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★PS2ゲームレビュー★
プレイステーション版の「立体忍者活劇 天誅」が登場して以来、「立体忍者活劇 天誅 忍凱旋」「立体忍者活劇 天誅 忍百選」「立体忍者活劇 天誅 弐」とシリーズ化された人気タイトルの最新作。 物陰に潜み、敵に気付かれずに倒していくことに重点が置かれており、ただ斬り合うだけではなく、壁や段差などを利用して「いかに相手に忍び寄るか」を楽しむのが、他のアクションゲームとは一線を画すところだ。 5作目となる本作は、プラットフォームをPS2に変えて登場となった。グラフィックはもとより、アクションやフィールドに至るまで、全てにおいて前作を遙に凌ぐ作品に進化したと言えよう。
■ 物語は1作目の1年後 本作の物語は「弐」の続きではなく、最初に発表された「天誅」のその後となっている。ちなみに「弐」は「天誅」より前の話であり、物語の流れは「弐」~「天誅」~「参」となる。 1作目と2作目で登場したキャラクタも登場するので、全シリーズをプレイしている人は前作とのつながりを楽しむことができる。誤解の無いように付け加えておくが、本作が初めてという人にも十分理解できるようストーリーが作られているので、安心して欲しい。
■ 「忍殺」に、全てを賭ける このゲーム一番の面白さは、「相手に悟られずして必殺の一撃を決める」ところにある。これを「忍殺」と呼び、屋根の上に身を潜め、下にいる見張りが背後を見せたら飛び降りて素早く相手の背後に忍び寄る、あるいは壁に張り付き、曲がり角の先を覗き見て相手が背を向けるのを待つなど、全てが忍殺を実行するための布石となる。 敵がどこにいるかを予測しながら、細心の注意を払いつつフィールドを移動し、敵がいれば迅速、かつ的確に仕留めていく。そのプロセスと、忍殺が成功したときの達成感がこのゲーム最大の魅力なのだ。 ちなみに、忍殺には2種類があり、ひとつは相手に気付かれずに接近して□ボタンで斬りかかると発動する「忍殺技」で、相手の向きや高低差によっていくつかのバリエーションが存在する。もうひとつは、普通に切るだけ。相手に気付かれないことと、成功すれば一撃で相手を倒せるという点は忍殺技と同じである。なお、相手に見つかった状態で倒すことを「斬殺」と呼ぶ。
そして忍殺をすることで、様々な恩恵が受けられる。一番に挙げられるのが、「九字の印ゲージ」の増加だ。忍殺を実行してゲージを溜めていき、全て溜まれば奥義が習得できる。奥義は連続攻撃や天井に張り付く技など、全部で9種類が用意されており、ステージごとに1つ覚えられる。また、ステージによって、どの奥義を覚えるかが決まっていて、ステージが進むにつれて強力なものが習得できる。
前作まではクリアタイムを考えると、演出に時間のかかる忍殺技より、通常の斬り攻撃や忍具で仕留めた方が効率がよかったため、接近するリスクを冒してまで忍殺技を決める事はしなかった。だが、本作では、ゲージを早く溜めたいのであれば忍殺技を決めなければならず、リスクに見合ったリターンになったといえる。無理をしてでも忍殺技で倒したい筆者のようなプレーヤーにとっては、嬉しいところだ。 忍殺による恩恵はもうひとつある。それは、クリア後の評価である。ステージクリア後、忍術評価なるものが表示され、忍殺や斬殺など4つの項目から点数がつけられ、総合点数によってランクが決定されるのだ。 ランクには、一番下の「門前払い」から最上級の「忍術皆伝」までの5段階が存在する。評価が高ければ、手に入れる忍具が増え、忍術皆伝であれば新しい忍具(各ステージに1種類)が手に入れられる。より高い評価をもらいたいなら、できるだけ相手に発見されず忍殺するしかないわけだ。
