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【Game Developers Conference 2004】レポート
SCEAの基調講演でPSP対応ソフトの画面が初公開される
会場:San Jose Civic Auditorium
最大のトピックは、PSP対応ゲームのデモンストレーションが初めて公開されたことだ。本誌でも既報のとおり、GDC2004開催にあわせて数社からPSPソフト開発のためのミドルウェアが発表され、展示ホール内でもいくつかのテクノロジーデモンストレーションが行なわれている。しかし、ゲームとしてのスタイルを整えたデモは初公開で、見逃すことのできないポイントとなった。
■ PSP デモンストレーションを行なったのは、米国の開発スタジオであるBackbone Entertainment。PC上のエミュレータを使って、Lightning、Spline、Morphingそれぞれのテクノロジーデモを行なって見せた後、「DEATH JR.」というタイトルをプレイしてみせた。ゲームの内容はタイトル名のとおり小さな死神による3Dアクションスタイル。このあたりは掲載した画面写真をあわせて参照してほしい。 公開されているPSPのスペックからスクリーンが16:9の横長のスタイルであることはわかっているわけだが、あらためてゲーム画面を見ると、さらにそれが強く印象づけられる。言い換えれば、タイトル開発においてはこれまでの4:3を中心とする画面構成から一歩進んだ発想が求められるとともに、斬新なアイディアを盛り込むことができる可能性が広がっているといえる。デモを行なったBackbone EntertainmentのプロデューサーChris Charla氏は「思った以上に開発の行ないやすいハードウェア」とPSPを評価していた。
Andrew House上級副社長は、いくつかのスライドを示してポータブルデバイスにおけるゲームマーケットの巨大さを指摘。そのうえで、PSPはPS2を超えるペースで普及するという予測を示した。またPSPにおいては、ソニーというブランド力(製品デザインの魅力)、PS2に匹敵する革新性、そして無線LANをはじめとする新しいテクノロジーの導入など、成功への十分な要素を満たしているとあらためて強調し、集まった開発者に対してPSPタイトル開発への参入を促した。 その参入状況だが、SCEAの発表によると2003年秋から提供されているPC上でのエミュレータ形式の開発キットは、日本では24社、北米地域で23社、欧州地域で34社、韓国で8社にすでに提供されている(契約を結んでいる)という。また2004年春には、ハードウェア形式の開発キットの提供が始まるということだ。 ローンチに向けたスケジュールには変更がなく、5月にロサンゼルスで開催されるE3でハードウェアのプロトタイプを公開。2004年中には日本市場でローンチを行ない、同会計年度中に、北米と欧州でもローンチが行なわれる予定となっている。なお、韓国におけるローンチはその後とアナウンスされている。
■ PS2「EyeToy」とUSBカメラ 今年2月に日本での発売が開始された「EyeToy」だが、欧米でも好調なセールスが続いている。発表された資料によれば、発売以来7カ月で、全世界で330万台を超えるセールスを記録している。日本市場では第1弾となる「EyeToy: Play」が出荷されたばかりだが、先行する欧米では次々とUSBカメラ対応タイトルが登場している。この日デモンストレーションされた対応タイトルは3タイトル。すでに北米で発売されている「MLB 2005」では、登場する選手にUSBカメラを使って取り込んだ自分の顔をキャラクタに貼り付け、自分がゲームに登場できるスタイルになっている。 また欧州ではすでに発売されている「EyeToy: Groove」は、北米で4月20日に発売。マドンナ、ジェシカ・シンプソンなど、有名なアーチストの28曲が収録されているダンシング形式のゲームである。「EyeToy: Play」と同様に自らが画面に登場し、画面の指示に合わせてタイミングよくオブジェクトに触れることでダンスプレイができる。凝ったエフェクトはもちろん、プレイした様子を写真、映像で保存して後から見ることができるモードも追加されている。ちなみにこのタイトルのデモンストレーションでは、アイドル発掘のテレビ番組で、そのあまりに不釣り合いな容貌からかえって人気を博してしまったというタレントも登場。満足げにY.M.C.Aを踊りきって聴衆の大歓声を浴びていた。 デモされたもうひとつのUSBカメラ対応ソフトは現在開発中のもの。これまでのタイトルは、前述したダンスや、「EyeToy: Play」のミニゲームのように、自分がテレビ画面に登場するという楽しさを中心にしたものだったが、最後のタイトルは違った。これはUSBカメラをコントローラとして利用するもので、最初に手や顔の位置などのキャリブレーションをとる。もちろんこの時は自分自身がテレビ画面に映し出されているが、いったんプレイが始まってしまうと、画面に登場するのはプレーヤーが操作するキャラクタというスタイルのゲームである。