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★ PS2ゲームレビュー ★
■ 人生観察型育成シミュレーションの傑作がPS2に登場 PCで好評を博した育成シミュレーションゲーム「シムピープル」のプレイステーション 2版「シムピープル ~お茶の間劇場~ 」がリリースされた。PC版のゲーム内容をトレースした「フリーモード」に加え、PS2版では各ステージにノルマが課せられた「ストーリーモード」、ふたり同時プレイが可能な「マルチプレイモード(対戦ゲームモードと協力プレイモード)」が、新たに追加されている。 このゲームは「裏のあなたが、そこにいる。」がキャッチコピー。独自の思考パターンで人間のように行動する“シム”の家庭生活を覗き、指示を与えるというゲーム内容自体が人間の内面を映す鏡であり、プレーヤーの“そうありたい”という願望がプレイスタイルに反映される、ということらしい。シムたちの生活に干渉しているつもりが、逆に自分がシム人たちに干渉されているのではないか……。そんな錯覚を覚えるような、独特の後味が残るキャッチコピーである。
「シムピープル」では、シム人の食事や排泄行為など、生々しい世界を見せ付けられることになる。それゆえに、ペット飼育ゲームのような愛らしさによるリラクゼーションを「シムピープル」に見出すことは難しい。だが、シム人の生死さえも掌握する絶対存在「神」の擬似体験は、シムシリーズだけに許された禁断の支配感覚といえるだろう。
■ シムの作成、そして生活を見守るということ まず、プレーヤーの分身となるシムの作成からゲームは始まる。服装や髭の有無など各種パーツをカスタマイズすれば、個性豊かなシムが作れる。また、作成画面ではシムの性格を構成している5つのパラメーターが調整できる。ストーリーモードは社交的なシムが圧倒的に有利なので「おしゃべり」と「親切」のパラメーターを重視するといい。
プレーヤーはシムを直接操作するのではなく、シムの状態を確認し適切な指示を与えていく。指示の中でも最優先すべき課題は、シムの空腹や睡眠などに関する「状態」を満たすことだ。「満腹感」、「衛生」、「体力」、「社交」、「心地」、「便意」、「楽しさ」、「環境」の状態パラメーターは、シムの行動によって増減する。各状態パネルのゲージが赤い部分の増加は状態の悪化を示し、緑の部分の増加は状態が改善されたことを示す。
極端な例を挙げると、「満腹感」ゲージが減少した状態が続くと、最悪の場合シムが餓死してしまうのだ。この場合は冷蔵庫を選択して、食事を与える指示を出せばゲージは回復する。ゲージの減少速度はかなり早いので、こまめに方向キーの上を入力して状態パネルを確認し、復旧に努めるのがプレーヤーの仕事。この状態パネルがオールグリーンになった時の安堵感たるや、筆舌に尽くし難い喜びだ。もっとも、その至福の時間もすぐに過ぎ去ってしまうのだが……。
ゲーム画面は、一軒屋の内部が3Dグラフィックで表現されている。画面の拡大・縮小・回転は右スティック一本で制御可能で、死角にシムが入った時もすぐにサーチできる。膨大なリアクションパターンを有するシムは、モニターの中に生活臭漂うライフドラマを演じてくれる。
画面構成で不満があるとすれば、シムたちのサインの意味がマニュアルに記載されていないために判別し難いという点だ。特に画面を縮小している時、その問題は顕著になる。状態パネルを確認するクセのない初心者は、サインが出るとパニック状態に陥ってしまいがち。また、皿や請求書など、小さいオブジェクトにカーソルを合わせづらい。アナログコントローラーだけでなく、マウスコントローラーにも対応して欲しかった。
■ 与えられた試練をこなし、ステージを消化していく~ストーリーモード PS2版で新たに導入されたストーリーモードは、各ステージに課せられた条件を満たし全6ステージをクリアすることが目的だ。序盤面はチュートリアルの要素も入っているので、初心者に最適のモードとなっている。 フリーモードでは「食う寝る遊ぶ」という堕落したプレイでも構わないが、ストーリーモードはクリア条件に沿ってシムの環境を整え、確実にシムを成長させていく必要がある。そこで重要となってくるのが「スキルの上昇」と「アイテム購入」だ。
シムのスキルは、就職と昇進に影響するパラメーターがメインになる。各ステージのクリア条件には、就職と昇進に関する物が多いため、たゆまぬスキルアップに励まねばならない。スキルゲージは、状態ゲージとは性質が異なりゲージが減少しないため。シムの確かな成長性を感じとれる、RPG的な魅力がある。
職に就き、給料を獲得したら「アイテム購入」で家財道具を買い揃える。アイテム購入には、ミニチュアフィギュアでジオラマを作成するような面白さがある。アイテムの種類は、生活用品から調度品までバラエティ豊か。このアイテムの豊富さが、マイホームのカスタマイズに高い自在性を持たせている。自室にホットスパを設置するもよし、逆にベッドだけのシンプルスタイルにするもよし、センスに応じた部屋の模様替えが楽しめる。
