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Korea Amuse World Game Expo 2002現地レポート

NC Soft Group Interviewレポート
「Lineage II」、「Tabula Rasa」の最新情報を公開

12月12日開催

会場:COEX Intercontinental Hotel

 KAMEX 2002の正規スポンサーであるNC Softは、開催初日の12月12日に会場であるCOEXに直結しているIntercontinental Hotelで、韓国、香港、台湾、日本のアジア4カ国のプレスを集めてグループインタビュー形式のプレスカンファレンスを開催した。

NC SoftのCEO兼PresidentのTack Jin Kim氏
 会場となったのはホテル地下にずらりと並ぶ会議室の1室で、各国に割り当てられた8人座りの円卓が4つ並べられ、最奥にインタビュアーの席が設けられていた。最初に席に座ったのは、NC SoftのCEO兼PresidentのTack Jin Kim氏。東京ゲームショウ以来の登場となる。集中した質問は2003年にリリースが予定されているMMORPG最新作「Lineage II」後の同社の戦略について。

 これについてKim氏は、「『Lineage II』は、NC Softの新しい挑戦だと捉えている。『Lineage II』は、映画でしか体験できなかったようなインタラクティブで迫力ある世界が堪能できる。『Lineage』はマーケティング戦略からダウンロードでクライアントを提供し、定期的にエピソードを追加することによって世界観を広げていった。これに対し『Lineage II』は、あらかじめ完成度の高い世界を構築した状態で、パッケージおよびダウンロードの形態によるクライアントの販売を行なう」とコメント。

 パッケージの価格、ダウンロード版との差別化など、詳細については同作の完成を待たなければならないようだ。なお、発売スケジュールについては、現在韓国で行なわれているクローズドβテストが安定運営できた時点で決めるということだ。

 また、「Lineage」と「Lineage II」の違いについて、「世界観は同じだが、まったく違ったゲームに仕上がっている。『Lineage II』はフル3D世界による新たなゲーム体験をユーザーに与えることを最大の使命と考えている」と力強くコメント。ターゲットは、10代後半から30代まで、主にインターネットを利用しているユーザーということだ。

 ところで、有料課金者200万人という凄まじい規模を誇る台湾プレスから、繰り返し出された質問は、台湾、香港、上海などの中国マーケットにおける2003年度の戦略ついて。これに対してKim氏は、「来年から次々とサービスを開始していく。サービス展開するタイトルは『Lineage』だけでなく、『Shining Lore』なども投入し、オンラインゲーム市場を大きく育てていきたい」とコメント。続いて、「提携先については、台湾ではガマニア、日本ではソフトバンクといったように同地の戦略に一番適したメーカーと契約を交わすことにより、常に1位を目指していく。中国はシナを選択した」とコメントした。

 最後に日本市場の可能性について、「参入前はもっと悪いかと考えていたが、実際に『Lineage』のサービスを開始してみたところ、思っていたよりも良い状況だった」と正直に告白。「今後も引き続き日本ならではのオンライン市場を作っていきたい」と強気のコメントを残してくれた。

 韓国産MMORPGの日本展開は、一部を除き苦戦が続いているのが現状だが、同氏の観測は非常に鋭く、また実に冷静な内容だったのに驚かされた。韓国ゲーム市場において大きなシェアを持ち、かつ明確なビジョンのもとに複数の新作の開発が進められている同社のCEOならではの意見といえるだろう。


■ 韓国ゲームファン待望の次世代MMORPG「Lineage II」

「Lineage II」プロデューサーのJaehyun Bae氏(左)と、リードデザイナーのHyungjin Kim氏(右)
 会は昼食を挟み、その後「Lineage II」のプロデューサーを務めるJaehyun Bae氏と、リードデザイナーを務めるHyungjin Kim氏の両人による、「Lineage II」に関するグループインタビューがスタートした。

 Jaehyun Bae氏は「Lineage II」の最大の特徴について、「前作『Lineage』の最大のウリである攻城戦を原寸サイズで実現し、かつ竜に乗って城を攻撃できるなど、攻城戦を取り巻く状況を劇的にレベルアップしたところにある」とコメント。

