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★PCゲームレビュー★
5周年を迎えたMMORPG、「ウルティマ オンライン」(以下、UO)。「セカンドエイジ」、「ブラックソンの復讐」など、過去何度かの大きな変化を経たUOが、今回どのように生まれ変わったのだろうか? 多くのプレーヤーが“突入”した発売日当日
UOでは、決められた世界に自分だけの「家」を建てることができる。すべてのプレーヤーがいずれ家を持てる、というわけではなく、非常に熾烈な建築競争に勝利した者だけが得られるのである。正邪の大陸発売前、すでに空き地はなく、新規プレーヤーが家を「建設」できる可能性は全くといっていいほどなかった。 正邪の大陸導入により生まれた新世界「マラス」。この世界は公開と同時に家を建設できる。発売日当日、多くのプレーヤーは平日にも関わらず、昼になるというサーバーメンテナンス終了の合図を待ちわびていた。その時間、そしてその日はまさに“お祭り”であった。日本シャードには家を望む多くの人がつめかけ、プレーヤーを認証するアカウントサーバーは悲鳴を上げ、ログインは困難となった。 新世界への入り口はたったふたつのムーンゲート。そこに何百人ものプレーヤーが一気に突入したのだ。その情報量は凄まじく、サーバーは処理を遅延、プレーヤーたちはまるで水の中にいるようにもどかしく動くキャラクタを操作し、空き地を家で埋めていった。 現在、新大陸マラスを旅すると、どこにでも限界近くまで家が建っていて、ちょっと面白い。大きな家の隙間にちょこんと小さな家の土台があったりと、一生懸命家を建てようと試行錯誤したプレーヤーたちの努力が感じられる。一種独特なこの戦いはUOならではではないだろうか。
新スキルにより広がるUOの世界観 “ネクロマンサー”と“パラディン”。このふたつが今回追加されたUOの新しい職業である。とはいってもUOはスキル制を導入していて、正確にはふたつの魔法系統が導入されたという感覚になる。このふたつの技能によって、プレーヤーはよりユニークなプレイスタイルを楽しめることとなった。 Necromancyというスキルを高めることで使用できるようになるネクロマンサースペルは、その名の通り、死者に近い、非常に特徴的な魔法となっている。 ネクロマンサーはSpirit Speakという技能を使うことで、死体からエネルギーを吸収し、体力を回復させることができる。さらにAnimate Deadという魔法で、死体を立ち上がらせることができるのだ。立ち上がった死体は元の死体が強力ならば強力なほど、強いモンスターになる。例えばドラゴンの死体なら、「ドラゴンゾンビ」になるのだ。 このモンスターは、召喚者の言うことを全く聞かず、ただ“人間以外”の怪物に襲いかかる存在となるのも面白い。 また、ネクロマンサーのスペルは自らの姿を変え、死霊や吸血鬼になったり、従者を呼び出すこともできる。仲間の死体さえも回復手段、さらにドラゴンなどの強力なモンスターの死体を強い味方に変えてしまうという存在は、今までなかった新しい概念を持ったキャラクタである。よりユニークなゲームを楽しむことができるだろう。 ネクロマンサーの魔法は死者を冒涜する要素があるため、使用すると“カルマ”を著しく減少させる。パーティーを組んでいる仲間のカルマも減少させてしまうのだ。カルマの低いキャラクタは普通のプレーヤーには無害なモンスターの攻撃対象になったり、街のNPCと取引ができない。UOでは魔法の使用に“秘薬”の使用が必須となっており、これを買うために、カルマの低いキャラクタは他のキャラクタの協力が必要となってくる。 さらに ネクロマンサーのスペルは通常のものとは違う“新秘薬”を使用する。そのため、普通の魔法も使うのであれば、とても多くの秘薬を持ち歩かなければならなくなる。ネクロマンサーの道を究めるためには、ある程度の“覚悟”が必要となってくるのだ。 パラディンはChivalry(騎士道)というスキルによって魔法を使用する。この魔法は大別すると攻撃ダメージを強めるものと、他のキャラクタを助けるものになっている。他のキャラクタを助けるスペルは、ちょっと特殊になっていて、自分の何かを犠牲にして、他者を助けるという要素がある。海外のRPGの中には、聖職者が相手の傷を治療するのに、まず自分に傷を転移させてから、あらためてなおす、というような、“自己犠牲的”な要素があり、そういった感覚を活かした魔法である。 また、防御力を犠牲に攻撃を高めるという“バーサーク(凶暴化)”ができるところなどは、「戦士」に思い入れがある人には、たまらないかもしれない。スペルそのものとしてはネクロマンサーより面白みが少ないパラディンだが、ロールプレイ、という点に関しては決して劣らない。また、パラディンの魔法は武器を構えたまま使用でき、こういう点も戦士志望者にはうれしい要素である。 ただ現在は、鎧の防御力がゲームバランス的に減少している観があり、サーバーの重さも相まって、相対的にモンスターが強く、肉弾戦が好きなプレーヤーにはちょっときつい状況だ。