アイテムの中には、ストーリーモードのクリアを補助する役割を持つ物も多い。早めに性能の良い高級品に買い換えたいのが、デフォルトで家に設置されている冷蔵庫、トイレ、レンジ、バスタブの4点。これらのアイテムの高級品は、満腹感ゲージや便意ゲージを早く回復させる効果があるからだ。
アイテム購入に関しては、清掃時間を短縮できるテクニックを紹介しよう。ストーリーモードでは、なんとアイテムの売値と買値は同じ価格。それを利用して、掃除の必要な部分(ゴミ箱、バスタブ、トイレ、汚れた床)や電球の切れたランプを汚れた部分ごと売却し、そのお金で新品の同じアイテムに買い換えてしまうのだ。このテクニックで、掃除にかける時間を短縮しつつ環境も保てるという寸法。さすがに修理が必要な家電製品には使えないが、それでも清掃タイムを節約できるため、なかなか馬鹿にはできない。
■ ストーリーモード実践編~ステージ1~3ダイジェストシーン それでは、実際にストーリーモードのステージ1~3までのダイジェストをご紹介しよう。 ● ステージ1「ママにおねだり」
水着の男女の悶え声が響くプロローグに「さすがは12才以上対象作品だ」と感心しつつスタート。同居人のママからTVを修理するように命令されるが、TVに触ると骨が透けるほど感電する。本棚で技術スキルを上げるように指示されるので、スキルアップ後にTVを直すと上手くいった。その後も、ママのアドバイスを受けながら基本操作をマスター。L2またはR2ボタンで同居人のママにも指示が出せることが判明してからは(マニュアル要熟読)、一気に展開していった。
● ステージ2「厳しい現実」
プレーヤーキャラが借りた一軒家は、TVや冷蔵庫から黒煙が噴出する、汚れ放題のゴミ屋敷。まず壊れた家電の修理から着手。掃除が必要な部分(トイレ、バスタブ)は、前述の方法で売却して新品と交換した。一週間が経過しても仕事で昇進できないので、マニュアルを再び熟読。どうやら送迎車が来るまでに、状態パネルをオールグリーンにしておくと仕事で業績が上げられるらしい。というわけで、送迎車が来る4時間前に起床し、風呂、食事、排泄を済ますというスケジュールを組んだ。このスケジュールを組んだ日から、なんと2日連続で昇進。即座に昇進クリア条件を満たすことができた。
● ステージ3「パーティー好き」
同居人ミミは収入も低く、家事全般は一切やらない人間……ならぬシムの屑。しかし、こんな駄目シムにも役割はある。それは、クリア条件の「盛大なパーティーを開く」を満たすために、シムの友人と親交を深めさせることだ。ミミには、L2またはR2ボタンで睡眠や食事の支持を与えつつ、こまめに友人を家に招待するホスト役として生存させることにした。同居人ミミや、友人とコミュニケーションをこまめに取ることがクリアの鍵。
■ 接待用ソフトとしても威力を発揮するゲームモードの数々
「シムピープル」には、ストーリーモードの他にフリーモード、対戦ゲームモード、協力プレイモードが用意されている。フリーモードは、ゲームの目標が設定されていない自由度の高いモード。ストーリーモードのような束縛はなく、ルーズでオフビートなプレイが楽しめる。ストーリーモードで基本操作に慣れてから、フリーモードでスローライフを体験するのもいいだろう。
対戦ゲームモードは、協力プレイモードはふたり同時プレイが可能なモード。2分割された画面内で、対戦または協力プレイを行なう。対戦モードのステージは、ストーリーモードをクリアすることで増えるため、ある程度ストーリーモードを進めてから開始したい。
「シムピープル」でシムを幸福に導くためには、画面全体の状況把握能力を高めることと、何本もの綿密な計画を同時進行できる頭脳が必要不可欠。プレイ中は、ひたすら状態確認と指示を繰り返す作業で慌しい。だが、そのタイトロープな切迫感が、シミュレーションゲームとしてのメリハリを持たせていることは確かだ。忍耐力がない人には苦痛かもしれないが、そこは余裕を持ってエレガントに楽しみたいところだ。 筆者は「シムピープル」にスラップスティック(というかドリフ感覚)な世界観を想像していたのだが、実際は欧米の家庭をリアルにシミュレートしているという印象を受けた。そして、あまりにも再現性が高いためだろうか。「シムピープル」は、コンピュータエンターテインメントレーティング機構(略称CERO)から「年齢区分マーク・12以上対象」に区分されている。子供を持つユーザーは、購入の際の参考にするといいだろう。
スターや社長など、自分の成し得なかった人生をシムたちに歩ませるのも確かに面白い。だが、筆者は神の権限を活かしたサディスティックなプレイをオススメする。シム人住宅のトイレと冷蔵庫、電話、外部に通じるドアを全て撤去して放置。シムたちが阿鼻叫喚する背徳の瓶詰めプレイを眺めながら、ニヤリとほくそえむのが最近の気分転換法になっている。原稿に煮詰まった時などは、特に最高だ。
□エレクトロニック・アーツのホームページ (2003年6月11日) [Reported by 福田柵太郎]
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