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「マビノギ」開発者インタビュー
これまでにない要素を多数盛り込んだフリースタイルMMORPG

9月29日収録

会場:ネクソンジャパン本社

 前日に続いてのインタビューは、Nexonの内部開発チームdevCATが開発しているMMORPG「マビノギ」。同作は、2004年度のサービス開始を予定しており、韓国では今月11日より最終段階のクローズドβテストが開始される予定となっている。日本では年内を目処にクローズドβテストの開始が予定されている。

 今回インタビューに応じて頂いたdevCATのキム・ドンゴン氏は、「マビノギ」プロジェクトの総指揮を執るチームリーダーで、ゲーム内では「ナク」と呼ばれるキャラクタでプレイしており、ユーザーから人気を集めているという。


■ 「マビノギ」は“この世”と“あの世”がある2重世界!?

左がdevCATで「マビノギ」の開発総指揮を執るキム・ドンゴン氏。右はグラフィックスを担当しているリー・ウンソク氏
会話シーン。NPCと親しくなることでさまざまな情報を引き出すことができる
キーワードを覚えて、それを他のNPCに聞いてみる。これもこれまでなかった要素だ
ステータス覧には年齢が表示される。きちんと育つためには食事を採ることも欠かせないポイント
編集部(以下、編) 「マビノギ」をプレイしたのは、昨年のKAMEXに続いてこれで2度目ですが、今回は日本語版だったこともありますがずいぶん遊べるようになっていて、いよいよだなという印象を受けました。キムさんが考えている「マビノギ」の魅力とは何でしょうか?

キム・ドンゴン氏(以下、キム) 大きく分けて3つ挙げられると思います。ひとつは自由度の高さ。街での自由気ままな生活を中心に、今までのMMORPGではできなかったことが気軽に楽しめるようになっています。2つ目は、カートゥーンレンダリング。フル3Dグラフィックでありながら、アニメのような親しみやすいビジュアルと、可愛らしいアニメーションが楽しめます。

 そして3つ目はダイナミックな戦闘。これまでのMMORPGは、その場に立って殴り合うだけというのが主流ですが、「マビノギ」では殴られたら大きく後ろに吹き飛ばされたるなど動きのある戦闘を実現しています。我々は「マビノギ」をアクションMMORPGだと捉えています。

 韓国のMMORPGは、バトルに始まりバトルに終わるような、バトル中心の内容のものがほとんどですが、「マビノギ」は街での平和な生活を重視したゲームデザインを採用しています。この点についてどのように考えていますか?

キム 「マビノギ」は企画の段階から、これまで無かったMMORPGを作ろうということになっていました。Nexonの代表作「風の王国」と同じように、前例のないゲームですね。

 なるほど。中でも私はキャラクタが歳を取り、成長するという要素に大きな魅力を感じているのですが、これは年齢の上限や寿命などは設定されているのですか? たとえば、おじいさんになって、最後は亡くなってしまうとか。

キム まずゲームを始めるときにキャラクタの年齢を10歳から17歳の範囲で指定します。どの年齢で初めても成長は最終的に22歳ぐらいで止まります。成長が止まりますので、寿命が来ることもありません。その代わりに「転生」という概念を設けています。「転生」によって、22歳当時の能力を保持したまま、10歳からやり直すことができます。

 すると「マビノギ」は基本的に転生を繰り返していくMMOになる?

キム 「転生」について詳しく説明しますと、「転生」は10歳から22歳の過程を繰り返すためのシステムではなく、別の世界に生まれ変わるためのシステムです。つまり、現世ですべてのことをやり尽くした人が新たな挑戦するために新しい世界に行くためのシステムです。

 新しい世界とは初めて聞きましたが、これはもうマップ自体が隔絶しているわけでしょうか?

キム 別の世界ですので、マップもまったく別になります

 すると、これまで積み上げてきたゲーム内でのコミュニケーションも遮断されてしまう?

キム 我々が考えているのは「この世とあの世」、英語で言うとリンカーネイションです。この考え方はゲームのモチーフになっているケルト神話から来ていて、彼らはこの世とは別のあの世があると考えていた。違う世界にいるユーザー同士がコミュニケーションを取るのはおかしいので、コミュニケーションはとれません。

 この世とあの世は行き来できるわけですか?

