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★PS2/GC/Xboxゲームレビュー★
ナムコレースゲーム20周年を記念して発売される、新たな4輪レースゲーム、「R:RACING EVOLUTION(以下R)」。「MotoGP」を手がけてきたプロデューサー・中村勲氏らをはじめとしたレースゲームの専門チームが「MotoGP」シリーズのグラフィックやノウハウを乗せて作り出した新規タイトル。なおかつ、3プラットフォーム同時に発売というチャレンジが感じられる1作だ。
メインとなるシステムやグラフィックについては以前からお伝えしているので、過去記事を参照していただきたい。ざっとプレイしてみた感覚としては、プラットフォームの違いほどは3機種の違いは露骨には感じられなかったが、インターフェイスの違いがあるため、ボタンの割り振りが変わっているほか、Xbox版には特別にXboxカラーの「ハマー」が収録されている。個人的にはコントローラでプレイした限り、GCが最もプレイしやすかった印象だ。
■ 「プレッシャーゲージ」を理解しよう このゲームがいわゆるシミュレータ要素だけで成り立っていない最大の理由は「プレッシャーバトル」システムを採用していることにある。前走車の一定距離内にいることによって、ライバルの「プレッシャーゲージ」はどんどんたまっていく。青→黄色→赤とゲージの蓄積量が増えるごとにゲージの色が変わっていくので、多少離れても認識しやすい。ただ、一度有効範囲外に出てしまうとゲージはいちから溜め直しになってしまう。それから、ドライバーによってゲージの長さが異なるので、忍耐強いのとそうでないのとなど、キャラクタごとの性格付けがなされている点はなかなかユニークだ。 「プレッシャーゲージ」をフルに溜めることができれば、前走車はほぼ確実にミスをする。ストレートで早くアクセルを開けすぎてみたり、ブレーキングでとっちらかってみたりとその形態はいくつかあるが、必ずといっていいほどミスを犯す。そこをよけて抜けていく、というのがこのゲームのオーバーテイクの基本となる。ただし、アウトからかぶせるように抜こうとすると、イン側のライバルがアウトにはらんできて接触、という場面も多いため、ゲージの蓄積量には常に気を配る必要があることはいうまでもない。ゲージの蓄積はオーバーテイクが完了するまで続いているから、とくにギリギリのバトルでは思わぬアクシデントに巻き込まれかねない。 一般的なレースゲームと同じようにガンガン走るだけではこのシステムの妙味はなかなか理解できないかもしれない。実際筆者も、プレイし始めた当初はどちらかといえばこのシステムに対して悲観的な見方をしていたと思う。特に序盤のレースは、スタート(最後尾)から3位ぐらいにポジションアップするまでは明らかにスピード差は歴然としているので、ゴボウ抜き状態になりがち。誤解を恐れず言うなら、ただ走るだけならまったくといっていいほどどうでもいいシステムなのだ。 ただし、後述のRP(Reward Point)を考慮に入れると話は違ってくる。具体的には「イベントオムニバス」の項で触れる。
■ 雰囲気を盛り上げる「インタラクティブAI」システム
もうひとつ、この無線にはメリットがある。「どうやって走っていいかわからない」というレースゲーム初心者のプレーヤーには、ピットからの無線アドバイスには注目してもらいたい。このアドバイスでよい評価を得られているということは、過程はどうあれ基本的な走りはマスターできているという確認になる。ただし、例えばコーナーの進入でうまくいって「ベストのスピードでコーナーへ進入した」と言われても、そのあとぶつけたりヨタヨタしては意味がない。あくまで目安にはなる、ということだけである。 また、ライバルの反応もCPUカーのキャラクタ付けとしてはとても面白い試みだといえる。「振り切れない!」とか、「畜生!」といった反応は、CPUカーの挙動と合わせ、見ていて(聞いていて)雰囲気を盛り上げてくれることは間違いない。
■ まずは「アーケード」、「レーシングライフ」モードを起点に始めてみよう ゲームスタートすると、まずは各種モードが一望できるメインメニュー画面が表示される。各モードは全てメインメニュー画面を経由して行き来することになる。このあたりは「MotoGP」と構造が非常に似ている。まずはじめに遊んでほしいと思うのは、気軽にレースが楽しめる「アーケード」、そして、徐々にマシンもレースカテゴリーもパワーアップしていく「レーシングライフ」の2つのモード。「アーケード」は、いくつかのカテゴリーのレースをポンと始めてすぐ終われる気軽さがポイント。これでゲームの雰囲気や、車の基本的な動きを探ることは十分可能だ。