ゲームのコンセプトになっているだけあって「忍殺」のメリットは非常に大きい。しかし、是か非でも忍殺を決めなければならない、というわけでもない。ボス戦などは発見された状態で戦うこととなるため、連係や忍具を使った戦闘を行なわなければならない。奥義や忍術評価を気にしないのであれば、正面から相手に挑みかかってもいい。 ただし、一度の攻撃では相手を倒す事はできず、こちらも攻撃を受けるリスクもある。最悪の場合、周囲の敵が騒ぎに気付いて、大勢に囲まれてタコ殴りにされることもある。できるだけ忍殺を行なうに越したことはないが、忍殺以外の、時代劇お得意のチャンバラ的なプレイ方法でも十分楽しめる。息を潜める緊張感と、相手をバッタバッタと切り倒す爽快感、その両方をプレーヤーの気分次第で切り替えられる自由度の高さが、この作品の面白味でもあるのだ。
■ 使用するボタンは多いが、操作は簡略化 本作は、アナログスティックを含め、ほとんどのボタンを使用する。こう前置きすると複雑な気もするが、プレイしてみると使用頻度の高いボタンは意外と少ない事に気付く。 まず、移動に使う左スティック、相手に斬りつける□ボタン、そして×ボタンのジャンプ。また、カメラアングルを変更する右スティック。これらが最も重要となるところで、まずはこれらの操作に慣れるところから始めてみるといい。移動や攻撃といったものは、ある程度アクションゲームをかじっていれば簡単に慣れることができる。 カメラアングルの変更は、3Dゲーム特有の操作でゲームごとに異なるケースが多い。本作では、スティックの左右で主人公を中心に視点が回転。また、足下に穴などの段差がある場合、自動的にカメラアングルが下になり、段差の下を見やすくしてくれる。 L1ボタンを押せば主観視点となり、左スティックで見る方向を変えられる。周囲の状況に気を配らなければならないため、カメラアングルなどの操作は早めに慣れておく必要がある。状況によってアングルに変化があるので、この辺りは少々面倒に感じるかもしれない。しかし、アングル操作のほとんどが右スティックか左スティックのどちらかなので、戸惑う事はほとんどないはずだ。 以上の操作を修得したら、次のステップに進むことになる。真っ先になれておきたいのが「R1」の使い方だ。R1ボタンを押すことで、キャラクタがしゃがみ、押し続けていればその状態を維持できる。しゃがみ中に左スティックで移動が可能で、×ボタン+左スティックで任意の方向へ転がって移動する。R1を押した状態で壁に隣接すれば、壁に張り付く。曲がり角の様子をうかがう場合、壁に張り付くことで先がよく見えるようにもなる。通路を進むときや、物陰から周囲の様子をうかがうときなどは、R1ボタンを多用することになる。 忍具を使用する△ボタンも利用頻度が高い。特にジャンプでは、届かない高い場所や、遠くの足場へ移動するときに「忍具の鉤縄」を使うことになる。方向キーで画面右下にある忍具から鉤縄を選び、△ボタンを押し続ける。 こうすることで主観視点になり、画面中心に十字手裏剣形の照準が出現。この照準が明るくなるポイントなら、鉤縄が引っかかる場所である。任意の場所に照準を合わせたら、△ボタンを放す。鉤縄を投げて引っかければ、あとはその場所へと一気に移動できる。高い場所の縁などに引っかければ、移動後は縁に掴まってぶら下がった状態になる。 このように、本作は状況によってアクションを変化させる仕組みを採用して、使用するボタンを極力減らすようにチューニングされている。新規プレーヤーにも遊びやすいように配慮されているのだ。
■ 身を隠して相手の隙を待つ……忍耐力が試される
