「ラチェット&クランク3」はオンライン対応。オンライン市場に注力するSCEA 北米でPS2を149ドルに値下げし更なる普及を図る
5月11日(現地時間) 発表
会場:LA Center Studios
本稿では、11日に開催されたSony Computer Entertainment America(以下、SCEA)のメディア向けブリーフィングにおいて語られた内容のプレイステーション・ポータブル(PSP)以外の部分について紹介する。
先日弊誌でもレポートしたGDCの基調講演において、SCEAのAndrew House上級副社長がすでに言及していたが、あらためてE3を舞台にしてCEOである平井一夫氏から、ゲームコーンソールのライフサイクルを10年と位置づけたうえで、そのライフサイクルの進行度合いに応じたマーケット戦略を組み立てていくことが重要と強調された。
現在プレイステーション 2は、発売以来5年目を迎えている。平井氏は前回Andrew氏が提示した資料と同じものも交えて、PSの普及速度に比べてさらに速いPS2の家庭への浸透度やコアユーザーの年齢層の分布などを図示したうえ、2004年はカジュアル・ゲーミング・マーケット(いわゆるコアゲーマーではなく、趣味のひとつとしてより気軽にゲームを楽しもうとする人たちとでも捉えるといい)を対象にしたゲーム開発、そしてマーケティングがより重要になると位置づけた。
そうしたカジュアル・ゲーミング・マーケットへの訴求力として、大衆向けに製品を低価格化することと、キラーアプリケーションの投入、そして新しいチャレンジの3点を実施すると説明している。その低価格化戦略がこの日、北米地域におけるPS2本体の値下げという形で発表されている。新価格149ドルは、PS2が市場投入された価格(299ドル)の半額にあたるうえ、ネットワークアダプターとオンライン対応ゲーム「ATV Offroad Fury2」がバンドルされたコンボパックになっているのが特徴だ。平井氏は、プレイステーションを149ドルに値下げした際の普及度合いをデータに示し、149ドルという価格のもつ力を訴えた。
またキラータイトルとしては、今年の秋から2005年にかけて登場する8タイトルをあげ、タイトルの充実ぶりも伝えた。紹介されたタイトルは下記の8タイトルとなるが、個々の内容についてはE3会期中にブースでのデモなどもまじえて詳しく紹介する。特に後半にあげたアクションもの3タイトルに関しては、現在北米市場においてはPS2プラットホームにおける“顔”となりつつあるキャラクタ達で、これらが同一時期に登場することに対する期待も見せていた。あわせてGTAの最新作「Grand Theft Auto:San Andreas」が今秋PS2プラットホームに登場することも発表された。
- 「GRAN TURISMO 4」 2004年11月発売
- 「METAL GEAR SOLID3 SNAKE EATER」 2004年冬発売
- 「KILLZONE」 2004年11月発売
- 「The Getaway Black Monday」 2004年冬発売
- 「GOD OF WAR」 2005年第一四半期発売
- 「SLY2 Band of Thieves(怪盗スライクーパー2)」 2004年9月発売
- 「JAK3」 2004年ホリデーシーズン発売
- 「RACHET & CLANK 3 up your Arsenal」 2004年ホリデーシーズン発売
そして最後の新しいチャレンジ、イノベーションに代表されるのが“EyeToy”ということになる。発売10カ月あまりでワールドワイドで380万台を出荷。「Play」、「Groove(日本ではフリフリダンス天国)」「Singstar」といったファーストパーティからのオリジナルタイトルをはじめ、ビデオメッセージング、そして新作「AntiGrav」での入力インターフェイスとしての利用など、EyeToyカメラの可能性はこれからさらに高まると位置づけられている。
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講演を行なったSCEAのCEO(最高経営責任者)平井一夫氏 |
PSと同じように、10年というライフサイクルをPS2で実現するための方法。本体の低価格化、キラータイトルの投入、そしてイノベーション |
北米地域で149ドルへと値下げを実現。当初販売価格(299ドル)と比べると半額になったうえ、ネットワークアダプターなどの付加価値も追加されている |
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PSの実績では本体価格が149ドルになってから90%を超える台数が普及した。149というのは、力(訴求力)のある数字であると説明 |
各プラットホームにおけるミリオンヒットタイトルの比較。本体の販売台数の拡大は、ミリオンヒットを生む素地になる |
今秋から2005年第1四半期までに発売されるキラータイトルの数々 |
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キャラクターアクションとしてPS2プラットホームの顔となりつつある3作品が同じ年にそろって発売されることにも期待を寄せた |
ミリオン突破間違いなしのGTAの最新作「Grand Theft Auto:San Andreas」が今秋PS2プラットホームに登場する |
EyeToy対応タイトルは、ファーストパーティのタイトルが充実。現在はサードパーティから高い興味が寄せられている段階に移行していると平井氏 |
【スクリーンショット】 |
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「GRAN TURISMO 4」 |
「METAL GEAR SOLID3 SNAKE EATER」 |
「KILLZONE」 |
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「The Getaway Black Monday」 |
「GOD OF WAR」 |
「SLY2 Band of Thieves(怪盗スライクーパー2)」 |
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「JAK3」 |
「RACHET & CLANK 3 up your Arsenal」 |
「EyeToy : AntiGrav」 |
■ オンラインゲームへの注力をさらに強化