キム あの世へはある条件を満たすことで行くことができますが、基本的に戻ることはできません。ただし、あの世で死んでしまうと強制的にこの世に戻されてしまいます。「Diablo」のハードコアサーバーみたいなものと考えてください。


■ キャラクタの成長、ハウジング、ペットシステムなど

右下にあるのが受けたクエスト。彼女は冒険者のようだ
戦いを経ることで戦闘系のスキルが上がる
スキルは最初から使用可能なもののほか、特定の条件を満たすことで使用可能になるものもある
NPCの家の内部の様子。将来、プレーヤーもこのような家を持てる日が来るようだ
 キャラクタの成長についてもう少し詳しく教えてください

キム 外見的には男女の性差、体格などがありますが、我々が考えているのはキャラクタに職業を持たせるということです。通常のMMORPGであれば「今日はどこどこに行ってクエストをクリアしよう」となりますが、「マビノギ」の場合は仕事をしてお金を稼ぐということが基本になります。

 職業にはどういうものがあるのでしょう?

キム これは一般的な意味合いで使うクラスではなく、お金を稼ぐための仕事の内容を指します。鍛冶屋、洋服屋、漁師、猟師、洞窟探検隊といった具合です。

 これらの職業は自発的なものなのですか、それともそれぞれに仕事を提供してくれるクライアントが存在するということですか?

キム 鍛冶屋を例に挙げて説明すると、鍛冶屋のおじさんに話しかけると、「今日は何名必要だ」となる。プレーヤーがその1日単位の仕事をすると鍛冶スキルと報酬が手に入るというものです。

 ハウジングシステムについて教えてください

キム ハウジングはまだ企画段階ですが、現在考えているのは、家を造るためにはまず城が必要で、城はギルドを作ることで建てることができるようになります。城を建てると、その周囲にギルドメンバーの家を建てることができるという仕組みです。我々はこうした仕組みによって、街が自然に構築されるということを考えています。

 すると、サーバーによって街の数や規模、位置が異なるわけでしょうか?

キム いくつか代表的な街は最初から存在していますが、そのほかの街についてはユーザーが造り上げていくことになります。

 キャラクタが大工スキルを使って家を建てることもできる?

キム お金に余裕のある人は証書を店で買って建てるでしょうし、お金がない人は大工スキルを使って自分で建てることになるでしょう。

 「建てる」といいますが、具体的にどのようにして建てるわけでしょうか。材料を用意して、大工スキルを使うと、家がぼんと建つとか?(笑)

キム 実はそのあたりはまだ決まっていません。というのは、ハウジングはサービス開始後の実装を予定しているからです。実装間際になったらもう少し具体的なお話ができると思います。

 子供キャラクタが通うという「魔法学校」について教えてください

キム 「マビノギ」には1日があって、何事も1日単位で行なわれていきます。アルバイトもそうですし、学校も同じように1日単位で勉強してスキルを身につけるという内容です。

 魔法スキルを教えてくれるのはNPCですか?

キム そうです。

 すると、「魔法学校」は、そのネーミングから想像できるようなファンタジックな学園生活を楽しむ場ではなく、単に魔法スキルを習得のための一過性のエリアということですか?

キム そういうことになります。ただ、プレーヤー同士でスキルを教え合うというプランもあって、最終的にどうなるのかはわかりません。

 ペットシステムについて教えてください

キム ペットシステムはまだ企画段階ですが、野良犬や猫をペットにして飼育できるようなものを考えています。中には馬などのような大型動物は、ペットにすることで乗ることもできます。最終的には2人乗りも可能にするつもりです。

 テイミングというと、MMORPGでは「ウルティマオンライン」のテイマーのイメージが強いのですが、UOのようにドラゴンやナイトメアに相当するような強力なモンスターをテイミングすることは可能ですか?

キム 「マビノギ」では、テイミングスキルと、ペットシステムは別物だと考えています。テイミングすることによって従えた動物は、キャラクタがログアウトした瞬間、野生に帰ってしまいますが、ペットは永久的にキャラクタに付き従ってくれます。そのようなペットは、自分のキャラクタスロットを1つ消費する形でデータを管理します。

 スキル自体はどちらもテイミングスキルを使うわけですか?

