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★Xboxゲームレビュー★
■架空のアメリカを舞台とした「空賊」達の戦い
物語は、架空の過去世界。第1次大戦後、アメリカは各州が国として独立、市民軍は対立を激化していった。続く争いにより、鉄道や道路は寸断。'30年代のアメリカ大陸での物資の輸送は、巨大な飛行船に頼ることになる。 その飛行船を狙って空を跋扈しはじめるのが“空賊”である。彼らは軽快な飛行機に乗り、鈍重な飛行船をつけ狙う。飛行船側もただやられるだけではない、飛行船を所有する商人達は国に働きかけ、警察や市民軍に防護を依頼するほか、私設軍隊を所有して空賊達を狩りたてる。さらに「空賊ハンター」ともいうべき、民間団体まで設立され、アメリカの空は激しい戦いの場になっていく。 主人公・ネイサン・ザッカリーは、フォーチュンハンターと自称する空賊のボス。飛行船パンドラ号を根城に、空を暴れ回る。他のならず者とは少し違う、金持ちしか狙わないスマートなそのスタイルは、新聞に“ヒーロー”とかき立てられることもある。だからこそ、他の空賊達からは妬みの視線を浴びることも多く、彼らとのトラブルも多い。 今回のストーリーは、アメリカの東海岸にある、ハリウッド国が所有する「シーヘイブン」からはじまる。ポーカーの負けがこんでパンドラ号を賭けのカタに奪われてしまい、それを取り戻す、といういささか情けない始まりかただが、やがてストーリーは、ドイツから亡命した天才科学者ファッセンベンデル博士の謎の発明へとつながっていく。その謎を求めて、舞台は次々と変わっていくのである。
■爽快なフライトコンバット 本作の第一の特徴は、手軽に楽しめる空戦にある。峡谷や、ビルの谷間など、非常に狭い場所で、くるりと宙返りができる手軽さだ。例え壁面に機体をこすったとしても、1、2度では致命的なダメージは受けない。数ある飛行機ゲームの中で、ここまで軽快な運動性能を楽しめるゲームは少ないだろう。映画のヒーローが行なう飛行機でのアクロバットのような、常識はずれの飛行体験を楽しめるのである。 本作は、スロットすらない、簡単な操作で機体を飛ばせる。スロットルの代わりに加速ボタンとブレーキが用意されていて、プロペラ機でありながら、ジェット戦闘機のような急加速とブレーキが可能だ。特にブレーキは優秀で、ビルの隙間や洞窟などをくぐり抜ける際に役立つほど減速ができる。 攻撃は左右のトリガで行なう。右トリガで発射できる機銃は、連続して発射を続ければ、機銃の加熱からか連射できなくなってしまうが、タイミングを意識していれば問題はない。相手の後ろについて減速、相手の針路のちょっと前を狙う形でガンガン攻撃していくと、敵機はたちまち炎に包まれる。プロペラ機のゲームならではの機銃戦の興奮をきちんと再現している。コントローラに響く震動が、より一層気分を盛り上げてくれる。 左トリガは「サブウエポン」。こちらは“架空”の味が良く出ている兵器で、ある程度追尾してくれるロケット砲や、ショットガン、さらには稲妻を発射する兵器など、ゲーム的な演出もまた楽しめる兵器である。こちらには弾数制限があり、使いどころを考える必要があるが、回復方法も多彩なため、慣れてくれば気にする必要はないかもしれない。 「回復要素がある」というのも、こういった空戦ゲームでは少ない方かもしれない。本作には「アイテム」が存在し、敵を倒すことでアイテムがパラシュートで落下、コレを取ることで機体の体力、サブウエポンが回復できる。さらに難易度も調整できるので、初心者にもお勧めできる作品であるといえるだろう。 ラダー、スロット、エレベータといった要素が簡略されているうえ、簡単操作で高等な飛行テクニックを実行できるのも楽しい。インメルマルターン、スプリットSなど、他のゲームではできない驚きの機動を、右スティックを押し込み、スティックをひねるだけでできるのだ。後ろから射撃をしてきた敵に向かって、くるっと機体を回転させ反撃する。通常とは比べものにならない小さな旋回半径で回転する機動はまさに爽快。ベテランパイロット気分を満喫できる。 ただし、シングルプレイでは、主に回避行動に使うこれらのテクニックの効果はなかなか実感しにくいだろう。やはり、マルチプレイで効果的に使いたいテクニックだ。絶体絶命を、逆にチャンスに。簡単操作だからこそ、使いどころを工夫することで、よりカッコイイプレイができる。「パイロット」に憧れるプレーヤーなら、使っていきたい技である。 本作のふたつ目の大きな特徴は、「機銃での戦い」である。AAガンと呼ばれる、様々な機銃に乗り組んでの攻撃が可能。連射性能の高い銃から、一発の重い銃、さらにはカメラ付きの誘導ミサイルなどさまざまなものがある。「拠点防御」の戦いを体験できるのは、他のゲームにはなかなかない要素だ。襲い来る敵に向かってバリバリ撃つ感覚は、独特のもので、撃墜する爽快感は、飛行機での攻撃とは別な楽しさがある。 パンドラ号に乗って戦えるというのは、前作のファンに特にうれしい要素だろう。敵飛行船との戦いなどで、パンドラ号の砲台に座り、颯爽と戦う。迫ってくる飛行船や、地上から撃ってくる戦車など、常に高速で飛び回っている飛行機とは、まったく違う視点で敵を眺め、撃つことができるのである。他にも、列車に乗り込んで、砲台で敵を撃退したり、同一ステージ中、敵のフォーメーションに合わせて砲台と飛行機を数回行き来したりと、忙しいステージもあり、多彩な戦いを楽しめるのである。 ちょっとだけ大変に感じたのが、こういったゲームにはほとんどある「敵へのレーダーロックオン」ができないことである。目標を指し示す機能はあるのだが、これを任意に変更できない。防衛対象などを常にプレーヤーに意識させる、といった点を強調させるためだとも思うが、高速で位置が変わる敵戦闘機を追いかけるのには、ちょっとした慣れが必要になる。他のゲームや、前作では装備されている機能であり、フライトシューティングの難易度をずいぶん下げてくれるアイデアだけに、任意にロックオン対象を変えさせてほしかった。
