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【編集部より】

発売日から日が経ってもまだまだ売れ続けるソフト、売れ続けてほしいソフト……そんなライターの思いを込めたレビューを「発掘レビュー」としてお届けします。掛け値なしでオススメするこのレビュー、買い忘れていた人はぜひチェックしてみてください。

 

季節を体で感じながら太陽と過ごす
「ボクらの太陽」

  • ジャンル:太陽アクションRPG
  • 発売元:コナミ
  • 価格:4,980円(税別)
  • プラットフォーム:ゲームボーイアドバンス
  • 発売日:発売中(7月17日)



パッケージの中には、太陽エネルギーチェックカードが封入されている。公式サイトに「おてんこ予想」という名の天気予報が掲載されているなど、とにかく太陽づくし
 太陽光をGBAに直接当て、太陽光を利用することでゲームを進めていく「ボクらの太陽(以下、ボクタイ)」。主人公のヴァンパイアハンター「ジャンゴ」が、太陽の使者「おてんこさま」と共に、太陽の街「サン・ミゲル」を救うため、「イストラカン」へ向かい、「イモータル」と呼ばれる不死者「ヴァンパイア」たちと戦っていくストーリー。

 太陽は、このゲームにとって欠かせない。ROMに太陽センサーがついていて、GBAに挿した状態で太陽光を直接当てながらプレイすることで、ゲームの内容に変化が起こるのだ。

 この、誰もが気になる「太陽の光を使う」という部分に、筆者自身も大きな魅力を感じると共に、「じゃあ夜はプレイできないの?」という疑問も感じた。また、「太陽を使う」という話が前面に出過ぎるあまり、夏真っ盛りにふさわしいゲームというイメージがあって「冬にプレイするとどうなるのか」といった疑問もあった。この辺りがどう解決されているのかは実際にプレイするまで謎だったのだ。

 これから秋を迎えるにあたって「時期を逸した」と思い、買い悩んでいる方がいらっしゃれば、本レビューを参考にして頂ければ幸いだ。


■ 太陽に向かって叫べ、「太陽ぉーーー!」

 “太陽は、生命にとって無くてはならない大切なエネルギー”と言うと、まるで環境保護団体のキャッチコピーのようだが、遊んでみて、まずそんな感想を抱かせてくれるのがこの作品だ。センサーに光を当てながらプレイするため、日が沈み始めると慌てながら目的を急ぎ、夜になったらまた日が昇るのを待ち遠しく思い、地球のリズムに合わせて遊ぶこととなる。

 だが、必ずいつも太陽の光が必須かというと、そうではない(できれば、いつも照っていてくれると有り難いのだが)。どうしても太陽が必要な場面は限られていて、それは主に主人公の武器である太陽銃へのエネルギーチャージと、「パイルドライバー戦」の場面だ。

 画面右下にある銃マークの付いたゲージが「太陽銃ゲージ」で、これが太陽銃のエネルギー残量を表す。その下の太陽マークの付いたマス目のゲージが「太陽ゲージ」で、これは太陽センサーがキャッチした現在の太陽の光の強さを表している。

 主人公ジャンゴの唯一の武器、太陽銃「ガン・デル・ソル」は、「太陽銃ゲージ」を消費することで使用できる。減った太陽銃ゲージを最充填するにはいくつかの方法があり、その1つが太陽光を使ってのエネルギーチャージ。センサーに太陽の光を当てた状態(「太陽ゲージ」がひとつでも点灯していればOK)で、Aボタンを押し続けるとエネルギーチャージが行なえるのだ。

 ちなみに、「太陽ゲージ」のマスが1つでも点灯した状態なら、主人公が太陽光を受ける場所(建物の外やフィールド上など)にいる場合は、放っておいても徐々にゲージは回復していく。

 「パイルドライバー戦」とは、いわゆるボス戦。「パイルドライバー」という装置を使って太陽光をフル活用し、ボスを浄化する。このため、「太陽ゲージ」が点灯していなければ浄化作業に取りかかれない。また、ここでは特に太陽のエネルギー量によってボスへの攻撃力が変わるため、強力な太陽光が欲しいところだ。


Aボタンを押せば、「太陽ぉーーー!」 と叫んでエネルギーをチャージ! この仕草は、大人の心をも楽しくさせてくれる。「太陽ゲージ」が多いと少ないとでは、チャージのスピードに、モロに影響が出る この魔法陣のようなものが、「パイルドライバー」。塔のような「ジェネレーター」が、太陽エネルギーを増幅する。イモータルの浄化は、パイルドライバーをもってのみ可能だ
浄化を始めるとアンデッドが暗黒パワーで押し返してくる。邪魔しようとするボスの攻撃をかわしながら、こちらも負けずにジェネレーターを撃つことで押し返せ!