ここ数年、オンライン対応ゲームの動向について語られない年はないわけだが、平井氏はあらためてオンライン対応ゲームのもつ可能性と重要性について言及した。強調されたのは、ゲームの(何らかの形での)オンライン対応が今後のスタンダードになるということと、オンラインゲームの開発力が次世代ハードウェアのキーファクターとなるという点である。ここで言う次世代ハードウェアとは、言うまでもなく「PSP」と「CELLプロセッサ搭載の次世代機」のことで、前者は無線LANによるネットワーク接続が可能であり、後者はネットワーク接続が前提と断言してもいいプラットホームである。実際、すでにPSP対応タイトルではPSP同士だけでなく、PSPとPS2あるいはPSPとPCといった接続形態による運用が示唆されている。
いっぽうで前日のXboxブリーフィングにおいて上映されたMicrosoft制作ビデオのなかで痛切に指摘されたPS2プラットホームにおけるオンライン戦略の脆弱点(全タイトルにまたがるコミュニケーションスペースがない。ユーザー管理がタイトルごとに分離している……など)は、具体的な方策こそ提示しなかったものの、SCE側としても認識していることを暗に認め、共通プロトコルの導入や、シングルログオン(IDの単一化)、課金の統一、新たなコミュニティ手段の創出に“New Approach”として取り組む姿勢をみせ、コンテンツクリエイターにオンラインゲームへの参入を再度訴えた。
提示されたグラフによれば、2002年には総タイトル数の6%がオンライン対応タイトルだったのに対し、2003年は17%に成長。2004年に発売されるタイトルでは28%に達すると予測されている。この日は、その2004年に発売になる対応タイトルのひとつ「RACHET & CLANK 3 up your Arsenal」の開発元Insomniac GamesのCEO、Ted Price氏がステージに登場して、同タイトルを使ったオンラインによる4対4の8人対戦をデモしてみせた。先に平井氏がカジュアル向けのタイトルとしてもあげた同作のオンライン対応は前述したライフサイクルの構想とも一致し、いまオンライン対応に踏み切るのはまさにライフサイクルに乗っかること、といった考え方を示して見せた。
Ted Price氏によれば「RACHET & CLANK 3 up your Arsenal」に含まれるオンライン対応の要素は下記のとおり。
- 6つのオンライン専用バトルフィールド
- 最大8人までの同時プレイが可能
- 画面分割により2~4人が1台のPSで接続可能
- プレーヤー間のコミュニティ手段を提供
- プレイ中のボイスチャットに対応
ゲーム内容はデスマッチや旗取りなどをはじめとする、いわゆるFPS系オンラインゲームのライト版といった位置づけ。乗り物や破壊可能な施設などさまざまなフィーチャーがフィールド内に用意されている。この日はInsomniac Gamesの開発スタッフが、青チームと赤チームとに分かれて、対戦デモを行なってみせている。
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次世代プラットホームではオンライン対応の開発力がキーファクターになると説明。いまこそ、オンライン対応タイトルに注力する時期と強調した |
北米地域ではネットワークアダプターが300万台普及。後発の本体バンドルセットが急激に伸びて170万ユニットを占めている |
2002年以降に発売された総タイトルに占めるオンライン対応タイトルの割合。2004年には28%に達すると予測されている |
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単一アカウントでの複数タイトルへのログオンや、課金方法の統一、共通コミュニティスペースの創出など、これまで“弱点”とされていた部分も改善する意向を見せた |
「RACHET & CLANK 3 up your Arsenal」の開発元Insomniac GamesのCEO、Ted Price氏 |
新作ではオンラインタイトルとプラットホーマーとして2つの顔を持つことになる |
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プレゼンテーション用のステージをフルに使ってデモされたオンラインによる8人対戦 |
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Sony Computer EntertainmentのCTO(最高技術責任者)の茶谷公之氏 |
ブリーフィングの最後には、Sony Computer EntertainmentのCTO(最高技術責任者)の茶谷公之氏が登壇。この日IBMからアナウンスがあったCELLプロセッサを搭載するWorkStationについて概要の説明が行なわれている。
内容はテクノロジーに依ったものではなく、IBM、SONY、SCEの協業によるWorkStation製品の設計・制作で各社がどういった部分を担当しているかといった説明 (ハードウェアをIBM、ゲーム開発のミドルウェア、ソフトウェアの制作をSCEなど) や、このWorkStation製品が映像やゲームといったデジタルコンテンツの制作にいかに効果を発揮し、容易にゲーム制作環境を構築できるものであるかというところにポイントが置かれたものとなった。このWorkStationは、2004年の第4四半期にプロトタイプが登場することになるという。
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IBM、SCE、SONYの協業によるCELLプロセッサ搭載のWorkStation。図のように各企業が主な役割を分担している |
このWorkStation製品が映像やゲームといったデジタルコンテンツの制作にいかに効果を発揮し、容易にゲーム制作環境を構築できるものであるかというところにポイントが置かれた説明が行なわれた |
□プレイステーションのホームページ
http://www.playstation.jp/
□ニュースリリース (PDF形式)
http://www.scei.co.jp/corporate/release/pdf/040512e.pdf
□関連情報
【5月12日】プレイステーション・ポータブル(PSP)がついに公開! 対応タイトルの映像ラッシュに数々の注目作品を発見
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040512/psp1.htm
(2004年5月12日)
[Reported by 矢作晃]
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