UOはオンラインRPGであるため、こういったバランスなどはプレーヤーの意見でさまざまな調整や変更が加えられていく。今後の動向に期待したい。 今回Necromancy、Chivalryの他にFocusというスキルも導入された。これはマジックポイントである“マナ”と、武器を振る速度などに関係する“スタミナ”を通常より効果的に回復させる能力で、マナとスタミナも必要とするパラディンには有効な能力である。 しかし、UOのキャラクタの総合スキルポイントは700しかなく、魔法技能や武器技能、魔法防御などさまざまな必須ともいえる技能があり、その選択は非常に難しい。技能が増えたことにより、プレーヤーはより“専門的”なキャラクタを作成可能になったといえる。 多様な技能を持ち、ひとりでも冒険が楽しめることがウリのUOだが、あえて技能を特化させ、多少お荷物になりながらも、専門分野ではとても頼りになる、そんなパーティープレイを楽しむのもいいかもしれない。 さまざまな新ルール、アイテムにより広がる戦闘 いくつか大きな変化を迎えてきたUO。今回はふたつの職業だけではなく、実にさまざまな変更が加えられた。 まず第一はキャラクタの“装備”の意味である。敵が与えてくるダメージには物理的、エネルギー、炎など、さまざまな属性を持つようになった。アイテムにカーソルを合わせてみると、実にさまざまな情報があって驚かされる。いままでは武器などが持っている特性は、鑑定技能や、鑑定の魔法を秘めた杖などが必要とされていたのだが、誰でも参照できるようになった。 これらの特性を持つアイテムは、冒険で得るだけではなく、生産技能の高いプレーヤーが自らの手で造り出すこともできる。ルールの変更により、装備の幅が広がり、対炎装備など、さまざまな装備の需要が高まり、プレーヤー間の取引もより活気を帯びてくるだろう。 さらに生産者は今までのアイテムにも“追加効果”を付与することもできるようになった。より強力な武器を求めて道を究め、「会心の製品」を誇らしげにオークションに出品する、ということもできるかもしれない。 ユニークなのは金のインゴットを使った装備。これらを身につけると、幸運という能力値が飛躍的に上昇し、マジックアイテムの入手率などが上がるらしいのだ。ゲンをかついでいるみたいで面白い。 入手できるアイテムに「マナの消費低減」や「呪文の詠唱短縮」など、今までのゲームバランスを変えてしまうような効果を持つものも出るようになった。“指輪”など、鎧といった防御用のスロットを圧迫しないアイテムならばさらに重要度は増す。これらアイテムを求めて、いままでプレーヤーの間で多少食傷気味になっていた「宝探し」ブームが再燃する兆しもある。 武器が増えたのも楽しい。死神の大鎌のようなScytheや、ちょっぴりアニメチックにかっこいいDouble Bladed Staffなど、特に槍使い、剣使いは選択肢が増えた。これら増えた武器を使いこなすために、あえてキャラクタのスキルを構成しなおすというプレーヤーもいるだろう。騎士を気取るならばLanceに、条件が緩和され誰でも装備できるようになった“法 (オーダー) ”か、“混沌 (カオス) ”の盾できめてみたい。 武器の熟練者にはマナを消費することで“スペシャルムーブ”という必殺技を使用することができるようになった。それぞれの武器には、敵に出血攻撃を仕掛ける攻撃や、1度に2発のダメージを与えると言った13種類の技のうち、ふたつが割り振られている。この技により、使用する武器にこだわりを持つプレーヤーもさらに増えるだろう。特にプレーヤー同士が技を競う「対人戦」では、独特の戦闘スタイルを追求するプレーヤーも多数出現するかもしれない。 プレーヤーが多彩なステータスを持つようになったのと同じように、モンスターもさまざまな特性や弱点を持つようになった。特に弱点を的確につく魔法を自在に使いこなせる魔法使いはカッコイイ存在となるだろう。毒に弱い敵に毒魔法、氷系の敵には炎……モンスターの知識が深いほど、魔法使いはより頼もしくなる。キャラクタの能力を何倍にもふくらますことができるプレーヤースキル。新ルールは熟練した魔法使いを演じやすくなったといえる。 新世界、そして新モンスター 新世界マラスにはルナとアンブラというふたつの街が存在している。マラスはいくつかの大陸で構成されていて、海に当たる部分は“星空”になっている点が面白い。とくにルナから南に下るところにある長い一本橋を渡る感覚は今までのUOでは味わえなかったものがある。 パラディンの街ルナ、ネクロマンサーの街アンブラ、このふたつの街は今までの街同様非常に細かく、こだわって作りこまれていて、チェックをしていけば路上観察学的な楽しさを体験できる。 キャラクタのスロットがあいているプレーヤー、新規プレーヤーは是非新キャラクタが体験できる「クエスト」を楽しんで欲しい。名所巡りの要素も持っていて、特にネクロマンサーのクエストは、死んだ大魔法使いを蘇らせ、彼から任務を引き受け、盲目のパラディンを欺いて封印された洞窟の奧の巻物を取りにいくという、ちょっとダークなソロプレイができる。