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★PS2・GCゲームレビュー★

「ドカベン」の山田太郎などが参戦!
水島新司キャラクタゲームの金字塔

「激闘プロ野球 水島新司オールスターズ VS プロ野球」

  • ジャンル:野球アクション
  • 発売元:株式会社セガワウ
  • 価格:6,800円(税別)
  • プラットフォーム:PS2、GC
  • 発売日:発売中(9月11日)



■ アーケードゲーム「ワイルドライダーズ」から継承されたトゥーンシェード技術

 「ドカベン」や「野球狂の詩」など、数々の名作野球漫画を手掛けた巨匠水島新司先生。その水島キャラクタが参戦する野球ゲーム「激闘プロ野球 水島新司オールスターズ VS プロ野球(以下、激闘プロ野球)」が、プレイステーション 2とニンテンドーゲームキューブで発売された。リアルなグラフィックで描かれた実在選手のなかにアニメ調(トゥーンシェード技術)の水島キャラが投入された異色作。近年リリースされた野球ゲームラインナップのなかにおいても、見過ごすことのできない存在感を放っている。

 開発は、野球ゲームの制作に定評のあるワウ・エンターテイメント(現セガワウ)。なお、水島キャラクタの描写には、同社がアーケードでリリースしたバイクアクションゲーム「ワイルドライダーズ」のトゥーンシェード技術が培われているという。「ワイルドライダーズ」のグラフィックから感じられた“リアル路線よりもパワーに満ちた力強さ”が激闘プロ野球水島新司オールスターズ VS プロ野球」にしっかりと継承されているのだ。

水島キャラクタの雰囲気は原作のまま。リアル系グラフィックで描かれた実在選手がオマケに見えてしまう


 メインのゲームモードは、オープン戦、ペナント、ホームラン競争、オリジナル選手作成、チーム編成、選手名鑑、システムと、一般的な野球ゲームに必要とされるモードはほぼ網羅されている。選手、球場のデータはプロ野球12球団の2003年度最新データを採用し、現在活躍中の選手が実名で登場する。水島キャラは、デフォルトではスターティングメンバーに入っていないため、トレードせずにゲームを開始すればスタンダードなプロ野球ゲームとして楽しむことができる。

 1ゲームの所要時間は30分程度。試合時間は長く感じるかもしれないが、水島キャラ同士の会話演出、打者がバッターボックスに入る際の動作演出などはBボタンでスキップできる。プレイのテンポアップも充分可能となっている。


■ 岩鬼VS.岩鬼も可能! 水島新司ファン感涙のオールスター戦

 このゲームのウリであり、また最大の特徴といえるのが、原作を忠実に再現した水島キャラクタたちを操作できることだ。総勢35名の水島キャラクタは、フォームからカットイン演出の口調にいたるまで、開発者のこだわりが随所に見える。山田太郎や犬飼武蔵などの巨漢がドスドスと走塁する姿は、原作アニメーションに勝るとも劣らない大迫力。里中と山田の黄金バッテリー復活や、実在選手と水島キャラの夢の対決をセッティングできるのも本作の魅力だ。

水島キャラクタ同士が相対すると、カットインされる会話演出。投手や捕手になった場合の台詞なども用意されている


水島キャラなら同キャラ対決も可能。残念ながら同キャラ対戦時のカットイン演出は用意されていない
 水島キャラクタを使用したい場合は、トレードかオープン戦のスターティングメンバー選択画面で実在の選手と入れ替える必要がある。水島キャラクタ同士の対決が見たいときは、あらかじめ複数のチームに水島キャラクタを割り振っておかなければならない。ひとりの水島キャラクタをチーム内に複数投入することはできないが、異なるチームなら話は別。さらにこのゲームでは、全選手に投手をやらせるといったことも可能で、投手の岩鬼正美と打者の岩鬼正美が対決するというショッキングなシーンも作り出せる。

 水島キャラクタには「秘打」または「秘球」が割り当てられている。これらの特殊技は打撃前、投球前に選択が可能。これらは現実の野球ではあり得ない“漫画的な演出をともなう技”で、見た目のインパクト同様にその効果は高い。秘技ゲージを大量に消費するため、使用回数に制限はあるものの、要所で使えば絶大な戦果を発揮する。

