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★PS2ゲームレビュー★
リアルなグラフィック、豊富な資料により構築された世界観。本作「メダルオブオナー ライジングサン」(以下、「ライジングサン」)は、シリーズの雰囲気を受け継ぎ、よりヒーロー性、ドラマ性を強めた作品だ。太平洋を舞台に、戦い抜く海兵隊員の物語である。 ■優れた演出で、映画の主人公に
多くの死傷者が出ている艦内で主人公ジョー・グリフィンは消火器を片手に、甲板を目指す。甲板では激しい戦いが行なわれていた。見上げるグリフィンの目に、空を覆い尽くす日本軍機がうつる。彼らがいきなり戦争を仕掛けてきたのだ。 戦艦の機銃にとりつき、夢中で戦闘機に向けて引き金を引くグリフィン。その間にも、甲板の仲間達はばたばたと倒れていく。雷撃の衝撃で、船から投げ落とされた彼が見るのは、海に浮かぶ仲間達の死体。小型艇に救助され、戦場を脱出しようとする彼は、日本軍の攻撃にさらされ、沈んでいく戦艦を目にする。大空を赤く染め去っていく日本軍機に、グリフィンは戦いを挑んでいくことになる。……ここまでが本作のオープニングともいえるシーンだ。 本作で、「敵」となるのは、日本軍なのである。プレーヤーは主人公の海兵隊員ジョー・グリフィンとなって、太平洋の各地を転戦することになる。日本人である筆者が、日本軍を相手に戦うこのゲームをプレイするのは、正直、奇妙な感触がある。エンターテイメントよりの、グリフィンの超人的な活躍が楽しめる本作において、日本軍はまさに「映画の悪役そのもの」だ。 前作までの「ドイツ軍」と、戦うシナリオでは、そういう感慨はわかなかったのか? というと、それはまたさまざまな意見、見解が出てくるだろう。また、リアルな戦いの舞台を用意していながら、ヒーロー然としたストーリーが展開することにも意見が出てくる場合もあるかもしれない。しかし、本作の提示する「映画のヒーローになれる」という、ドキドキ感は非常に楽しいものである。コンシューマ向けという点?では、ある意味で割り切り、エンターテイメントへ強い方向性を打ち出した作品となっている。日本人にとって感情的に割り切れない部分のある人もいるとは思うが、非常に優れた「娯楽作」であることは、最初に言っておきたい。 前述したオープニングシーンは、特に映画を意識したもの。爽快感よりも、混乱した状況の中で、怒りを向けて戦闘機に引き金を引く感覚がスムースに追体験できる。E3やゲームショウで「上映会」を行なって紹介していたのもこのシーンで、うまいプレーヤーが友人に腕を披露するのにぴったりのシーンだろう。 次ステージからはFPS(ファーストパーソンシューティング)として戦場を進むゲーム展開となる。しかし、戦車を修理し、さらにそれを援護して進む、といったように演出が非常に凝っている。また、深夜に敵の陣地奥深くにボートで侵入するといったシーンでは、暗闇からの敵兵に目をこらす緊迫感を体験。いつか見た映画の記憶が蘇ってくるかのような“臨場感”をはっきりと感じることができる。 映画を見ていて、「もし自分がその状況に立っていたら、どうするだろう?」と、思うことは数多くある。主人公が気がつかないピンチのシーンに、声を上げそうになることも。本作は、そういった感覚を絶妙にゲームに取り込んでいる。自分のプレイを映画の1シーンのように想像させる演出の巧妙さが随所にあるのだ。 ■日本軍を相手に、戦場を駆け抜ける 本作の操作方法は、このジャンルで定番の「FPS」方式。左スティックでキャラクタの移動を行ない、右スティックでキャラクタの向きと照準をする。心持ち照準は小さめで、敵が遠くから攻撃を行なってくることもあるので、ちょっとテレビに近い位置でプレイをした方が敵を狙いやすかった。 定番の小言になるが、海外は決定ボタンが×ボタンなのは、やはりとまどう。焦る場面での操作は全くないため、プレイに支障はないが、○ボタンを連打して何の反応もないことに気がつくことも多かった。 