  大まかなゲームの流れは、フィールドを進んでダンジョンに入って、ボスを探し出して倒す。次はボスが入った棺桶を鎖で引きずって、浄化装置「パイルドライバー」まで運ぶ。最後にパイルドライバーを利用して、太陽エネルギーでボスを浄化する。これが、一連の「イモータル」浄化の流れ。新たに進めるようになったフィールドを歩き、これを繰り返していく。

 またフィールドには、「イモータル」がボスとして控えるダンジョンのほか、ザコばかりが棲息する「アンデッドダンジョン」が存在する。これは、ストーリー上必ずしも全てクリアしなければならないものではないが、目的地に向かってフィールドを進む上で、いくつかの「アンデッドダンジョン」をクリアしなくてはならない。ここでは利用価値のあるアイテムが手に入ることもあるので、全て回って宝箱を回収しておくのがお勧め。

広大な「イストラカン」のマップ。黒い箇所が、まだクリアしていないダンジョンを示す 何度倒しても、ザコ敵が復活する「アンデッドダンジョン」。しかし一度クリアすると、ダンジョンの始めと終わりにある魔法陣がワープポイントの役目を果たしてくれるので、通り抜けが可能になる


 城やダンジョンの中には、多彩な罠が仕掛けられ、個性的な特徴を持つアンデッドがうろついている。ダンジョンは、パズル要素の謎解きなどもたっぷりあって、先へ進むと難度が上がっていき、遊びごたえは十分。

 ダンジョンの仕掛けの例を紹介すると、例えば重いものを押してスイッチの上に載せると開く仕掛け扉がある。これが、先へ進むとアンデッドをおびき寄せることでスイッチを踏ませてみたり、更には、遠方から太陽銃のカスタムパーツで音の鳴るフレームを選んでセットし壁を撃って音を鳴らしておびき寄せてみたり、といった手の込んだことになってくる。

 また、プレイ前に設定するROMの時計に合わせて、ゲーム内にもリアル世界同様に時間の流れが存在する。夜は、朝に比べてザコ敵が増えるだけでなく、ダンジョンの仕掛けにも時間と連動したものが存在する。

 ザコ敵のアンデッドたちをかわすのも面白い。ザコ敵は、基本的に主人公が死角に位置すれば、攻撃してこない(中には音にのみ反応するマミーなどもいる)。

 うっかりザコ敵に見付かった場合、その頭上に赤い「!」マークが表示されると、即座に攻撃が始まってしまい、応戦するかその場を退散しなくてはならない。それを防ぐには、壁に張りついて足音を立てずに歩いたり、逆に音を立てて見張りをおびき寄せそのスキに背後を通過したり、といった動作で戦わずして敵の死角をついて進む工夫が必要。

 会敵せず先を目指す必要があるのは、城内やダンジョンでは光が届きにくく、ザコ敵をいちいち相手にすると、「太陽銃ゲージ」がすぐになくなってしまうためだ。そしてもう1つは、成績に響いてしまうことにある。1つの面とも言える城やダンジョンをクリアした際表示されるリザルト画面には、敵に見付かった回数も明記される。

あまり見付かりすぎると、クリアした際に表示されるリザルト画面で、成績に響いてしまう ザコ敵の攻撃だからと侮ると、クロロホルンにまとわりつかれて意外にライフゲージを削られる。背後をついて進むべし


 しかし、ノーマルモードでただクリアを目的にプレイするなら、そこまでシビアに隠れることを要求されるものでもない。太陽光と天窓さえあれば、ダンジョン内でもチャージはできる。「太陽ゲージ」が1マスでも点灯した状態で特定の場所に行くと、天窓からの光が床に映る。ここに立ってAボタンを押せば、エネルギーチャージができる。当然、屋根のない場所や屋上へ上がれば、チャージのチャンスだ。

 また、ゲームのクリア後に現れるパスワードを公式サイトの入力画面で入力すると、結果に応じたコメントや称号がもらえたり、壁紙のダウンロードが行なえたりする。だが、アンデッドから身を潜めることを随所で怠っていた筆者が与えられた称号は「バーサーカー」。正面からザコ敵ばかりを相手に挑み、無駄な戦いをしすぎたようだ。