また、敵の配置にもプレーヤーを陥れようとする罠が隠されており、いかにも“忍殺してください”とばかりに隙だらけの敵がいるが、プレーヤーから見えない位置にもうひとりいて、飛び出した瞬間に発見されてしまうといった具合だ。 このような罠に対しては、周囲を隈無く索敵して安全を確認するのがコツ。続いて、目標となる敵をじっくり観察して、移動範囲や振り向くタイミングなどを把握する。後半のステージともなれば、敵の数が多いうえにマップも複雑になるため、とにかく慎重に行動することが大切となる。敵を見つけたら辛抱強く、じっくりと様子を見て、確実に仕留めていく。「堪え忍ぶ」ことが忍びの基本なのである。 とはいえ、これは初めてプレイするステージでの話。一度ざっくりとプレイして、敵の配置や行動パターンを覚えておき、あとはステージクリア後に再挑戦すればいい。特別な場合を除けば(ステージセレクトで配置を変更したときなど)、パターンが変化することはないので攻略しやすくなる。だが、この方法を使うと、緊張感が無くなってしまうのが難点だ。
■ 忍具を駆使することで、戦いがより有利になる 先ほど軽く触れていた忍具だが、ゲームを進める上で絶対必要というわけではないが、あると非常に便利という代物。始めの頃は忍具の数も少なくて心許ないが、ステージをクリアするごとに増えていく。より多くの忍具を手に入れたいなら、先に説明したように忍術評価で高い評価を取らなくてはならない。忍術皆伝で得られる忍具は、非常に強力なもの。是非とも手に入れておきたいところだ。 忍具の使用方法は前述のとおり。ただし、この時に注意しなければならない点がある。それは、忍具を選択している時に生じる隙。見渡しのいい場所で忍具を選択していると、通りかかった敵に発見されてしまう。これでは忍具を使用する意味がないので、敵に見つかりにくい屋根の上や物陰などで忍具を選択すること。また、忍具を使用時にも若干の隙があるので、敵の攻撃中に使用するのは危険。忍具ひとつ使用するにも、身の安全を考え無ければならない。 忍具の中で個人的に気に入っているものは「痺れ団子」と「吹き矢」のふたつ。痺れ団子はシリーズ定番の忍具で、愛用しているプレーヤーも多いだろう。敵の視界に入るようにこれを投げれば、相手はこれを手にとって食べてしまう。もちろん、食べた敵は痺れてしばらく動けなくなるため、その間に忍殺できる。 だが、それ以上に敵の注意が痺れ団子に注がれるところがポイントで、これで敵の視線を自分の逆に向けてしまうといった事ができる。団子を食べられる前に忍殺すれば、敵は団子を落とすので回収が可能。とても環境にも優しい忍具(?)なのである。ちなみに物の怪だと、興味は示すものの食べてくれなかったり、相手によって対応が違うといった細かい演出が、筆者にはとても面白かった。
このように、忍具を上手に、あるいは新しい使い道を考えながらプレイするのも非常に面白い部分なのだ。
■ 人間同士のせめぎ合いが楽しい、対戦および協力任務 本作では、格闘アクションのような対戦と、協力しながら任務を遂行するふたつのゲームモードがある。 対戦は、主人公の力丸と彩女以外にも、敵として登場するキャラクタが選択できる。使用するキャラクタによって、忍殺技や投げの有無などの違いがある。主人公以外のキャラクタは攻撃手段に乏しいため、主人公クラスのキャラクタに比べると少々心許ない。 対戦は、5つあるフィールドからひとつを選び、時間内に相手を倒せばいいという分かりやすいルールが採用されている。ただし、フィールドにはプレーヤー以外にもコンピュータが操作するキャラクタが点在し、プレイヤーを発見すると襲いかかってくる。 これに混じって、対戦相手からも攻撃された日にはひとたまりもない。まずは邪魔な相手を始末しようとするのだが、それに夢中になると対戦相手に背後から襲われる危険も生じる。幸いというか、残念というか、対戦相手には忍殺ができないため、一撃で倒されることはない。だが、隙を見せることに変わりはないので、対戦相手かNPCのどちらを優先して倒すかを考えながら行動することになる。 