 これらの秘打・秘球は、実にバラエティ豊かで見た目にも楽しいのだが、実は性能にバラつきがある。筆者の場合、友人と繰り返し対戦しているうち、水原勇気のドリームボールにも、なんとかバットがかするようになってきた。CPUに投げた時はあっさり安打を打たれるように、秘打・秘球も完全無欠ではない。秘技ゲージの消費も馬鹿にならないため、秘打・秘球を使用するプランをきちんと組み立てる必要があるだろう。

不吉霊三郎の秘打「不吉」。霊三郎の打球は、相手チームがエラーしやすく、またケガをする選手の確率が上がる 青空晴太の秘打「日払い打法 2倍」。ヒット時の獲得金額は表示のみで、ゲーム中では使用しないというのがいさぎよい
岩田鉄五郎の「熱闘ハエ止まり」。時速50キロというハエが止まるほどのスローボールだ 国立珠美の「ニュードリームボール」。ドリームボールより球速がアップしている


 水島キャラクタのアクションをチェックするうえで役に立つのが、リプレイ機能の存在。直前の一打席のみだが、投球から打撃終了までのリプレイ映像を繰り返し見ることができる。ズームイン、ズームアウト、巻き戻し、早送り、と機能が充実しており、長年の疑問であったドリームボールの投球モーションを、このリプレイで細部に至るまでチェックすることができた。

任意のポイントで画面を停止できるリプレイ。実在選手もチェックできる


 このように、水島キャラクタの再現度は非常に高いが、一部声優がアニメ版と異なっているのは、原作ファンにとって大きなマイナスポイント。また、表情のグラフィックにも、もう少し喜怒哀楽のパターンが欲しかった。これは岩鬼に限ってのことなのだが、ずっと口が開いたままなので、どこか着ぐるみを連想させてしまう。


■ 野球ゲームとして、ごくスタンダードな操作系統

 野球ゲームとしての操作体系は、画面上の情報が直感的にわかりにくく、数試合をこなして始めてスムーズに操作できるといった印象を受けた。

 打撃の手順は、球種予測 → バットカーソル位置の調整 → スイングとなっている。予測した球種に対応して、バットカーソルの形が変化し、読み通りならミートしやすくなる。たとえば、フォークが得意な投手には、フォークを予想してバットカーソルを縦長に変形させることで、落ちるボールを格段に当てやすくすることができる。

青いバットカーソルで、黄色の投球コースカーソルを追いかけるのが基本。ただし、最終的にはタイミングが勝負の分かれ目になる


 本作のバットカーソルは広め。ジャストミートしやすいが、やや判定があいまいで「バットの真芯で捉えて飛ばした」といった爽快感に欠けるのが残念。この問題を解消するには、Rトリガーボタンでバットカーソルを「強振」に切り替えるといい。バットカーソルは小さくなるものの、バットの芯で捉えたという実感が高まる。

 デフォルトでは、このバットカーソルの移動タイプがBタイプに設定されている。Bタイプは、コントローラーのスティックを入力していない状態だと、バットカーソルが中央に戻ってしまい非常に操作しづらい。試合前にオプションで、バットカーソルの移動タイプをAタイプに変えておくことをお勧めする。

 投球は、球種選択 → 投球動作開始 → 投球マーカーによるコース設定 → リリースといった動作から成り立っている。投球マーカーはリリース直前まで操作可能なので、ストライクゾーンの隅を突く投球が可能だ。

投手の能力にもよるが、選択できる球種は多く、駆け引きの要素は高い


 守備面では、リアル系野球ゲームの宿命というか、捕球から送球までの一連の動作が鈍くもどかしい。この辺りを踏まえ、こまめな守備シフトの変更、捕球直前にAボタンを押して素早く送球するテクニックなどを身につけていかないと、ゲッツーはおろか大量失点といった事態を招いてしまうだろう。


■ ペナント戦からオリジナル選手エディットまで、各種モードは充実

 「激闘プロ野球水島新司オールスターズ VS プロ野球」には、野球ゲームで定番といえる各種モードが用意されている。目新しさには欠けるものの、そのぶん安心してプレイできる環境が整えられている。