ただし、一見万能とも思えるこの機構、ラリーコースなどの路面のμ(ミュー)が低い場所や、減速時にアクセルを急に緩めたり、急激なステアリング操作をすれば、当然フォローの限界を超えて車の挙動が不安定になる。アシストが働いているときは、画面中央下のインジケーターが赤になるので、何周かコースを回っているうちに作動感覚を覚えておき、ステアリングおよびアクセル操作可能なタイミングをつかんでおくといいだろう。 このモードのポイントは、サーキットとオフロード、ドラッグレースなど異なるカテゴリのレースを転戦して回るということにある。第1戦はツインリンクもてぎのスーパースピードウェイ。つまりオーバルコースからスタートとなる。ここでは、基本となるコーナリングラインと減速についてどれぐらい理解しているのかが試されるといった形で、転戦するに従って、要求されるスキルは上がっていくというスタイルになっている。サーキットではグリップ走行を中心にしたスムーズなコーナリングを、オフロードでは丁寧なアクセルワークと積極的に車の姿勢を変えてのコーナリングを、そしてドラッグレースではスタートダッシュのコツをつかませるように組み立てられていると感じられた。 しかし、積極的にゲームのほうから「これを覚えろ!」とか、「ここはこう走れ」といったテーマを押し付けるスタイルではなく、あくまでさりげなくコースとマシンが用意されている、という形式になっているので、ブレーキアシスト機能をONにした状態ではただ走っているだけで、各コースに用意されたテーマを感じ取ることは難しいかもしれない。難易度ノーマルでは、多分ほとんどレースをやり直すことなく最後まで行きつけてしまうだろう。 レースゲームをいくつも体験している人にはそれではかなり物足りない思いをすると思うので、ぜひアシストを切ってプレイしてもらいたい。車の挙動はかなりシビアになる(レールの上を走っている感覚がONとすれば、氷の上を走るのがOFF、という気分になる)し、ミスを取り返すのは非常に困難になってしまうが、車の制御を学習するには、こちらのほうがよりわかりやすいと思うからだ。まあ、ほかにも「タイムアタック」や「イベントオムニバス」があるので、腰をすえてゲームにとりかかる人はそちらでアシスト機能を切ってのプレイを繰り返してもらう方がいいかもしれないのだが……。いずれにしてもこのゲームの本当の勝負はやはりアシストOFFから始まるのではなかろうかと思う。
■ RPに気をつけろ! 「イベントオムニバス」でレースとマシンを購入せよ 「レーシングライフ」や「イベントオムニバス」でレースに参戦することで、RP(Reward Point)を獲得できる。このポイントを使って、「イベントオムニバス」では、新たなマシンを購入したり、入手したマシンをチューンしたり、新しいレースカテゴリに参加できるようになる。マシンは30台ほど(過去記事参照)だが高価なので、まずはレースカテゴリーの購入を行なうほうがいいだろう。参加費の高いレースは当然優勝すれば得られるRPも大きい。 RPの稼ぎ方だが、まずマシンをぶつけないこと。そしてコースアウトさせないこと。これが効率よく稼ぐためのポイントである。また、プレッシャーゲージをフルにすればその分ボーナスがつくし、トップで周回するとボーナスになる。という風に、基本としては走りきればその分が、さらに順位がよければボーナス、そして走った内容によってボーナスという風に追加されていく。同じレースを走っても、稼げるポイントにはかなりの差が出ることになる。難易度の低いレースに何度も挑戦するか、厳しいレースに参加してガッポリもうけるか、というレースごとの違いはあるものの、根本的には「いかにスマートに、そして早く走れるか」が問われることになるわけだ。 筆者の場合、「レースはバトルだ!」という意識が強い半面、「ゲームだしノーリスクで楽しめればいいや」という甘い考えでいたため、一般的なゲーム感覚でガンガン攻めてコースアウトも接触もいとわない、どしどし先行車を抜いていくというプレイスタイルで遊んでみたが、これではこのゲームにおいてはまことに効率が悪い。なにしろコースアウトとノークラッシュボーナスはやはり大きいのである。また、レースカテゴリによってはコースの一部を利用したタイムアタックなどがあり、その場合、従来のコース幅ではなく、パイロンによってコーナリングラインを制限されているものも多い(パイロンに接触すると1本ごとにペナルティタイムが与えられてしまう)。そうなると何が問われるかというと、「いかにクルマを自在に操れるか」という最も基本的かつ重要な要素が鍵を握るわけだ。 最初、かなりこのRPの縛りは窮屈に思えて仕方がなかった。