一方の協力任務は、主人公のキャラクタ同士で与えられた任務を一緒にクリアするというもの。プレイできる任務は全部で5つあり、敵の殲滅や護衛など、内容がそれぞれ違っている。パートナーと打ち合わせをしながらプレイしていくことになり、ひとりで遊んでいるときとは違った面白みがある。 また、このモードでは合体忍殺という派手な技を見ることができる。忍殺技を発動したときに、もうひとりが近くにいれば合体忍殺になり、ふたりでひとりの敵を忍殺するという特別なアクションが行なわれる。任務によっては、合体忍殺をしないとクリアが難しいものもあるが、何はともあれ一度は見ていただきたい。ハリウッド映画ばりの派手な忍殺が見られるのは、このモードだけなのだから。 対戦&協力任務の両方をプレイしてみたが、正直なところ少々物足りないといった印象を受けた。初めてやったときは、通常のプレイとは違った新鮮さを感じる。だが、対戦では工夫をこらそうとするとあっさり負けてしまうため、闘い方が単調になりがち。 協力作戦は、一度攻略パターンを作ってしまえば、それ以降は作業と化してしまう。あくまでもおまけといった感じがするモードではあるが、コンピューター相手のひとり用とはまた違った楽しみがあるのは確かだ。次回作では、このモードのマップ数や任務数が増えることを期待したい。
■ 時代劇ならではの演出が魅力 ゲームの性質上、どこか殺伐とした感じを受けるが、所々にニヤリとさせられるエッセンスが盛り込まれている。 例えば、力丸編の1ステージ目。悪徳商人の越後屋と悪代官という、時代劇の定番中の定番、悪党の二大巨頭ともいえる人物が登場する。悪代官に差し出されるのは「黄金色の菓子」こと小判。さらには純真無垢な町娘もついてくるあたり「これを外したら時代劇じゃないでしょ」といわんばかりの展開だ。 力丸が登場すれば、前口上と手下を呼ぶ掛け声もあるといった徹底ぶり。著者が幼い頃、祖父と一緒に時代劇を見ていた(正確には見せられていた)せいもあるとは思うが、時代劇における定番とは何かを知っている人であれば、思わずニヤリとするはずだ。
この手のものは他にもある。特定の条件を満たすと出現するキャラクタ「鉄舟」が、実にいい味を出しているのだ。この男、素手で相手を仕留めるのだが、彼の忍殺技のルーツを知ってる人であれば、非常に心憎い演出に感動するはず。
他に著者が面白いと思ったのは、設定で台詞を英語に変更できるという点。字幕などは変化しないが、音声がまるまる英語に差し変わるため、違った雰囲気でプレイができる点で個人的には非常にお気に入りだったりする。音声が全て英語になるため、ハリウッドで一時期ブームとなった忍者映画を彷彿とさせるからだ。この手の映画をよく見ていた著者としては、これまたニヤリとしてしまうのだ。 ここまでプレイしてみた感想としては、過去のシリーズと同じく「安心して遊べる作品」といったところ。慣れれば1ステージ5~10分程度でクリアできる程よい長さで、その中でいかに相手を忍殺するか、敵の配置からどの順番で倒していくかといった、プレーヤーの考える余地もある。 自分なりのパターンで、または新しいパターンを開発していけるという自由度の高さは、長く遊ぶという点では欠かせない要素。2週目からは、敵の配置を変更してプレイできたり、友達と対戦や協力任務で遊ぶといったこともできる。
これは筆者の個人的な感想につき異論はあるとは思うが、忍者を題材にしたゲームで、ここまで「時代劇の忍者らしさ」を追求した作品はないだろう。願わくば、早く続編を作ってもらいたい。
□フロム・ソフトウェアのホームページ (2003年5月20日) [Reported by 渡辺洋二]
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