 続いてHyungjin Kim氏は、「プレーヤーは人間、エルフ、ダークエルフ、オーク、ドワーフの5種族からキャラクタを選択することができる。ゲームには転職システムを実装しているが、ローグは人間のみ、アサシンはダークエルフのみといった具合に、選んだ種族によって転職できる職業が変わってくる。また、クラン(血盟)は、種族を問わず誰でも参加できるが、参加種族の構成によりクランの性格が変わってくる」と同作の魅力を立て続けに紹介してくれた。

 各種族が就ける具体的な職業の情報については公式サイトを参照してほしいとしながらも、全種族が就ける初期職業の戦士と魔法使いも含めると、最終的な職業の数は55種類にも上るという。なお、クランの性格付けは、ダークエルフが5人いるから、○○のボーナスが付くといった性質のものではなく、戦闘に不得手なドワーフが多い血盟は自然と商人ギルド的体裁の強いものになるし、人間やオークの多い血盟は攻城戦に特化した戦闘ギルドになる、という。つまり、商人プレイが血盟単位で成立するエコノミックなシステムを同作は備えているというわけだ。

 さて、クローズドβテストの状況について聞いてみたところ、「14万人の韓国人が応募し、400人規模で行なっており、サーバーの安定性を確認しながら少しずつテスター数を増やしている状況」という。現在は1サーバー体制ながら、応募してくれた14万人の中から随時テスターを増やしつつ、サーバーの数もどんどん増やしていきたいという。ちなみに1サーバーのキャパシティは3,000人から5,000人。いきなり5,000人、1万人規模で始めたり、サーバーのキャパシティを始める前から決めてしまわないところに、ゲームサーバー運営に関する豊富なノウハウを持つ同社らしい慎重さが伺える。

 続いて、韓国オンラインゲーム市場に衝撃を与えた「Lineage」の18禁ショックは、「Lineage II」の開発にどう影響を与えたのか聞いてみたところ、「現在、『Lineage』では12歳以上と15歳以上の2つのバージョンが存在し、すでに修正が施された15歳以上のバージョンでもPKは可能となっている。『Lineage II』では15歳以上をターゲットに開発を進めていくがPKよりむしろ、攻城戦やPvPに楽しさが見いだせる内容になるだろう」とコメント。

 それではいわゆる冒険者を殺してその持ち物を奪う純粋なPKはどうなるのかというと、形としては残されるが、PKシステムに厳しい制限を設け、快楽殺人は行ないにくくしているということだ。Hyungjin Kim氏が説明を終えたあと、続けてJaehyun Bae氏が口を開き、「開発側の純粋な希望としては、32歳以上バージョンをつくりたい」とコメント。会場は大きな笑いに包まれた。続けて、「『Lineage II』は、男女というだけでなく、10代、20代、30代、40代とさまざまな人がプレイする。それらの全員が満足できるゲームに仕上げることが目標です」と締めくくった。

 台湾プレスからは、最近台湾で発売されたというWindows版「ファイナルファンタジーXI」を引き合いに、「Lineage II」との違いについての質問が出た。Jaehyun Bae氏は笑いながら「それは『Lineage II』です」と即答したあと、続いて「FF11は、素晴らしいゲームだと思う。MMORPG初参入にしてはほぼ完璧と思える内容。クオリティでうんぬん言うことはできないが、内容の違いと言うことに関しては、FFはパーティーを組み、パーティーで敵と戦うということをメインとしている。これに対し、『Lineage II』は、血盟を組んで攻城戦を行ない、勝ち取った土地を統治することができる。「FF11」にも国同士の戦いの要素は存在するがシステムとしては弱い」と両タイトルの本質的な違いを指摘した。

 最後にシステムについての質問が出て、「サーバーシステムは独自開発、クライアントはUnreal(II)エンジンに独自の改良を加えたカスタムバージョンを使っている。Unrealエンジンを採用した理由は、単にグラフィックのクオリティが高かっただけでなく、カスタマイズにおける制約が緩かったため」とコメント。続けて「おそらくUnrealエンジンを採用した3Dゲームの中では『Lineage II』が一番変更が加えられているのではないか」と、カスタマイズ部分に同社の自信を感じさせるコメントを残してくれた。