■ユニークな世界観を反映したステージ 3Dで構築された戦場は、モデリングが細かく作りこみを感じさせる。シーヘイブンには怪しげな酒場を思わせる建物や、飛行船の残骸があり、グランドキャニオン周辺のアリコには、壮大な峡谷と、そこを走る鉄道がある。また、シカゴは高層ビルの間をいくつもの飛行機が飛び交い、幻想の未来世界と言った趣まである。 PC版が持っていた、「'30年代のアメリカ風俗への憧れ」という部分は、残念ながらかなり抜け落ちているが、本作はSF的な匂いのする、奇妙なアメリカ世界を演出している。電撃兵器を初めとした、“超兵器”の存在は、日本人にも共感しやすい世界観といえるだろう。 また、「ボス」の存在が、世界観に“異様”な味付けを加えてくれる。最初のボスは、飛行船から分離する、三角の頭を持ったタコのような「ロボット」なのである。このロボットは、山に爪を立てて登っていく姿は、キングコングがビルを上るような迫力である。しかもこのロボット、脚をたわめて、「跳ぶ」のである。レイ・ハリーハウゼンの特撮を思わせる、豊かな「モンスター」表現である。 アリコでは、クローラーというか、ワームというか、尺取り虫というか……とにかく、そんな昆虫型ロボットが登場する。これもまた、飛行船の上に乗っかるという大技を見せてくれる。この、飛行船に乗るロボットの、「脚」の表現が非常にすばらしい。PC版とは違う、こういった労力の傾けかたは明らかに違う魅力を生み出している。超兵器を目撃する、「異世界」の楽しさである。次のボスとの遭遇も、楽しみになってくるではないか。そして、これらを操る、謎めいた敵の秘密にも。 ステージ全景も魅力的だ。特に、列車に乗ったり、船に乗ることでまったく違った視点でも眺められる利点は前述の通り。筆者のお気に入りは、シーヘイブンでのクルーズ。もちろん、ひっきりなしに敵が攻撃してくるため、長い時間景色は堪能できないが、本作のグラフィックエンジンで描かれる水面は美しく、そそり立つ巨大な岸壁の間をくぐり抜けるシーンなどは、冒険映画を彷彿とさせる。一瞬だけ訪れる「静」の間が非常に印象に残る。 ステージにはさまざまな場所に「アップグレードトークン」が隠されている。このアイテムは機体の性能を上げるためにはかかせないアイテムで、シナリオの間に集めておくことで、ゲームは有利に展開できるようになる。小回りの利く機体で、探索任務にも挑戦していきたい。ステージ内のスタッフのこだわりを体験できるだろう。また、各ステージには「レースコース」も用意されている。ちょっと難度が高いかもしれないが、やりこめる要素だろう。 何よりも、筆者が本作のすばらしい要素だと思っているのは、「音楽」である。映画音楽を思わせる、古典的な響きも持ったBGMは、プレイを一層高揚させる。本作の「楽しさ」は、この音楽で何倍にも増幅されるのだ。
■充実したマルチプレイ 手軽に空の戦いが楽しめる本作。海外で非常に高い評価を得た作品だが、その秘密は「マルチプレイ」にある。Xbox Liveに接続すれば、最大16人の対戦が可能。ブロードバンド環境があれば、是非にも挑戦してもらいたい。 Xbox Liveでは、どうしても共通言語が英語になってしまうが、怖じずにやってもらいたい。ぶっちゃけ、会話はあまり必要ではないだろう。トリガーをひいて銃撃で言葉を交わせばそれで充分ではないか。今の時期なら勇気を持って日本語で話しかけるのも悪くはないかもしれない。運が良ければ、新しい仲間と出会えるかも。 対戦モードは豊富で、純粋に撃墜数を競う「ドッグファイト」。敵陣地から旗を持ち帰る「フラッグバトル」。制限時間内に金塊アイテムを拾いまくる「キープアウェイ」。この3つに、それぞれ「チーム」要素が追加される6つのゲームに、チームでひとつの目標を狙う「ワイルドチキン」の合計7つのゲームモードがある。 正直、初心者はカモでしかない。海外版は半年以上も前から発売されており、シングルプレイで慣れた程度の上では撃墜されてばかりだろう。しかし、対戦ゲームはほとんどがそんなもの。開き直って楽しんでいるうちに、突破口が見えてくる。うまいプレーヤーの機動はきっと参考になるだろう。 コンシューマゲームではあまり例を見ない「空戦」のマルチプレイを楽しめるゲームである。プレーヤーの多さも今のところトップクラスであるだろう。空を飛び、戦うこの空戦感覚を是非体験して欲しい。
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(2004年5月27日) [Reported by 勝田哲也]
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