内容はジェット噴射つきのスケボーのような乗り物に乗って、レールの上をスライド、両手でバランスをとりながら旗門をクリアするように、左右のポイントになるボールに触れていくというものだ。また、頭上の障害物は、頭を引っ込めるようにして避けなければならない。つまりコントローラのスティックを倒したり、ボタンを押したりする操作を、自らの体を動かして行なうわけである。 SCEによれば、ファーストパーティによるUSBカメラ対応タイトルは現在5タイトルが制作中で、サードパーティでもエレクトロニックアーツによる「ハリーポッター」の新作タイトルで対応する予定だ。SCEはワールドワイドでUSBカメラ対応タイトルの制作サポートを行ない、さらなる革新的なインターフェースとしての活用法を模索していくという。
■ PS2「Final Fantasy XI」 北米では23日(公式には23日とされているが、実際の店頭では24日発売の店が多かった)から、PS2用のハードディスクユニットの販売が開始されている。「Final Fantasy XI」がバンドルされ、100ドル弱で店頭に並んでいる。30日間の無料アカウントが設定されているので、先行して発売されているネットワークアダプタのユーザーは、購入当日からプレイが可能だ。 Andrew House上級副社長は、こうしたオンラインゲーム市場をあらためて“The Next Frontier”と位置づけ、マーケットの分析を行なった。北米市場ではこれまでネットワークアダプタとPS2本体セットの販売数が150万台、ネットワークアダプタが単体で110万台販売されている。この数は、北米のPS2インストールベースの10%にあたるという。また北米版のネットワークアダプタは日本で販売されているものとは異なり、56Kモデムを使ったナローバンドとイーサネットによるブロードバンドの両方が利用できるタイプで、その接続比率がそれぞれ39%と61%となっており、約6割がブロードバンド環境でプレイしているという。また、PS2でオンラインゲームを楽しんでいるプレーヤーが、PCでもオンラインゲームを楽しんでいるというケースは少ないという調査結果も示し、潜在的なオンラインゲームのユーザー層の存在を示唆した。 興味深かったのは、統計によるオンラインゲーマーのプロフィール。PCのオンラインゲームユーザーは18歳から34歳までの男性に集中(93.4%)している。週に約24時間をオンラインゲームに費やし、その約7割がオンラインゲームを他のジャンルよりも面白いと感じているという。いっぽうでPS2のオンラインゲームユーザーは、週あたり平均8.3時間をオンラインプレイに費やしている。57%を超えるユーザーが満足していると答え、37%が友人にプレイを勧めているというものだ。また、いまだオンラインゲームをしていないユーザーも、64%がオンラインゲームのプレイを検討中だという。 もうひとつ示された興味深いデータは、SCEがプラットフォームのライフサイクルを10年と位置づけてみせたことにある。PSが1995年に登場してから2004年で10周年を迎える。グラフで示されているのが、PSのハードウェアとソフトウェアの収益だが、このビジネスモデルはPS2においても適用することができるというのである。そう考えると4年を経たPS2の位置づけは、プラットフォームのライフサイクルによれば、最終的に得られる収益の約1/3に達したにすぎないということになる。ハードウェア的な側面から見れば、約5~6年おきに“次世代”と呼ばれるコンソールが出現することで、ついサイクルをそこに当てはめてしまいがちだが、あらためてこうしたとらえ方をして見せたのは、次世代Xboxや任天堂の次世代機が2005~2006年とささやかれ始めたことも少なからず影響しているのだろう。
もちろんCellプロセッサの搭載を前提とするSCEの次世代機も時期こそ明らかにはされないものの、遅からぬ時期に投入されるわけで、その際は現在のPSoneのような位置づけのPS2が登場し、上記のようなプラットフォームのライフサイクルをまっとうするという展開を目指しているのは容易に想像できる。もちろんそのためには、まだまだPS2への投資や「EyeToy」のような革新的なデバイスの投入を継続することがSCE側でもタイトル開発者側でも必要で、それを果たしてこそお互いに収益が約束されるものだとあらためて示唆してみせたと考えられる。また同氏は、PSとPS2ユーザーの年齢分布を示してみせ、10年というプラットフォームのライフサイクルにおける加齢の影響についても考慮すべきという見方を示した。 □「Game Developers Conference 2004」のホームページ http://www.gdconf.com/ □ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ http://www.scei.co.jp/ (2004年3月27日) [Reported by 矢作晃]
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