ゲームの難易度は敵のAIを調整することで行なう。グリフィンのHPはかなり多めで、少々の攻撃は耐えられる上、回復アイテムは多めに出現する。難易度はけっして高すぎない。ユニークなのが、敵の攻撃が銃弾より、近接攻撃の方がダメージが大きいことだ。 敵は銃弾を恐れず前進してきて、銃剣や、日本刀で攻撃してくる。モ ーションうんぬんより、こういった接近攻撃をきちんとフォローしているところにニヤリとさせられるが、ダメージの量を見たら、それは純粋な恐怖に変わる。体力が満タンでも、みるみるうちに減って、あっけなくやられてしまう。 マシンガンの猛射にも耐えうるグリフィンが、あっと言う間に倒されてしまうのだ。ゲームになれないうちは敵の接近攻撃が本気で恐く、まさに、「サムライソード恐るべし」という感覚を体験できる。近寄られる前に素早く撃つ、これは本作の鉄則のひとつだ。 戦ってるシーンでは、日本人ならではの面白い体験がある。本作は音声が非常に豊富で、敵も味方もしゃべりまくる。その際、“敵”の日本語に、どうしても反応してしまうのだ。「敵が来たぞっ!」という声を聞くと、思わず周りを見回してしまう。「敵って俺のことだっつーの」、とか自分にツッコミを入れながら戦うというのは、ちよっと奇妙な体験だ。ちなみに味方の英語はわかりやすいもので、さらに重要なメッセージはすべて日本語字幕で表示されるので、ゲームには何の支障もない。 太平洋戦争を扱った本作では、東南アジアが主な戦いの舞台となる。フィリピン、インドネシア、シンガポール……湿気の高い空気の、ジャングルのステージが多いが、単調になることなく、さまざまなアクセントが織り込まれている。また、意図的にステージによって使用する武器を制限しており、さまざまな武器で状況を突破する楽しさも体験できるようになっている。 基本的にゲームのステージは1本道。プレーヤーは、敵と戦いながら決められたルートを進んでいくのだが、それでもきちんと、「どこにいるかわからない敵との戦い」という雰囲気を再現していて、ちゃんとジャングルの戦いを体験できる。目の前の地面の穴から突然出てきて、撃ってくるのはちょっぴりやりすぎだとも思えなくもないが……。リアルな戦場だったら、銃だけ穴から覗かせて撃ってくるのだろうけど、本作では姿を丸見えにさせて攻撃をしてくる。反撃しやすいシチュエーションだ。 ゲームをプレイしていくと、多彩な活躍をするグリフィンと一体化し、自分がヒーローになったような気分に浸ることができる。捕虜を処刑寸前で助ける、吊り橋を渡ってくる敵を橋ごと落とす、敵の列車を止める……さまざまな戦争映画のアイデアをふんだんに盛り込み、爽快感のあるゲームシーンを自分の手で“実演”できる。ゲームシステムと密着していながら、無理なくそのシーンを演出できるのは、スタッフの演出手腕の見事さを物語るものだ。 さらに今作は、もう一個仕掛けがある。ゲーム中盤で、グリフィンは「戦略情報局員」に抜擢されるのである。消音拳銃を片手に、敵占領下の都市に潜り込み、さらに日本軍の隠し財産を追う任務へとつく。古き良き、ちょっとご都合主義も入ったスパイ映画のオマージュともいうべきストーリーをなぞることになるのである。 グリフィンを助ける仲間達もまたキャラクタ性を強く表現している。特に派手なスパイそのもののフィリップのノリノリの活躍、日系の情報局員タナカの渋い行動は強く印象に残る。また、他にも現地のゲリラなど、さまざまな仲間が戦闘を助けてくれる。 音楽にも触れておきたい。重厚なオーケストラを使ったBGMは、まさに古き良き戦争映画そのもの。ゲームを大いに、時には倍以上に気分を盛り上げる非常に大事なポイントである。他のゲームとは一線を画す音楽へのこだわりが込められているのを感じることができるだろう。
