広井王子氏の新作「N.U.D.E.@」発表 |
株式会社マイクロソフトはXboxブースにおいて、ファーストパーティのタイトルを紹介している。そのなかにはちょっと気になるタイトルが隠されている。ひとつは広井王子氏が総合プロデュースを手がける「N.U.D.E.@ Natural Ultimate Digital Experiment」。そして「パラッパラッパー」などを手がけてきたことでも有名な伊藤ガビン氏が手がける「戦場の出前持ち」の2作品だ。どちらもタイトルからはどんな作品か全く想像もつかない。それらのタイトルをステージの模様から探っていきたいと思う。
■ プレーヤーとロボットの心の交流……その果てに見えるものとは?
広井王子氏の新作「N.U.D.E.@」発表
まずは広井王子氏が総合プロデュースを担当している「N.U.D.E.@ Natural Ultimate Digital Experiment」。プレーヤーは総合電器メーカーARK社から6カ月間女性型ロボット「P.A.S.S.」をレンタルするところから始まる。まっさらな状態で送られてくるこのロボットとコミュニケーションを取ることで言葉を教えていく。いつしか言葉の羅列から会話へと発展していく。“私”を理解し、名前を理解していく。広井氏によれば、たとえばの話、プレーヤーの“奥さん”と“奥さんの名前”を理解し、関連づけた上で「奥様の~さんはお元気ですか?」と聞いてくるという。
このロボット「P.A.S.S.」を取り巻くバックグラウンドも細かく設定されている。'45年に設立されたARKは当初家電製品などを生産していたが、そのうちロボットなどの開発も手がけていき、工業用ロボットの生産に続き、家庭用のロボットも開発した……。「P.A.S.S.」は身長158cmで体重は108kg。この重さは現状では仕方ないため集合住宅などの対策として足の裏に緩衝材が取り付けられているという。こういった細かい設定がプレーヤーの感情移入を促す重要な要素といえるだろう。
広井氏によれば、この企画自体は8年前「サクラ大戦」が生まれたのと時を同じくして生まれたのだという。ただしその当時は「言葉を作り出す(音声合成)ことができなかったため、企画がストップしていた」という。1年半くらい前にXboxの機能などで実現することができるめどがつき、企画が進行し始めた。
「P.A.S.S.」は感情プログラムを搭載していないため、ほとんどNOということはなく、プレーヤーの思ったとおりに育つという。もし、「P.A.S.S.」に感情のようなことを感じるときはそれはプレーヤーの「P.A.S.S.」に“想い”ともいえるかもしれない。広井氏によれば、「アトムの誕生日が近づき、2足歩行ロボットがたくさん登場しているが、最も重要なのは2足歩行することではなく、アトムが心を持っていることだ。心のプログラムはまだできないが、もしできたら次の展開が対する見えてくると思う。そういったことまで考えながら作っている」とコメント。また、「現代のキーワードは寂しい時代だと思う。心と心がつながらない。その隙間を埋めるのがロボットなのかもしれない。でもほんとうに埋めるのがロボットでいいのかという問題を含めて考えている」という。
ただ単純に育てるだけのゲームでは終わらないようだ。彼女のレンタル期間が6カ月と限られているところがキーポイントとなる気もするが、どんな作品に仕上がるのか期待したいところだ。
なお、この作品はマイク付ヘッドセット「ボイスコミュニケータ」を使い音声入力することでコミュニケーションを取っていく。また、彼女はだれかの録音した声を再生するのではなく音声合成で話す。会場では「広井さん、あんまり無茶なことは言わないでください」と少しおかしいイントネーションだが、きちんとしゃべっていた。広井氏は「ちょっとイントネーションがおかしいが、これ以上は無理だ」とコメント。この「P.A.S.S.」にどこまで感情移入できるかはユーザー次第だが、気になる人は今後ともホームページなど注目してみてほしい。
■ 謎は深まるばかり……“フランちゃん”のピザ宅配物語「戦場の出前持ち」
東京ゲームショウ2002の開幕直前の19日にXboxのラインナップが一足先に発表されたのだが、その中でもっとも気になったタイトルがこの「戦場の出前持ち」だったという人も多いだろう。弊誌にもわざわざ海外から問い合わせがあったほどで、タイトルからゲーム内容が全く想像つかない。さらに制作があの伊藤ガビン氏と言うこともあって、少しねじれた世界観がどのように炸裂するのか期待感があふれてくるところだ。
20日にXboxブースのステージで行なわれた伊藤ガビン氏、グラフィックを担当しているタナカカツキ氏、司会のいとうせいこう氏の対談は結論から言えば、ゲームの内容はほとんどつかみ取ることはできなかった。おぼろげながらわかったことと言えば、「フランちゃんがピザの宅配をするアクションゲームのようだ……」ということぐらい。
細かな話としては注目するべき点もある。ガビン氏によれば「別にマニアウケをねらってる訳じゃなくて、メガヒットを作りたいと思っている。そこで、オレ流のポケモンを考えてみた。その時ゲームシステムは同じものでも、モンスターのデザイン的にOKを出せないものが数多くあることに気がついた。その時OKを出せるデザイナーはだれかと考えたらタナカカツキ氏だと思った」とグラフィックの決定までを説明。
また「どんなゲームを作りたいんですか?」といとうせいこう氏に問い詰められ「ポ……ポ……、ポエム」と答えている。「ゲームで何か新しいことをやろうと思うんじゃなくて、どんな人でもアクセスできて、これまでの知識でゲームをプレイすることができる。でもなにか引っ掛かる。それがポエムということ」だという。
とにかくガビン氏のマジックが炸裂しっぱなしで、ムービーが上映されればパンダがぐるぐる回っていて、ガビン氏曰く「パンダは登場しません」とコメントするし、「戦場」というタイトルに関してコメントを求められ、「戦場は登場しない」という。なにせ、「いまナニが決まっているのか?」との問いにXboxのステージなのに「プラットフォームをXboxにしようかなぁ? と思っている程度」とはぐらかすなど、冗談が99%をしめていた。
ということで、ここで書かれていることのどこまでが実現するかは誰にもわからない。でも実はそういったゲームのシステムなどはどうでもよく、いい加減な世界観も含め楽しめる作品になりそうな予感を感じさせてくれる。そこが最大の魅力といえるのかもしれない。このガビン氏のマジックに期待する人は多いだろうし、筆者もそのひとりだ。発売に関しては「2003年春と書かれてますよ」といわれ「2003年中だ!」と頑固に言い張っていた。もしかしたらこれが一番の真実かもしれない……。
とにかく冗談だらけで、どこまで本当かウソかわからない発表会だったため、確定的な情報は本当にわずかなものだけ。写真にあるように設定画なども公開されたが、どこまでゲームに反映されるかは不明だ。左上の写真が制作を担当している伊藤ガビン氏。上段真中の写真がタナカカツキ氏。そして司会はいとうせいこう氏という顔ぶれ |
□Xboxのホームページ
http://xbox.jp/
□「N.U.D.E.@」のページ
http://xbox.jp/software/NUDE/
□「戦場の出前持ち」のページ
http://xbox.jp/software/demae/
□関連情報
【9月19日】レッドとMS、音声認識を使った美少女ロボット育成シミュレータ
Xbox「N.U.D.E.@ Natural Ultimate Digital Experiment」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020919/xbox.htm
(2002年9月21日)
[Reported by 船津稔]
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