【オープン戦】
・12球団およびオールスターからチームを選び、CPU対戦、2P対戦、試合観戦が可能。試合前、自由に水島キャラクタをチームに配置できる。

上画像はヤクルトの全選手を水島キャラクタと入れ替えてペナントモードをシミュレーションしたところ。2位という結果に落ち着いた
【ペナント】
・開幕戦から始まる全シーズンを戦うモード。一試合ごとにプレーヤーが手動でペナントレースを進められるほか、CPUが試合を代行して結果のみ報告される「シミュレーション」がある。これにより、わずか数分でペナントレースを終了させることも可能だ。選手のケガによる欠場・復帰など、実際のペナントレースに近い臨場感が楽しめる。不満点は、ペナントモードではオープン戦のような試合観戦モードが実装されていないこと。

水島キャラクタの顔がプリントされているターゲットを狙い、ハイスコアを目指す「ターゲット」
【ホームラン競争】
・オールスターゲームでおなじみのホームラン競争。規定球数内でのホームラン数を競う「ノーマルルール」、規定のミス回数に達するまで挑戦可能な「アメリカンルール」、宙に浮いているターゲットを射抜くなどで得られるポイントでハイスコアを競う「ターゲット」の3種類がある。やり込み要素が少ない本作において「ターゲット」のハイスコアは挑戦しがいのあるモードといえる。

投球モーションや、打撃スタイルも数多くのパターンが用意されている
【オリジナル選手作成】
・女性選手を含め、オリジナル選手が作成できる。顔のパターンは、リアル系のほかに、いかにも水島キャラクタといった感じのトゥーンタイプも用意されている。オープン戦やペナントでオリジナル選手を使用すれば、基本能力がアップしたり、秘打や秘球を覚えて成長していく。ただし、年齢や年棒など野球人生を感じさせる詳細パラメーターは無い。作成そのものは面白いが、成長要素が乏しいため育て甲斐が無く、あと一歩という印象だ。

【チーム編成】
・各球団のスタメンや、球団間の選手トレードを行なう。このモード内の「トレード」で、水島キャラクタを実際のプロ野球チーム内の選手と何度でも入れ替えることができる(移籍金などの制限は一切無し)。移動した選手を一括して初期設定に戻す機能もオプションにあるため、心置きなくトレードが行なえる。プレーヤーのオリジナル球団をエディットできない、監督の交代が不可など、いくつかの不満点は残る。

水島キャラクタの足跡がコンパクトにまとめられている選手名鑑
【選手名鑑】
・ゲーム上に登場する実在プロ野球選手・水島キャラクタ・オリジナル選手のグラフィックや詳細データを確認できる。水島キャラクタには、原作の紹介コメントも付加されている。原作を知らないユーザーは、選手名鑑をチェックしたほうがいいだろう。


 水島キャラクタが登場するため、リアリティの面で違和感があるのは否定できない。だが、水島キャラクタがトゥーンシェードというベストの手法で描かれ、無理なく野球ゲーム内に溶け込んでいるのは確か。ワウ・エンターテイメント(現セガワウ)の英断とセンスは、大きく評価されるべきだ。水島新司先生のファンだけでなく、リアルな野球ゲームに飽きたプレーヤーには一見の価値がある。ただ、PS2版、GC版ともに、10月末稼動予定のアーケード版と連動しないのは残念だが……。

 なお、筆者はPS2版とGC版を両方プレイしてみたが、操作感覚や演出などが一部異なるように思われた。もし気になるようであれば、店頭でプレイするなどして実際に確認してみるといいだろう。

(社)日本野球機構公認 プロ野球12球団公認 フランチャイズ11球場+札幌ドーム公認
(C)水島新司 (C)SEGA / SEGA WOW.,2003

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□セガワウのホームページ
http://www.segawow.com/
□製品情報
http://www.wow-ent.co.jp/jpn/products/gekito/
□関連情報
【2003年9月4日】セガ「激闘プロ野球 水島新司オールスターズVSプロ野球」発売記念、東京ドームで水島新司氏始球式
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030904/sega.htm

(2003年10月17日)

[Reported by 福田柵太郎]


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