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★ GBAゲームレビュー ★
この春、スクウェア・エニックスに社名を変更したエニックス。23年の歴史を誇るエニックス単独ブランドの最後を飾った作品が、この「ドラゴンクエストモンスターズ キャラバンハート(以下キャラバンハート)」だ。モンスターを仲間にできるという「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズ独自のシステムを踏襲しつつ、最大12名の仲間を馬車に乗せられる“キャラバン隊”での移動、新モンスター育成システムに「転身システム」、「食料ステータス」システムなどを追加し、既存シリーズとの差別化を図っている。 主人公(プレーヤー)は、「ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち」に登場したキーファ王子。道の世界に引き込まれたキーファ王子は、元の世界に戻るためのキーアイテム“ロトのオーブ”を探すため、キャラバンリーダーとなって仲間たちと共に旅立つ。大勢の仲間とツアーを楽しんでいるかのような、ほのぼのとしたストーリとなっている。
この「キャラバンハート」には、「ふっかつのじゅもん(パスワード)」を書き写していたファミコン世代にシンパシーを感じさせる世界設定が多数盛り込まれている。なかでも、サマルトリア地方、ムーンブルク地方といった「ドラゴンクエストII」に登場する懐かしいマップを強烈にプッシュしたい。毒の沼地に囲まれたムーンブルク城が視界に入ったとき、強烈なノスタルジアにかられたのは、筆者だけではないはずだ。
■ 3台の馬車を率い、世界を放浪する楽しみ 「キャラバンハート」では、キーファ王子(プレーヤー)が馬車と仲間たちで構成したキャラバンを率いてフィールドを移動する。フィールドの描画方法は、やや斜めから見下ろした感じになっているが、プレーヤーキャラが中心に位置する移動方法はドラクエシリーズと同じだ。 フィールド移動中のエンカウントは、モンスターだけではなく神父や魔法使いなどに出会うイベントも発生するため、プレーヤーを飽きさせない。 フィールドやダンジョンの移動に追加されたシステムが「食料ステータス」の概念だ。この食料ステータスは、フィールドを移動すると減少していく。ゼロ(0)になるとガードモンスターの体力が1になるまで減少を続ける。ガードモンスターの全滅=キャラバンの全滅につながるため、食料ステータスはこまめに補給する必要がある。 序盤は食料のやりくりに苦労させられる一方、仲間の商人が入隊して食料の供給が安定するころから、食料ステータスの必然性が薄れてくる感がある。とはいえ、ダンジョンなどで食料が底を尽いた状況下での飢餓感など、食料ステータスが今作のスパイスになっていることは事実だ。
キャラバンは、ベースキャンプを設営することができる。ベースキャンプは、教会や宿屋が揃ったひとつの町のような存在だ。物語を進めて行くと、ベースキャンプを馬車で牽引し、任意の場所に設置させることが可能になる。ダンジョン攻略の際は、食料補給のためにダンジョン付近にキャンプを移動させておくといい。仲間が増えると、ベースキャンプは道具屋や預かり所などの施設が増えていく。自分のベースキャンプが発展し、仲間たちが生活している光景には、新鮮なグルーヴを感じることだろう。
■ 仲間が一丸となって敵モンスターに挑むキャラバンバトル 「キャラバンハート」の戦闘は、キャラバンという特色を活かしたシステムに改良されている。馬車1台に付き、ガードモンスター1体と4人までの仲間が搭乗できる。馬車は3台まで増えるので、最大モンスター3体と仲間12人が参戦するわけだ。このうち、プレーヤーが操作できるのはガードモンスターのみで、仲間たちは自分の考えで行動する。 1ターン中における戦闘行動の回数は、実質ガードモンスター3体と仲間3人の計6回。まず、編成で馬車の先頭に乗せた仲間が行動し、次にガードモンスターが行動する。2ターン目以降は、馬車の2番目、3番目と乗り込んだ順に仲間が行動していく。仲間の行動順番を考慮して、馬車の編成を決定する必要があるのだ。 馬車の編成を決める上で重要なのが、仲間の職業だ。職業は戦士、武闘家、僧侶など20種類以上があり、直接攻撃、魔法回復などの得意分野がある。また、複数の職業を同じ馬車に乗せると、連携攻撃が繰り出せる。例えば、魔法使いは、ひとりだと火炎の低級呪文メラを放つが、ふたり乗せていると上位呪文のメラミやベギラマを唱えるようになる。 無限大の戦闘スタイルを作り出せるできるキャラバンバトル。個人的には、ザコ戦でもボス戦でも攻撃力重視の編成が強いと感じた。僧侶やその他の職業が使う回復・補助魔法は、ガードモンスターに覚えさせることができるからだ。もちろん、回復重視で仲間を選んでもいいし、釣り師や踊り子など補助重視の仲間を選ぶのも面白い。幅広いバトルスタイルを選択できるのが「キャラバンハート」の戦闘なのだ。
■ 「ドラゴンクエストモンスターズ」の醍醐味 …… モンスター育成 「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズでのモンスター育成は、仲間にしたモンスターをかけ合わせる「配合システム」が使われていたが、「キャラバンハート」では「配合システム」に代わり「転身システム」を採用している。 「転身システム」とは、馬車を護衛するガードモンスターに「モンスターの心」を吹き込み、まったく別のモンスターにするシステムのことだ。 「モンスターの心」は、とあるアイテムを入手すると、戦闘終了後に敵モンスターが落とすようになる。また、町にある樽の中や、ダンジョンの宝箱でも入手できる可能性がある。戦闘で「モンスターの心」が入手できる確率は、ストレスを感じさせない程度の頻度となっている。筆者がプレイした際は、戦闘4~5回ごとに1個落とすというハイペースであった。
ただゲームをクリアするだけなら、複雑な転身は必要ない。ランクの高いモンスターを生み出し、成長限界レベルまで上げてしまえばいいからだ。だが、転身の本当の面白さは、クリア後にある。世界各地およびクリア後でしか冒険できないダンジョンで心を収集すれば、とてつもない高次モンスターに転身できる。
■ 熟成期に到達した万人向けの「ドラゴンクエスト」 「キャラバンハート」の謎解きは、万人向けというか、難易度が低めに設定されている。町に移動して情報を収集し、ダンジョンなどでクエストアイテムを入手するという実に王道的な作りだ。ドラクエマニアは「ドラクエらしさ」を堪能することができるし、「キャラバンハート」でドラクエデビューというプレーヤーは、クオリティの高いRPG作品として本作を楽しめるはずだ。 所持できるアイテムが少ない、武器・防具がない、人間の仲間に指示が出せない、王道主義過多、仲間にできるのは最大20人と少ないなど、重箱の隅を突付くというか、細かい不満は多少あるものの、それも熟成期に達した「ドラクエ」へのリスペクトと愛があるからこそ、沸きあがってくる感情なのだろう。
なお、「キャラバンハート」はGBAケーブルを使った通信対戦機能も用意されている。手間隙かけて作り上げたキャラバンで気軽に対人戦ができるのは、携帯ゲーム機の持ち味だ。ただ。学生諸君は学友と対戦を楽しめるが、社会人となると対戦する機会に恵まれた人は限定されるだろう。スクウェア・エニックスで対戦会などのファンイベントを開催してくれれば、やり込んだプレーヤーの労苦も報われるのではないだろうか。
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□スクウェア・エニックスのホームページ (2003年4月18日) [Reported by 福田柵太郎]
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