■ 太陽がなくても楽しめるところは多い

 太陽が出ていない場面で、どうしてもチャージしたいときには、一応いくつかの方法がある。ただし、メインは太陽を使ってのチャージ。以下に紹介する方法は、太陽が沈んで尚どうしてもプレイし続けたいというときや、ダンジョン内で困った場合の応急処置と考えた方がいい。

・アイテム「太陽の実」や、グレネード「ライジングサン」を使う

 「太陽の実」を使えば、多少エネルギーが増える。また「ライジングサン」を使えば、一定時間太陽のかけらを召喚し、ダンジョン内であってもAボタンでチャージが可能となる。しかしこれらは、使用回数に限界がある。「太陽の実」は、太陽樹の根っこで掛け合わせて栽培することも可能だが……栽培にも結局、太陽が必要となる。

・太陽タケノコ

 ダンジョン内で太陽銃を使うと、床から水晶のようなモノが生えてくることがある。これが「太陽タケノコ」で、3種類の「精霊虫」のうち、オレンジ色の「太陽虫」が出れば太陽銃のバッテリーを多少回復させられる。他には、ライフを回復させる緑の「月光虫」、太陽銃のバッテリーからエネルギーを吸い取る黒い「暗黒虫」がいる。「暗黒虫」は取っても損するだけなので黒い虫が見えたら逃げた方がいい。他の精霊虫は、Aボタンで近くに呼び寄せることもできる。

・太陽スタンド

 太陽センサーが感知した太陽エネルギーを、自動的に貯蔵しておいてくれる装置。ダンジョンの中に設置されている個所があり、この前に立つと貯まったエネルギー量が表示され、Aボタンを押せば太陽銃にエネルギーを補給できる。夜でも、太陽の出ていない場所でも、補給可能。

 ただし、ここにエネルギーをたくさん貯めておくためには、太陽のもとでプレイしている必要がある。

・暗黒ローン

 利率800%などという、ものすごい利率で太陽エネルギーを貸してくれる。施設を見つけて入るか、「暗黒カード」を使えば呼び出していつでも借りることができる。しかし、カードに書いてある通り「ご利用は計画的に」。

 太陽光を確保できない状況でボス戦にたどり着いた場合などに、誰もが思いついて試してみるのがセンサーに電光を当てることだろう。

 電気スタンドの蛍光灯や白熱電球で試してみたが、無駄だった。ヤケドしそうなほど近づけても、ゲージのせいぜい1マスが点灯して精一杯、というところ。それも非常に不安定で、当然チャージスピードも切ないほどに遅い! 特にボス戦では、光の供給が途切れると「ジェネレーター」が上を向いてしまって、もとに戻すだけで四苦八苦なので、かなり厳しい戦いとなる。プレイに夢中になると、蛍光灯にうっかり手を接触することもあって、蛍光灯といえどもけっこう熱くて危ないので、お勧めはしない。

 しかし、どうしても朝日が昇るのを待つことなくプレイを進めたければ、照明器具を使って何とかかんとか、ぎりぎりゲージ1でプレイできなくもない。


■ 自分にとって異色だった本作の「ヴァンパイア」像

ライバル、暗黒少年「サバタ」が登場。そのマフラーに反応する「おてんこさま」だが……? キャラのセリフには、子供が対象とされているわりに、読むのが難しい単語や、言い回しも豊富に使われる。よって、ふりがながうたれている率がとても高い
 本作のストーリーは、コナミお得意のヴァンパイアが題材となっていて、主人公はヴァンパイアハンターだ。個人的に面白く感じたのはこの主人公の独特の性質で、これまでのヴァンパイアハンターとは全く異なる雰囲気が魅力的だ。

 というのも、筆者の中に築いてきたヴァンパイアハンターのイメージは、闇にも馴染むヒーロー、「闇」と「光」どちらに対しても中性的な存在、というものだった。ところが、本作の主人公「ジャンゴ」は、めちゃくちゃに陽性なヴァンパイアハンター。存在そのものが「太陽少年」であり、闇とは対極に位置する。

 また本作は、ヴァンパイアが嫌うとされる物の中で唯一太陽の光だけが描かれている。逆に、十字架、にんにく、聖水……といった、これまでヴァンパイア退治を題材に扱ったゲームに登場してきた、ある種安心感お決まりの感があるアイテム類は一切出てこない。これも「ジャンゴ」を既存のヴァンパイアハンターとは、ひと味もふた味も違ったヒーローに仕立て上げている要因のように思う。