 入力に関してはGlobal IMEを採用しており、すでに現時点で韓国語、日本語、英語の入力が可能で、近い将来中国語にも対応する予定だという。最後に、将来の構想についても触れ、「『Lineage II』は閉ざされた世界ではなく、携帯電話やPDAを利用して、血盟や地域、ゲーム内BBSといったゲーム内の情報を見られるようなシステムを考えている。最終的に『Lineage II』はコミュニケーションを取るためのひとつの手段になる」とコメント。ここまでくるとNC Softの枠を超えたグローバルな大構想だが、実現を楽しみにしつつ、今後の展開を見守りたいところだ。


■ UOの始祖が手がける新コンセプトのMMORPG「Tabula Rasa」

「Tabula Rasa」の開発総指揮を執るRichard Garriott氏 (左) とプロデューサーのStar Long氏
「Tabula Rasa」について熱意を込めて語ってくれたRichard Garriott氏
 最後に登場したのが、RPGとMMORPGの両ジャンルにおけるパイオニアとして全世界で絶大な人気を誇るRichard Garriott氏。発表会にはなかなか姿を見せない同氏だが、相も変わらずといった感じの元気な姿を見せてくれた。

 現在同氏は、NC Soft USAのProducerとして、米テキサス州で「Tabula Rasa」の開発に取り組んでいる。ちなみに、一昨年、兄Robert Garriottと共同設立したDestination Gamesは、昨年NC Softに吸収合併され、オフィスはそのままで100%直営のNC Soft USAとして、NC Softの北米の拠点として利用されている。今回、北米のプレスが呼ばれなかったのはこうした事情のためである。

 一方、我々日本プレスは、Richard Garriott氏が渡韓して、いまだ秘密のヴェールに包まれている「Tabula Rasa」についてのインタビューを受けるというので、この場に出席したわけだが、事前に資料が渡されるわけでもなく、当日デモンストレーションが行なわれたわけでもなかった。日韓の両広報担当も何の情報も聞かされていないという。このような状況下で、NC Softの進行役に「それではとりあえず日本のプレスから質問をお願いします」ということになった。こんなインタビューは前代未聞である。

 インタビュー時間が終了した後に、同氏に対し「ゲーム画面を見ないことには我々も質問のしようがない(笑)。来年のE3では動く物を見られると期待していいのか?」と質問したところ、「2003年中に発売されないことが決定しているからE3でも公開することはないだろう。我々の予定では来年のKAMEXでの初公開を予定している」という驚くべき答えが返ってきた。こういう状況であるということを理解の上で、下記インタビュー記事を読み進めて頂きたい。

 同氏は、「NC Softの一員としてここに説明に来られたことを大変嬉しく思っている。(Originを退社してから)ここ1、2年の間にさまざまなオンラインゲームがプレイできたのは(「Tabula Rasa」を開発する上で)いい経験になった」と挨拶した。

 次に同作のプロデューサーのStar Long氏が、Richard Garriott氏とともに自身も開発に携わったMMORPG「Ultima Online」の功罪について語ってくれた。「まず良かったところは、オンラインゲームはビジネスになるという事実が明らかになったこと。悪い部分は、使用者がゲームをするにあたって、システム的なバグを利用した詐欺行為など、開発者が予期しなかった行動を取ることにより、作品が本来求めていなかった方向に行かざるを得なかったこと。そして最後に、同作はいまでも続いているが、逆にいうとMMORPGは永遠に終わりがないという事実。その結果、我々が希望しない方向にどんどん作品が変わっていってしまった」とコメント。