膨大なレースカテゴリ、そして必要RPを前にして気持ちはあせるばかり。その数は膨大で、マシンの取得具合、そしてレースの体験具合などによってセーブデータに到達度が%表示されているのもあせりを増幅した(当然この原稿を書かなければならない、という都合もある)。そうなると、「クルマをぶつけちゃだめ、コーナーでコースをはみだしちゃだめ」という縛りは非常に面倒に思えてくる。 だが、じっくり腰を落ち着けて走ってみると、この縛り(とくにノークラッシュ)をクリアするのは大変だが達成感もそれなりにあることがわかってきた。ストレートエンドで前走車のインをつこうとすると、あからさまなスピードの違いがあるときは大体インを開けてくれる。これがわかれば、それほどクラッシュしなくても済む。ただしS字コーナーなどでラインがクロスするようなときや、レース序盤の混戦状態、ほかにもコース幅がさほどない場所ではやはりCPUカーにこちらのラインを開けてもらうこともままならないので、慎重に、前走車の動きを観察しながらスキをうかがいつつ抜いていく、といった我慢のレースとなる。
実際のレースでも、さっさと前走車を追い抜いていくことは非常に難しい。よっぽどのスピード差がないことには、コーナーでの駆け引きが重要になってくることは明らかだ。そして時にはがまんを強いられることも多い。このように走っていけば「プレッシャーゲージ」が俄然生きてくる。RPのボーナスポイントのひとつに「プレッシャーゲージフル」という項目がある。何台かのプレッシャーゲージを満タンにして抜いていけば、当然ボーナスは増えていくし、前走車がミスしてくれるのでオーバーテイクも比較的安全にできる。そういった意味でも、このRPの縛りは「実際のレースを再現」することに一応は成功しているだろう。
■ 従来のレースゲームにない「ストイックさ」をどう受け止めるかで評価は分かれる
前述の通り、システムを理解して、RPの獲得をテーマにプレイしていくと、このゲームの面白さとクルマを操る楽しさの片鱗が自分にも伺えたのは事実だ。「ぶつけない、はみでない」を意識して走るだけで、ぐっとハードルは高くなるが、達成したときの充実感はかなりのものがある。CPUの挙動以外、おおよその場合失敗したとき=自分のドライビングミスであるから、非常にわかりやすいし、よりうまくなろうと向上意識も沸いてくる。 だからといって、筆者個人としてのこのゲームの評価はやはり諸手を上げて……といかないのが正直なところだ。というより、正直言えば、このゲームに対しては未だに自分としての評価に迷いがある。とくに、「どうやって走ればより早くなるか」、「自分の走りはどこがダメなのか?」という答えはこのゲームにおいてあまりにさりげなくそのヒントが示されていると思われるし、実際のドライブテクニックの知識があったとしても、それをゲーム上で実行するには、インフォメーションの欠落というビデオゲームの限界も含め、迷宮に入り込むような深いテーマだと思える。これを見つけることこそ、このゲームを遊ぶ意義にもつながるのだが、プレーヤーが理解し、実感できるための材料があまりにも少ないのではないだろうか? この疑問は同じチームで制作されている「MotoGP」シリーズにも通ずる筆者の感想であることは偽りなく、やはりある程度のステップアップのための直接的なレクチャーが欲しい、というのが正直な感想だ。アシストのON/OFFでの挙動の落差はそれを感じさせるし、より積極的にクルマの挙動と、このゲームをわかってもらうための仕掛けといったものを用意してはもらえないのだろうか? というおせっかいな考えも頭をもたげる。 ただ、「リッジレーサー」、そして「MotoGP」シリーズを経て、今作がナムコのレースゲームとして、新たなアプローチを踏み出した意欲作であることは間違いはない。続編が楽しみな1作といえるだろう。 【11月27日追記】 オフィシャルサイトでタイムアタックランキングがスタートした。タイムアタックモードで表示されるパスワードを使ってランキングページに登録できる。アシストのON/OFFや、AT/MTなどの情報も表示される。腕に自信のある人はぜひ、走りこんで登録してみよう。
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□ナムコのホームページ (2003年11月27日) [Reported by 佐伯憲司] また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved. |
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