 いくつかのダンジョンをこなしゲームのシステムに慣れる頃、ストーリーには月の巫女「リタ」や、暗黒少年「サバタ」といったキャラクタが現れ、この辺りからストーリーが徐々に転がり始める。特に暗黒少年と太陽少年の絡みは、意外な展開を見せつつ緻密なストーリーで盛り上げてくれるので、たっぷり味わってほしい。



■ 季節を体で感じながら「ボクタイ」と過ごす。「太陽と共にあらんことを!」

 社会人がGBAで遊ぶのは、通勤途中の電車内や何かの待ち時間など、外出時のちょっとした隙間の時間を利用することが多いのではないかと思う。GBAをあえて外に持って出てじっくり腰を据えて遊ぶという習慣は、筆者の場合は「ボクタイ」以前にはなかったこと。日中の日差しの下で、夜と比べて驚くほどスムーズにゲームが進む「ボクタイ」の場合は、快晴だとつい「もったいない!」という思いから、自然と外に出てしまう。

 昼間は会社勤めがある人ならば、ボス浄化にはお昼休みを利用して、それ以外のパートは通勤電車内で進める、というプレイスタイルが取れるのではないかと思う。

 また、先に「暗黒ローン」について記述したが、ダンジョン内には「太陽バンク」という施設も存在する。「太陽バンク」は、「太陽スタンド」に蓄積したエネルギーを預けておくことで、エネルギーに利息をつけて増やしてくれる。本ソフトはセーブデータを2つ作ることができる。2つのデータの「太陽スタンド」エネルギーは共通となっており、どちらからでも引き出せるのだ。というわけで、例えばお昼に遊べる子供とソフトを共有して使用し、集めた太陽エネルギーを「太陽バンク」に預けておいてもらえば、夜勤のお父さんだってエネルギーを引き出して遊べるのだ。そこまでするかはさておき。公式サイトに、「通行人のいぶかしげな視線を感じながらも、親子して外でプレイした」という話が掲載されていた。

 「ボクタイ」でなければ、恐らく体験しなかったであろう筆者のびっくり体験は、以下のような内容だ。ご近所の家の前に立ち、塀の日陰を拝借して、手首から先だけに太陽を当てて立ちプレイを続けること数十分。そしてふと振り向くと、家の塀と私の体の間でクモが巣を張っていた。ゲーム歴約20年だが、ゲームに熱中している間に、クモに巣を張られた体験は初めてでしたよ、あはは(と、今は冷静に書いているが、気付いた瞬間は奇声を発して大慌て)。貴重な体験をしたようにも思うがもう経験したくないな、とも、切に願ったりする。

 外でプレイすることによって、誰しもが「ボクタイ」体験と共に、外でプレイする自分自身の体験を持つことになる。風に吹かれ季節を感じ、照り返すアスファルトや公園の土の匂いを嗅ぎ、太陽を全身に感じ取る。GBAを通して太陽を手に握り締め、さりげなく地球上に存在する事実を体感できるのだ。これは、私みたいなインドア派の大人にとっては、「ボクタイ」がもたらすこの上なく素敵な体験だ。


 今年の夏は、全く夏らしくなかった。去年のような猛暑は一体どこへ? むしろ、夏をすっ飛ばして秋が訪れたかと思うような異常な気候。7月から8月にかけては、長びいた梅雨と台風により、「太陽ゲージ」が3~5辺りをうろうろしている状況だった。本当はセンサーに太陽を当てすぎると、オーバーヒートを起こすはずが、起こりようもなかった。

 これからの季節、オーバーヒートを見ることはあまりなさそうだが、いわし雲の下で太陽エネルギーをチャージするという体験も、また格別だろうと思う。


(C)2003 Konami Computer Entertainment Japan

□コナミのホームページ
http://www.konami.co.jp/
□製品情報
http://www.konamijpn.com/products/boktai/japanese/boktai_index.htm
□関連情報
【2003年7月18日】コナミモバイル、GBA「ボクらの太陽」 携帯サイトに連動コーナーを開設
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030718/konami.htm
【2003年5月12日】コナミ、太陽センサーを内蔵したARPG GBA「ボクらの太陽」を7月17日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030512/konami.htm

(2003年10月22日)

[Reported by 河本真寿美]


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