 それでは全世界が注目する「Tabula Rasa」とはどんなMMORPGなのかという問いに対しては、「『Tabula Rasa』はゲームの世界設定作りに非常に気を使っている。現在、MMORPGは中世ファンタジーをモチーフにしたものが多いが、我々としてはそれを避けようというところからスタートして、紆余曲折を経たあと「近未来」ということになった。といっても単に近未来というだけではリアリティがないので、バックグラウンドの作り込みには神経を使っている。我々としては「スターウォーズ」や「スタートレック」のような、壮大なバックグラウンドを持ち、かつ確かなリアリティを備えた近未来世界を想像したいと考えている」とコメント。

 具体的なゲームプレイに関してはStar Long氏が担当。「システムとしてはMMOだが、グループ単位で小さな世界で暮らしていけるようにすることを目指している。そのポケットユニバースにはグループ単位でテレポートを使って移動し、ホブと呼ばれる街を拠点に自由に生活を送ることができるだろう」とコメント。あまりに漠然としていて何がなんだかわからない。

 インタビューは常時韓国語を仲介する二重通訳で行なわれたため、こちらの質問に対する答えの内容がかみ合わないものが多かった。インタビュー内容は以後すべてこのような感じで、具体的な情報は極めて少なかった。というわけなので、以下、得られた情報を元に筆者の推測も交えて「Tabula Rasa」の概要をご紹介したい。

 Richard Garriott氏が今回特に強調していたのは、1回のセッション(パーティーを組んで、モンスターを狩ったり、クエストをこなしたりする一連の行動を差す)を30分以内に押さえ、それでなおかつ、全ユーザーが確かな達成感が得られるMMORPGにしたいということだった。以前、同氏にインタビューを試みたとき、UOのダンジョンの宝箱が軒並み開けられ済みである事実を指摘し、「これはゲームとして非常におもしろくない。だから(「Tabula Rasa」では)プレーヤーごとに独立した冒険を与えてやる必要がある」といっている。

 これらのコメントと今回の発言を合わせて考えたとき、ひとつの推測に行き当たる。「Tabula Rasa」は、ワールドとしてはひとつだが、実際に冒険をこなすフィールドやダンジョンはパーティーの数だけ用意されるという四次元スタイルのMMORPGではないかということだ。

 「Diablo II」を例に説明すると、Battle.netがワールド全体にあたり、各セッションがダンジョンやフィールドに相当する。街も城もあるかもしれない。ワールドには、全ユーザーが自由にアクセスでき、物の売買や情報交換を行なえる。仲間でクエストをこなそうという段になったら、誘い合わせてテレポートで飛び、現地の待合い場所で合流した上でダンジョンに乗り込むというスタイルになる。

 このシステムなら、入ったダンジョンの宝箱が取り尽くされていることはないし、モンスターの取り合いや沸き待ちで無駄に時間を使用せず、スムーズに目的を達することができる。戦力が足りずに全滅してしまったら、リーダーがいったんワールドに戻り、「○○の討伐隊を募集しています。経験者大歓迎です!!」とシャウトする、という具合だ。

 これが実現すると現行のMMORPGのほとんどの問題を解決するまさに夢のオンラインゲームとなりうるが、ワールドとセッションの区切りをどこに設定するのか、他のMMORPGに比べ、難易度の点で容易になりすぎないか、また同氏のいうMMORPGの「終わり」をどう設定するのかなど、問題は山積みである。

 すでに作品の開発は18カ月にもおよび、両名を含むスタッフ25人でフル回転させて、まだ武器を装備して戦闘できるという部分のみしかできてないという。発売時期は2004年度内が見込まれるが、開発の進展具合によっては2005年にずれ込むことも充分に予想される。先の長い話だが、上記に近い内容になるにせよ、ならないにせよ、彼なら凄いMMORPGを造ってくれそうな気がする。正式発表の日が楽しみだ。

□NC Softのホームページ
http://www.ncsoft.net/
□エヌ・シー・ジャパンのホームページ
http://www.ncjapan.co.jp/
□「リネージュ 2」のホームページ(韓国語、英語)
http://www.lineage2.com/
□関連情報
【2002年9月4日】NC Soft、「Lineage II」をプレイアブルで出展 ストレスフリーな新世代MMORPGの魅力に迫る
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020920/tgsline2.htm

(2002年12月13日)

[Reported by 中村聖司]


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