■カジュアルに楽しめるマルチプレイ PC版は、日本、アメリカのみならず、韓国、台湾でも現在も人気が高く、激しい戦いが日夜繰り広げられている。私事ではあるが、筆者にとってはじめて“多人数の戦いの怖さ”を学んだのがPC版「メダルオブオナー」であった。目の前に夢中になっていると、後ろから撃たれる。壁の向こうで誰かが撃たれている音がする。どこから、誰が攻撃してくるのかわからない。ドアの向こうにいた味方を瞬間的に撃ってしまったりする。 それははじめて感じた「戦場の怖さ」であった。新兵がうずくまって叫び声を上げるのがよくわかる、どうにもならない恐ろしさを想像できるリアルさなのだ。戦場で戦うなんてとてもできない、と痛感させられる経験だった。 本作「ライジングサン」は、ネットワークアダプター、もしくはBBユニットに対応。最大8人が参加できるオンライン対戦が可能である。マップは多彩で、ジャングルや市街地などのオーソドックスなものから、空母の中や、障害物の積まれた野球場といったものまで数多く用意されている。ホストプレーヤーの国籍も表示されているので、英語がわからないプレーヤーも安心、USBのマイクデバイスがあれば、ボイスチャットを楽しむこともできる。 ルールはチームデスマッチかデスマッチ。やられてもすぐ復活が可能で、制限時間内でひたすら撃ち合うゲームとなる。他のコンシューマ系FPSに比べると、ライトな印象を受けるゲームが展開する。殺伐と撃ち合い、すぐに復活し、敵を見つけて倒す。本当にうまいプレーヤーでなければ、制限時間内に1度も倒されない、ということはないだろう。逆に、何度も同じ方法で撃たれたプレーヤーが学習をし、復讐の思いを込めて逆襲する、というプレイが楽しめるのも、このルールならではの楽しさだ。 すべてのプレーヤーが撃ち合うデスマッチも面白いが、やはり仲間と撃ち合うチームデスマッチの方が、“戦っている感覚”が楽しめるだろう。味方の存在は、気分的にも戦術的にも大きい。慣れていないプレーヤーは、他のプレーヤーの的でしかないが、何度でも復活できるので、あきらめなければ他の人を撃てる機会もある。初心者にはぴったりのタイトルである。 自分の見えないところで展開している戦いに対する恐怖も、きちんと感じることができる。4vs4という参加人数の少なさは、本音を言えば、やはりちょっと物足りない。しかし、ネットワーク対戦の入門用のゲームとしてはかなりの良作である。参加をして、撃たれる怖さ、撃つ楽しさを体験して欲しい。 また、本作はオフラインでもマルチプレイが充実している。マルチタップを使った4人対戦。さらに、ふたりで進めることのできる「2プレイヤーズキャンペーン」が用意されている。 特に「2プレイヤーズキャンペーン」は本作の大きなウリのひとつ。残念ながら今回のレビューでは体験できなかったが、随所に共同で事に当たらなくてはいけない仕掛けも用意されていて、シングルとも、対戦プレイとも違った共同作戦が楽しめる。友達と声を掛け合いながら挑戦したいモードである。 こういった、「共同で作戦に当たる」という感覚は、「ファンタシースターオンライン」や、「バイオハザード アウトブレイク」など、日本のコンシューマ機で、最近オンライン環境で実現しつつあるプレイスタイルである。次回作などは、オンラインで、ボイスチャットも使った共同作戦を実現してもらいたいものだ。
最後に、ちょっとだけわがままを。PCでFPSを楽しんでる筆者にとって、やはりどうしても、「本作をキーボードとマウスでプレイしたい」という欲求がを感じてしまった。日本のコンシューマーゲームのみをプレイしている人には分からない感覚かもしれないが、FPSは、マウスとキーボードの操作にかなり順応したジャンルなのだ。 (C) 2003 Electronic Arts Inc. All Rights Reserved. □エレクトロニック・アーツのホームページ (2003年12月**日) [Reported by 勝田哲也]
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