを追体験できる仕掛けもある。特に恐ろしい吸魂鬼ディメンターを退ける呪文「エクスペクト・パトローナム」をゲームの中で実際に使えるシーンなどは、ハリーになりきることができる。しかし、「この作品をプレイすれば、映画は見なくても大丈夫」というほどに、映画のシーンは使用されているわけではなく、本作のストーリーの説明はかなりあっさりしている。映画を見たり、本を読んで、原作のストーリーをつかんでからの方が、本作はより魅力的になるのである。

 筆者がこのゲームをプレイするのに、映画の鑑賞をおすすめするのは、本作が「映画そのままの魔法魔術学校内を探検できる」からである。人を乗せたまま移動する階段、「太った貴婦人」の肖像画の向こうにある寮、学校の外にはハグリットの小屋もある。映画では自由に歩けない学校を思うままに歩くことができる楽しさは、原作ファンならば一層楽しめるだろう。

 歩いているキャラクタに話しかけても原作に忠実なレスポンスが返ってくる。大概のキャラクタは友好的だが、ハリー達「グリフィンドール寮」に激しいライバル心を燃やす「スリザリン寮」の子供達は、挑戦的な台詞を投げかけてくる。

 校内は、野外フィールドと同様に、さまざまな隠し要素があり、百味ビーンズやカボチャケーキがさまざまなところに隠してある。それらを集めて、フレッドとジョージの店に行けばアイテムやカード、さらには肖像画の合い言葉と交換してもらえる。

 原作では百味ビーンズのオマケだった魔法使いのカードだが、本作では大事なクリア要素。学校内の生徒もカード収集には協力してくれる。内容は、世界観をふくらます、雰囲気たっぷりなものだ。「怪物的な怪物の本」が、図書館内で襲ってきたり、ヒッポグリフで峡谷を抜けるといったミニゲームもちりばめられている。場所によっては、3人で協力して魔法をかけなくてはいけなかったりと、仲良し3人組でのドキドキするような「学校探検」の要素は、映画や原作のハリー達に近づいたような気持ちをもたらしてくれるだろう。

 映画そのままの学校内を歩き、原作以上に学校の“秘密”を探ることができる本作。繰り返すが、親子でも楽しんでもらいたい作品だ。映画や原作を補強してくれる、大変魅力的なアイテムである。

【スクリーンショット】
森でみんなを困らせるピクシー小妖精に、3人で立ち向かう。撃退すればカードがもらえる イタズラ好きのポルターガイスト・ピーブズ。色々な場所で、3人に挑戦してくる ヒッポグリフに乗って、リングをくぐっていく空中コースに挑戦。浮遊感が楽しい
学校内では、生徒達が魔法のカードを売ってくれる。欲しいアイテムを渡して、カードをゲット カードの内容はゲームには直接関係がないものも多いが、世界観をふくらませてくれる ロンの兄である双子のフレッドとジョージは店を開いて、ハリーにものを売ってくれる
原作と同じ「太った貴婦人の肖像画」が、ハリー達のグリフィンドール寮を守っている フレッドとジョージの店で買った合い言葉を使えば、隠された部屋に入ることができる 恐ろしいディメンターと映画そのものの戦いも。果たして、勝つことができるか?

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【ハリー・ポッターとアズカバンの囚人】
  • CPU:Pentium III 600MHz以上(Pentium4 1.5GHz以上推奨)
  • メモリ:256MB以上(512MB以上推奨)
  • HDD:インストール時:950MB以上の空き容量
  • ビデオカード:VRAM 32MB以上(64MB以上推奨)


□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.japan.ea.com/
□「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のホームページ
http://www.japan.ea.com/hp_azkaban/
□関連情報
【4月13日】「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」開発者インタビュー
「ロン・ウィーズリーをどうやって活躍させるか悩んだよ……」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040625/harry.htm

(2004年7月1日)

[Reported by 勝田哲也]


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