名所に隠されたストーリーを読み解くのは、楽しい。 他にも水晶の森や、廃棄されたオーク砦など、名所は少なくない。現在マラスの世界はモンスターの出現が少し押さえられているようで、この機会にパッケージに封入されていた地図を頼りに、世界の隅々を見て回るのもいいかもしれない。 新モンスター探索も面白い。水晶の森にはクリスタルエレメンタルが住み、深い森の中には歩く木であるツリーフェローがいる。バンパイアバッド、そして無害なスキットリングホッパーなどはすぐに見つけることができるだろう。忘れ去られたピラミッドの最下層にはスフインクスがいる。このモンスターはプレーヤーが攻撃を掛けなければ襲ってくることはなく、さらにお金を払うことで未来を占ってもらうことができる。ちなみに占いにかかる費用は5,000GP。興味があるプレーヤーは、彼女(?)の言葉に耳を傾けてみよう。 そして、マラスといえば新ダンジョン・ドゥームを紹介しないわけにはいかない……のだが、サーバーが重く、筆者のプレーヤースキルが足りないこともあって、出口以外、ほとんど訪れていないのが現状だ。フル装備の戦士を2発で昇天させるディバワーオブソウル他、フレッシュゴーレムといった新モンスター、さらにリッチロードといった従来の強力なモンスターがひしめいていて、進むことができなかった。仕方なく幽霊で探索し、興味のあるオブジェクトを見ることができたのだが、幽霊では何もさわることができず……。今後、勇敢な冒険者達の報告が待たれるところである。 プレーヤー自身が作っていく新名所 マラスはあらゆるところに家が建てられ、前回増えた新世界“イルシェナー”とは違い、「未開の地域の探索」という感覚は薄くなっている。大小さまざまな家がひしめいている大地は歩くのも大変なのだが、今回の正邪の大陸導入によって「人の家のデザインを楽しむ」という要素が強化され、新しい面白さを体験できるようになった。 今までのUOでも、プレーヤーたちの創意工夫により、さまざまなアイテムを独特の配置を行なって他のオブジェクトに見せかけていた。さらにその情報を公開することでブームが生まれる、という動きもあり、制作者さえも予想できない職人技を発揮する素人デザイナーが多数生まれていた。 今回の新ルール導入によってさらに「ハウスデザイン」が可能になり、プレーヤー達はより多彩な、より楽しい家を自らの手で作成することが可能になったのである。 壁から、窓、そしてさまざまなタイル。UOで地形を組み合わせて作っていた開発者達のモデルハウスをお手本に、現在、多くのプレーヤーが独自の世界を作っている。 今回、取材させてもらったNeoさんは、テレポーターにより、みんなでおしゃべりが楽しめる「バーカウンター」を設置した2階と、プライベートである自分の部屋を完全に分離、さらに屋上には柵をはり、草を敷き詰めて来訪者用の馬を置いておくスペースを作っていた。効率的なアイデアに、感心させられた。 mameさんは“廃墟”をテーマに家をデザイン。荒涼としながらも、緑を鮮やかなポイントとして設置するなど、独特のセンスを発揮。他にも屋根全体を溶岩タイルで置いたりと、単純ながらインパクトの強い家を作成している人もいた。 いくつかのデザインを見ていると、“滝”を設置している人が多かった。家の中に涼やかな水のイメージを持ち込むのはとても美しく、人気があるのも納得できる。その中で度肝を抜かれたのが、湖そばのある家。なんと、家の屋根が2次元的に水と重なるように見えていることを利用して、湖の水が家に流れ込んでいるように見えるデザインにしているのだ。非常に驚かされたアイデアであった。 与えられたツールを、豊かな想像力で、さらに驚くべきものに組み立てる。UOのプレーヤーのすごさというところは、こういうところにある。現在でも縮小マップを利用した文字のメッセージなど、ユニークなことをやっている人も多い。さまざまなプレーヤーの試行錯誤によって、どんなものが生まれてくるか、これからの展開が楽しみである。 新たなルールの導入による、新しいプレイスタイル。UOのプレーヤーは、さらにこれを超える遊び方を考案し、制作スタッフたちが驚くような楽しさを見つけだす。UOの楽しさは、このスタッフとプレーヤーのキャッチボールの感覚にある。今後、スタッフが仕掛けた楽しさをプレーヤー達がどう咀嚼し、そして進化させていくのか、1プレーヤーとして、筆者も一緒に楽しんでいこうと思う。
(C) 2003 Electronic Arts Inc. Ultima, the UO logo, EA GAMES and the EA GAMES are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All rights reserved. EA GAMES(TM) is an Electronic Arts(TM) brand.
□エレクトロニック・アーツ・スクウェアのホームページ (2003年2月27日) [Reported by 勝田哲也]
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