キム テイムする場合はテイミングスキルを使いますが、ペットにする場合は、ペットの好きな歌を奏でたり、好物を与えたりなど、アプローチがもっと複雑になります。


■ 独創的なダンジョン生成システム、ユニークなモンスターAI

これが祭壇。投げ入れるアイテムによってダンジョンの内容が様変わりする
初めて戦闘を経験すると、突然目の前の少女が吹き飛ばされたりするので驚く
 「マビノギ」のダンジョンは自動生成ということですが、具体的にはどのようなシステムになっているのでしょうか

キム たとえば、「Diablo」だと、中身の似たマップ構造の異なるダンジョンでしたが、「マビノギ」の場合は、入り口の位置から、ワナ、モンスターもランダムに変わってきます。

 ダンジョンはプライベートエリアになるのでしょうか

キム 祭壇にどんなアイテムを投げ入れるかによって、ダンジョンの中身が異なってきます。別々のパーティーが同じアイテムを投げ入れれば、同じダンジョンに入ることになります。という意味ではプライベートエリアではありませんが、誰も使わないようなアイテムをチョイスすれば、誰も出会わないダンジョンに入ることができます。これが自動生成の仕組みです。

 投げるアイテムとはどういうものなのですか?

キム 何でもかまいません。パンでも武器でも。木の枝などあまり価値のないアイテムは「マビノギ」にも数多くありますが、そういう普遍的なアイテムを投げ入れると、もっともオーソドックスな作りのダンジョンになります。逆に誰も投げないような価値のあるアイテムを投入すれば、歯ごたえのあるダンジョンになるでしょう。

 非常にユニークなシステムですが、これには何か理由があるのですか?

キム そう深い考えがあるわけではなく、たまにはダンジョンを独占してみたいという欲求もあるでしょうから、それに応えられるシステムを考えてみました

 当然、ダンジョンはクエスト等でも利用されると思うのですが、そういう場合は、依頼主から「このアイテムを投げなさい」ということになる?

キム いや、そういう場合は、依頼主が投げるアイテムを手渡してくれるはずです。

 ブースでプレイしてみて、モンスターのAIが優秀だと感じました。犬を攻撃すると、単純に攻撃を仕返すだけでなく、プレーヤーの周囲をぐるぐる回って間合いを取ってくるので感心しました。

キム モンスターに性格をブロック別に分類してみました。たとえば犬のようにプレーヤーのまわりをぐるぐる回ってときおり攻撃を仕掛けるだとか、攻撃されたら逃げるとかといったものです。実際のモンスターのAIは、複数のブロックの組み合わせによって設定されます。虫だったらじっとしている動きと、ときおり思い出したようにじわじわ動くという動きを組み合わせています

 ボスモンスターのAIはどうなっているのでしょう?

キム すべてのダンジョンの最奥にはボスモンスターが存在していて、異なるパターンのAIを搭載しています。AIによって戦術が変わってくるので、現時点でどのような動きということはお話しできないです

 今回、ブースでプレイしてみて、1日が経過するスピードが早すぎる印象があったのですが?

キム あれは東京ゲームショウ用の特別仕様で、実際はもっとゆっくりです。今回出展していたのは、短時間で1日のグラフィックの違いがわかるように、朝昼夜がランダムで発生するようにしてました。実際は1日が35分で経過します。

 なぜランダムにしたかというと、韓国で出展した際、4台とも夜だったのですが、来場者がモニターが消えてると勘違いしてしまったので(笑)。「マビノギ」では夜は夜らしく真っ暗になるのです。

 なるほど、ひとつ謎が解けました。ありがとうございました。

昼と夜の街の様子。実際にはもっともっと暗くなり、マイキャラすらよく見えないほどになる。夜の生活には明かりが別途必要となる

□ネクソンジャパンのホームページ
http://www.nexon.co.jp/
□「マビノギ」の公式ページ
http://www.mabinogi.com/jpn/default.html
□関連情報
【2003年9月27日】ブースレポート~ネクソンジャパン編~
ポスト「ラグナロク」を狙ったフリースタイルMMORPG「マビノギ」を初公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030927/tgs_nex.htm
【2002年12月13日】オンラインゲーム満載のNEXONブースレポート
カートゥーン採用の新感覚MMORPG「Mabinogi」ほか
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030912/tales.htm

(2003年10月7日)

[Reported by 中村聖司]


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